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大学設置基準について議論する際には「大学とは何か」という問題に常に直面する。中央教育審議会答申「我が国の高等教育の将来像」をまとめる際にも同様の議論があった。今こそ「大学とは何か」について議論する場が必要なのではないか。
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そのとおりだ。
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時代の要請に柔軟に対応できる教育研究体制を作るため,大学のマネジメントがそれに寄与するようなシナリオが必要ではないか。大学運営に携わる者のモラルについては,「大学とは何か」を論じる際に「これまでの大学像を堅持する」という考え方とは趣を異にすると考える。「モラル」と「大学像」については,分けて考えるべきではないか。大学運営に携わる者のモラルは近年低下しているのか。それともこれまでも問題になっていたのか。
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昨年11月の大学設置・学校法人審議会長のコメントの中でいう「モラル」とは虚偽申請等を念頭に置いているのではないか。モラルが低下しているかどうかについては,様々議論があるが,教育者・研究者として持っていなければならない価値観や信念といったものが揺らいでいるような気がする。
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認証評価制度を導入する際の大きな流れとしては,事前チェックである設置認可よりも事後チェックである認証評価に重点を置くということであった。認証評価については,評価機関が複数存在し,ある機関では大学として認めるが,他の機関では認めないということが起こり得る。そうすると,「大学とは何か」ということを一義的に決めてしまうのは問題があるのではないか。
教員の問題については,いわゆる「フルタイム教員」が専任教員であることは明確であり,そうではない者については,専任教員ではないと取り扱うべきではないか。「フルタイム」とは何かを定義すれば,この問題は解決するのではないか。
「大学とは何か」という問題は,結局は評価機関の多様性の中に求められている問題ではないのか。
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「大学とは何か」という問題は,単一のモデルを作り出そうとすることではない。大学とは大学設置基準第12条をはじめとしていくつかの法令に定められているように,多様な存在ではある。よって,大学の可能性を探る中で,最低限の共通認識を持つことが必要だと考える。大学の目的は社会や時代の要請に応じて刻々と変化するものであるが,どの部分は変化に対応し,どの部分は変化してはいけないということも合わせて議論すべきではないか。
専任教員の問題については,フルタイム教員を専任教員と定義する考え方に賛成である。今回の大学設置基準の改正では,専任教員について十分には規定されていない。改正後の大学設置基準第12条の規定は原則論の定義に過ぎない。「専ら」という表現では不十分である。例外規定は確かにあるが,教員1人1人の問題と大学全体の問題ではとらえ方が違う。例外規定が適用される教員が多数とならないよう留意しなければならない。規定の運用に当たっては一定のルールを作る必要があるのではないか。大学設置基準は大学の最低基準を定めたものであり,専任教員数については,別表1では学部の種類に応じた専任教員数が,別表2では大学全体の収容定員に応じた専任教員数が定められている。例えば,別表1で定める専任教員については,例外なく全員をフルタイム教員とするような運用を行っても良いのではないか。
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「大学とは何か」について議論するのであれば,大学だけではなく,初等中等教育機関を含めて全体を見通した議論をしなければならない。
現在,昔の大学の概念は崩れつつある。設置基準については,基準を緩和しすぎた面がある。今後,校地・校舎の自己所有要件も緩和される方向にある。学部,大学院を通じた大学教育全体の在り方についても議論すべきではないか。
設置認可は,これまで性善説に基づき行われてきた。しかし,虚偽申請等が行われる実態を見るにつけ,性悪説に立つ必要もあるのではないか。基準の緩和により,学校法人分科会では,認可することに疑問を感じるような案件についても,準則主義化により基準に適合しているため認可せざるを得ない案件も出てきている。
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設置認可の仕組みは,質保証のための仕組みとして,日本の文化に合ったものであると考える。今後もこの仕組みを活用することは重要なことと考える。
しかしながら,大学設置基準を時代の要請に見合った形に改正していくことも検討しなければならない。先ほどからモラルの低下について議論があったが,そのことを見通した形での改正が必要ではないか。
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設置認可という事前チェックが必要であるということに異論はない。また,設置基準上,明確になっていない規定等については,明確化が必要であると考える。
一方,事後の評価については,日本に評価の文化が根付くまで時間がかかり,当面は試行錯誤の状況が続くと予測される。事前チェックを緩和することばかりを考えるのではなく,事後チェックとの連携について考えるべきである。
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問題事例が挙がっているのは,職業教育に関する分野である。この分野は専門学校との境界も曖昧であり,また,専門職大学院制度が創設されたことで,より一層棲み分けが複雑になっている。従来のように,大綱化された設置基準のみで審査をするのは困難になっているのではないか。
大学院については,特にその状況が顕著である。現在,法科大学院以外は分野別の評価の仕組みがない。大学院の評価をどのように行うのかについても検討する必要がある。
学部段階においても,職業教育については,特別な評価の仕組みが必要ではないか。
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大学を作りたいと考えるのには,教育と別の要因が存在するのではないか。教育を産業と捉えているのではないか。
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今後,当面は質保証の問題を中心に議論していきたい。「大学とは何か」という問題は避けては通れないのではないか。 |