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資料9−2

大学院教育振興施策要綱

平成18年3月30日
文部科学省

第一  趣旨
   「知識基盤社会」において、大学とりわけ大学院が果たすべき役割は極めて大きく、学士課程における教育の充実に加え、大学院の人材養成機能を強化し、国際的に魅力ある大学院教育を構築していくことが急務である。このため、「新時代の大学院教育-国際的に魅力ある大学院教育の構築に向けて-」(中央教育審議会平成17年9月5日答申)を踏まえ、各国公私立大学における大学院教育の充実・強化を図る観点から、今後の大学院教育の改革の方向性及び早急に取り組むべき重点施策を明示し、体系的かつ集中的な施策展開を図ることを目的として、大学院教育振興施策要綱を策定する。

第二  実施期間
   平成18年度から平成22年度まで

第三  今後の大学院教育改革の方向性
   各大学院における教育の実質化の取組を支援し、学位の国際的な通用性、信頼性の向上を図るとともに、世界的な教育研究拠点の形成を進めることにより、国際的に魅力ある大学院教育の構築を図る。
 具体的には、次に掲げる改革の方向性に沿った施策を実施する。

大学院教育の実質化(教育の課程の組織的展開の強化)
国際的な通用性、信頼性(大学院教育の質)の確保
国際競争力のある卓越した教育研究拠点の形成

第四  具体的な取組施策
1  大学院教育の実質化(教育の課程の組織的展開の強化)
 
(1) 課程制大学院制度の趣旨に沿った教育の課程と研究指導の確立
 
 各課程・専攻ごとの人材養成目的の明確化と教育の実質化
   大学院においては、学部段階における教養教育とこれに十分裏打ちされた専門的素養の上に立ち、専門性の一層の向上を図るための、深い知的学識を涵養する教育を行うことが基本であり、各大学院が体系的なカリキュラムを提供し、組織的な教育展開を強化するため、各課程(修士課程、博士課程、専門職学位課程)、専攻ごとにそれぞれの人材養成目的を明らかにすることを各大学に求め、それに即した教育研究体制の構築や教育研究活動の実施を促進する。

各大学院が人材養成目的を明らかにすることについて、平成18年度までに大学院設置基準(昭和49年文部省令第28号)上関係規定を置く
教育の実質化に関する各大学院の意欲的かつ優れた取組を重点的に支援するとともに、事例集の発行等を通じ全国的な普及・展開を図る
修士課程、博士課程及び専門職学位課程(専門職大学院)のそれぞれの目的の一層の明確化を図るため、専門職大学院の実績も踏まえ、それぞれの相互関係や改善点について検討する

 教員組織体制の見直し等
   各課程の人材養成目的に即して、多様な形で、教育研究体制の構築や研究活動を実施できるよう条件整備を図る。また、関係する教員が、養成しようとする人材像についての認識を組織的に共有し、学生に修得させるべき知識・能力の具体化を図るとともに、社会の要請等に的確に対応した人材養成を行っているかどうかを互いに確認することを促進する。

新たな職として創設される「助教」について、「専任教員」に位置づけるとともに、教員組織については、各課程の人材養成目的に応じて、各大学が自由に設計できることを平成18年度までに大学設置基準(昭和31年文部省令第28号)上明確化する
課程の目的、教育内容・方法についての組織的な研修・研究(ファカルティ・ディベロップメント(FD))の実施について、平成18年度までに大学院設置基準上関係規定を置く
授業及び研究指導の内容や学修の成果及び学位論文に係る評価の基準等をあらかじめ明示することについて、平成18年度までに大学院設置基準上関係規定を置く
大学院を担当する教員を修士課程と博士課程の専攻それぞれ一つまでは研究指導教員として取り扱うことができることについて、平成18年度までに大学院設置基準上明確化する

 教育の課程の編成の柔軟化
   各課程の人材養成目的に応じた柔軟な教育の課程の編成と単位制度の実質化のための条件整備を図る。

平成18年度までに主専攻・副専攻制、ジョイントディグリーなどの複合的な履修取組に関する調査研究を実施し、その円滑な実施方策等について検討する
講義と実習など複数の授業の方法を組み合わせた授業科目が導入しやすくなるよう単位の計算方法について平成18年度までに大学院設置基準上明確化する
修士課程及び博士課程(前期)の修了要件について、各課程の目的に応じて、修士論文の審査又は特定課題の研究など一定の学修成果の審査を課すことを平成18年度までに大学院設置基準上明確化する

 円滑な博士の学位授与の促進
   厳格な成績評価と適切な研究指導により、標準修業年限内に学位を授与することのできる体制の整備等を促進し、課程制大学院制度の趣旨の徹底を図る。

各大学院における学位授与の円滑化に関する取組や学位授与状況を調査・公表する等により、学位授与の円滑化に関する積極的な取組を促す
成績評価基準等を明示し、当該基準に従って適切に課程の修了の認定を行うことについて、平成18年度までに大学院設置基準上関係規定を置く

(2) 学生に対する修学上の支援
   博士課程(後期)在学者等を対象として、TA(ティーチングアシスタント)・RA(リサーチアシスタント)をはじめとした経済的支援の強化を図る。また、多様な学修歴を持つ学生が互いに切磋琢磨しながら自らの能力を磨いていく環境を醸成するため、学生の流動性の拡大を図る。

特別研究員事業(フェローシップ)及びTA・RA等としても活用可能な競争的資金の充実を図る
各大学院における奨学金や授業料免除などの経済的支援制度の状況を調査・公表する等により、各大学院の経済的支援制度の充実を促す
大学院への進学を希望する学生等のニーズを踏まえつつ、独立行政法人日本学生支援機構における奨学金(予約採用)の決定時期の早期化を図る
多様な学修歴を有する学生に対する補完的な教育プログラムの策定状況を調査・公表する等により、各大学院の補完的な教育プログラムの積極的な提供を促す

(3) 若手教員等の教育研究環境の改善
   博士課程学生、ポスドク、助教等の若手教員等が安全で効果的に教育研究に専念できる教育研究環境の整備を進めるため、計画的な施設整備の充実を支援する。その際、若手教員等のスペースの確保等に向けた施設マネジメントの取組みを促す。
 また、博士課程学生、ポスドク、助教等の各段階に応じて体系的に支援を実施するともに、流動性の拡大を図る。

国立大学法人等の施設整備に当たっては、「第2次国立大学等施設緊急整備5か年計画」に基づき、重点的・計画的な整備を推進するとともに、若手研究者等に対するスペース確保等を促進するための施設マネジメントの取組状況を事業採択時の評価の一指標とする
私立大学については、若手教員等の教育研究環境の整備が積極的に進められるよう、研究施設・設備に対する支援の充実を図る
若手研究者に自立性と活躍の機会を与える仕組みを導入する大学等を支援する
科学研究費補助金による若手研究者向け研究費及び特別研究員事業の充実を図る
若手教員等に対するスペースの確保等、その自立性や流動性を高めるための取組を競争的な支援制度の審査・評価の一指標とする

(4) 産業界等と連携した人材養成機能の強化
   人材養成における産業界と大学院の協力関係を推進し、産業界等社会のニーズと大学院教育のマッチングを促進する。
 また、多様な学修歴を持つ社会人の大学院教育に対する期待にこたえるため、大学院教育へのアクセスの拡大を一層推進する。

産学協同による教育プログラムの開発や各大学の単位認定を前提とした長期間の実践的なインターンシップを支援する
ITスペシャリスト等新たなニーズに対応した人材を養成するためのプログラムの開発等を支援する
先端的な融合研究領域について大学と産業界が協働で取り組む研究・人材育成拠点の形成を支援する
各分野における専門職学位課程の基礎となる教育内容・方法について大学関係者と関係する団体・職能団体等が連携して共通の課程の在り方の社会的定着と制度的な確立を図る取組みについて支援する
社会人として一定の研究実績や能力を有する者を対象に、その研究歴等を勘案した上で適切な教育・研究指導を行い、学位を与える博士課程短期在学コースの創設を検討する
平成18年度までに学位以外の履修証明に関する調査研究を実施し、その社会的な定着方策等について検討する
博士号取得者が社会の多様な場で活躍するための、企業等と博士号取得者の出会いの場の創出等によるキャリア形成支援や環境整備を行う大学等を支援する
企業内の再教育・研修等を目的とした教育プログラムなど企業等におけるキャリアに応じた各大学院におけるリカレント教育の実施状況を調査・公表する
大学院教育の実質化や学位取得者の活用等に関し、大学側と産業側の意見交換のためのシンポジウム等を開催するとともに、定期的な協議を行う

(5) 各分野のバランスのとれた発展
   人文・社会科学、自然科学の各分野における人材養成機能や研究機能のバランスのとれた充実・発展を図るため、社会の要請も踏まえつつ、特に、現状では、国際的に見て大学院在学者の割合が低い人文・社会科学系の大学院の強化を図る。
 また、大学院における専門応用能力を培う機能を高めるため、人材養成目的に応じ、地球環境、人口、経済等の現代的諸問題の分析・解決に資する、人文・社会科学及び自然科学分野の適切な連携による教育の充実を図る。

人文・社会系分野の大学院の優れた改革構想等について、重点的な支援を実施す

2  国際的な通用性、信頼性(大学院教育の質の確保)の向上
 
(1) 実効性ある大学院評価の取組の推進
   専門分野別自己点検・評価の促進を図るとともに、専門分野別第三者評価の形成・導入支援を行う。
 なお、専門職大学院の認証評価については、法科大学院以外の各分野についても適切な評価がなされるよう取り組む。

専門分野別自己点検・評価について、その実施状況を調査・公表することなどにより、各大学院の積極的な取組を促す
試行的な専門分野別第三者評価のための調査研究を実施するとともに、その結果等も踏まえ、専門分野別第三者評価の在り方について検討する
教員の学位の保有状況、「専任教員」の考え方等、教員組織の在り方に関する評価の視点やルールの明確化を図る
大学院等の開設について、各課程の目的に応じた審査の観点の明確化や大学院大学に関する審査期間の確保等、設置審査の改善を図るとともに、設置後のフォローアップの充実を図る
大学院教育に係る国際的な相対評価基準等について検討する

(2) 国際貢献・交流活動の活性化
   各大学院における教育研究を通じた国際貢献・交流を推進するための国際化戦略を支援し、先進的な取組等について公表する。
 国際的な大学の質の保証に関する協議に積極的に参加・貢献する。

各大学院の国際化戦略を支援する
外国人学生比率、外国人教員比率及び各大学の外国人受入れのための取組を調査・公表する
渡日前から、帰国後に至る体系的な留学生支援体制の充実、卒業後の活躍の場の拡大等を総合的に推進する
国境を越えて提供される高等教育の質保証に関するユネスコ・OECD等の国際的な枠組みに積極的に参加・貢献する
大学の積極的な情報発信を促すとともに、高等教育機関に関する情報ネットワークの整備を図る

3  国際競争力のある卓越した教育研究拠点の形成
   創造性、柔軟性豊かな質の高い研究者等の養成が期待される大学院(専攻)を重点的に支援する。

平成19年度からポスト「21世紀COEプログラム」を実施し、すべての学問分野を対象として、世界最高水準の卓越した教育研究の実施が期待される拠点を重点的に支援する
国立大学法人等の施設整備に当たっては、大学等の実状も踏まえ、「21世紀COEプログラム」の取組状況等を含め、教育研究の活性化状況を勘案する
私立大学の研究機能を強化する観点から、拠点形成に必要な施設・設備等に対する支援の充実を図る
平成19年度までに国際的な教育研究拠点の評価手法等を検討する

第五  取組施策の評価
   大学院教育振興に係る個別の取組施策の達成状況等について、毎年度調査・公表するとともに、必要に応じ本要綱の見直しを行う。
 また、実施期間終了後に大学院教育改革状況について取りまとめ、その具体的な成果等について公表する。


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