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資料5−1

年次計画履行状況調査の結果等について(平成17年度)

1. 調査の目的
   年次計画履行状況調査(以下「アフターケア」という。)は、文部科学省告示(注)に基づき、大学等の設置認可後、当該認可時における留意事項、授業科目の開設状況、教員組織の整備状況その他の設置計画の履行状況について、各大学からの報告を求め、書類、面接又は実地により調査を行い、各大学の教育水準の維持・向上及びその主体的な改善・充実に資することを目的として実施するものである。
[大学]
文部科学省告示第44号(抄)
 大学設置基準(昭和49年文部省令第28号)第46条の規定に基づき、新たに大学等を設置し、又は薬学を履修する課程の修業年限を変更する場合の教員組織、校舎等の施設及び設備の段階的な整備について次のように定める。
平成15年3月31日
(1・2略)
3  文部科学大臣は、大学等の設置を認可した後、当該認可時における留意事項、授業科目の開設状況、教員組織の整備状況その他の年次計画の履行状況について報告を求め、必要に応じ、書類、面接又は実地により調査することができるものとする。

  [短期大学]
文部科学省告示第52号(平成15年3月31日)

[大学院]
文部科学省告示第50号(平成15年3月31日)

2. 実施体制
   大学設置・学校法人審議会大学設置分科会では、大学の質保証における「事前・事後の評価の適切な役割分担と協調」を確保する観点から、アフターケア等の取組の改善充実を図るため、運営委員会の下に「年次計画履行状況等調査委員会」(以下、「調査委員会」という。)を設置した[別紙1]。
 調査委員会の調査審議事項は、1アフターケアの実施、2アフターケアの改善方策、3その他認可及び届出後の質保証に係る事項となっており、今般、平成17年度の調査結果と今後の調査の在り方について以下のとおりとりまとめた。なお、法科大学院については、昨年度に引き続き、法科大学院特別審査会においてアフターケアを実施することとし、同審査会に付託する手続をとった。
 アフターケアの実施方法は、書面調査、実地調査、面接調査のいずれか又は併用となっている。まず、書面調査は、認可後から年次計画が完成する年度までの間の大学(582件)全てに対して報告を求めて実施した。書面調査では、事務局において定員超過状況を把握するとともに、認可時の計画からの変更の度合いを確認した。
 実地調査は、認可時に留意事項を付したもの等のうち、昨年度の設置審査やアフターケアあるいは本年度の書面調査の結果として、当該大学を訪問して調査する必要があると判断されたもの等を対象に行った(30件)。この中には、完成年度を迎える専門職大学院(15件)、構造改革特区制度に基づく学校設置会社の設置する大学(3件)、科目開設について認可時の計画から変更が目立つ大学(5件)が含まれている。
 面接調査は、大学関係者を招致して聴取するものである。書面調査の結果として、1特段の問題は無いが、完成年度に達する大学等(17件)、2教員配置について認可時の計画から変更が目立つ大学(14件)を対象に実施した。

3. 平成17年度調査結果の概要
   全体としては、科目開設や教員配置、設置計画の確実な履行が図られており、変更がある場合も、相応の合理的な理由や止むを得ない事情があったものと認められる。ただし、ごく一部であるが、当初の見積もりの甘さや、設置計画を履行する責務への認識不足などを背景に、大幅な変更がなされていたり、あるいは、予定していたりする事例が見られた。
 各大学においては、認可された設置計画が、「社会に対する約束」(平成17年1月中央教育審議会答申「我が国の高等教育の将来像」)であることを認識し、適切な対応をとるように改めてお願いしたい。
 今回のアフターケアの結果として、各大学に付した留意事項は別紙2のとおりである。このほか、他学科等の定員超過により、相当数の設置者に対し、その是正を求める留意事項を付した(70法人)。留意事項の内容は多岐にわたっているが、注意を要するものとしては、例えば次のようなものがある。
 教育課程の変更を行う場合は、申請書類に記載された設置計画をもって認可されていることを踏まえ、当該設置計画の確実な履行を前提として行うこと。
 授業科目の未開講等が多数あるので、当初の設置計画の履行に支障が生じないよう授業科目を開講すること。
 到達目標を示し、体系的な履修が可能となるよう適切に対応すること。
 大学院設置基準に照らし、専任教員数に関する要件を充たすよう、研究指導教員1名を早急に補充すること。
 専任教員の変更が多数あるので、当初の設置計画の履行に支障が生じないよう専任教員を配置すること。
 新学科へ教員を異動させたことに伴い、教育水準の確保に支障が生じないようにすること。
 学生による授業評価アンケートの活用も含め、自己点検・評価やファカルティ・ディベロップメント(教育内容及び方法の改善を図るための組織的な研修及び研究)の実効的な実施体制を整備すること。
 退学・除籍処分など学生の身分に関する事項は教授会の審議事項であるので、法令に則った適正な手続を行うこと。
 産学連携活動の実施に当たっては、実務家教員の多くが企業に勤務する立場にあることを踏まえ、利益相反マネジメント体制の整備を図ること。
 完成年度を迎えた専門職大学院については、分野毎に各大学の特色を生かした創意工夫がなされている。今後、理論と実務を架橋した体系的な教育によって高度専門職業人の養成を図る制度の特質を踏まえ、教員間の共通理解を一層深めて、組織的に教育研究活動の充実に取り組んでいくことが望まれる。その際、ファカルティ・ディベロップメント(教育内容及び方法の改善を図るための組織的な研修及び研究)等を通じ、実務家教員と理論的な科目を担う教員との協働体制の確立を図りながら、質の高い教育の実施に引き続き努めることが重要である。
 株式会社立大学については、新たに発足したばかりでもあり、その取組の是非を拙速に評価することは適当ではない。しかし、一部では、法令・基準に照らして適切とは言いがたい状況も生じており、速やかな是正が求められる。専任教員が十分な役割・責任を果たす組織体制となっているか、疑義を招かないようにすることも必要である。これらの問題は、国際通用性が要請される大学制度(例えば教育研究活動の自律性、単位制など)に関する理解不足に起因する面があり、今後のアフターケア等を通じて、当該大学の特色を踏まえつつ、改善に向けた当事者の努力を促していく必要があると考える。
 なお、今回のアフターケアの対象ではないが、高知大学が過去に提出したアフターケアの報告書中に虚偽の記載があったことが昨年12月に表面化した。特定の教員の行為によるものであるが、このような事態は極めて遺憾であり、当該大学はもとより、各大学において同様の事態を再び生じさせないよう強く求めたい。

4. 今後の調査の在り方
   昨年11月、大学設置・学校法人審議会会長が、答申に際してコメントを発表し、文部科学省に対する要請の一環として、アフターケアの充実を盛り込んだ。調査委員会としても、本年度のアフターケアの実務を通じ、今後、その一層の充実を図ることが、大学の質保証にとって極めて重要な課題であることを改めて確認した。
 今後のアフターケアの枠組み、具体的な調査方法などについては、調査委員会において継続的に改善策を検討していく必要があるが、当面、次年度に向けた考え方を以下のとおり整理した。

(1) 関係規定の整備
   文部科学省では、平成18年度からの適用を目指して、認可申請・届出に係る手続等に関する制度改正を進めているが、その中では、アフターケアに関する規定の明確化も課題の一つとなっている。本審議会としては、法令等の適切な形式により、別紙3のような内容を明確化することが適当であると考える。
 なお、平成15年度からは認可事項が大幅に縮減され、設置届出制が新たに導入され、普及しつつある(別紙4)。「事前規制から事後チェックへ」という考え方に立って、必要に応じ、届出された設置計画に留意事項を付したり、その履行状況を確認することも重要であり、そうした趣旨も併せて明確化することが望まれる。学年進行中に頻繁に改組等が行われるような事案は、学生保護の観点から特に注意を要すると考えられる。
 また、前述の制度改正は、認可申請書等に虚偽等があった場合、一定期間認可を行わない取扱いとする方向で検討が進められているが、アフターケアは認可制度を実効あるものとする重要な役割を担っている。このため、仮に、アフターケアの報告文書や口頭説明の内容に虚偽があれば、認可申請書に虚偽があった場合に準じて、厳正に対応することが適当であると考える。

(2) 平成18年度の実施方針
   本年度と概ね同様に、設置審査やアフターケアの結果として留意事項を付された大学、完成年度を迎える新設大学や専門職大学院、株式会社立大学の中から、今後の調査委員会等での審議を踏まえ、実地調査が必要と認められる大学については、年度間を通じて計画的に調査を実施することとしている。
 書面調査については、報告書の様式の一部を改善した上で、引き続き当該校全てに対して実施する。その結果を踏まえ、大幅な計画変更など顕著な問題がある場合には、必要に応じて面接調査、更には実地調査を行うこととしている。
 なお、完成年度を経過した大学については、従前どおり、今回のアフターケアで留意事項が付されたところに対しては、当該留意事項の実施状況に関する報告を求めることとする。その上で、来年度の本調査委員会で審議の上、実地調査等の要否を含め、適切な対応の在り方を検討することとしたい。

(3) 是正措置等との関係
   アフターケアの実施目的は、冒頭で述べたとおり、設置計画の履行状況を調査するものであり、法令違反等を摘発することではない。しかし、調査の過程で、法令・基準への適合性に疑義がある事実が確認された場合、これを看過することはできない。
 法令違反状態の公私立大学等について、文部科学大臣は、学校教育法第15条等に基づき、改善勧告や変更命令などの是正措置を講ずることができることとなっており、また、そのために必要があれば、当該大学等に対して報告又は資料の提出を求めることが可能である。国立大学の場合は、国立大学法人法に基づいて所要の措置を講ずることとなる[別紙5]。
 今回のアフターケアでは、特に注意を要する4大学について、学校教育法第15条に基づく調査の可能性を示唆し、改善を促している。今後、文部科学省においては、「事前規制から事後チェックへ」という規制改革の趣旨をも踏まえ、重大な問題を把握したときには、速やかに適切な対応をとることを求めたい。


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