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特別支援教育について

第2章 都道府県・市区町村・学校の取組 アシスタントティーチャーの活用を通して 神奈川県横浜市

概要

 横浜市では、教育委員会の教職員人事課のアシスタントティーチャー派遣事業がある。趣旨は、教員志望の大学生ボランテイアを100名派遣すると共に学生のインターンシップの場の提供や、優秀教員の育成・人材確保に役立てることにある。特別支援教育課では平成16年度から平成18年度に特別支援教育指導体制モデル校事業を実施し、同派遣事業を活用し各学校に2名配置した。その目的は大学との連携の中、教師の補助者として支援することにある。

キーワード

 アシスタントティーチャー 特別支援教育 大学との連携 ティームティーチング(TT)

1.取組の内容について

 横浜市では、平成16年度より平成18年度にかけてLD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒への特別な教育的支援の充実を図り、学校全体として児童生徒の個々のニーズに対応した学校内の体制づくりのため、特別支援教育指導体制モデル校事業(各2年間、小学校21校、中学校6校)を実施したが、その際に、アシスタントティーチャーを2名配置した。横浜市教育委員会のアシスタントティーチャー派遣事業に登録した大学生のうち、主に大学で特別支援教育や心理学を専攻した教師志望の学生をモデル校に配置した。そして大学との連携を図り、専門的な指導、助言を学校教育に活かしていくことや、教員の補助者として27校に46名配置(小学校1~2名、中学校1名)した。

(1)アシスタントティーチャーの配置手続き

アシスタントティーチャー派遣事業実施要領より
  1. 教職員人事課に横浜市アシスタントティーチャーとして登録をする。
     (大学の教官の紹介の場合は、事前に登録用紙を送付し、協力を得る。授業やゼミなどの際に、アシスタントティーチャーの事業を紹介し、希望の大学生は登録用紙に記入し、教官が特別支援教育課に紹介する。)
     資格は大学で教職課程を履修し教員を目指している学生で、横浜市アシスタントティーチャーとして登録したもの。学年は問わない。
  2. モデル校に紹介し、校長と面談する。
  3. 面談後、了解した大学生は、書類の手続きを経て、学校に2名配置される。
  4. 活動時間は週1回~2回・3時間までとする。
  5. 謝金無し。交通費相当分として活動1回につき1,000円を支給する。
  6. アシスタントティーチャーが派遣された学校は、活動記録を作成し、教育委員会に提出する。

(2)モデル校2校の実践事例報告

特別支援教育指導体制モデル校事業A校での事例より

 A校では支援が必要な児童が在籍する学級に2名のアシスタントティーチャーをそれぞれTTとして配置した。支援を行うための役割を明確にし、担任との情報交換や支援の内容、守秘義務、支援する際に気を付けたい行動を説明し、学生に確認してから開始している。

  1. トラブルの多い児童に対してTTとしての指導支援
     話を聞けずに歩き回り、注意をするとよけいに喜んで逃げ回り、友だちとのトラブルが多く、自分の気に入らないことがあると攻撃的になる児童に対し、集団の中で望ましい行動がとれるように保護者と連絡を取り、週1回、主に午前中3時間アシスタントティーチャーがTTとしてその児童に支援をした。
  2. 支援内容
    • 本児童の行動を記録し、何故このような行動をとるのか分析し、アシスタントティーチャーと一緒に内容を絞り、具体的な支援を行った。その後、支援シートの導入やその結果をトークン方式で実施した。また、授業の方法にも配慮し、本児童の活躍の場面やグループでの学習指導の工夫をした。
    • 道徳の時間を使って、担任とアシスタントティーチャーとが寸劇をして望ましい行動形成を図った。例として、注意の仕方、あたたかい言葉かけ、お礼の言い方等であった。
      指導後しばらくして、担任とアシスタントティーチャーと指導の見直しをするなど細かい支援を実施していった。その結果、本児童の行動が変わり、友だち関係や学習へ意欲的になるなど変わってきた。
特別支援教育指導体制モデル校事業B校での事例より

 B校においても、アシスタントティーチャーに関する支援の際の心得や記録の仕方、内容の確認、児童との関わり方、対応に苦慮した際の相談、守秘義務などを説明し、支援を開始している。また、年度途中で懇話会を開き、担任や特別支援教育コーディネーター、教務主任、学年担当職員などが参加し、アシスタントティーチャーへの感謝やアシスタントティーチャーとして支援の中で悩んでいることや戸惑いなどを聞き、意見を交わし、将来、教員になるための「子どもの見方、とらえ方」などに話が発展するなど充実した話し合いがなされている。

  1. 学級や特別支援教室(学習ルーム)のTTとして
     理解に困っている児童への支援を中心に行う。教師の指示を分かりやすく、補足説明したり、やり方が分からない児童に寄り添って、活動の手助けを行ったりする。
  2. 休み時間での対人関係への支援
     支援ニーズ児童の様子を見守る。そのためアシスタントティーチャーは他の児童とも一緒に遊ぶなど、支援を受ける児童が「特別な子である」と周りの児童に思われないようにする。
  3. 給食・そうじの時間での安全管理面や日常生活での支援
    • 担任が給食を取りに行っている間、教室に残っている児童の見守りをする。
    • そうじではふざけている児童へ注意をしたり、一緒にそうじに取り組んだりする。

2.取組にあたって、協力や連携を行った関係機関や団体など

(1)大学との連携

 A校の場合、横浜国立大学との連携が大きな成果を上げた。大学では平成17年度より教職課程を目指す学生を特別支援教育の対象児童への支援をするアシスタントティーチャー講座を設けた。受講した場合は、単位取得が認められ、担当教官が実際に学校へ訪問し、大学生の支援の様子を見て、支援の仕方について助言がなされるなど、学生にとっても学校にとっても専門的な視点で指導を受けることができる。
 学生が関わる対象児童について大学教官が一緒に行動を分析し、支援の内容を整理し、「個別教育計画」(個別の指導計画を含む横浜市独自の様式)の助言、支援の内容に関して相談したり、TTとして授業の際の記録をまとめた内容に関して助言を受けたりし、その結果を学校での次の支援に生かしていった。
 学校全体に関しては、定期的に授業参観を通して指導への助言、教室の環境整備等について助言を受けた。特に行動面での内容に関して支援シートやトークンの導入など専門的な視点での内容を指導に取り入れ、効果を上げた。
全職員には、講演会の講師として「発達障害について」の理解研修を行い、年度末にはアシスタントティーチャーの取組についての事例を通した報告会を実施した際に助言を得るなど大学との連携した支援がなされた。

3.取組による成果と課題等

(1)取組による成果

  • 児童にとって、アシスタントティーチャーから自分が分からないときに、すぐに教えてもらえることにより、「少しずつ分かるようになってきた。」「勉強がおもしろくなってきた。」などの感想が挙がるようになってきた。
  • 担任は、アシスタントティーチャーと一緒に対象児童を支援することにより、互いに意見を交換したり、次の対応を検討したりするなど、一人で悩まず、協力した支援ができるようになった。また、教師が休み時間や給食などで教室を離れたり、移動したりする場合は、アシスタントティーチャーが対象児童や他の児童に関わってもらうことにより安全管理面での対応が可能となり、心理的にも安心して指導に当たることができた。
  • 大学の教官の専門的なアドバイスを得ながら指導に活かすなど学校と大学との連携した指導がなされ、その結果、学習や行動の変容がなされた。
  • 教員を目指す学生が、在学中に児童に教える機会を経て学生の方が児童から学んでいるという実感や生の授業に参加する中で教師の授業の進め方や児童との関わり方を見て大学ではできないことが多く経験できた。また、関わる中で教師を志望する気持ちが高まり、アシスタントティーチャーから実際に教師になった学生が相当数いる。

(2)課題と今後の方向性

  • アシスタントティーチャーの対応時間数(3時間)や回数が少なく、支援を期待する学校としては、一貫した時間設定が難しい。学生は大学の授業や教育実習などで定期的に時間を設定できず、一定の継続した支援や打ち合せなど組みにくい。また、互いに支援内容や活動方法に関して不明確な面もある。必要に応じた人数の確保が難しい。
  • 教職課程のある全大学にアシスタントティーチャーの講座を設け、教員のインターンシップとし、教職課程の科目として位置付け、教育実習の事前指導として、大学の教官より指導を受けながら一貫して一定の学校に支援者として支援を行なうことにより特別支援教育の理解が増す。また、教師の学級経営や児童生徒理解に触れることができ、教員となった場合、学校での指導に生かすことができる。
  • 学校は、特別支援教育が必要な児童生徒に対し、人的対応が喫緊である。どの学校においても大学生が教師とTTとして児童生徒の支援を行えるように、大学生を教育実習の他に学校教育に受け入れられる体制を検討すべきである。

-- 登録:平成21年以前 --