特別支援教育について

第2章 都道府県・市区町村・学校の取組 大学の研究室と連携した学生ボランティアの活用 山形市立第五小学校

概要

 特別支援教育が平成19年度から本格実施になる。本校では、特別な支援を必要とする子どもへの支援に、学生ボランティアを活用している。学生ボランティアを活用するに当たっては、「どのような学生と」「どのように連携するか」という学校の活用の目的を明確にして効果的な支援ができるようにしている。更に、特別支援教育を専門としている大学の研究室との連携も強化し適切な人材を確保している。

キーワード

 大学の研究室との連携 専門性の高い学生 特別支援教育ボランティア 学習支援教室

1.悩むより行動!

 特別支援教育推進上の課題がいろいろ論じられているが、本校も同じである。担任は、目の前の児童を深く理解すればするほど「この子にはこんな指導をしなければ・・・でもどうしたら?」と悩んでしまうことが多い。担任を責めることはできない。指導方法等の技術的な専門性を全ての教員が身に付けているわけではない。特別な支援を必要とする児童に対しては適切な指導計画による個別支援が必要であり、そこに人手不足という問題が生じる。
 本校では、「わからない。できない。」と悩むより、「わからなかったら勉強しよう。困ったら大学の先生に相談しよう。知恵を出し、工夫してできることは取り組もう。無理なことでも、ボランティアなどの協力を得ることができたら実践しよう。」という方針で、まずできることから始めることにした。
 大学の研究室と連携した学生ボランティアの活用は「これならできる。これは効果があるぞ。」と考えた取組の1つである。

2.大学の研究室と連携した学生ボランティア活用の実践

(1)すぐ近くに大学がある本校の長所を生かして

 本校は、山形大学が徒歩で約5分の所にある利点を生かし、数年前から特別支援教育を専門としている研究室及び教育相談や学級経営等を研究している研究室と連携を図りながら教育活動を進めている。また、近年、教育ボランティアを積極的に希望する学生が増えていると聞いている。本校が大学のすぐ近所であることもあり、授業の1コマを受けるような気持ちでボランティアを希望してくる学生が非常に多い。上記2つの研究室の学生も多く、特別支援教育に対する関心も高い。
 大学の先生は自らの研究仮説を実証する場として、研究室の学生は実践研究や将来に向けて教師としての資質・能力を向上させる場として学校現場を求めている。学校も専門家である大学の先生に相談したいこと、学生に協力してもらいたいことがたくさんある。必要とし合う両者が連携し、協力し合うことによって大きな効果を得ることができると考えた。

(2)効果的な学生ボランティアの協力を得るための校内体制

 本校では、特別支援教育の対象児童の把握から、個別支援計画の作成まで、下に示すような手立てをとっている。その上で、個の実態に応じどんな協力が必要か検討し、2つの研究室の学生に特別支援教育のボランティアをお願いしている。

効果的な学生ボランティアの協力を得るための校内体制 図
 ※ ボランティアは教員を目指す学生で無償、保険は大学で入っている。

(3)今年度のボランティア内容(※週2日間以上のボランティアのみ記載)

学生(学年) ボランティア内容 週あたり時数
学生A(4年) LDの児童2名への漢字指導協力
高機能自閉症の児童1名への作文指導協力
情緒障害特殊学級でのTT
4
3
8
学生B(4年) 不登校傾向の児童への支援 他3、5年対象児童在籍学級でのTT
8
学生C(4年) 高機能自閉症の児童1名への支援を中心としたTT
3
学生D(4年) 発達に遅れの見られる児童2名への支援を中心としたTT
3
学生E(4年) 情緒障害特殊学級でのTT
3
学生F(4年) 高機能自閉症の児童1名,不登校傾向の児童1名の支援を中心としたTT
4
学生G(3年) 高機能自閉症の児童1名への支援を中心にしたTT
2
学生H(3年) 高機能自閉症の児童1名への支援を中心にしたTT
2

平成18年度後期 学生ボランティアによる「特別支援対象児童」の学習支援計画

月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日
氏名 支援対象 氏名 支援対象 氏名 支援対象 氏名 支援対象 氏名 支援対象
スキルタイム 学生A K児
L児
学生A K児
L児
学生A K児
L児
学生A K児
L児
学生A K児
L児
1校時
8時55分
~9時40分
学生B
学生A
学生I
S児
O児
3年学級
学生F 4年学級 学生A
学生J
O児
5年学級
学生B P児 学生A O児
2校時
9時45分
~10時30分
学生I
学生B
学生C
学生D
3年学級
P児
2年学級
2年学級
学生F 4年学級 学生A
学生J
特学(情)
特学(知)
5年学級
学生B P児 学生A
学生G
学生H
特学(知)
4年学級
2年学級
3校時
10時55分
~11時40分
学生I
学生B
学生C
学生D
特学(情)
5年学級
2年学級
2年学級
学生F 4年学級 学生A
学生J
特学(情)
4年学級
学生B 3年学級 学生A
学生G
学生H
特学(情)
4年学級
2年学級
4校時
11時45分
~12時30分
学生I
学生B
学生C
学生D
特学(情)
5年学級
2年学級
2年学級
学生F 4年学級 学生A
学生J
特学(情)
4年学級
学生B 3年学級 学生A 特学(情)
給食・掃除
12時30分
~14時10分
学生E 特学(情) 学生A 特学(情) 学生A 特学(情)
5校時
14時10分
~14時55分
学生E 特学(情)

※ 取り出し個別指導への協力は「学習支援教室」において教頭、教務の指導のもとに実施している。
※ 学級集団の中で配慮が必要な児童に対する支援の協力は学級担任の指導のもとに実施している。
※ 「特学(情)」は情緒障害特殊学級、「特学(知)」は知的障害特殊学級のことである。

3.成果と今後の取組について

 特別支援教育について高い専門性を有する2名の大学教授及び研究室の学生ボランティアと連携した校内支援体制ができたことは、以前には難しかった多くの課題を解決する上で大きな力となっている。その1つは、特別支援教育について学んでいる専門性のある学生ボランティアによって、児童個々の課題に応じた学習支援が可能となったことである。もう1つは、特別支援教育について高い専門性を有する2名の教授から対象児童の支援について助言をもらうことによって、校内の教員だけでは難しい確かな児童理解と支援方法が可能となったことである。本校の教員にとって、特別支援教育の重要性や支援方法を学ぶ活きた研修の機会となっている。何よりも、対象児童の学習面や不登校傾向等の生活面等で大きな成果が上がっていることは、今後の取組への意欲につながるものとなった。
 平成17年度に、空き教室を改造して開設した「学習支援教室」で、教頭、教務主任が中心となり、学生ボランティアの協力を得て、9名の児童の個別支援をしている。今後、大学の研究室と連携した支援体制を活かし、更に多くの児童に充実した支援ができるようにするために、学習支援教室担当教員の配置が望まれる。

学習支援教室 図
 <学習支援教室>

-- 登録:平成21年以前 --