共生社会を目指した障害者理解の推進(特別支援教育研究協力校)中間報告書

都道府県名 奈良県
指定校名 奈良教育大学附属中学校

1 研究のねらい

 異文化理解や他文化共生社会というESD(持続可能な開発のための教育)の文脈の上に、「障害理解学習」や「特別支援学級との交流」など、従来からの取組を実践的に発展させ、持続可能な社会の実現に向けた共同のパートナーとして、「生き方」について共に考えてゆける力をどのように育てていくかという視点から研究を推進する。

2 研究内容

 生徒による実行委員会を組織するなどして、計画的に実施されてきた特別支援学級との交流や、「障害」や障害者をとりまく「問題」について科学的な認識をもてるよう学習を進めてきた「障害者理解」において、交流及び共同学習が豊かに展開し、通常の学級・特別支援学級の双方の生徒にとって、自分理解がより一層深まるような教材の開発、実践を行う。
 まずは、「特別支援学級との交流会」に向けて「障害」、特に知的障害について、第1学年の生徒に講話を行う。その他、「人間に共通する発達の筋道」について講話でも学びつつ、加えて初年度は「対人関係のとりにくさ」などの困難をもち、理解されにくいと思われがちな発達障害等についても実践に取り入れ、そのカリキュラムとしての汎用性を模索する。
 その後、11月から翌年2月まで、第1学年の各クラスと特別支援学級との交流会を月に1回(例えば、11月は1年1組と特別支援学級との交流会)実施する。前述のように事前に、双方の学級から選出された生徒による実行委員会を、特別支援学級校舎と通常の学級校舎でそれぞれ1回ずつ実施することにする。
 また、10月頃には、障害のある方や障害者にかかわる方を地域のリソースパーソンとして複数来校していただき、第1学年の生徒に対してグループ単位で、「障害理解学習」の講話や交流を実施する。クラスを解体したグループを編成し、講話・交流後に各クラスにもどりグループごとに成果を発表し合い、生徒同士が評価する機会を設定する。この講話・交流により、「校内」の枠組みから、地域社会へと多元的な広がりと発展を目指す。

3 評価の方法

  • 「交流会」及び「障害理解学習」実施前後の感想文等でのふりかえり(交流会通信や学年通信への掲載も含めた学年全体のフィードバックも含む。)
  • 生徒の感想文や行動の変容などについて、検討会議を開催して総括を行うとともに、評価方法改善のための取組を進める。
  • 本校の学校評議員会の評価も受ける。
  • 2年度の終わりには成果と課題を冊子にまとめて、広く公表する。

4 研究経過

 特別支援教育研究協力校委託を受けたことと、学校全体の研究テーマ「ESDの理念に基づく学校づくり」の2年次に当たることから研究組織を見直し、年度当初に組織改編を試みた。新たに設置された部門「特別支援教育推進室」と第1学年が中心となり、計画に沿って以下の取組を実施した。最終的な研究計画については次の通り。

(内容と時期)
・本事業のための校内組織の調整(研究推進部)と計画立案(4月)
・新入生オリエンテーションでの「5組について」の講話(4月)
・「1年生代表と特別支援学級との交流会」と事前講話(7月)
・「障害理解学習」の内容や方法についての検討と実施(10月)
・障害のある方を招いての「障害理解」の交流の検討と実施(10月)
・「1年生と特別支援学級との交流会」の実施(11月〜2月)
・総括と中間報告作成、次年度計画立案(2〜3月)
・評価の方法の検討と改善(10月〜2月)
(報告書内該当箇所)
4−(1)
4−(2)−1
4−(2)−2
4−(2)−3
4−(3)−1
4−(3)−2
5及び6
5及び6

【平成19年度研究計画】

(1) 本事業のための校内組織の調整(研究推進部)と計画立案

 本校5カ年の研究活動の中心となる研究推進部に、ほぼ直結の部門として「特別支援教育推進室」を設置し、特別支援学級(以下、必要に応じて「5組」とする。)から1名、通常の学級から1名の委員をおいた。障害理解学習や特別支援学級との交流会を実施する際は、該当学年の学年会議及び担当教員と連携して、企画・立案を行った。
 各学級からの代表者による「通常の学級と特別支援学級との交流会のための実行委員会」は、少人数の取組であるため、例年は年間行事計画への提案の時期は、1学期末頃であったが、今年度は学年会議において優先事項として提案し、4月中にその時期を決定するようにした。交流会当日までに、事前に2回の実行委員会を実施し、1回目は校舎の離れている特別支援学級(以下、「高畑校舎」という。)において、2回目は通常の学級のある本校舎にて実施することとした。交流会は、特別支援学級の全学年と、第1学年の1学級ずつ(全4学級)の生徒全員が参加する。(特別支援学級は20名、通常の学級は約40名である。)11月〜翌年2月まで、各学級と特別支援学級が交流会を行うが、その事前学習として、3つの取組を計画した。

  • 4月の新入生オリエンテーションでの「5組について」特別支援学級担任による講話
  • 各学級の実行委員(各学級4名×4学級=16名)による特別支援学級の行事(高畑校舎での2泊3日の宿泊行事「5組キャンプ」)の一部に参加する形態の「1年生代表との交流会」、及びそれに向けて特別支援学級担任によるオリエンテーション
  • 障害のある方をゲストティーチャーにお招きしての講話・交流と事前に「障害理解学習」の講話

これらの詳細については以下に示す。

(2) 新入生オリエンテーションでの「5組について」の講話、「1年生代表と特別支援学級との交流会」及び障害理解学習の意義と課題の洗い出し

1 新入生オリエンテーションでの「5組について」の講話
 第1学年の全生徒に対して、入学後の新入生オリエンテーションにおいて、5組の生徒についての講話を実施した。より具体的に分かりやすく、誤解の生じない内容にするため、5組の保護者の協力を得て、「我が子のいいところ」についての作文を用意してもらい、5組の担任が代読した。また、5組の生徒自身も自分の得意なことや好きなことを中心に「自己紹介」をした。通常の学級の生徒に「理解してもらう」「分かり合う」という観点において保護者は協力的で、以下のようなお願いに対し、その翌日に作文を提出していただいた。

【資料1 保護者へのお願いの文章(1年5組学級通信より 部分)】

(おうちの方に)
 あさっての学年集会で5組の紹介をします。その際に子どもたちの様子を話したいと思います。担任がおうちの人に代わって代読致します。
 長所を中心とした我が子の紹介と気を付けてほしいことなどを二百字以内にまとめてください。支障のない範囲で、例えば、本校の生徒に知っておいて欲しいこと、どんな風に声をかけてほしいか等、中学1年生に話しかける感じで結構です。

2 「1年生代表と特別支援学級との交流会」
 各学級から選出された4名ずつ、16名の実行委員と5組の実行委員4名(1年生2名、2年生1名、3年生1名)が、まず、オリエンテーションとして顔合わせをし、1年間の交流に関する事項を確認した。司会は、前年度にも交流会の経験のある2年5組、3年5組の生徒が担当した。司会だけでなく、先輩として、どのように工夫したら5組の生徒も楽しめる内容となるのか、経験に基づき前年度の取組を参考として紹介した。

【資料2 1年生代表と5組との交流会 タイムテーブル 部分】

時 刻 内 容
13時30分 通常の学級実行委員本校舎より移動。高畑校舎5組教室に到着。荷物は1年生教室におく。
13時30分 廊下に出してあるテーブルに班ごとに着席。名札に記名する。司会・5組実行委員2名
   1学年主任先生あいさつ  25組代表歓迎のあいさつ(5組実行委員)
   3カレー作りの説明を聞く(5組実行委員) 4班ごとに自己紹介をする
    配膳係を2名決める(うち1名は5組から)5調理にとりかかる 6片づけ
14時30分 各自更衣室で水着に着替え。班ごとにまとまって小プールに移動する。
14時40分 水遊びを通して交流を深める。進行・実行委員
   1準備体操  2班ごとに自由に泳ぐ
   ※同じクラスの者ばかりがかたまらないように、交流が深まるように工夫する。〔流水プール〕
   3班ごとにならぶ〔小プール〕
   4「たらい競争」の説明を聞く 班ごとにたらいにのる人を決め練習
   5「たらい競争」(1往復) 班ごとのトーナメント戦
   6「ボール送りゲーム」の説明を聞く ペアを決める(1ペア2〜3人)
   7「ボール送りゲーム」(各組8ペア) 班ごとのトーナメント戦
   8 順位の発表(5組にも分かりやすいように「○組□色チーム」という表現で)
   9整理体操    5組教室に戻る。着替え。
15時40分 班ごとに食事の準備をする。
16時00分 班ごとに食事を楽しむ。感想を出し合い、交流会のまとめをする。
   感想発表は各班の班長(通常の学級)と、5組からは3名(各学年1名)
17時00分 解散

3 障害理解学習の意義や方法についての検討
 10月に実施予定の「障害理解学習」の講話において、従来の知的障害及びその他の視覚障害などに加えて、発達障害についても内容を盛り込むことにした。通常の学級にもいると考えられる、例えば「対人関係」がとりにくいと思われている生徒への理解が、学年全体あるいは学校全体に、間接的にでも拡がることを期待するものである。この講話は、パソコンで写真や動画をなどの映像で視覚的に説明することを中心としながら、生徒との対話形式も取り入れた。以上の観点を踏まえて特に配慮して作成した、解説の文章は例えば次のようなものである。

【資料3 紹介した映像に添えた解説より 部分、途中省略あり】

● 障害があるからといって、障害のない人たちとは何もかもが違うのでしょうか?
画面には「いっしょに楽しむなかま、はげましあうなかま、認め合うなかま」と書いてありますが、この主語はなんでしょう?誰が、でしょうか。5組の人たちだけでしょうか?みなさんにも共通するのではないでしょうか?同じところや、みんなとは違っているからこそサポートを必要としているところ、などがわかってくると、5組との交流会ではどのように工夫をしたら、自分のクラスも5組も楽しめるか、いいヒントが見つかると思います。
● みんなに認められているかな、ばかにされていないかな、とても気になります。
周りの人の視線や雰囲気はよくわかります。お友だち関係もとても気になります。
この写真は、今年の野外活動での「5組のスタンツ」ですね。みなさんがクイズにも積極的に答えてくれたり、真剣に歌を聴いてくれたみなさんの気持ちは、5組のなかまに伝わっています。
● 先ほどもお話ししましたが、学習したり情報を取り入れたりするのがゆっくりですから、先生や友だちの話を耳で聞くだけで、それを理解して、すぐに自分の行動にうつすということは難しいこともあります。ですから5組の学習活動や行事は、実際にその場所にいったり、実際に体験したりすることもあります。「あれをこうして」とか「そっちをこう向けて」など、指示代名詞が多いとわかりづらいです。具体的に「机の上にある、赤いふでばこの横の… 」など、色や形や特徴などを入れた、具体的で簡潔な言い方を工夫してあげてください。
● 例えば、一度落ち込むとなかなか気持ちが切り替わらず、お話もできなくなったり、怒り出したりしてしまいます。他の人には何ともない音やにおいなどがとても気になり、どうしようもなくなってしまうこともあります。興味や関心がとてもかたよっていることもあります。
 注意や集中がそこから離れられなくなることもあります。それを修正しながらいろいろな取組をするので、みなさんと同じペースや内容ですすめられないことがあります。でも、皆さんよりもとても得意なことや、感心や興味がみなさんと同じである場合などでは、楽しい時間を共有できることもあります。
● 周囲の状況をつかみにくかったり場面に合わない言動をしてしまうこともあります。
このようなときは、「わがまま勝手にしているのではなくて、彼らの中にある思いと周囲の状況があわないのだな」「思いが強すぎたり、興奮していて、周囲の状況がわかりにくのだな」と思ってください。そしてもっと知りたいと思ったら、ぜひ5組の先生に聞いて下さい。
(3) 障害のある方を招いての「障害理解」の交流の検討と実施

 視覚障害や肢体不自由のある方、福祉作業所の職員などに「ゲストティーチャー」として来校していただいた。生徒らは、ゲストティーチャーからお話を聞いたり交流したりするが、事後には各クラスで報告し合えるよう、学級ごとに交流するのではなく、各学級で班を編制し、お話を聞いてみたいゲストティーチャーを選んで、事前学習や事前の質問作成などを進めた。講話や交流の終了後は再び学級に戻り、班ごとにその様子を報告し合い、それぞれの活動を交流した。

(4) 「1年生と特別支援学級との交流会」の実施

交流会及びその実行委員会を実施した日時や学級について、以下に示す。
同席した教員は、双方の学級担任。所要時間は50〜60分間。

1   2007年  11月26日  (月曜)  1年1組との交流会
    11月 8日  (木曜)  第1回実行委員会(高畑校舎)
    11月14日  (水曜)  第2回実行委員会(本校舎)
2  2007年  12月17日  (月曜)  1年2組との交流会
    12月 5日  (水曜)  第1回実行委員会(高畑校舎)
    12月12日  (水曜)  第2回実行委員会(本校舎)
3  2008年  1月21日  (水曜)  第2回実行委員会(本校舎)
    1月 8日  (火曜)  第1回実行委員会(本校舎)
    1月17日  (木曜)  第2回実行委員会(本校舎)
4  2008年  2月18日  (月曜)  1年4組との交流会
    1月31日  (木曜)  第1回実行委員会(本校舎)
    2月13日  (水曜)  第2回実行委員会(高畑校舎)

一例として、4の実施要項の一部を示す。

【資料4 1年4組と5組の交流会実施要項・部分】

4組と5組の交流会  実施要項

1.実行委員(略)

2.日時:2008年2月18日(月) 5、6時間目 (13:00-13:00)
 場所:本校  浮和2バレーボール…体育館  茶話会…被服教室

3.ねらい
  2組のねらい  ・5組の人の理解を深めよう。 ・5組の人の名前と顔を覚えよう。
  5組のねらい  ・1年生との仲を深めよう。  ・4組の人と助け合ってバレーボールを楽しもう。

4.内容(略。詳細は以下のタイムテーブルにある。)
5.Time Table
 12:30 被服室へ椅子運び(20脚)…5組実行委員と5組2年生男子
 12:50 体育館に移動、集合(班毎に整列)…実行委員指示
 13:00 交流会開始
司会 …(4組実行委員)
はじめのことば …(5組実行委員)
班ごとに自己紹介…班長を中心に 別紙の方法で他己紹介
ペアを確認する ゼッケン配布
 13:15 浮和2バレーボール
ルールの説明…(5組実行委員)(4組実行委員)
 13:15 ゲーム開始(1ゲーム10分間、総当たり戦、同時に2コート使用)
1回戦  赤 vs 白   青 vs 黄
2回戦  赤 vs 黄   青 vs 白
3回戦  赤 vs 青   白 vs 黄
 13:55 浮和2バレーボール終了予定、被服室に移動 手を洗って、茶話会準備
 14:00 茶話会
班毎にテーブルにつく。
なるべく同じクラスの人が隣り合わず、交互に座るようにする。
司会あいさつ    …(4組実行委員)
表彰式、歓談(飲み物などを配り終えた班から)
※同じクラスの人とばかり話していないか気をつける。
 14:15 ぼうずめくり(班毎に) ルールの説明(4組実行委員)
 14:30 歌の交換:
4組紹介(代表者1名)、4組『決意の朝に』Aqua Timez
5組紹介(代表者1名)、5組『友だちメドレー』
 14:45 感想発表:
4組は1〜8班の班長
5組は各学年から1人ずつ
 14:55 おわりのことば(5組実行委員)
後かたづけ(実行委員全員)
隣の人の好きな物を私が紹介する「他己紹介」。まずはしっかり知り合おう。(左)   「こっちに来たよ!」「私が打つわ!」「おねがい!次はこっち?」滞空時間があるので相談できるね。(右)
隣の人の好きな物を私が紹介する
「他己紹介」。まずはしっかり
知り合おう。(左)
  「こっちに来たよ!」「私が打つわ!」
「おねがい!次はこっち?」
滞空時間があるので相談できるね。(右)

5 成果と課題

(1)交流に消極的だった特別支援学級の生徒の変容

 1年3組との交流会は、「ペアかるた大会」であった。これについては、双方の学級担任が「助ける−助けられる」という関係でなく、「対等に」「共に」ということをより大切にした取組にしたいと話し合った。その結果、5組の生徒が冬休み前から1月の「5組カルタ大会」に向けて「いろはカルタ」を練習していることを4組で紹介することにした。4組の生徒にとって初めてのカルタも、5組の生徒が慣れ親しんでいるものであるので、ペアになった生徒が互いの片手の手首を結ぶ「ペアカルタ」にすることで、5組の生徒がリードする形となる。5組の生徒は通常の学級の生徒よりも素早く絵札をとることができるので、カルタが始まると、たちまち通常の学級の生徒が驚きの声をあげた。

【5組の生徒の感想文より 部分】

「1年3組との交流会」
  今日、1年3組との交流会がありました。
  はじめに自己紹介をしました。少ししゃべれました。その後、ペアカルタがありました。1回目のペアはKさんで、2回目がTさんでした。私がめっちゃ速くとったので、びっくりしていました。少ししゃべれました。楽しかったです。その後、茶話会や歌の交換をして終わりました。

 この生徒は、通常の学級の生徒との交流に消極的であった。少しでも交流が深まるよう、「5組カルタ大会」で優勝した経験が活かされるよう、ペアカルタ大会の途中で「作戦タイム」と称して、ペアで相談出来るような時間を設けた。このことにより、5組の生徒の方から、自分の好きな札や、お手つきをしやすい札など、積極的に話題をつくり話しかけることができた。そして、前回の感想文では「しゃべれませんでした」と書いていた感想文に、「少ししゃべれました。楽しかったです」という変容があらわれた。

(2)対等に楽しむことのできる関係への発展

 上述のように、「通常の学級と特別支援学級との交流会」において、実行委員会では進行の補助として各担任は同席したが、司会及び進行は実行委員が担当した。前年などに交流会の経験のある2、3年生の5組の生徒が会の最初に、その内容や様子について発表するように進行を工夫した。5組の生徒自身は経験に基づいて具体的な意見を述べることができ、積極的な態度で実行委員会に臨むことができた。また、その発表や意見を聞き、通常の学級の生徒の意見も出やすくなり、その後も、例えば「5組の○○さんは今の意見についてどうですか?」「できそうですか?」などと配慮された発言がみられるようになった。
 1年4組との交流会実行委員会を具体的場面として掲げる。学級の話し合いでは当初「球技がいい」「バレーボールはどうか?」という意見が出されており、4組の実行委員より提案された。これに対し5組の生徒は、経験がないことやボールが固そうであるなどの不安や心配から発言が出来なくなりかけた。しかし、「ぼくらはバレーボールはできないなぁ」と5組の生徒が意見を言うことができ、それを受けて通常の学級の生徒から、z「両方のクラスの人が楽しめるような、当たっても痛くないボールで、誰でも手を出せる(打てる)工夫をしたらいい」という提案がなされた。それに対して5組の実行委員は「私は固いボールが飛んできたら、怖いし痛いから嫌ですが、やわらかくてゆっくりのボールが来るなら大丈夫だと思う」と、自分の感想や思いをこめて返答することができた。これらのやりとりについて、体育科の教諭に相談をもちかけ、軽スポーツやリハビリテーションなどでも用いられる、パラシュート生地の大きなバルーン状のボールを紹介してもらえることになった。早速実行委員で試しに打ち合ってみた。5組の生徒も全員で試したが、ほぼ全員が積極的にバルーンに触りにいくことができた。2回目の実行委員会でこのことを5組の実行委員から報告したことで、双方が積極的に楽しむことができるという合意の上に内容を確定することができた。

【1年4組の生徒の感想文より 部分】

 5組交流会で、遊んだバレーボールがとても楽しかったです。5組の人は、とてもボールを打つのが上手でした。茶話会ではお菓子とジュースをいただいたり、坊主めくりをしてとても仲が深まったと思います。(5組の)最後の歌は、振り付け入りという高度なこともあり、すごく良かったです。短い時間だったけどたくさんの思い出のつまった時間だと思います。

 このように、当事者の意見をしっかりと発言させる配慮をし、それを真剣に聞き取り、  双方が工夫をし歩み寄ることで、楽しくて達成感や充実感のある取組ができたという実 感を生徒自身がもつことができたことは大きな成果であると捉えている。

6 今後の展望

(1)5組の生徒が取り組む「自分の障害理解」の基盤として、自信と自己肯定感をもつことができるようになる1つの大きな契機となった「通常の学級と特別支援学級との交流会」について継続しながら、「自分の障害理解学習」を進める。
(2)その評価については、感想文や取組の前後からは確認できたが、観点や方法について十分な論議ができなかった。次年度引き続き取り組むこととする。

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)

-- 登録:平成21年以前 --