将来の超高速計算機システムの開発について
ペタフロップス超級の超高速計算機、特に、ベクトル型、スカラ型計算機のような汎用性のある超高速計算機の開発には、CPUの高速化、低消費電力化をはじめとするブレークスルーを実現するハードウェア要素技術の研究開発が必要不可欠である。
既存技術の延長では物理的な「高速化の壁」につきあたることから、これを突破するための喫緊の課題として、CPUの高速化、CPU−メモリ間伝送速度の高速化、ノード間伝送速度の高速化、低消費電力化・冷却技術の向上等のハードウェア要素技術について、ブレークスルーを実現するための研究開発が必要である。
一方、分子動力学、格子ガス法※等、特定の分野/計算手法に特化した専用計算機の開発が半導体集積度や発熱の問題を緩和する可能性があるため、有望ではある。但し、他方で専用計算機に適用できないプログラムも多く存在することから、汎用性のある計算機と専用計算機の組み合わせも検討すべきである。
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格子ガス法 |
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空間中に規則正しく張り巡らされた格子上だけを移動できる仮想的な粒子を多数想定し、時間ステップごとに「格子点間を並進する粒子」及び「格子点において粒子同士の衝突により向きを変える粒子」の集合として流体をとらえ、その平均的な動きから“流れ”の状況を導く数値計算法のひとつ |
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また、計算機アーキテクチャに関しては、ターゲットとするアプリケーションを見極めた上で、これに適したアーキテクチャを検討する必要がある。ベクトル型計算機、スカラ型計算機、専用計算機等は、それぞれ得意とする計算分野を持ち、いずれのアーキテクチャも超高性能化が求められている。
更に、マルチスケール・マルチフィジックスな系全体の最適シミュレーションを実現するために、これら異なる複数の計算機アーキテクチャ(ベクトル型計算機、スカラ型計算機、専用計算機 等)を複合したシステムの開発も検討すべきである。
以上のような超高速計算機のハードウェア開発だけでなく、これまでのスーパーコンピュータシステム構築の経験から指摘されたものとして、超高速計算機を効率的に利用・運用するためのソフトウェア開発(OS,コンパイラ、ライブラリ、開発環境、並列アルゴリズム等)、システム開発(システム設計、プログラミングモデル)、信頼性、セキュリティ、性能評価法(ベンチマーク)なども課題として挙げられた。
加えて、世界最高水準の仮想研究開発環境の中のデータベース化された実験データと超高速計算機の膨大な計算結果データを、知的資産として容易に再利用できる仮想研究環境を構築することで、革新的な共同研究成果に発展させる必要である。更に、超高速計算機利用技術を持った人材(並列プログラム開発者、次世代HPCシステムに精通した開発支援者など)を育成し、利用技術もデータベースとして管理し、データマイニング※によって得られた新たな知見を蓄積するような利用技術の展開も必須である。
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データマイニング |
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種々の統計解析手法を用いて大量のデータを分析し、隠れた関係性や意味を見つけ出す知識発見の手法の総称 |
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