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Home > 政策・施策 > 審議会情報 > 中央教育審議会初等中等教育分科会 > 幼児教育部会(第8回)議事録・配布資料

幼児教育部会(第8回)議事録・配布資料


1. 日時   平成16年2月17日(火曜日)15時〜17時

2. 場所   東条インペリアルパレス 6階 九重の間

3. 議題  
(1) 総合施設のあり方について2
 
発達段階に応じた教育活動・教育環境のあり方
(教育・保育内容、職員配置・施設の基準について)
有識者からの意見聴取
茨城県金砂郷町立こどもセンターうぐいす
會澤深一朗センター長、菊池良子保育所長
意見交換
(2) その他

4. 配布資料
 
資料1   総合施設の意義について
資料2−1   幼稚園と保育所の費用負担の比較(平成15年度)(PDF:23KB)
資料2−2   幼保一体化施設における財政状況等について
資料3−1   総合施設における教育・保育内容等の取扱について
資料3−2   総合施設における職員配置・施設の基準等の取扱について
資料4   意見発表資料(會澤深一朗氏、菊池良子氏)
資料5   今後の幼児教育部会開催日程
資料6   第4回幼児教育部会議事要旨

参考資料1   幼稚園教育要領・保育所保育指針の構成(PDF:75KB)
参考資料2   千代田区立いずみこども園乳幼児育成方針(PDF:885KB)
参考資料3   品川区立二葉すこやか園二葉すこやかカリキュラム(PDF:368KB)
参考資料4   岡山市・岡山市教育委員会岡山式カリキュラム(PDF:274KB)

5. 出席者
委員)
田村部会長、國分副部会長、池本委員、石榑委員、石田委員、井堀委員、門川委員、河邉委員、酒井委員、服部委員、北條委員、山口委員
事務局)
結城文部科学審議官、近藤初等中等教育局長、金森初等中等教育局担当審議官河野主任視学官、義本幼児教育課長、土屋幼児教育企画官、神長教科調査官、小田国立教育政策研究所次長、その他関係官
意見発表者)
會澤 深一朗氏   (茨城県金砂郷町立こどもセンターうぐいすセンター長)
菊池 良子氏   (茨城県金砂郷町立こどもセンターうぐいす保育所長)

6. 概要
(1) 事務局より配布資料の確認があった。
(2) 総合施設のあり方について事務局より資料1、2−1、2−2、3−1,3−2の説明があった後、意見交換が行われた。
(3) 會澤、菊池両氏の資料に基づく意見発表が行われた後、質疑応答、意見交換が行われた。
概要は以下のとおり。

(総合施設のあり方について)
(◎會澤意見発表者、☆菊池意見発表者、○委員、●事務局)

(総合施設のあり方について)
委員  資料1の2番目の「まる」の部分で「就労支援の視点のみならず」という表現があり、従来では幼稚園は、ある意味では子育て支援とか、教育ということはもちろん本来の守備範囲と考えているが「就労支援」という視点は従来無い。この「就労支援の視点のみならず」とは一体どういう意味があるのか。
 それから、保育所の公費負担、あるいはコストが、ある意味では大したことはないという表現になっているが、現実にはこれ以外に地方自治体の超過負担が、我々の感覚でいくと莫大にある。これがどのぐらいかということがわからない。私どもがいろいろ調べた範囲だと、感覚的には国基準の3倍程度と思っているが、何の根拠もない。そこの辺り、超過負担分を入れた資料というのはあるのかないのかということをお聞かせいただきたい。
 それから、総合施設というものの説明がただいま通してなされたわけだが、今の説明の中で、幼稚園と大きく異なるというのは大変よくわかるが、現在の保育所とどこが違うのかというところが甚だわかりにくい。

事務局  1点目は、これまでの部会の議論の中で、預かり保育も含めて教育的な視点からとらえているが、一方の光の当て方としては、子どもたちを預かって、働くお母さんの託児の機能も担っているところがあるという指摘もいただいた。
 それとあわせて、親あるいは保護者の方々自身が親としての子育ての力をつけていく。それに対する相談なり情報提供なり、あるいは学習という面の視点、両面があるということで、それをこれまでの幼児教育部会の議論も踏まえ、こういう形での表現をさせていただいている。
 言葉については、特に就労支援という言葉にこだわかったわけではなく、そういう両面があるということを書かせていただいたということ。もう一つは、バランスとしては、託児的な要素もそうだが、これまでの保護者あるいは家庭の状況の変化の中で、子育て力をつけていくというような学習なり交流になる要素を重視していくような取組が必要ではないかということで挙げさせていただいている。
 2点目だが、これは実は厚労省に話を伺っても、全体としての実績ベースとしての数字はとっていないということで、なかなかその把握が難しいところだが、実際上の子ども園、あるいは一体型施設での保育所と幼稚園の区分がつくところについては、これは一例であり、全体の状況を把握する、あるいはストレートに反映しているということではないが、例えば、空き教室を活用している保育所、幼保の一体型施設については、保育所については、これは公立だが、230万、幼保の一体型施設については110数万という形での数字が出ている。全体の状況ではないが、そうなっている。
 3点目だが、私どもも正確にとらえていないかもしれないが、総合施設と保育所の違い、幼稚園の違いがわかりにくいではないかというような話をいただいた。
 ここはどういう機能を付加していくかというところであり、また、いわゆる総合施設ならではとして、幼児教育の機会、あるいは幼児教育の充実、あるいは幼稚園が持っているノウハウを活用した中で、すべての子どもたちに対する幼児教育の機会を拡充するということとあわせて、幼児教育の中身の充実を中で考えていくような要素。
 もう一つは、これまでも幼稚園、保育所それぞれで子育て支援をやっていただいている部分があるが、現代的な課題に対応したような内容を重点的にやっていくというような要素があろうかということで、資料1の「1」「2」を挙げさせていただいているというのが一つの要素。
 実際上、地域で多様なニーズがあり、それに対応するような制度的な制約なりを一歩超えたような取組、新しい枠組みを考える一つのやり方として出させていただいたところである。
 もちろんその機能をどのように考えていくかについては、その中でどのような機能を強化していくべきか、あるいは考えていくべきかというところで、恐らく今後、今日の会議、あるいは次回の会合でも、恐らく子育て支援とか、あるいは幼小の連携の問題、これは幼児教育固有の課題だが、さらに議論いただく中で、その辺りが明らかになるよう期待しており、また、私どもがそれに対応できるような資料も、次回にも用意させていただきたいと思っている。

委員  要望をさせていただきたいが、言葉の問題で、「就労支援」という言葉の使い方。やはり気をつける必要があると思う。少子化対策とか、あるいは子育て支援とか、就労支援という言葉が、いろいろなところで厳密な使い分けをなされないままに使われていて、それが何か同じ概念をあらわしているように使われてしまうわけだが、逆の使い方をすると、特定の概念として使われるわけであり、そういう意味では、こういうところで就労支援という言葉をさっと出されることについては、慎重を期していただきたい。

委員  保育・教育の質を保つという意味では、評価というものも大切だと思うが、評価について幼保がどうなっていくかについて簡単に御説明いただければと思う。

事務局  評価の点についてはこの資料には挙げていないが、現状では幼稚園については、設置基準を平成14年に改正して、自己点検・評価、情報公開ということを掲げており、保育所については、ここに資料はないが、いわゆる水準の担保という観点から、第三者評価の考え方を取り入れたような事柄で取組が着手されているという状況である。もちろん、その内容においてどう水準を確保するか、あるいはその在り方としてどのような評価の形がなじむのかという問題は、重要な視点なので、その点についても議論をいただきたいと思っている。
 ただ、基本的に評価については、最低基準での押さえとしての水準の確保という観点と、もう一つは質の向上を図っていくために、園での評価、あるいはそれをさらに伸ばしていくための外部的な評価の問題、これは総合施設だけではなくて、幼児教育の問題全体での評価の在り方については、恐らく総合施設の御議論とあわせて、また別途議論いただく必要があろうかと思っているが、そういうような状況。

委員  今、公立保育所と公立幼稚園を中心にして総合施設が今後展開していくようになった場合、日本の幼稚園児の8割が私立幼稚園にお世話になっているが、私立幼稚園はどういう影響を受けて、どういう方向性になっていくのか、予測はどうなっているか。

委員  結局、公私の公費負担の格差が現状では大変大きい。もう一つ、幼保の公費負担の格差が大きい。ここが平準化されていれば、いろいろな形ができて、保育所、総合施設、幼稚園、多様な形があって、それぞれの保育所、幼稚園にも多様な形ができる。しかし、例えば単位時間当たりの公費負担がイコールであれば、それは保護者の側から見て同じ土俵の中で、選択肢の範囲が広がったという風に考えられると思う。
 恐らく短期間の間に総合施設というものが、公立幼稚園と公立保育所の統合施設ということで動けば、全国にたくさんある私立幼稚園は極めて大きな打撃を受ける。せっかくここまで一つの社会資本として、公益に奉仕してきたと思われるそうした機能を損なう危険性が、今のままでは大変大きいと申し上げざるを得ない。

事務局  資料は公立の資料を出しており、実際上、一体型施設というのは公立が多いわけだが、私どもの議論としては、公立に限定した話ということではなく、広く幼児教育、公私を通じて在り方を考えていくということ。また、総合施設として、よりいい内容のものにしていくという点においては、単に公立の問題だけではなく、公私を通じたようないろいろな主体が担っていくというような要素もまたあわせて加味しないといけないと思っている。もちろん指摘があったような公費の負担の問題等については、その中で配慮なり検討しなくてはいけない視点と思っているが、ただ、今指摘された点については、ちょっと誤解があるのではないかと思う。

委員  私はとにかく幼稚園の機能を残したい、それだけを願っているので、例えば財政基盤がもろいままに私立幼稚園の総合施設というか、子どもを長く預かるという方向に走らざるを得ないことになると、実質的にとても大切にしなければならない保育内容の質が低下するのではないかということで、私立幼稚園でも保育所を併設していたり、これから新たにつくって一緒にやっていこうというところもあるかと思うが、それも含めて幼稚園が今まで築き上げてきた教育機能が低下しないようにということを願っている。

【意見発表】
會澤意見発表者 金砂郷町では平成12年4月から幼保合築施設を利用して、「こどもセンターうぐいす」という名前で、施設の共用化によって幼保の連携を図りながら、幼児同士の触れ合いを促進してきたが、私どもの金砂郷町は周辺の町村を含めてみても、全部県の北部に属していて過疎化が進んでいる。実際、現在、就学前の人口に占める割合は、15年で4.3%。逆に65歳以上の老年人口の割合は27.5%という状況である。そのように少子化が進んでいるが、残念ながら合築施設でありながら、それぞれ別個に年齢に応じたクラス編成をしているために、クラスとしての人数が少なくて機能が果たせない。社会化がなかなかうまくいかないという状況にあった。さらに、同じ地域の子どもたちを同じように教育したい。生涯教育のスタートから分け隔てのない教育をしたいという願いもあり、金砂郷町幼保一体的運営特区というのを申請して、昨年の10月から、これは5歳児だけだが、一体的運営を開始したところである。
 「こどもセンターうぐいす」に対する経過だが、平成10年3月に「幼稚園と保育所の施設の共用化等に関する指針」があり、それを受けて、老朽化が進んでいる。それから待機児童がある等のいろいろな問題もあるから、合築施設ということになった。そして、平成12年4月から共用開始という運びになった。
 この合築施設の中身というか、幼稚園、保育所、それぞれ希望者の増減が年代によってあった。増減があっても、一つの施設の中で幼稚園、保育所があると対応できるという利便性もある。
 幼保一体的運営、特区の概要だが、特に目標について時間を割いて説明しなくてもよろしいかと思うが、とにかく同じ地域の幼児を同じ条件で保育したいという願いがある。そして、合同クラスを編成することによって、多くの人と接して社会性や創造性を養っていきたい。それから、このセンター内に子育て支援センターというのもあり、そういった子育てに対するいろいろな不安も解消に向けて我々は努力していきたいと考えている。
 幼稚園・保育所の同一給食は、今まで共同調理場から幼稚園に関しては給食をいただいていたが、今度は幼稚園として入ってきた子、保育所のほうに入ってきた子、全部一つのクラスにするため同じ給食をということで、共同調理場から3歳以上は給食をとることになります。これは特徴的なことかと思う。
 それから、入園・入所の手続の一元化だが、これは役所のほうにまだしっかりした組織ができていないため、この組織づくりに向けて今努力中である。

菊池意見発表者 運営について、特区の認定を受けたのが15年10月、年度途中だったので、今年度は5歳児のみが無理のないように、また、子どもの負担にならないようにということで、今年度は、10月からは月、火、水の3日間、保育所の子どもが幼稚園のほうのクラスに来て、合同活動を行い、木、金の2日間は、保育所、幼稚園それぞれに、年度当初に計画等いろいろあったので、その計画に基づいた活動をクラスごとに行っている。16年度からはこの表のような日課で行う。そして、3〜5歳児は幼稚園、保育所の混合クラスになる。
 担任のほうも、幼保、両方の職員が同じように担任をする。幼稚園の職員だけが3〜5歳を担任するということではなく、保育所の職員も3〜5歳を担任するようになる。幼稚園の職員、保育所の職員、どちらも免許を両方持っているし、特区申請で認定を受けた時点で、教育委員会からどちらにも併任発令を受けている。また、幼稚園はそれに伴って、希望者には預かり保育を4時まで行うということになる。
 子どもセンターの組織図だが、町には1つの保育所と4つの幼稚園がある。その中の1つの金郷幼稚園と保育所が一緒になって、「こどもセンター」となっている。「こどもセンター」は、町長部局と教育委員会の両方に属している。この図ではそれぞれに園長、所長がいるが、これも今年度は10月まで二元的に幼稚園、保育所、それぞれに二本立てで運用していたので、このようになっているが、16年度よりセンター長が園長も兼ねるようになり、管理運営体制を一体化して、センター内は幼稚園、保育所の区別なく、また、職員も幼児もみんな同じという意識で運営していきたいと思っている。
 ただ、上で窓口が二つあるために、連絡調整、それから事務処理等が煩雑しているために、現在、組織づくりの見直しをしている。
 勤務ローテーションも今年度はそれぞれ幼稚園は幼稚園、保育所は保育所の勤務規程によって運営しているが、16年の4月より一体化に伴って、勤務もセンター内は幼保区別なくということにするので、みんな同じ意識のもとで働けるように、全職員を原則対象としてローテーションを組む予定でいる。しかし、ローテーションを組むと、合同活動の部分がマイナスになるのではないかという懸念があるので、早朝、それから遅番等に臨時の講師とか、臨時の保育士を固定して対応する予定でいる。
 次に職員研修だが、職員研修には職員会議、それから合同研修、年齢別研修、そして幼保別研修などを行っている。同じ建屋で同じ年齢の子どもが家庭環境で差がないよう、同じように育成することができるようにということで、特に年齢別研修などでは幼保内容の共通化を図るための話し合いに重点を置いてきた。また、10月からは毎週火曜日、4月からの3、4、5歳児の合同活動に向けて、幼保一体の教育課程の作成の話し合いを設けている。
 このように合築施設のときから、子どもの保育面では統一したり話し合ったりしていたので、16年度からの合同活動は、保育の面ではスムーズに移行できるのではないかと思う。
 それから、今まではそれぞれに幼稚園、保育所と運営していたので、一つの施設の中で共同で使う部分とか、いろいろあるので、そういう連絡調整にとても時間がかかったが、これから同じ歩調、同じ意識のもとで話し合いができるので、保育の研修の部分により、今まで以上にそういう連絡調整には時間がかからなくなるので、保育の部分のほうに時間をかけられるようになるのではないかと感じている。
 幼保一体化を推進することによる効果では、次のような点が感じられた。
 まず、同じ施設内の子どもが、保護者の事情に関係なく、同じクラスで遊んだり生活することができるということ、それから年度の途中で保護者の就職や離職というような環境の変化があっても、子どもはクラスや担任が変わらずに生活できるのではないかということ、それから5歳児は現在少人数のクラスだったが、合同クラスを行うことにより、仲間も増え、幼保の区別のない交流が広がってきている。
 あと合築施設として同じ建屋の中に幼稚園、保育所という二つのそれぞれの組織で平成12年度より運営してきて、保護者、それから職員の間に、幼稚園、保育所という目に見えない意識の壁があったが、これが一体化に10月からなるということで推進してきたので、少しずつこういう意識の壁が薄れてきているように思う。
 それから、施設の共用部分については、幼保それぞれに行事を組んでいたために、使用する計画等の調整に本当に時間がかかったのだが、これからは同じ歩調、同じ行事等になるために緩和されるのではないかと思われる。
 以上のような効果が得られるようになるのではないかと思う。
 最後に、今後の課題として、次のような点が出てきている。
 一つは、制度の違いによる事務の煩雑化、例えば給食費とか、教材費等についても、幼稚園等がそれぞれに家庭から徴収しているが、保育所は運営費より支出している。そのために、これから預かり保育などをやる場合には、おやつ等も幼稚園の部分では出てくると思うのだが、そういったときにおやつ代、幼稚園の部分の子どもに購入した伝票等も、人数によってそれぞれ分けなければならない。それから、同じクラスに幼稚園児と保育所児がいるので、教材などを使う場合にも、保育所のほうは運営費の中から出ていて、それもきちんと幼稚園と保育所の部分というように人数で分けてやらなければならないのかなと考え、そういう制度による煩雑さが出てくるように思っております。
 帳簿類もそのようなものが出てくると思うが、幼稚園の場合なら指導要録等もあるが、保育所は児童表ということで、クラスの中で、子どものことを書くのだが、種類が違う。それから、出席簿についても、同じクラスだが、幼稚園の子、保育所の子は、番号とか、人数等できちんと把握しておかなければならないとか、それからこの前はインフルエンザが流行して、そのときにセンター長も、こういうときはどうするんだろうねという疑問が出たが、風邪などが出てきた場合に、幼稚園の場合は学級閉鎖等がある。だが、保育所のほうは閉鎖することはできないということで、同じクラスの中にいて、そういう違いはこれからどういうふうにすればいいんだろうね、一つ一ついろいろ出てくるねという話で、結論は出ていないが、そういう問題も出てきている。
 それから、修了証書も出てくるが、そのときに同じクラス、同じ課程の中にいて、片方は幼稚園長の修了証書、片方は保育所長の修了証書という形になってきてしまうので、その辺りもどのようになるのかなということがこれからの課題になっている。
 あと保育日数や保育時間による差の問題が出てくるのではないかと考えられている。同じようにねらいを立て、教育をしても、幼稚園は39週、保育所は300日と時間も違いますし、約100日も違ってくると思う。その中で、同じようなねらいを達成するために、果たして本当にそういうねらいを同じように時間の違いから達成できるのかという不安が出ている。
 それから、子どもの場合、遅くまでいる子、早く帰る子がいる。そういうときの心のケアが、保育者に大変になってくるのではないか。どのように子どもに影響を与えるかということが、今、問題になってきている。
 今度は職員が預かり保育とかで長時間保育になるための問題としましては、幼稚園の職員は勤務がハードになったり、二重になったりする部分も出てくるので、煩雑化になるために、一人一人の対応がおろそかになってしまうのではないか。そのために幼稚園の研修時間がとれなくて、毎日の保育の低下につながってしまうのではないかということ、それから対外的な研修の場に、幼稚園の場合には県のほうの指導訪問等があり、指導を受ける機会や、研修をする場があるのだが、保育所の場合はローテーションを組んで、本当に朝早くから遅くまでやっているので、そういう研修に出るのはほとんど難しい。研修はあるが、ほとんどそういう研修は受け身の研修が多く、現場に指導員に来ていただき、実際自分で指導している指導の仕方について指導を受けたり、それから自分で立てた計画の仕方を見ていただく等、幼稚園みたいな細かな指導が保育所の部分は欠けているように思う。そういうところで、保育の教育的低下につながらないようにということが、今、研修の時間の確保も問題になってきて、どういうふうにとればいいかということで、今も毎週、木曜日に検討を重ねているところ。
 それから、保育料の統一ということで、やはり保育所の保護者にとっては、保育料が高いということ、また、幼稚園の保護者の中にも保育所に預けたいが、幼稚園より高いので、保育所のほうには入れられない、無理してでも幼稚園のほうに入れなければならないということも出てきている。

委員 平成15年で就学前の人口が4.3%、65歳以上が27.5%というお話だが、総人口というのは何人か。

會澤意見発表者 1万1,500人ぐらい。

委員 それから、5歳児の合同クラス、合同活動が年度の途中、10月から始まっているが、それには何か意図があるか。
 あと、ここには4つ幼稚園があるというお話があったが、その4つの幼稚園は、その後、人数が増えているのか、減っているのかということも伺いたい。

會澤意見発表者 10月からの5歳児ということだが、10月の特区申請で申請したのが、幼稚園における幼稚園児と保育所児の合同活動ということだったので、3〜5歳児は、私たちの幼稚園、保育所を合わせると、定員の35名を超えてしまった。そうすると、幼稚園の部分において空き教室がなければ2クラスできないということで、3、4歳児は認められないということで、5歳児は両方合わせて28名でしたので、5歳児からは可能だということで、5歳児はできるだろうということで、5歳児を始めたというのが1点。
 あと小学校に入学するときに、新しい環境、新しい友達づくりということになるので、その前にこの施設の中で、お互いの幼稚園、保育所というのがあるのだから、そこで段階的な環境の変化を与えて、次のステップにいくのにもスムーズに運営できるのではないか。同じような教育をしたという形で移行できるのではないかということで、10月から行った。
 ほかの4園についてだが、今、検討委員会を開いているが、1つの園が統合されることになる。金砂郷は南北に非常に長いが、特に北のほうが過疎が進んでおり、平成16年度の入園申し込みが5歳児が2名、4歳児が5名、計7名で、急激にここ2、3年減っており、私どもが言っている金郷という幼稚園に吸収される予定。
 もう一つの園は、これは南のほうに属していて、田園地帯だが、ここは宅地造成が進んでいて、これは一時的なものだとは思うが、園児が急激に増えている。だから、今、部屋の増築というようなことも考えている。
 もう一つの園は、横ばいというか、そんなに大きな人口の変動はない。

委員 では、その町に住んでいる方々は、どの幼稚園でも自分の意思で選ぶことができるのか。

會澤意見発表者 できる。

委員 確認だが、一つは合同というのは、同じ年齢で保育所と幼稚園ということであり、年齢を縦に割るということはお考えでないかということが一つ。
 あと所属はそれぞれ、どちらかの幼稚園か保育所に職員の方は就職するという、職員の所属のことをちょっとお伺いしたいことと、あと保護者は参観の仕方で、保育所の保護者の方と幼稚園の保護者の方はどういった関わり方をされているかということをちょっと伺えればと思う。

會澤意見発表者 縦割りのほうは考えてないで、同じ年齢での合同を考えている。
 職員の所属だが、やはり幼稚園職員は教育委員会の所属になっている。保育所のほうは町長部局のほうの職員になっているが、お互いに併任発令はされている。

委員 給与体系はどうか。

會澤意見発表者 給与体系も今まで幼稚園は教育職だったが、去年からは幼稚園も行政職になり、給与体系も同じになった。
 保護者の参観だが、それぞれに行事等もいろいろやっているが、一緒にできる部分は一緒にしましょうということでやって、運動会などは一緒だが、あとのほとんどは幼稚園は幼稚園、保育所は保育所で行っている。だから、これからはそういう行事等も一緒に行わなければならないということで、これもPTAのほうの役員さん方と行事の詰めを今やっているところである。保育所の部分はどちらかというと、保育所に入れたのだから、保育所にお任せというような考え方があるが、その辺を今度は保育所のほうの保護者に啓発していき、やはり子育ては家庭と一緒ということで、保育所のほうの保護者にももう少し子どものほうにもかかわってもらえるようにということで、少し行事は幼稚園のほうに合わせていくように考えている。

委員 今のところと関係があるのだが、私も岡山でいろいろ調べてみたときに、保護者の意識が違うのではないかと思う。その辺りをどう調整なさっているのか教えてほしい。

會澤意見発表者 特区を申請して保護者との話し合いの中で出てきたのは、意識の差が出て、はっきりとした言葉では表さないが読み取れるという部分であったのが、教育のレベルの差。幼稚園の保護者のほうは、教育という部分で幼稚園を選んだ、保育所は教育の部分が低いという見方でお話ししているのが感じ取れた。そういう部分は、保育所のほうは幼稚園の教育要領に準じてやっているので、まして同じ建屋の中にいるので、同じ年齢ごとに話し合いをして、同じ歩調でやっているというお話は常日ごろからしていたのだが、それでも話し合いのときには、保護者のほうは、教育面が保育所と一緒になると下がるのではないかというその意識が出た。

委員 もう一つ、そういう意味では、保護者会みたいな話し合いというか、親同士が交流して一体化する意識を意識的につくっていかなければいけないと思う。そのときに保育時間の関係とか、いろいろな形でもって集まるとしたら、働いている保護者の方は夜しか集まれない。そうすると、幼稚園の保護者の方もそれに合わせていただかざるを得ないわけでしょう。仕方がない。両方合わせようとしたらそういう形でしかないが、そういう試みを少しずつ始められているか。

會澤意見発表者 来年度に向けて理解を得るために、役員の皆さんに、とりあえずはPTAの組織の見直しであるとか、それぞれ、幼稚園はPTAという言葉を使っており、保育所のほうは愛育会という言葉を使っているが、その組織をどうするか。あるいは、PTAを無くすとか、極端な言い方をすると、その辺りから始まっている。うちはもちろん残すが、当然、集まるのは夜ばかり。これからも恐らく働いているお母さん方のことを考えると、すべて夜ということになりそう。正直言って、我々職員が会議するのも夜、5時半から7時ということで、職員会議も夜。6時までお子さんたちがいるので、これからは、日中はなかなかできないのではないか。親御さんたちの気持ちをくみながら、いい方向で持っていきたいと思う。

委員 人数からいくと、先生のところは保育所に入所しているお子さんのほうが人数的には多い。ということで、どちらかというと保育所主体の複合施設なのかなと判断したが、どうか。勤務がローテーションというようになるということで、これも保育所のほうを主体に考えた勤務形態かと見たが。
 そうしてしまうと、幼稚園のお母さんたちのほうからの不満というか、そういったことが出てこないのか、あるいは幼稚園のお母さんたちは子どもを預けている間に、PTA活動をとても楽しんでいたように私は見ていたが。そういった活動が、これから保育園のほうのお母さんたちに活動の時間も合わせるということで、幼稚園のお母様方からの不満が出ないのかということや、いろいろお聞きしていて、心配になる面が出てきている。
 また、幼稚園の先生たちは研修が結構できており、静岡あたりだと水曜日は研修の日ということでやっていたが、その辺りもローテーションで組んでいかれると、研修の部分も少し薄くなるのとか、なかなか難しいものが結構あるように感じたので、その辺りを教えてほしい。

會澤意見発表者 ローテーションを組むことだが、一つは幼稚園のほうで採用された先生、あるいは保育所のほうで採用された先生が、一つの建屋の中にいるので、みんな同じようにというそれが基本。ただ、先生方の研修権というか、それは確保してやらなくちゃならない。これは管理する側の大きな責務かと思っているので、研修権をどこの時間帯でどのように確保するか、その時間帯は職員はいるというような、早出、中出、遅出とありますので、早出の先生は当然早く帰る。遅出の先生は遅く来て遅くまでということになるが、そういうのを組みながら、先生方がそろう時間というか、その時間に研修の時間を確保したい。
 なお、そのときには臨時の保育士といいますか、臨時職員を雇う予定だが、そこで子どもの面倒は、その時間帯は見てもらう。全部が臨時職員でできるとは思わないが、そのように組んでいきたいと考えている。私どもの悩みの一つである。
 それから、親の不満についてだが、理解していただくのはなかなか難しいと思う。一緒に何か行事をやるときに、協力できるお母さんには協力していただく。それは幼稚園として入れたお母さんも、あるいは保育所として入れたお母さんも関係なく、大体は幼稚園のほうのお母さんが出ていらっしゃるとは思うが、他のいろいろな幼稚園の様子なんかを聞いて、本当に出てきてくれる方に協力をお願いするときはしている。もちろんその場合には、いつも保育所のお母さんが出てこないという不満が出ないよう、いろんな機会を利用して説明しなくてはいけないかと。これも課題の一つ。
 それから、研修の時間だが、その時間の確保だけはしていきたい。それに含めて、早出の専門の方と言っては変だが、そういう方や、今、保育所のほうはバスで送迎しているので、その添乗も先生方がやっている。それもバスの専門の添乗員さんを雇ってというようなことも、16年度からはそうしたいと考えている。そうすると、先生方が実際園にいて、お子さんたちを迎え入れられる。それが一人でもやはり多いほうがいいから。

委員 16年4月からローテーションを組むということでお話を伺っていると、同じ施設の職員だから、みんな同じようにというところでのローテーションだと伺ったが、そのことが職員にとって同じなわけで、子どもにとってどうかという視点から考えたときに、特にここの合同活動のところが、私どもの幼稚園の感覚でいくと、担任の先生との信頼関係の中で学級経営がなされていくというところをとても重要視している。そこのところの特にローテーションがどうなっていくのか伺えればと思う。

菊池意見発表者 私たちもその点を一番心配して、保育所の部分でマイナス面というか、同じ先生が朝迎えることができないというのが欠点だと思う。そこの部分が幼稚園と一緒になったときに、幼稚園にそういうのが出てしまってはということなので、できるだけ合同活動の部分には、クラスの担任は誰もいるような配置にして、それ以外のところをローテーションで同じようにやるというような、未満児、0〜2歳児だけでやるとか、3〜5歳児で分けるというのではなくて、全体の中で教育部分というか、合同活動部分だけは押さえておいて、あとは同じようにという考えでいる。

會澤意見発表者 実際幼稚園の先生方からも、その御指摘はいつでもある。それが一番問題であるというほど。担任が温かく朝迎えてあげる、その時間はいつも確保してほしい。確かにそのとおりではあるが難しい。

(意見交換)
委員 諸外国と比べてとても気になっているのは年齢のことで、諸外国では縦割りの年齢のクラスを重視するところが多い中で、総合施設の議論の中でも、基本的に横の年齢で集団をつくろうという考え方が強く、そこは今後の部会の中でどうしていくべきかというのは議論したいと思っている。
 諸外国でなぜそれをやっているかというと、子どもは年配の子どもを見て、自分がそうなろうというモデルがあるとか、下の子を面倒見てあげようということから、子どもが成長していくという、異年齢の集団が教育的な効果をもたらすということで、もちろんどちらかにするということではなくて、諸外国でも異年齢をベースに、同じ年齢の集団をくくるという組み合わせをやっているわけだが、そういったことについても総合施設とあわせて議論したいと思っております。

會澤意見発表者 先ほど小規模な幼稚園の話をしたが、ここは混合保育で、異年齢といってもわずか1歳違いだけだが、混合保育を実際の活動の中でやっていた。

委員 先ほどPTA活動のことが出たが、PTA活動というのは、今のお母様方は、幼稚園であっても「大変だから」ということで敬遠する向きもある。しかし、大変だからという思いでいながら、PTA活動をしていくことで、自分自身も充実感を感じるようなことがたくさんある。PTA活動は、親が親として育っていくのを支援していくには大変すばらしい場であるなということを、私は常々実践から感じている。
 先ほどの議論の中で、幼保に関して、総合施設ができた場合とか、今回の幼保の一緒の施設の中で、保育所に預けている方々が夜でないと時間がとれないから、そちらのほうに合わせるという話があったが、今後、総合施設の中では、むしろ反対に親である限りはPTAに参加する、そこからいろいろなものを学ぶというような姿勢で、日中でも堂々と休暇を取ってこられるような社会の仕組みというか、そういうものをぜひつくっていきたいと思う。そこはぜひ総合施設の中で議論してもらいたいと思っている。

會澤意見発表者 今、いろいろ行事等を詰めていく中で、休暇が取れるようにという話があったが、年度当初に、できれば何月何日、こういう行事というようなことを前もって知らせておいて、勤め先なり何なりの了解をかなり早い時期から求めておく。そういう方法でまず考えている。だから、夜ばかりのように受け取られたかもしれないが、昼間のことも考えている。

委員 一つの園での取組ではなく、社会全体が、仮に企業とか、いろいろなところが、そういったことは大切なんだよというようなうねりみたいなものを起こして感じていけるような、そういったものができたらいいと思う。

委員 今、会社でも、「今日は幼稚園の運動会があるので」と言うと、何となくオーケーな雰囲気が非常に多く、実際にもちつきとか、運動会とか、生活発表会になると、お父さんがかなり出ているし、私は日ごろ、男だがPTA活動をしていると楽しいぞ、こんな楽しいことをお母さんたちだけにやらせておくのはもったいないから、みんなやろうよと日々啓発しているところだが、PTAのグループのほかにお父さんだけでグループをつくられて、夜活動をしているグループもたくさんある。夜活動をするというのは、仕事の関係もあるでしょうけれども、その後のお楽しみがあるということで、非常に集まりやすくなっておりますので、ぜひお父さん方も巻き込んでいただきたいと思う。

委員 まだ始まったばかりということで、「うぐいす」のほうはこれからだと思うが、インフルエンザがはやったらどうしようかというような問題は、クリアできる問題であって、話し合えば幾らでもこれから変えていけると思う。それをやったことが子どもにとってどうかというのが、一番重要なことだと思う。こちらのように、5歳児が13名と15名でとても少人数だったので、一緒になったことは、たぶん子どもたちにとってはとても幸せなことだと思う。私の体験でも、5歳児は30名ぐらいいないと活力のある生活ができないと思っている。
 子どもの視点で考えたときに、文科省が出されている資料に、総合施設の教育内容等については、次のような考え方でよいか、のところで、「3歳〜5歳児については、幼稚園に準じた教育を行うことを基本に」と書いてある。これだと従来の保育所の考え方と同じで、幼稚園教育要領に準じたということなので、やはりここのところを「準じた」ではなくて、「幼稚園教育要領に基づく教育」を3〜5歳はするんだと、文科省がそういうふうに打ち出していただいて、それで子どもを中心にカリキュラムを構成していく。その中で、職員の配置はどうしようか、研修はどうしようかということは、おのずと検討課題が明確になってくるのではないかと思う。
 子どもの生活を考えたときに、幼稚園教育要領は子どもの自発活動を重視しているので、実際子どもが一番機嫌のいい午前中に集中して遊ぶ。そうすると、一つの遊びはどんなに集中しても、子どもの場合、60分から90分、今どきだと90分以上遊びますけれども、朝来て、90分ぐらい遊ぶ。ちょっと一段落して、みんなで集まって楽しい活動をみんなでする、御飯を食べる、ほっとするというと、午後の活動は明らかに午前中のとは違ってくるというような子どもの実態もあるわけで、子どもにとっての最善は何かということと、何を育てていくのかということを考えていくと、幼稚園教育要領が考えている、ここでいっている幼稚園の時間、コアの時間も、どんな教育が必要かということも明確になってくると思う。
 だから、ぜひここはあまり気弱にならずに、幼稚園教育を行うことを基本にして、様々な諸問題はそれに応じて解決していくという方向で検討していただきたいと思う。

會澤意見発表者 やはり教育の部分は、幼稚園に準じてというので、それで私たちも進めていますので、そういう方向で。
 実際にやっているので、抵抗というか、保育所のほうの保護者も、教育の部分は幼稚園の教育でといえば安心するのではないかと思う。

委員 ある年代の保護者からは、やってほしくないというような、要するに幼稚園にやりたくないから、保育所のような形でやりたいという方もいて、それは例えば一斉に集団でやるということが、子どもにとって、その人にとってはむしろよくない教育だ、みたいなことを感じられている方もいて、確かに就学年齢を下げるとか、幼稚園を義務化するということに対しても抵抗があったりするのは、自由にすることが一つの教育のやり方だと信じている方もいて、それに対してはどうすべきなのかということも少し考える必要があるかと思っている。
 確かに諸外国でも、幼稚園教育は何かということもかなりバリエーションがあって、何をもって幼稚園のような形にするかということも、たぶん議論がばらばらなのではないかと思う。自由保育のような幼稚園も恐らくあるので、どういう幼稚園をここに据えるのかということもきちんとしないと、一斉の詰め込みというイメージを持って幼稚園に批判的な思いを持っている保護者の方にとっては、少し抵抗を感じる部分かなと思っている。

委員 幼稚園教育要領は、国のガイドラインのためにあるわけで、それをちゃんと理解していただくために解説を出している。それは私立であろうが、公立であろうが、国立であろうが、国家としての一つの幼稚園教育の本当に最低限のものであり、それを示すことが大切で、既にそれは歴史をもって示してきていると思う。それは、「準じて」というよりも、「基づく」というように明確にしたほうが、その辺が玉虫色で何かなし崩しになるよりも、はっきりそれは歴史を持っているし、それなりの検討を加えた重いものだと私は受けとめている。

事務局 先ほどのお話は、20年前の記憶を言っているような感じがする。今、世界で日本がそのような形の教育をしているというようなことを言う人はほとんどいない。むしろ日本が責められているのは、あまりにも自由になり過ぎていて、アメリカから批判を受けるのは、滑り台は上から滑るものだということに対して、それもちゃんと座って滑るという形、それから滑り台のそばには必ずいなければならないという形のもので、アメリカの幼稚園教育は、もし滑り台のところに教師がいなかったら訴えられる。反対に頭から滑っても訴えられる。むしろ日本の教育の場合は、創意工夫するということと、子どもたちの自主性に任せる部分というのをかなり遊びの中にもって、それを20年間培ってきて、教育の中に入れ込んできた。
 そういう意味でいうと、今お話があったようなところはほとんどなくなってきていて、むしろ逆にアメリカのほうが、一斉に教育をしているし、御存じのようにアメリカの場合は5歳児は小学校へくっつけていますので、朝、小学校に子どもたちが行って、小学校で学んで、午後、幼稚園に帰ってくる。いわゆるキンダーガルテンではなくて、ナーサリのようなところに帰ってくるようなシステムがかなり増えている。
 実際に研究学会で4年間議論してきたけれども、日本の保育というのは、むしろ自由にし過ぎているのではないかというぐらいの問われ方をしているということで、ある意味で日本の中でも保護者の方は、遊んでばかりいるというような言い方で問われているのは、ある種共同的な要素の遊びが少なくなってきていることにあるというようなことなので、一斉に小学校的な要素を含んだような教育をしているという批判というのは、かなり少ないのではないか。今、そういうことを言う若いお母さんはいないのではないかと私は思っているので、その辺りはちょっと疑問。
 もう一つは、幼稚園は学校教育という長い伝統を持っているために、学年別に、できるだけ年齢別に切っていくということを伝統にしている。これは一つの学校教育という枠組みのものだったということは言える。だけど、それに固執するわけではなくて、3〜5歳の発達は行ったり来たりしているということなので、クラスを解体して、混合でやったり、年齢でやったりということは、いずれも可ではなくて、是としているわけであり、いい方向であるというように思っているということ。
 ただ、朝や帰りのときや本当にやらなきゃならないときというのは、年齢的に発達に合わせた形が必要であろうという点と、やはり学校教育の伝統があって、年齢別に切るという伝統的なものを持っていることは事実だと思う。今日、こどもセンターのほうでやっていらっしゃるところも、年齢別には切っていらっしゃるが、活動そのものはクロスしているのではないかと思う。
 ただ、御存じのように、厚労省が今まで合同保育を許していなかったという点があって、その辺のところがこういう特区の形で合同保育を許されるという形のスタイルをとったのではないかという意味で、これは総合的なものを考えるというよりは、むしろ人数が少なくなったところで、子どもたちを一緒に、集団的な活動を大いに生かしてあげるにはどうしていったらいいかという形の構造改革特区ではないかという感じがして、総合を考えるための基礎にはなるけれども、先生が危惧されるようなところまではまだ至っていないのではないか。

委員 前回の千代田区の例と、また、本日の例、それから議論の中でのいろいろなお話を承ったが、やはり私は釈然としないところが残る。それは保育所といわゆる総合施設のイメージがどう違うのかが、ここまでここに座って伺っていても全くわからない。
 確かに保育に欠ける云々という問題があって、それの解決という意味はあるのかもしれないが、これまでのお話を伺っている限りでは、既存の保育所が3歳から5歳児については、幼稚園教育要領に準じてやっている分には、まさに今お話しいただいている総合施設以外の何物でもないのではないか。そういう印象をどうしてもぬぐえない。
 このたび議論されていることが、社会の大きな変化の中で、今のすべての子どもたちに幼児教育を等しく保障することを目指す、そのための一つのものとして総合施設も考えるのだという文脈で、もしあるのならば、もうちょっと違う発想があるべきではないかと私は思う。それは総合施設というものが、いわゆる0歳児から小学校入学前の子どもを対象にして考えている限り、これは現在ある保育所と大して変わったものができるわけがない。等しくすべての子どもに幼児教育を保障しようというのであれば、我が国の学校教育は一体どの時点から保障していくのかということが前提にあるべきだと思う。現状では3歳児というのが、議論なく、もうこれは学校教育の対象だということになっているんだろうと思う。2歳児について、せんだって小川博久先生が条件が整えばという限定をつけられて、学校教育の対象ともなり得るというお話を披露していただいた。言葉をかえると、0歳児と1歳児は学校教育の体系にはなじまないと、これも共通した見方と考えていいのだと思います。
 そうすると、今後の総合施設を考えていく場合も、基本的には3〜5歳の子どもをどう教育を保障していくのかという観点から考える。あわせて、子育て支援という観点からも、2歳児は検討課題だと思う。2歳児をどう扱っていくのか、その守備範囲で考えないと、やはり就労支援だ、子育て支援だ、幼児教育だというものがごちゃごちゃになってしまう。そのように私は考える。要するに年齢の問題が一つ。
 もう1点は、保育時間の問題があまり明確には述べられてなかったと思う。ただ、いろいろなところで13時間開所というような例示はなされている。このような極めて長時間の保育が可能となるようなものを我が国は推進していいのか、私はこれは間違っていると思う。労働基準法がたび重なる改正を経て、現在、親のほうは週40時間労働ということに法定労働がなっておるわけでございます。幼稚園は4時間を標準とする。保育所の最低基準でも8時間を原則とするということになっております。
 ところが、親の労働時間が短くなるにつれ、子どもの保育時間はどんどん延長されて、今や60時間保育とか、70時間保育が決して珍しくない状態になっている。このような状況を放置することが、子どもの権利を重視する、子どもの立場に立った改善にはならないと思う。やはり保育時間というものは大きく制限されてしかるべき。総合施設を考えるのであれば、一つの手がかりはやはり幼稚園の4時間というものと、保育所最低基準の8時間というものがあるわけであり、それから労働時間の短縮ということもあるわけだから、これは4時間を幼児教育と考えるのであれば、8時間までは子育て支援と考えて整理したらいかがか。その超えた部分については、就労支援と定義して考えていく。付加する機能として考える。そういった整理をしないと、子どもの立場にどう立っているのかが一向に見えてこない、そのような意見を持っている。

事務局 幼稚園についても、今、預かり保育という形をやっており、実態としては、4時間の標準、いわゆる教育を意図的な計画のもとでやっていくということをベースにして、プラス予算措置ではあるが、4時間程度の預かり保育という形でやっており、プラスアルファとして早朝とか、夜間とか、休業日等については付加する部分もあり、あくまでも基本形はいわゆる4時間の集中する時間、プラスアルファの生活の一つの新しい環境の場として、子どもたちの生活リズムとか、状況等を勘案して対応させていただいているというのが状況。

委員 総合施設を前からずっとお聞きして、今日も具体的に聞いたが、こういう形だけつくればいいというものではないと思っている。
 結局、今、教育委員会なんかやめてしまえという議論もある。だから、教育委員会で幼児教育というのはどういうことかということを議論できることが大事ではないか。形をつくって、こうするといいよということではなく、それぞれの自治体で幼児教育についてのメッセージが今まで極めて弱いと思う。それは遊ばせておくことが幼児教育ということをひっくるめて、幼児教育がいかにあったらいいか、それは子どもと親もひっくるめて、文部科学省としてはもう少し強めのメッセージを出すべきではないかと常に思っている。
 前に文部科学省が出された学力とは何かとか、考える力とは何かとか、あれはかなり国民的な議論を呼んだ。教育問題が一躍国民的なテーマとして浮上したことになったので、幼児教育、子どもを育てるということはどういうことかという一つの議論のきっかけを出す。
 総合施設で補助金をどう使っていくかということも必要だが、私はやっぱりカリキュラム。カリキュラムをどうつくっていくか。私どもは少人数授業をやって非常に変わってきた。教師たちが自分たちで授業をつくっていく。教師たちが自分たちの授業をつくるということで、内発的に変わってきた経験があるので、カリキュラムを自分たちでどうつくり上げていくかというプロセスが非常に大事はないかと思っている。
 自治体からすると財政もどうしても無視するわけにいかないので、今、議論になっている三位一体の中で、国庫負担金を交付税にするということはよくないと思っている。あれは包括的な負担金で計上されるべきだと考えており、その辺の議論も突っ込んでやれるような環境をつくってほしいと考えている。

委員 ちょうど東京都の都心の少子化の地区と、地方都市と言ったら失礼な言い方かもしれないが、両方で必要性に迫られて新しい取組をされていることは、総合施設をつくる上で参考になったわけだが、同時に、もし新しい総合施設を白紙の状態でつくるなら、どういうものかということを議論したらいいのではないか。私立幼稚園の比重が非常に大きい、幼稚園の場合は。
 ただ一方で、良質なサービスを低廉な価格で提供していくということが、これから行財政改革であり国も地方も大変な行財政事情のもとで、私立のよさを生かしていかなければやっていけないということも現実にあるので、その辺りも含めて、どういうものができるのかということを、いろいろなことを勉強させてもらいながら感じたということが1点。
 もう1点は、私立幼稚園も公立幼稚園も、保育園も含めて、乳幼児の段階でお母さんがボランティア活動に関わるというのは、PTAや、保護者の会。親の学びの場を提供するという視点からも、保護者会、PTA活動というのは非常に大事だと思っている。
 それと同時に、就労支援という言葉がよく出てくるが、逆に就労制限ということを一度アピールしたらいいのではないか。最近聞くが、子どもの人権、子どもの権利を一番言っておられる保育所の保育士さんの話だが、一番長時間保育しているのが弁護士さんであり、お医者さんであり、学校の先生であり、保育士さんであり、子どもがかわいそうなぐらい、長時間保育園に預けられたままになっている。これが現実。それが社会の指導者。
 本当に子どもが育つための世の中を大人がみんなで考えていこうというときには、社会のニーズに促されていくのもやむを得ないことは大いにわかっているが、本当にこれでいいのかと。就労支援と同時に、必要な就労制限もしていくようなことも考えないとだめではないか。そのためにもボランティアのために休暇をどんどん取れるような社会にしていくとか、企業も、役所も含めて。

委員 総合施設というのは、定義によってたぶん保育所と幼稚園が同じ場所でやっているわけですね。私、財政を専攻しているものですから、お金の話に限定しますと、同じサービスを別々の場所で提供することと、同じ場所で提供することのコスト面での違いを考えれば、当然、同じ場所で提供することによって、共通の設備、固定費用をある程度節約できる効果というのはあり得ると思う。ただ、逆に同じ場所で異なるサービスを提供することによるいろいろな摩擦に伴うコストもあり得ると思うが、総合施設を利用することによって、同じサービスを別々に提供する場合に比べて、どの程度コスト削減の効果があるのかどうか。あるいは、コスト面での削減というのは、こういう総合施設をつくるときには、ほとんど問題にしないような要因なのかというのを少しお聞かせいただければ。

事務局 まだまだ一部の取組であり、その中で徐々に情報が出てきたというところである。ただ、先ほど冒頭にも説明させていただいたけれども、幼稚園のいわゆる公立と私立の設置主体により、同じ幼稚園ではあるが、公的な負担の在り方において大きな格差があるということもあり、また、それは幼稚園と保育所によっての主体の種類によっても異なる。その中で、課題として提起いただいたけれど、どういう形で良質なサービスを低廉な価格である程度効率よく提供していくかという問題と、費用負担の公平感をどれだけ達成していくのかという問題はかなりリンクしているところである。
 また、これは幼稚園ではないが、いわゆる民営化という形で、保育所のほうでは、特に公立の保育所においてはコストがかなりかかるということもあるが、公設民営とか、あるいは民間の主体なりサービスの機会を拡充して、その中で一定のコスト削減の効果を、質の確保を両立させながら取り組もうということが、まさにこれから出てきているという状況。

午後5時 閉会


(初等中等教育局幼児教育課)

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