特別支援教育について

徳島県 徳島県立徳島中央高等学校成果報告概要

1.研究課題
 発達障がいのある生徒の支援をキャリア教育の視点で捉え直し、卒業年度とともに、入学時からそれぞれの学年で、卒業後の就労を意識した課題に取り組む。授業で授業内容の検討を進め、基礎学力の保障とともにキャリア教育の課題を取り扱えるように工夫する。
 発達障害のある生徒への個別支援の充実を図るとともに、生徒の自己実現を図りながら関係機関と連携して、キャリア教育を充実させるための実践的研究を行う。

 

2.研究の概要
 発達障がいのある生徒とともに、同じような支援やサポートの必要な生徒たちに対して、入学時から学年進行にともなって教科・特別活動・放課後活動・就労に関する指導・支援を行う。特別支援教育コーディネーターを中心とする推進委員会を柱に、進路指導課が中心になってキャリア教育の取組を進め、学年主任を中心に学年進行に合わせた取組と支援をキャリア教育の視点で捉え直す。個別の指導計画・個別の移行支援計画の作成、活動評価、計画の見直しを行い高等学校における支援・サポートのあり方を関係機関との連携を通して工夫し、卒業後の生活を見据えた個別支援の効果を上げるための手立てを検討する。
基礎学力の定着、進路志望に応じた選択類型、特別活動等の取組を通じて全生徒の学力向上や自尊感情の育成、進路志望の実現を図る。
○1卒業年次に取り組んできた支援の状況や生徒の現状から見えてきた課題について、高校1年次から卒業後の進路を意識した取組を進める。総合的な学習の時間を使ったキャリア教育だけでなく日常の教科の授業の中や学年ごとのホームルーム活動でも課題に取り組めるよう工夫を図り、自己認識の育成や日常生活力を高める取組、コミュニケーション能力の向上、社会性の育成を図る。
○2授業内容の検討を進め、各教科のユニバーサルデザイン化を進めるとともに、キャリア教育の課題を授業の中で取り組む手立てを検討する。
○3就職支援員や学生ボランティアを活用するとともに、とくしま地域若者サポートステーションと協力して、職業訓練・就労支援及び放課後支援を行う。
○4教職員・保護者・地域に対する講演会・学習会を開催する。

 

3.研究成果の概要
○1基礎学力が充分身に付いていない状況の生徒にも配慮し、学習意欲を持たせるために1年次の入学当初から、担任が「総合的な学習の時間」において、「キャリア・ノート」を活用したキャリア学習を実施した。年間35時間を年間カリキュラムに組み込み、系統的授業として取り組んだ。2年次以降は、各種検定取得に特化したコースを生徒自らが主体的に選択し、一人ひとりの目標や進路選択に見合ったキャリア学習を積んだ。

○2授業のユニバーサルデザイン化に取り組み、年間2回の相互授業参観を通して、わかりやすい授業のための工夫について教員が互いに学び合った。基礎学力の向上のために、学校設定教科「教養」に取り組み、毎日10分間の学習を積み重ねた。感性を豊かにする活動として、国語科の授業において、年間10回の「絵本の読み聞かせを行った。生徒たちは数々の名作と呼ばれる絵本と出会い、集中力や読解力を付けつつ、想像力を高めたり、徐々にではあるけれども情操を豊かにしていくことで感性を磨き、絵本の世界の中で人生に必要なことを追体験しながら学ぶことができた。
○3総合的な学習の時間のコース別学習のひとつとして、絵本の読み聞かせと人形劇の活動である「とくしま中央一座」に取り組んだ。いくつかの保育園や障害者支援施設で公演を行い、観客から賞賛を受けることによって、参加生徒は成功体験を積み重ね、自尊感情を高めることができた。
○4とくしま地域若者サポートステーションとの連携によるジョブ2クラブ(毎週火曜・木曜の12時00分~18時00分)の活動を始めた。就職応募する生徒への支援(履歴書、面接対策、心構え等)やハローワーク学卒部門への引率、進路目標が定まらない生徒への支援や学び直し支援等の活動に、25年12月末までに50人以上の生徒が参加した。サポステスタッフとのかかわり、参加生徒同士のかかわりを通して、生徒のコミュニケーション能力の向上が見られた。
○5夏休みに就業体験を実施し、8事業所での体験に15名の生徒が参加した。生徒は就業体験を通して少しずつ自信を深め、職業観の高揚につながった。
○6特別支援教育コーディネーター、学年コーディネーターが中心となって、学年会を開催し、生徒の支援について話しあい、共通理解を図った。また、ケース会等で保護者や関係機関と連携を図り、個別のニーズに応じた就労支援に取り組んだ。
○7進路指導課と進路指導支援員、HR担任とジョブ2クラブが連携して粘り強く進路指導に取り組み、24年度よりも進路決定者数が増加した。
これらの取り組みは、相互に関連しており相乗的に効果を上げることができるものであり、一人ひとりの生徒にはそれぞれの異なった取り組みであっても、学校全体としてはキャリア教育の大きなうねりを作り出すことのできる取り組みである。
本年度のキャリア教育の取り組みは、コミュニケーション能力の育成や職業に対する理解並びに進路実現につながる進路指導においては大きな成果が得られたと考えられる。一方、基礎学力の充実を図り、進んで進路選択ができる生徒の育成は一定の成果にとどまった。成功体験を積み、自己肯定感を高める活動においては、一部の生徒では大きな成果が得られたものの、その数はまだ少数にとどまっている。今後さらにキャリア教育の観点から、生徒の自覚的な取り組みを促進しなければならない。

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初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)

-- 登録:平成26年12月 --