共生社会を目指した障害者理解の推進(特別支援教育研究協力校)中間報告書

都道府県名 大阪府
指定校名 茨木市立白川小学校

1 研究のねらい

国民誰もが相互に人格と個性を尊重し合う「共生社会」の実現に向けて

  • 小学校からの障がい者についての理解を深める。
  • 一人一人の実態把握に基づいた個別の指導の研究を進める。
  • 障がい者理解を目指しての保護者、地域への啓発活動を行う。

2 研究内容

  • 地域や学校の実態を踏まえて、本校の特別支援学級との交流及び共同学習を推進するとともに、障がい者理解のための学習を道徳、特別活動、総合的な学習の時間等において保育所、幼稚園、小学校、中学校との交流活動も含め実施する。
  • 教職員の特別支援教育の研修はもちろん、すべての保護者に対して講演会の実施や文書(学校だより)の配布を通して、障がい者理解と特別支援教育への理解のための啓発活動を行う。
  • 特別支援教育推進委員会、校内委員会を中心に校内研修会や特別支援教育対象児童の実態把握に努め、児童・保護者の支援と指導を推進する。

3 評価の方法

  • 授業や日常生活を通して、個別の指導についての研究と実践が進んだか。
  • 障がい児(者)との交流を通じて、理解が進んだか。
  • 講演会や文書(学校だより)を通して保護者、地域への啓発活動ができたか。

4 研究経過

研究経過においては、研究のねらい・研究内容とも計画通り推進できている。
以下に研究経過等を報告する。

(1) 小学校からの障がい者についての理解を深める。

1 人権教育年間指導計画において障がい者理解教育をより充実させるための学習(授業・体験・交流)に取り組んだ。例えば、1年生は、「もりのシランプリ」2年生は、「さっちゃんのまほうのて」、3年生は、「Aさんと共に学んで 見えてきたこと」など学年の実態や学級にいる障がいのある児童に焦点を当てて、授業を行った。

【1年生の感想】

  • シランプリを助けてあげたいです。
  • 目がわるく、耳もきこえないからとてもかわいそうです。
  • できることならなんでもやってあげたいです。
  • シランプリが初めて友達を見つけた時、とてもよかったねって思いました。
  • 友達になっていっしょに遊んであげたいです。

登場人物に寄り添いながら、様子や気持ちが理解できた。

【3年生の実践】

「Aさん(特別支援学級在籍)と共に学んで 見えてきたこと」
  • 1年生の時、家庭と協力して作った生い立ちを再度作り直し学習することで、Aさんの状況を理解する。
  • 事前に特別支援学級について、アンケートをとり、特別支援学級の担任が授業をした。
  • Aさんの思いを話し合い、自分たちにできることを考えた。
  • 「Aさんのことを紙芝居にしてみんなに知ってもらう。」ことになり、
    台本作り、役割分担、練習をした。そして、1、2年生に伝えに行った。

Aさんのことを理解し、紙芝居を通して1、2年生にも分かってもらうことができた

2 体験学習では、アイマスク体験では、目の不自由な人の生活や気持ちに寄り添うことができた。敬老会でのカレンダー作りのプレゼントやお手紙、運動会への招待状(高齢者)を出したりした。また、児童会行事「白川子どもまつり」では昔遊びを教えてくださったり、地域の方を招待したりした。

3 交流活動では、本校の特別支援学級との交流を始め、新1年生の体験入学を行い、1年生と手作りおもちゃで遊んだり、5年生が学校案内を行ったりした。中学校との交流は、特別支援学級交流会を始め、クラブ体験や音楽交流会・授業体験・出前授業など連携を深めることができた。

【5年生の実践】

「障がいのある人についての学習」
  • 特別支援学級について、より深く理解する。
    特別支援学級の担任や介助の先生から話を聞いた。
    5年の特別支援学級で学習するAさんと特別支援学級について話を聞いた。
  • 児童の実態に合わせた教材での学習  物語文「歯型」 ぼくの姉より
目標

○特別支援学校に通っている『あいつ』をからかい、痛めつけた『ぼく』とその仲間の行動を考える。
○日頃の自分たちの行動(からかい、ふざけなど)をふりかえり、さらに障がい者に対する思いを再度考えてみる。

感想

○自分も障がいのある人を差別している部分があったので、そんな自分にむしゃくしゃした。
○3人は、都合のいいことばかり言っていて、本当に腹が立った。やり方が本当にひどい。

一人一人が、特別支援学級や障がいについて理解が深められた。

(2) 一人一人の実態把握に基づいた個別の指導の研究

  1. 一人一人の実態を把握するために、担任による「気づきシート」での調査を行った。
  2. 講師による支援体制の在り方、気づきシートに基づく個別指導計画作成上の留意点、授業と日頃の活動を通しての支援の方法などの研修を実施した。また、障がい者理解のための研修会を、年間を通して行った。

(3) 障がい者理解を目指しての保護者、地域への啓発活動を行う。

  1. 「白川っ子だより」を発行した。「特別支援教育とは」「発達障がいって」などをテーマとして、保護者に配布した。また、前年度に引き続きPTA講演会「学校生活・学習・友達関係でつまずいている子への理解と支援—発達でのつまずきを中心に—」を行った。
  2. 保護者、地域への毎学期情報発信をする中で、学校や茨木市教育研究所・病院等への相談も増えてきた。教育研究所、病院の検査結果から保護者、全教職員と支援の方法について共通理解を行い、教育研究所・病院との連携を深めている。

5 成果と課題

成果

(1) 障がい者理解を深めるための授業作りは学力保障部会、人間関係作りは人権部会、というように、今ある部会とのリンクで、特別支援教育の推進を図ることができた。
(2) 一人一人の実態把握については、 気づきシート、個別の指導計画は、作成し始めてから2年目になった。引き続いて作成し、校内で共通理解することができた。
(3) 個別の支援について、保護者の同意を経て、教育研究所と連携し、実際の支援に結び付けることができた。
(4) 地域、保護者への啓発として、「白川っ子だより」の発行や、講演会を開いたことで、相談件数も増え、教育研究所につなぐことができた。

課題

(1) 特別支援の視点を授業展開にどのように生かすか研究を進めたい。
(2) 教室の環境作りや、視覚支援など、各学年の取組を、系統付けて全体のものにしたい。
(3) 特別支援学級の児童はもちろん、通常の学級の児童も互いの違いを認め合って育つ学級集団作りを引き続き、目指していきたい。
(4) 学校の気づきから、保護者との話し合いをスムーズにするために、担任だけでなく、校内委員会を活用していきたい。
(5) 個別の指導計画に基づいた実践結果を検証し、それを学年でまとめて持ち上がり、個人情報を守りながらも、参考にしやすいようにしたい。
(6) 早目の気づき、早目からの支援のため、1〜2年生のうちに丁寧に子どもを観察する方法を研究していきたい。
(7) 学校での特別支援教育の取組と啓発活動を通して、保護者・地域の方々の理解を一層深めたい。

6 今後の展望

今年度も、国民誰もが相互に人格と個性を尊重し合う「共生社会」の実現に向けて、研究を推進していく。

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)

-- 登録:平成21年以前 --