学校教育法施行規則の一部を改正する省令等の公布について(通知)

28 文科初第1038号
平成28年12月9日

 各都道府県教育委員会教育長
 各指定都市教育委員会教育長
 各都道府県知事
 高等学校及び中等教育学校を設置する学校設置会社
を所轄する構造改革特別区域法第12条第1項の       殿
 認定を受けた各地方公共団体の長
 附属高等学校を置く各国立大学法人学長
 附属中等教育学校を置く各国立大学法人学長
附属特別支援学校高等部を置く各国立大学法人学長

文部科学省初等中等教育局長
藤原  誠

学校教育法施行規則の一部を改正する省令等の公布について(通知)

 このたび、「学校教育法施行規則の一部を改正する省令」(平成28年文部科学省令第34号)【別添1】及び「学校教育法施行規則第百四十条の規定による特別の教育課程について定める件の一部を改正する告示」(平成28年文部科学省告示第176号)【別添2】が、平成28年12月9日に公布され、平成30年4月1日から施行することとされました。
  改正の趣旨、概要及び留意事項については、下記のとおりですので、事務処理上遺漏のないよう願います。
  各都道府県教育委員会におかれては、指定都市を除く域内の市町村教育委員会及び所管の学校に対して、各指定都市教育委員会におかれては、所管の学校に対して、各都道府県及び構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた地方公共団体におかれては、所轄の学校及び学校法人等に対して、各国立大学法人におかれては、附属学校に対して、このことを十分周知されるよう願います。

                                

   記

1 改正の趣旨



 今回の制度改正は、平成28年3月の高等学校における特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議報告「高等学校における通級による指導の制度化及び充実方策について(報告)」(平成28年3月 高等学校における特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議)(以下「協力者会議報告」という。)を踏まえ、現在、小学校、中学校、義務教育学校及び中等教育学校の前期課程において実施されている、いわゆる「通級による指導」(大部分の授業を通常の学級で受けながら、一部の授業について障害に応じた特別の指導を特別な場で受ける指導形態)を、高等学校及び中等教育学校の後期課程においても実施できるようにするものである。
  具体的には、高等学校又は中等教育学校の後期課程に在籍する生徒のうち、障害に応じた特別の指導を行う必要があるものを教育する場合には、特別の教育課程によることができることとするとともに、その場合には、障害に応じた特別の指導を高等学校又は中等教育学校の後期課程の教育課程に加え、又はその一部(必履修教科・科目等を除く。)に替えることができることとし、また、障害に応じた特別の指導に係る修得単位数を、年間7単位を超えない範囲で全課程の修了を認めるに必要な単位数に加えることができることとする。
あわせて、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校又は中等教育学校における障害に応じた特別の指導の内容について、各教科の内容を取り扱う場合であっても、障害による学習上又は生活上の困難を改善し、又は克服することを目的とする指導として行うものであるとの趣旨を明確化するため、改正を行うものである。


2 改正の概要

第1 高等学校における通級による指導の制度化



 1 学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号。以下「規則」という。)の一部改正
  (1)高等学校又は中等教育学校の後期課程において、言語障害者、自閉症者、情緒障害者、弱視者、難聴者、学習障害者、注意欠陥多動性障害者又はその他障害のある生徒のうち、当該障害に応じた特別の指導を行う必要があるものを教育する場合には、文部科学大臣が別に定めるところにより、規則第83条  及び第84条(第108条第2項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、特別の教育課程によることができること。(規則第140条関係)

  (2)規則第140条の規定により特別の教育課程による場合においては、校長は、生徒が、当該高等学校又は中等教育学校の設置者の定めるところにより他の高等学校、中等教育学校の後期課程又は特別支援学校の高等部において受けた授業を、当該高等学校又は中等教育学校の後期課程において受けた当該特別の教育課程に係る授業とみなすことができること。(いわゆる「他校通級」)(規則第141条関係)


2 学校教育法施行規則第140条の規定による特別の教育課程について定める件(平成5年文部省告示第7号。以下「告示」という。)の一部改正
  (1)高等学校又は中等教育学校の後期課程において、上記1の(1)に該当する生徒に対し、規則第140条の規定による特別の教育課程を編成するに当たっては、当該生徒の障害に応じた特別の指導を、高等学校又は中等教育学校の後期課程の教育課程に加え、又はその一部に替えることができるものとすること。
ただし、障害に応じた特別の指導を、高等学校学習指導要領(平成21年文部科学省告示第34号)第1章第3款の1に規定する必履修教科・科目及び総合的な学習の時間、同款の2に規定する専門学科においてすべての生徒に履修させる専門教科・科目、同款の3に規定する総合学科における「産業社会と人間」並びに同章第4款の4、5及び6並びに同章第7款の5の規定により行う特別活動に替えることはできないものとすること。(本文関係)
       
  (2)高等学校又は中等教育学校の後期課程における障害に応じた特別の指導に係る単位を修得したときは、年間7単位を超えない範囲で当該修得した単位数を当該生徒の在学する高等学校又は中等教育学校が定めた全課程の修了を認めるに必要な単位数のうちに加えることができるものとすること。(3関係)



第2 障害に応じた特別の指導の内容の趣旨の明確化



1 告示の一部改正
  小学校、中学校、義務教育学校、高等学校又は中等教育学校における障害に応じた特別の指導は、障害による学習上又は生活上の困難を改善し、又は克服することを目的とする指導とし、特に必要があるときは、障害の状態に応じて各教科の内容を取り扱いながら行うことができるものとすること。(1関係)


3 留意事項



第1 高等学校における通級による指導の制度化関係

  1 単位認定・学習評価等について
   (1)改正後の規則第140条の規定により特別の教育課程を編成し、障害による学習上又は生活上の困難を改善し、又は克服することを目的とする指導(特別支援学校における自立活動に相当する指導)を行う場合には、特別支援学校高等部学習指導要領を参考として実施すること。
  また、現在、高等学校学習指導要領の改訂について中央教育審議会で審議がなされているが、「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめについて(報告)」(平成28年8月26日教育課程部会)別紙6における記述をふまえ、高等学校学習指導要領の改訂(平成29年度末を予定)等においては、以下について記述を盛り込む予定であるため、この方向性を踏まえて対応いただきたいこと。
  ・ 高等学校における通級による指導の単位認定の在り方については、生徒が高等学校の定める「個別の指導計画」に従って通級による指導を履修し、その成果が個別に設定された目標からみて満足できると認められる場合には、当該高等学校の単位を修得したことを認定しなければならないものとすること。
  ・ 生徒が通級による指導を2以上の年次にわたって履修したときは、各年次ごとに当該特別の指導について履修した単位を修得したことを認定とすることを原則とするが、年度途中から開始される場合など、特定の年度における授業時数が、1単位として計算する標準の単位時間(35単位時間)に満たなくとも、次年度以降に通級による指導の時間を設定し、2以上の年次にわたる授業時数を合算して単位の認定を行うことも可能とすること。また、単位の修得の認定を学期の区分ごとに行うことも可能とすること。
 
(2)通級による指導を受ける生徒に係る週当たりの授業時数については、当該生徒の障害の状態等を十分考慮し、負担過多とならないよう配慮すること。
 
(3)指導要録の記載に関しては、指導要録の様式1(学籍に関する記録)裏面の「各教科・科目等の修得単位数の記録」の総合的な学習の時間の次に自立活動の欄を設けて修得単位数の計を記載するとともに、様式2(指導に関する記録)の「総合所見及び指導上参考となる諸事項」の欄に、通級による指導を受けた学校名、通級による指導の授業時数及び指導期間、指導の内容や結果等を記載すること。なお、他の学校において通級による指導を受けている場合には、当該学校からの通知に基づき記載すること。     
  
   2 実施形態について
  (1)通級による指導の実施形態としては、(1)生徒が在学する学校において指導を受ける「自校通級」、(2)他の学校に週に何単位時間か定期的に通級し、指導を受ける「他校通級」、(3)通級による指導の担当教員が該当する生徒がいる学校に赴き、又は複数の学校を巡回して指導を行う「巡回指導」が考えられる。実施に当たっては、対象となる生徒の人数と指導の教育的効果との関係性、生徒や保護者にとっての心理的な抵抗感・通学の負担・学校との相談の利便性、通級による指導の担当教員と通常の授業の担任教員との連絡調整の利便性等を総合的に勘案し、各学校や地域の実態を踏まえて効果的な形態を選択すること。
 
   (2)他校通級の場合の取扱いについては、通級による指導を受ける生徒が在学する学校の設置者が適切に定め、当該定めに従って実施すること。
 
   (3)他校通級の生徒を受け入れる学校にあっては、当該生徒を自校の生徒と同様に責任をもって指導するとともに、通級による指導の記録を作成し、当該生徒の氏名、在学している学校名、通級による指導を実施した授業時数及び指導期間、指導の内容等を記載し、適正に管理すること。また、当該生徒が在学する学校に対して、当該記録の写しを通知すること。
  さらに、当該生徒が在学する学校において単位の認定を行うに当たっては、当該記録の内容や通級による指導の担当教員から得た情報、通常の学級における当該生徒の変化等を総合的に勘案し、個別に設定された目標の達成状況について評価すること。
 
   (4)他の設置者が設置する学校において他校通級を行う場合には、生徒が在学する学校の設置者は、当該生徒の教育について、あらかじめ他校通級を受け入れる学校の設置者と十分に協議を行うこと。
 
   3 担当する教員について
  (1)通級による指導を担当する教員は、高等学校教諭免許状を有する者である必要があり、加えて、特別支援教育に関する知識を有し、障害による学習上又は生活上の困難を改善し、又は克服することを目的とする指導に専門性や経験を有する教員であることが必要であるが、特定の教科の免許状を保有している必要はないこと。ただし、各教科の内容を取り扱いながら障害に応じた特別の指導を行う場合には、当該教科の免許状を有する教員も参画して、個別の指導計画の作成や指導を行うことが望ましいこと。
 
(2)通級による指導の実施に当たっては、その担当教員が、特別支援教育コーディネーター等と連絡を取りつつ、生徒の在籍学級(他校通級の場合にあっては、在籍している学校の在籍学級)の担任教員との間で定期的な情報交換を行ったり、助言を行ったりするなど、両者の連携協力が図られるよう十分に配慮すること。
 
(3)教員が、本務となる学校以外の学校において通級による指導を行う場合には、任命権を有する教育委員会が、兼務発令や非常勤講師の任命等により、当該教員の身分の取扱いを明確にすること。
 
(4)通級による指導の担当教員の専門性向上のため、既に多くの教育委員会において実施されている高等学校段階の特別支援教育推進のための研修について、高等学校における通級による指導の制度化を踏まえた研修対象者の拡充や研修内容の充実に努めること。また、高等学校と特別支援学校の間で教員の人事交流を計画的に進めるなどの取組も有効であること。
 
   4 実施に当たっての手続き等について
  (1)通級による指導の対象となる生徒の判断手続等については、協力者会議報告に示された、(1)学校説明会における説明、(2)生徒に関する情報の収集・行動場面の観察、(3)生徒と保護者に対するガイダンス、(4)校内委員会等における検討、(5)教育委員会による支援、(6)生徒や保護者との合意形成といったプロセス等を参考として、各学校や地域の実態を踏まえて実施すること。
     
(2)通級による指導の実施に当たっては、教育支援委員会等の意見も参考に、個々の障害の状態及び教育的ニーズ等に応じて適切に行うこと。また、生徒の障害の状態及び教育的ニーズ等の変化等に応じて、柔軟に教育措置の変更を行うことができるように配慮すること。なお、通級による指導の対象とすることが適当な生徒の判断に当たっての留意事項等については、「障害のある児童生徒等に対する早期からの一貫した支援について」(平成25年10月4日付文部科学省初等中等教育局長通知)【別添3】を参照されたい。
 
   5 個別の教育支援計画及び個別の指導計画の作成・引継ぎ等について
  (1)対象生徒に対する支援内容に係る中学校からの引継ぎや情報提供のための仕組み作りが必要であることから、市区町村教育委員会においては、保護者の同意を事前に得るなど個人情報の適切な取扱いに留意しつつ、都道府県教育委員会とも連携しながら、通級による指導の対象となる生徒の中学校等在籍時における個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成や引継ぎを促進するなどの体制の構築に努めること。なお、学習指導要領の改訂についての中央教育審議会における審議においては、通級による指導を受ける児童生徒及び特別支援学級に在籍する児童生徒については、一人一人の教育的ニーズに応じた指導や支援が組織的・継続的に行われるよう、「個別の教育支援計画」や「個別の指導計画」を全員作成する方向で議論されていることを踏まえること。
 
   (1)高等学校においては、保護者の同意を事前に得るなど個人情報の適切な取扱いに留意しつつ、個別の教育支援計画や個別の指導計画を就職先・進学先に引き継ぎ、支援の継続性の確保に努めること。
 
   6 その他
  (1)高等学校においては、特別支援教育コーディネーターの指名や校内委員会の設置をはじめ、学校全体として特別支援教育を推進するための校内体制の一層の整備に努めること。また、通級による指導を受ける生徒の心理的な抵抗感を可能な限り払拭するよう、生徒一人一人が多様な教育的ニーズを有していることをお互いに理解し、個々の取組を認め合えるような学校・学級経営に努めること。
 
   (2)通級による指導を行うに当たっては、中学校等との連携を図ることが重要であり、通級による指導を受ける生徒の卒業した中学校等や近隣の中学校等との間で、通級による指導をはじめとした特別支援教育に関する情報交換や研修会の機会を設けることも有効であること。
 
   (3)都道府県教育委員会(市区町村立の高等学校がある地域においては、当該市区町村の教育委員会を含む。)においては、専門家チームや教育支援委員会による助言、巡回相談の実施、障害者就業・生活支援センター、NPO等の関係機関とのネットワークの活用、学校教育法第74条に基づく特別支援学校のセンター的機能の強化等により、高等学校への支援体制の強化に努めること。
 
  (4)通級による指導はあくまでも個別に設定された時間で行う授業であり、障害のある生徒の学びの充実のためには、他の全ての授業においても指導方法の工夫・改善が重要となること。すなわち、障害のある生徒にとって分かりやすい授業は、障害のない生徒にも分かりやすい授業であることを全ての教員が理解し、指導力の向上に努めること。


第2 告示1ただし書きの改正の趣旨について
  改正前のただし書きは、「障害による学習上又は生活上の困難を改善又は克服する」という通級による指導の目的を前提としつつ、特に必要があるときは、障害の状態に応じて各教科の内容を取り扱いながら指導を行うことも可能であることを明示する趣旨であるが、単に各教科・科目の学習の遅れを取り戻すための指導など、通級による指導とは異なる目的で指導を行うことができると解釈されることのないよう、規定を改め、その趣旨を明確化したものである。
  したがって、当該改正部分は、高等学校のみならず、小学校、中学校、義務教育学校及び中等教育学校の前期課程においても十分に留意することが必要であり、各設置者においては、各学校が通級による指導を教科等の内容を取扱いながら指導を行う場合にも、障害による学習上又は生活上の困難を改善し、又は克服する目的で行われるよう周知及び指導を徹底すること。


【本件連絡先】                          

文部科学省 初等中等教育局  
特別支援教育課 企画調査係  
    電話  03-5253-4111(内線3193)

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

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(初等中等教育局特別支援教育課)