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医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(第6回)議事録・配付資料

平成18年2月2日(木曜日)
文部科学省高等教育局医学教育課

1. 日時
  平成18年2月2日(木曜日) 13時30分〜15時30分

2. 場所
  三田共用会議所第3特別会議室

3. 出席者
 
協力者: 高久座長、福田副座長、大橋、小川、川崎、北村、佐藤、水田、田中、辻本、寺尾、名川、橋本、垣生、松尾、南、吉新、吉田、吉村の各協力者
文部科学省: 栗山医学教育課長、山本大学病院支援室長、小谷医学教育課長補佐、加藤医学教育課長補佐、ほか関係官

4. 議事
 
1. 開会
2.
(1) 「医学教育モデル・コア・カリキュラム」の改訂に関するワーキング・グループにおける検討について
(2) 教育者・研究者養成方策の充実に関するワーキング・グループにおける検討について
(3) 第1次報告について
3. その他

5. 配付資料
 
資料1   「医学教育モデル・コア・カリキュラム」の改訂に関するWG第1回会議(概要)
資料2 教育者・研究者養成方策の充実に関するWG第1回会議(概要)
資料3 医学部医学科卒業者の進路状況調査 調査結果(PDF:247KB)
資料4 医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議第1次報告について(案)
資料5 医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議第1次報告骨子案(たたき台)
参考 「医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」検討事項メモ
これまでの意見等の整理

 

○高久座長
 最初に事務局から、委員の出席状況と、資料を確認していただけますか。

○小谷補佐
 本日は、各委員の皆様方におかれましては、お忙しいところをお集まりいただきましてありがとうございます。
 本日は、福井委員が欠席でございます。名川委員と南委員におかれましては、後ほどお見えになると伺っております。
 また、1月1日付で医学教育課長が交代いたしましたので、御紹介させていただきます。医学教育課長の栗山雅秀でございます。

○栗山課長
 1月に異動になりまして、着任いたしました栗山と申します。よろしくお願いいたします。

○小谷補佐
 続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。議事次第、座席表、メンバー表、当面のスケジュール案、そして資料の目次がございまして、その後に資料の1から資料5までございます。
 資料1は、「医学教育モデル・コア・カリキュラム」の改訂に関するワーキング・グループの第1回会議の概要、資料2は、教育者・研究者養成方策の充実に関するワーキング・グループ第1回会議の概要、資料3は医学部医学科卒業者の進路状況調査の調査結果、資料4が医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議第1次報告についての案、資料5は、同骨子案のたたき台という形になっております。
 参考といたしまして前回もお付けしておりますが、検討事項のメモとそれに沿ったこれまでの議論を整理したものを付けさせていただいております。
 また、お手元に前回11月8日に行われました第5回会議の会議録を配付させていただいております。委員の先生方には、現在まで2回ほど確認をさせていただいておりますが、訂正を要すところ等ございましたら、後ほど事務局までお申しつけいただければと思います。後日、文部科学省ホームページに掲載させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 不足等ございましたらお願いいたします。

○高久座長
 それでは、早速議事に入らせていただきます。最初に「医学教育モデル・コア・カリキュラム」の改訂に関するワーキング・グループから報告ということで、主査の福田委員からよろしくお願いします。

○福田委員
 それでは、早速資料1に基づきまして、1月19日に開催されました「医学教育モデル・コア・カリキュラム」の改訂に関するワーキング・グループ第1回会議の検討事項等について、中身を御説明申し上げます。
 当日は協力者会議の委員の先生方、多数御出席いただきました。厚生労働省の専門官も来たんですけれども、文部科学省からは課長以下の御出席いただきました。
 はじめに、この協力者会議を受けて、このワーキング・グループの位置付けと役割について、どのように進めるのかを了承いただきました。
 次に、ワーキング・グループの今後の作業スケジュールにつきましては、モデル・コア・カリキュラムの改訂案の概要作成に向けた具体的な準備段階の作業についての内容と役割分担を検討いたしました。
 はじめの、コア・カリキュラムにかかわる現状把握のための調査検討作業については、各大学の導入してからの状況把握、改訂ニーズ把握のための作業を福島委員と北村委員にお願いすることとしました。コア・カリキュラムと医師国家試験出題基準との関連及び用語の統一性につきましては、齋藤・福島、相川・相澤・福本・松村委員にお願いいたしました。
 2番目には、コア・カリキュラムそのものも当初の記載に技術的な誤り等もございましたし、あるいは階層が重複しているようなところ、あるいは整理されていないというような部分もありました。さらに策定後に名称や制度的な変更等もありましたので、必要な修正等を行うために、奈良、齋藤、仁田委員にお願いすることになりました。またコア・カリキュラムの索引を別途作成をしておりましたが、これをきちっと索引とあるいはキーワードとして記載することになりました。これは奈良委員にお願いすることとしました。
 3番目は、新たな視点ですが、コア・カリキュラムを策定してからの社会的な状況がかなり変わってきたのを受けて、そのための調査研究作業です。一つは地域保健・医療の記載の充実です。これはある程度書かれていますが、分散していたり、分かりにくいこともあり、これら地域保険・医療の記載について梶井先生に中心になって検討のたたき台案をご検討いただくことにいたしました。次に、腫瘍の病態発生、診断、治療であります。これはこれにつきましても従来から記載はあるといえますが断片的なため、もう少し体系立ったものをつくっていく必要があることです。これは社会的な要請も非常に強いということですので検討することになりました。担当は名川委員にお願いいたしました。さらに、医療の安全性への配慮と救命・救急に関する記載の充実です。これもある程度書かれていますが、各関係方面からの要望等も提出されており、一層の安全性への配慮や記載を充実する必要があります。この作業は田中委員と福田が担当することになりました。
 これらの大体の具体的な作業スケジュールと分担について、先生方の御了解をいただきましたので、とりあえず次回の協力者会議までに、現在のスケジュールに沿って具体的に何をしなければいけないのかという洗い出し作業を行い、あるいは具体的に記載できるということがあれば、詳細に記載した形で提出していただくということにいたしました。既に多くの先生方から具体的な回答及び改訂案が寄せられておりますので、コア・カリキュラムに関するものの内、早急に検討すべき事項を整理しているところであります。
 これらの具体的な検討の後に、コア・カリキュラム全体についての御意見を自由討論という形でいただきました。かなり前向きの非常に有意義な御議論をいただき、多くの御意見を出していただきました。特に問題となる点とこれに対してどう対応したらよいかの御意見をいただきました。
 コア・カリキュラム全体は御存じのように総論部分と、実際のコア・カリキュラムの各論の部分に分けて記載されています。さらに注意すべきは、コア・カリキュラムは必要最小限に精選するとのことで提示しましたが、これだけやればいいという安易な受け止め方をされていることです。学生も教員もそのように位置付けてしまっており、そのために医学研究の位置付けなどが、重視されなくなっているとの危惧が出され、これとあわせて卒後臨床研修制度の影響もかかわって医学研究が蔑ろにされているとの御指摘もありました。
 それから基礎と臨床の対比や臨床の実務的な方向に重点がおかれ、改めて医師養成の課程での研究マインドの育成、医療の検証をしていく研究あるいは次世代の医療に向けた研究を進めていくということが不可欠であるとの御指摘でした。この辺のところは、コア・カリキュラムの総論の部分に書かれていますが、やや抽象的であり、具体的に記載することが必要であるとの御意見でした。
 コア・カリキュラムにつきましては、例えば外国にもProfessionalismを明確にするために、英国の”Tomorrow's Doctors”などではコア・カリキュラムの総論的なことが主に書いてあり、また、アメリカの一部だと思いますが、中国系の方々を中心に積極的に参加された、IIME、Institute for International Medical Educationの”Global Minimum Essential Requirement”が重視されてきています。これはかなり具体的でもあり参考にすべきとの御意見でした。これは次回以降のワーキング・グループに資料として提出して検討して行くことになりました。
 コア・カリキュラムは発表されて既に4年、5年経っておりますが、未だに十分浸透していないというところがあるとの御指摘もありました。医学教育関係者だけではなくて、医師一般、あるいは医療界、あるいは社会一般に向けて周知していく必要があるとの御指摘です。それから、医療費の増加が問題になっている医療保険制度について、あるいは、倫理的なところの記載も充実していく必要があるとの御指摘もありました。
 それから、前回コア・カリキュラムの策定の主眼点が、急性期の医療に近い形のものを主体としているが、慢性期についての記載もやはり社会的な面から考えると必要ではないかとの御意見もありました。これらに関しては、特に総論部分にはかなりしっかり書いてありますが、より明確に位置付けられるような記載の工夫が必要と思われました。
 それから医師国家試験との整合性については、当然整合性を持たせる必要があるのとことでほぼ意見の一致を見ました。臨床実習については、相当重要な課題であり、名川先生を主査とするワーキング・グループで検討していく予定になっており、そこできちんとした骨格を示して、検討を進めていくことが必要とのことで一致しました。
 コア・カリキュラムというと医師養成ということばかりで、研究面、生命科学研究・医学研究、この辺についても触れておくという御意見がありました。医師養成の課程での研究の重要性について改めて強調すべきとのことで検討することになりました。
 以上をまとめまして、役割の了解、それから具体的な作業の分担、それから次の改訂に向けた基本的な内容が最後のまとめに記載されております。以上です。

○高久座長
 福田先生ありがとうございました。
 どなたか質問・御意見おありでしょうか。討論の中で話していただいて、結構だと思うのですが、もともとコア・カリキュラムを作った時に全体のカリキュラムの70パーセントぐらいをコアにして、残りの30パーセントは各医科大学の独自のカリキュラムといたしました。その30パーセントのカリキュラムをどう組むかは、各医科大学がどういう医師を育てるかという各大学の目標によって自由に決めることになっていました。コアの内容をあまり広げると各大学の教育の特徴がなくなってしまいます。その点については福田先生、御説明をお願いします。

○福田委員
 御指摘のとおりでありまして、各大学の授業時間数等を調べてみないと分かりませんが、コア・カリキュラムとして提示したのはミニマム・エッセンシャルいう位置付けであることが確かに総論の部分に明記されています。これが本当に守られているかどうかは分かりませんけれども、ここのところの理解が非常に不足しているのを痛感しています。先生の御指摘のように、各大学の教育理念が全く同一ではないので、そこを十分勘案してやっていただくことが必要と思います。これを強調するということも今後考えていくべきことと思います。英国の”Tomorrow's Doctors”を見ますと、我々と同じようにコア・カリキュラムと同時に選択制の教育プログラムを用意すべきとなっています。選択制の割合を見ますと、たしか25パーセントか30パーセント程度をやはり位置付けている。国際的にもかなり同じような割合で検討されているということがわかります。今の御指摘について、次回にも最重要課題といたします。

○高久座長
 どなたか。よろしいでしょうか。福田先生、御苦労さまでした。
 このコア・カリキュラムの改訂につきまして、以前にも御議論いただいたわけですが、大幅な改訂というよりは必要な個所についてのマイナーチェンジということになっています。それから地域医療・腫瘍・医療安全等に係るコア・カリキュラムの改訂につきましては、第1次報告にその内容を盛り込んでいくということなので、後でまた御議論いただくことになると思います。それからもう一つの課題である臨床実習については名川委員を主査としてワーキング・グループを立ち上げる。その際に厚生労働省の担当の方の参加を得るようにしたいと考えています。

○吉田委員
 高久先生、ちょっと一言いいですか。今の7割、3割という議論なんですけれども、ちょっと調べてみますと、3分の2と3分の1と書いてあります。それで3分の2をコアにするということ、3分の1は各大学が主体性を持ってカリキュラムを組むということです。そこのところは福田先生、どういう立場ですか。

○福田委員
 確かにその辺の現行の記載の時には3分の2、3分の1となっておりました。

○吉田委員
 3分の2、3分の1になっているでしょう。

○福田委員
 それを四捨五入すると7割と3割になってしまいますが、そう簡単ではありません。

○吉田委員
 それは四捨五入したら7割になるけれども、ちょっと気になるんです。

○福田委員
 実際にこの別冊を見ていただくとわかりますが、単位計算をきちんとやりまして、明示されております。この中で基本事項というところは単位計算できないんです。数値的に合わせられないため提示しておりません。後ろの方のところに、かなり苦労してデータを収集してあります。医学部は6年間で、188単位以上ですからその単純に3分の1あるいは3分の2といっても、教養教育の部分をどうするかは難しいところです。実質的に専門教育の部分にならざるを得ないんです。そうすると、7割近くなってしまうと思われます。これらは十分整理して、外国の状況も把握して、国内データに基づいて、大体これくらいでいいだろうということで作成しましたが、ここについても総論部分がやはり完全に無視されているということがあり、大事な視点が忘れられています。これは是非改訂したいと思います。

○高久座長
 先生よろしいでしょうか。
 臨床実習のワーキング・グループの、人選については名川主査と座長とで後で決めさせていただきたいと思いますがよろしいですか。お願いします。
 次に、教育者・研究者養成方策の充実に関するワーキング・グループからの報告、これは主査の大橋委員からよろしくお願いします。

○大橋委員
 それでは、説明させていただきます。お手元の資料2をご覧いただきたいと思います。その後ろがこの教育者・研究者養成方策の充実に関するワーキング・グループのメンバーでございます。私、主査をさせていただいております。副主査に垣生先生と御一緒にさせていただいております。
 専門委員はご覧いただきますと、全員この協力者会議のメンバーではございません。選ばせていただいた理由は、むしろ今の日本の医科学研究、それぞれ基礎研究・生命科学の分野、産学連携といったところまでの幅広い分野で、恐らく日本をリードしているというような研究者を網羅なく入れさせていただいて、本音を聞かせていただこうというような趣旨もございまして、こういうメンバー構成になっておりますことをまず御報告させていただきます。
 そして、1月26日にそこにございますように、協力者会議から福田先生にも御出席いただきました。そして厚労省からは宇都宮室長にもおいでいただき、文科省からは泉審議官、栗山課長ほかの方の参加をいただきました。まず、本WGの趣旨というのは、特に学部・大学院における具体的な教育者・研究者の養成について、現在あるシステムで十分なのかどうかという辺りの検討を進める予定です。初期研修が2年入ったことによる教育者・研究者についての養成に、何かひずみや問題点が新たに生じたのかどうかという辺りを中心に、まとめていきましょうとことになりました。できればこれは福田先生のモデル・コア・カリキュラムの見直しワーキング・グループとバッティングする部分もあり、それを新たにつくっていくというような、ちょっと難しさがございます。
 それで、自由討論を一、二回させていただいた中で、この本協議会との趣旨に沿ったような形で焦点を絞りながら、まとめていければと存じている次第です。できれば夏から秋くらいまでに報告書を提出できればと思っております。
 まず大ざっぱに申しますと、一つは先ほど福田先生の報告の1にもございましたように、どうしても研究者の議論をしますと、臨床医と研究者というのは何か右と左に対峙する、あるいは基礎と臨床は対峙するというような形の議論になりがちでございます。しかし、国民の望んでいる本当の医師というようなことを考えますと、サイエンティフィック・マインドを持つと同時に、ヒューマニティー・アートを持った医師を育成していくという大前提の中において、そのマインドというのをどうやって教育できるのかということにつきるかと存じます。コア・カリキュラムで今の日本の医師育成の課題あるいは物の見方、考え方のところを、どういうふうなカリキュラムに入れていけばいいのか、あるいは入学試験の前の段階から、何かもうちょっと医育機関として努力することがあるのかどうか、そういうことについても、極めて重要ではないかという御議論がございました。その根底にありますのは、やはり井村先生のレポートがございますが、つい最近、日本の研究者から生命科学系の論文で、インターナショナルのハイクオリティーのジャーナル、例えばサイエンス、ネイチャー等に出る論文は、爆発的に今増加しておりますが、患者さんを対象とするようなリサーチがランセットとか、ニューイングランド・ジャーナルのペーパーが日本の研究者発表される数は、年々と減少しているというような事実をどう踏まえ、これを改善していったらいいのかという問題について、やはり一つの大きな議論があるかと存じます。
 もう一つは、やはり教育者という視点の議論において、御存知のように国立大学法人の医学部においては、医師免状を持った教員の手当という医師手当というようなものを担保して、そのインセンティブ与えるような形で、教育者をどうにか確保しようというような形になっておりました。やはり現実はPh.Dで医師免許を持たない方の医学部における教員の比率というのは、やはり国による違いがございますが、かなり今増えてきているのが事実です。そういう方が欧米のPh.Dに比べると、やはり国にかかわる、あるいは医学全体の理解がないというような形で、剣のような鋭く、先進の知識をお持ちですけれども、国民の望む医師のマインドということを教えられるかというようなことについて、やはり重要な問題が出ているんではないかと議論されました。
 それにこの法人化という問題が起こりまして、特に地方の大学におきましては、後でも出てまいりますが、どうしてもその医師を育成する機関であるはずの大学でございますけれども、あるいは大学病院でございますが、基本的にはもう一つやはり県からは高度医療センターという役割を担うというのが期待されております。それと経営という視点の努力が必死の状態ですので、研究にしわ寄せがいっている。あるいは中間層といいますか、助教授、講師層にちょっと疲弊感が起こって、どうしても研究活動が低下しているというようなことがこの2、3年、目につくようになりました。それが加速的にこういう問題の議論を進めているのではないかというように考えます。
 そこにございますように、自由討論でございますのと、あとこの協議会の流れ全体は御存知ないという方もいらっしゃることを御承知の上でお聞きいただきたいと存じます。
 やはり今申しましたように、国立大学の研究というのはやっぱりすそ野があって初めて成立するもので、どの医科大学でも科学的マインドを教育する問題と、やっぱり質の問題がございます。ノーベル賞といったものを対象にするような研究者の育成といった問題と、ごちゃ混ぜにはちょっとできない問題があるんではないかということを感じます。いわゆる医師資格を持った人の教育者研究者への育成の視点においても、地方の大学においてはこれはやはり医師不足といいますか、医師が大学に残らない状況では育成も非常に難しくなってきているというのが現状です。同時に、私立大学と国公立大学でも少しその違いがあるんではないかというようなことが議論として出されました。学部教育においては、やはり今ゆとり教育と少子化というのがキーワードとしてありまして、医学部といえどもまったく生物学を履修せず、あるいは物理化学、数学等の学力が必ずしも十分でないような学生さんたちが入学してくる状況において、ただ受け身でよろしいのかどうかというような問題もございました。
 さらに、やはり知識や技術ということを大学が教えることを学部教育とするならば、もう無尽蔵でございますので、きりがないということです。やはり物の見方、考え方というのをきちっと定着するのを、コア・カリキュラムの3分の1のところでしないと、困ったことが起こるのではないかとの議論があります。同時にそういうロジカルな考え方以外に、この前も出ておりますクリティカルなものの見方ということができるような医師を育てていかないと、やはり社会の一員としての役割を果たせないのではないかというようなことが問題になりました。一体どういうふうにして教えたらいいのだろうという議論が幾つか出されました。学生は現実、ほとんど時間的余裕がないというのが今の医科大学の現状ではないかと存じます。そういう状況でやはり工夫をしないと、そういうものの考え方や批判的なものの見方というのはカリキュラムを設定しただけではなかなか身につかないんではないかというようなことも議論がありました。それは教える教員の資質にも影響あるんではないか。その保障、担保をどうするのだということも、多少議論になりました。
 さらに、この研究者というのは、恐らく質の高い医科学研究者、そういう研究者を育成するためにやはり年齢が関係するのではないかとの意見があります。ある若い年齢の時にそれなりの研究の基本をきちっとトレーニングをさせることが必要なのではないかとの考えです。そういうマインドを持っていないと、50歳、60歳になってからそれを身に付けろといっても、ちょっと無理なのではないかというような御議論もございました。
 本来そのような役割をするのは大学院であるということになっているわけでございますが、医学系は6年制としていることもございますので、それに上乗せ4年の博士課程ということの大学院の意味付け、位置付けということを明確にすべきでありますと考えています。これについて、もう既に中教審あるいは大学院部会から幾つかの答申を得たわけでございますが、その中で医学部の大学院はやはりいくつかのコース分けが必要なのではないかということが出てきました。いみじくも大学院の定員というのが、医学部卒業7,600に対して、6,000もあるという意味についての御質問もございました。やはりそこで出てくる問題は年齢がいってから大学院生になるということで、他の大学院よりも経済的支援を与えないと、家庭も持ちながら研究も診療もと二足どころなくて、幾つかのわらじを履きながらやるということで、やはり質の問題で問題が出てきているのではないかという意見もあります。例えばデューク大学などは、NIHからのグラントがほとんど大学院生の生活費としてグラントが出ているらしいという話がありまして、そういうことで何年間かはもう生活のことは考えずに研究に専念できるというような、グラント制みたいなものを国が出して、やる気のある人を育てるというような方策を欧米ではとっているようでございます。
 さらに教育体制のインセンティブ等々ですが、そこにございますように、やはり今のままで地方の大学のその疲弊化とそこから研究者がいなくなるということは、研究はある限られた旧帝大でやればいいということではなくて、研究者のすそ野を広げる視点で問題が生じてくる。もう一つは、やはりさっき言ったように医学は科学の一つでもあるというようなサイエンティフィック・マインドを持つという意味でも、医科大学における研究の質が落ちてくるということは、教える者の質が落ちることにもつながりますので、非常に重大な問題として考えなくてはいけないのではないかとかいう御意見もありました。もう一つはやはり臨床的研究が落ちているという理由の一つとして御指摘がございましたが、疫学研究などをやる時の医療統計学とか、そういう公衆衛生学の視点の学問領域が医学部の中で衰退しているんではないかという問題も指摘されています。それを教える方も評価をきちっとされないために、プロフェッショナルな人が減ってきているということも問題だと思います。実は先ほど申しました、これがニューイングランド・ジャーナルの論文が減っているところにもつながっていくのではないかというような御指摘もございました。
 MD/Ph.Dコースというようなものが、現在システムとしてあるんですけれども、このシステム自体が医学部から一度退学しなくてはできないというような、制度上の問題も幾つかあって、運用する上でもそれを受ける学生の方にも、二の足を踏むような制度になっており、改革が必要な部分もあるのではということも、自由討論から出ました。
 大変いろいろ活発な御議論いただきまして、我々も気づかなかったことも気づかせていただきましたが、同時に議論のかなりな部分はコア・カリキュラムの改革の問題とか、あるいは大学院の臨床系の在り方の問題とかと連携しておりますので、その辺のところが最終的にはこの協力者会議と歩調を合わせながら進めなくてはいけないのではないかと存じます。
 一つは、ほとんどが超一流の研究者だとかが多かったこともございまして、教育者の育成ということについて、ちょっと議論が少なかったということもございますので、これについてはもうちょっと集中的にやってまいりたいと思います。例えば、御存知のようにデンマーク、ノルウェー、スウェーデンの3国で、医学を教える先生にプロフェッシップというような専門教育者制度みたいなものを運用しております。そういうものを持った方がプロモーションされるというようなシステムも考えていく必要があると思います。
 あるいは日本の一部の基礎系の学会の中では、学会が自ら教育者を育成するようなプログラム構築を始めていたり、あるいは学会では日本で有名な、非常に講義がうまいとか、それから評判のあるような先生の講義を学会でやるというような状況にまできておりますので、そういう学会の動きとも歩調を合わせながら教育者の育成をやる必要があるんではないかなというふうに考えている次第でございます。
 以上でございます。

○高久座長
 いろいろな問題点を要領よく御説明いただきましてどうもありがとうございました。どなたか御質問おありでしょうか。
 臨床のスタッフが非常に忙しくなっているのは事実です。患者の在院日数が半分になっているのに、スタッフの数はほとんど増えていないので、その分だけスタッフが忙しくなっている。さらに、医療安全ということにも負担がかかる。そのようなことがあって、研究がますますやりにくくなっている。マンパワーがないということが一番大きな問題です。
 次に、第1次報告の骨子案について、これはこの会議の報告になるわけでありまして、非常に重要な項目でありますけれども、最初に事務局の方から骨子案について説明よろしくお願いします。

○小谷補佐
 それでは説明させていただきます。失礼して座って説明させていただきます。
 まず資料4をご覧ください。第1回の会合以来、お願いさせていただいておりましたが、平成18年春を目途に、これまでの議論を取りまとめて第1次報告という形で、その審議の取りまとめたものを公表させていただければというふうに思っております。本協力者会議におきましては、これまで地域医療を担う医師の養成・確保を中心に、配付させていただいておりますが、検討事項メモに掲げておりますような項目について、御議論いただきました。
 このうち、第1次報告、今回の報告におきましては、現在厚生労働省におかれまして、医師の受給に関する検討会という検討会で、将来の医師受給の見通しがどうなるかということ、これを今年度中を目途に取りまとめられるというような話を伺っておりますので、その結果も踏まえまして、地域医療を担う医師の養成・確保について御提案をいただくとともに、平成18年度中に行っていただきます最終報告に向けた検討課題をお示しいただければというふうに事務局としては考えております。
 具体的な報告内容でございますが、2番の方に書いておりますがまず地域医療を担う医師の養成・確保策といたしましては、2の(1)の1にございますように、地域医療を担う医師の不足が指摘される中で、医学教育や大学病院の果たす役割について、基本的な考えをお示しいただきました上で、その後、2から6にございますような入学時学部教育、卒後教育、それぞれの段階における改善策ですとか、大学病院の地域医療の支援策といったことについて、お示しいただければと思っております。これにつきましては、実際に文案を書く段階で、特に重点的なものを前に持ってくるといったような構成の組みかえはあり得るかと思っております。
 これにつきましては、また後ほど御説明しますが、事務局の方で御審議いただくための骨子案のたたき台を今回御用意させていただいております。
 そして2つ目の事項といたしまして、最終報告に向けた検討課題といたしまして、これまで御議論いただいた御意見の中で、主な事項を(2)の1から9で別途させていただきました。これらにつきましては、これまでの議論の程度に応じまして、この協力者会議としての問題意識を述べていただくというようなことを考えております。後ほど御説明しますが医学教育モデル・コア・カリキュラムの改訂につきましては、先ほどワーキング・グループ内の議論も紹介されましたけれども、できましたら地域医療のみならず、腫瘍や医療安全等の問題についてもその改訂のあらましをこの第1次報告でお示しいただければというふうに考えております。
 このような構成でまとめていただけるというようなことで御了解いただけましたら、地域医療を担う医師の養成・確保につきましては、第1次報告で御提言いただきましたら、文部科学省といたしまして、その内容の実現に向けて速やかに取り組んでまいりますし、3の意見募集の方に書いておりますけれども、最終報告までに検討すべき課題につきましては、パブリック・コメントのような形で広く国民の皆様から意見募集を行いまして、お寄せいただいた意見も踏まえていただいて、4月以降、最終報告に向けた御審議を進めていただければというふうに考えております。
 大きな構成はこのような形でございます。
 引き続きよろしいでしょうか。
 それでは引き続き資料5で、先ほど申し上げました地域医療を担う医師の養成・確保についての骨子案のたたき台のようなものを用意させていただきましたので、お目通しいただければと思います。
 まず(1)でございますが、検討に当たっての基本的な考え方といたしまして、a)でまず地域における医療体制の確保が非常に重要な課題ということであるけれども、b)でありますように、へき地を含む地域での医師の確保は極めて困難なものだということ。そしてc)で現在、厚生労働省、総務省、文部科学省の方で、当面必要となる対応策から適宜取組を進めているということを現状を説明しております。
 そういった現状を踏まえた上でd)でございますように、中長期的な視点に立って、継続的かつ安定的に地域医療を担う医師を確保していくということを考えた場合には、当然、医療制度の改革というものもございますが、医学教育の果たす役割も重要になってくるんではないかということで書かれておりまして、特に地方に所在する医学部は、国公私立を問わず地域の医育機関として、地域医療を担う医師の養成を期待されているというふうに書いております。
 それでe)で、大学病院についても地域の中核病院として地域医療の水準の向上に努めることが期待されているということを書いておりまして、これらを踏まえてf)で基本的な考え方といたしまして、各大学において地域の医育機関として学部教育、卒後教育の各段階において将来の地域医療を担う人材の養成に努めるとともに、各大学病院においては地域の中核病院として、適切な医療体制の構築のために協力を行うことが必要という形で基本的な考えを示させていただいております。
 続きまして、入学時点にかかわる論点になりますが、まず(2)でございます医学部の今後の入学定員の在り方につきましては、先ほど御説明いたしましたとおり、厚生労働省の方の検討を踏まえて、検討をさせていただく必要もございますので、今回は骨子案をお示しできておりません。
 (3)の入学者選抜における地域枠の在り方でございます。これにつきましては、まずa)で地域枠というものについて、こういったものだということを説明しておりまして、b)で1枚めくっていただきますが、平成18年度の入学者選抜の状況を説明しております。
 そこでc)で一般にと断わっておりますが、卒業後に地元の医療機関等に勤務する割合につきまして、地元出身者の方が卒業後に地元の医療機関等に勤務する割合の方が、地元以外の出身者の方が卒業後に地元の医療機関等に勤務する割合より多いということ、調査の結果言えるのではないかということがわかりましたので、そういった意味で地域枠の設定は、地域の医師確保に関する有効な方策の一つであるという形で書かせていただきました。
 これにつきましては、恐れ入ります資料3にちょっと若干補足させていただきたいのですけれども、資料3でカラー刷りの医学部医学科卒業者の進路状況調査結果という形でお示しいたしました。今回、地域枠、要は地元から学生を得るということが、どれだけ当該地域にとって有効なことかということを調査いたしまして、全大学を対象に調査をお願いいたしました。残念ながらデータ等がないところもございまして、すべての大学から御回答いただいたわけではございませんが、多くの大学から回答をいただいております。調査事項の1項目といたしましては、まず平成15年度、平成16年度の卒業者について、その進路がどうなっているかということを調査いたしました。それから調査事項の2つ目といたしましては、平成6年度の卒業生について、医学部医学科卒業後、10年後、平成16年度においてどういった就職状況にあるかというのを調査させていただきました。
 1枚おめくりいただきまして、医学部医学科卒業生の進路状況ということでございます。具体的な数字は上の表に書かせていただいておりますが、ここで地元出身者といいますのは、例えば北海道大学を例にとりますと、北海道大学が所在する北海道内の高等学校の卒業者のことを地元出身者と言っております。そういった意味でいいますと、中学校まではよその県に、例えば青森県に在住されていて、高校から北海道の高校に通ったというような方も地元出身者というような形で書かせていただいております。
 進学者につきましては、これは日本国内の大学院等に進学した者に限らせていただいておりまして、外国の学校等に入学された方はその他という取り扱いとさせていただきました。これにつきまして、15年度、16年度、臨床研修医の研修先に着目して表をつくったものが下の表でございまして、例えば平成15年度国立というところを見ていただきますと、1,813と1,770という数字がございます。この1,813というのが、自県内で臨床研修を行っていらっしゃる方、1,770が他県で臨床研修を行っていらっしゃる方という形になります。それで赤色は地元の方、青色は地元以外の方という形になります。今、またちょっと北海道大学で例をとらせていただきますと、北海道大学で御卒業後、北海道で臨床研修を行っていらっしゃる方というのが、この1,813のエリアに入りまして、そのうち北海道の地元出身者の方がこのピンクの783に入ると。北海道以外の出身の方はこの青の1,030に入る形になります。他県で臨床研修をされた方というのが、この1,770のカテゴリーに入りまして、そのうち北海道出身の方がピンクの236、北海道以外の出身の方が1,534のこのブルーのカテゴリーにそれぞれ入ると、そういったような図になっております。この図は平成15年度の国公私立それぞれ、また平成16年度、国立公立私立それぞれすべてご覧いただきますと、そのピンクの配分をご覧いただきましてもお分かりいただけるんではないかと思いますが、地元の方の方が地元の臨床研修をされる割合は多いというようなことは言えるのではないかということがわかりました。
 それから、もう1枚めくっていただきまして、医学部医学科卒業者の学部卒業10年後の就職状況でございます。これは先ほど申し上げましたとおり、卒業者数、平成6年度の卒業者数について調べさせていただきました。その下に図をつくっておりますが、ピンク、青、それから右、左の区分けは同じでございます。これにつきましてもやはり10年後の状況を見ても、例えば北海道御出身の方は、北海道内で勤務される割合が高いということが国公私立、それぞれの設置者を見ても共通に言えるのではないかということが分かりました。
 そういったことから、今回このような地域の医師確保に関する有効な施策の一つであると考えられるというような形で、c)のところは書かせていただいております。
 ではまた恐れ入ります。資料5の2ページに戻っていただきまして、d)でございますが、しかしながら、本協力者会議の中でも御意見がございましたが、大学がその6年間の医学教育を通じまして、地域枠のような特定の学生について、地域医療に貢献したいという考えを深めていくというのは、なかなかこれは容易ではないということでございます。
 そういうわけで、e)でございます。具体的な対策を書いておりますが、地域枠の対象となる高等学校に対して、地域枠の趣旨を十分に説明していただく。具体的には、あるいは高校生に対して医師としてへき地等における医療の確保や向上と地域住民の福祉の増進に貢献することの魅力ですとか、そのような医師に求められる人格や適性などについて、説明をする機会を設けていただくと、そういった高等学校教育との連携を図ることが必要と書かせていただいております。
 f)では、スーパーサイエンスハイスクールとの連携が非常にいいという御意見がございましたので、そういったことに触れさせていただきました。
 また、g)では地域枠の設定に当たりまして、現在地域枠では推薦入試でしかありませんけれども、例えばAO入試の一貫として行うといったこと。あるいは推薦入試で行う場合であっても、島根大の取組など紹介させていただきましたけれども、受験生に地域の社会福祉施設等におけるボランティア活動を通じて、地域医療について考える経験を求めるですとか、医師不足の深刻な地域の関係者の意見を参考にすると、そういったより地域医療に対する意欲の高い学生を選抜する工夫を凝らしていただくことですとか、大体1割程度ぐらいが多かったんですが、地域枠を拡大するといったことも考えられるのではないかということで書かせていただきました。
 また、h)ではさらにただ入ればいいということではなくて、入った後のカリキュラム編成のことについて、6年間を通じて地域医療についての理解を深めるよう工夫することが必要と書かせていただいております。
 また一方、事務局から紹介させていただきましたが、i)、j)で地元の医師確保のための奨学金制度の話を書かせていただいております。k)にございますように、こういった奨学金制度は学生の地域医療に対する志向を促すために、入学者選抜における地域枠の実施、こうした奨学金制度との関連を持たせることも有効であると書かせていただいておりまして、そのような意味を含めまして、l)でその大学と都道府県との連携が重要だといった形で書かせていただいております。
 続きまして、学部教育にかかわる論点でございます。(4)以降でございますが、まずa)からb)、c)におきまして、モデル・コア・カリキュラムにつきまして、どういった趣旨のものであるということ、また既に66大学においてカリキュラム改革が実施されているという事実を説明しております。
 そしてd)におきまして、モデル・コア・カリキュラムにおける医学生の到達目標として、実際に書かれていることを挙げさせていただきました。
 そしてe)といたしまして、授業科目数や開講年次に差はございますが、すべての大学医学部・医科大学において地域医療に関する教育は実施されておりまして、今後一層の充実が求められているという形で書かせていただいております。
 f)では、今後の各大学の地域医療に関する教育の改善を図るため、モデル・コア・カリキュラムにおける地域医療に関する記述の充実を提言するということで、これはペンディングでございまして、現在ワーキング・グループで検討中でございますので、このワーキング・グループの方で改訂いただければ、その改訂のポイントを紹介するようなことが考えられるのではないかということで掲げております。
 g)では、またモデル・コア・カリキュラムにかかわらず、学生の地域医療に関する興味・関心を高める取組として、協力者会議の中で御意見がございましたが、学部教育の早期から地域医療の現場に赴いて、地域住民の生活意識や医療ニーズについて、アンケート調査を行うといった学生に地域の実情を肌で感じる経験をさせることが有効であるということ。あるいは、51大学において早期の体験学習が実施されているということ。あるいは53大学において臨床実習を学外の病院で行っていらっしゃいますし、20大学においては地域保健に関する実習、保健所等で行っていらっしゃるというのが、医学部白書の方でも紹介されておりました。また、地域医療従事者や地域保健従事者に特別講義ですとか、コメディカル等の医療従事者体験実習、あるいは離島、へき地における実習、あるいは社会医学実習において地域特有の課題について保健所の職員とともに調査研究を実施したりするといった、様々な取組が各大学書かれておりますので、1枚めくっていただきまして4ページでございますが、j)のところではこういった様々な各大学の取組ございますが、この取組の広がりですとか、充実が求められるという形で書かせていただいております。
 これは内容面にかかわりますが、k)では教育体制の整備のことを触れさせていただいております。協力者会議の中にも御意見ございましたが、各大学が例えば各都道府県に置かれているへき地医療支援機構の担当医師の参画を得るとか、あるいは地域医療を専門とする教育組織を設けるといったような形で、教育体制の整備について検討を行うことが必要と書かせていただきました。また、そういった各大学の取組を、国や地方公共団体が必要な予算措置ですとか、寄附講座の設置等を通じて支援することも必要だということを書かせていただいております。
 国の財政支援といたしまして、m)でこの会議でも御紹介させていただきました「地域医療等社会的ニーズに対応した医療人教育支援プログラム」ございましたけれども、こういったこのような国の財政支援が拡充されることが求められるという形で書かせていただいております。
 続きまして、ここからは卒後教育にかかわる論点でございます。(5)の1が、まず大学病院における新医師臨床研修の充実について書かせていただきました。a)からe)につきましては、この新医師臨床研修導入の背景ですとか、どういったものであるか、大まかな内容を記述させていただいております。平成16年4月から医師の臨床研修が必須化されまして、医師としての人格をかん養し、将来専門とする分野にかかわらず、基本的な能力を身につけることを基本的な考え方としてスタートしたということ。さらに研修医は医療のみならず、地域の保健、福祉の分野についても経験することとなったという形で書かせていただいております。
 5ページに移らせていただきました。f)でございますが、このような新医師臨床研修の導入を踏まえて、各大学病院が様々な点で尽力しているという形で書かせていただいております。
 しかしながら、g)でございますが、こういった大学も努力はしているんですけれども、現実の問題として研修医のマッチングの結果、ほとんどの大学病院において研修医の数は必修化以前と比べて減少したということ。それは特に地方大学における減少が著しくなっているということ。さらにスーパーローテート方式という形で研修の方法が変わりましたので、研修医の配置や指導体制についても見直しが必要となったということを書かせていただいております。
 このような状況から、h)でございますが、大学病院において自らの教育、研究、診療の体制を確保する必要が生じ、従来のように地域の医療機関等からの医師紹介の要請に応じることが難しくなってきているといった状況を書かせていただきました。
 i)におきまして、こういった状況があることから、独自に必要な医師を確保することが難しく、かつ大学病院の他に医師の紹介を要請するあてのない地域の医療機関は、今度はそういったところは診療を継続することが困難となってきておりまして、このことはいわゆる医師の引きはがしといったような指摘につながっているんではないかということで書かせていただきました。
 そういった意味で各大学においては地域全体として大学病院と地域の医療機関、保健所等が連携した卒後臨床研修体制を整備して、医学生への積極的な情報提供を行い、地域での卒後臨床研修者数を増やすとともに、地域医療への定着を図ることが必要ということを書かせていただいております。
 j)では、地域保健医療が必修科目となっておりますけれども、協力者会議で御指摘ございましたが、臨床研修の指導医や研修医が地域保健医療の重要性を十分に理解していない場合もあるのではないかという、そういった指摘を書かせていただきまして、それを受けまして、k)とl)では、まずk)では、各大学においてワークショップや指導医講習会の開催を通じて、指導医に対し地域保健医療の重要性について理解を深めさせることが必要であるということ。さらにl)では、大学側と受け入れ側の緊密な連携が不可欠であるとともに、研修前後の研修医への十分な指導が必要であるということを挙げております。
  2におきましては、新医師臨床研修後の研修、これは大学によって後期研修と言われていたり、専門研修と言われていたりしますけれども、そこにおける総合診療医の育成という形で書かせていただいております。
 a)、b)につきましては、新医師臨床研修後の研修が必要であるということ。それが従来は多くの場合、各病院の診療科に配属されていて独自の指導体制のもとで、標準化された研修プログラムが6ページになりますが、もなく診療を行っている場合があったというような例が少なからず見られたという形で書いております。
 c)の方におきまして、こういった状況も踏まえまして、専門的な臨床教育、研修提供体制を整備する必要があり、広範囲な分野において高度専門医療を提供する大学病院が地域の医療機関等との連携を図りながら、その中核を担っていくということを書いております。さらに、一般的なこういった専門研修、後期研修から踏み込んで、地域医療を担う医師を養成する観点からは、専門的な診療能力ですとか、チーム医療を行うためのリーダーシップに加えまして、地域医療を担うための全人的な診療能力を高めさせることが必要と書いておりまして、e)でこのために地域社会、特にニーズの高い総合的なケアを修めて、プライマリ・ケアを極める医師についても、高度な専門性を持った臨床医であるとの認識に立って、後期研修における総合診療医の養成システムを構築していくことが重要ということで書かせていただいております。
 f)では、そのための大学病院の対策といたしまして、各診療科のみならず、地域の医療機関との連携を図りながら、プライマリ・ケアのための研修を行うことができる体制を整備することについて検討する必要があることを示しておりまして、g)でその際、関係学会等におかれて、総合診療医の認定医制度を設けるなど、この総合診療医の専門性が社会的にも認知されるような仕組みを設けることが望まれるということを記述しております。
  3では、大学や大学病院における生涯教育体制の整備について書かせていただきました。医師の生涯にわたる学習につきましては、各学会や医師会によって様々な場が提供されているわけでございますが、医学や医療に関する最も重要な医療資源を有する大学や大学病院においては、医師等の医療人のみならず、社会人に対する生涯学習の機会を提供することが求められているということ。それでb)では、特に地域医療を担う医師の養成の観点からは、大学や大学病院において、退職後の医師も含めて地域医療にかかわることを希望する様々な年代の医師が、プライマリ・ケアやへき地医療について学ぶ機会を提供することが期待されるということを書いております。
 その次は、大学病院にかかわる論点でございます。まず(6)の1が大学病院による地域医療支援でございます。これにつきましては、まずa)で従来、地域の医療機関等からの要請に基づいて、必要な医師を派遣するようなシステム自体が構築されていなかったということ。7ページに移りますが、b)でそういった中で、大学病院が地域の中核的な医療機関として、地域の医療機関等からの要請を受けて、医師を紹介することによって、地域における医師確保に対して一定の役割を果たしてきたという現状を説明しております。ひいてはそういった現状の中で、その医師の紹介が各診療科の裁量に委ねられていたために、透明性に欠けるものであったことは否めないということを認めました上で、d)で各大学において、診療科単位で行われている医師紹介の窓口を一本化するなど、透明性を確保しながら医師紹介を行うシステムを構築することが望ましいと記載しております。
 e)では、さらに地域医療の充実・発展に貢献する観点から、大学が地域の医療行政を担う都道府県と緊密な連携を図ることが求められているということ。その例といたしまして、大学として地域における医療対策協議会に積極的に参加していただいて、地域の医療機関との病病連携・病診連携などを実施していただいて、その医療機能分担を推進していただくということ。あるいは、医療資源の集約化に資する医師紹介を行ったりしていただくといったような例を掲げております。
 またf)におきましては、大学病院の救命救急センターや救急部が、地域の救急体制の中核として重要な役割を果たしておりますので、そこでの救命救急体制の整備・充実ですとか、救急医の養成の必要性を書いております。
 g)におきましては、そういった各大学病院の取組を、国や地方公共団体が支援することが必要であるという形で書いております。
  2は遠隔医療システムの活用でございます。遠隔医療システムにつきましては、平成17年3月現在、28病院において行われておりまして、旭川医科大学のようななかなか望ましい例もあるようでございます。こういったことから、大学病院が情報通信技術を活用いたしまして、地域の医療機関とのネットワークを形成するといったことで、医療面での協力を行うことが期待されるということ。そして、国や地方公共団体は成功事例を取り上げて、必要な支援を行うことについて検討が必要であるといった形でまとめさせていただきました。これはあくまでもたたき台でございますので、御意見等よろしくお願いいたします。

○高久座長
 どうもありがとうございました。地域医療を担う医師の養成及び確保についての報告書のたたき台ということで御意見をお願いしたいと思います。

○小谷補佐
 その部分のみでございます。

○高久座長
 どなたか御意見おありですか。非常に広範な範囲で、どの問題から議論してよいか、迷いますが。

○松尾委員
 非常によく書かれているというふうに思うのですけれども、ここでも意見がいろいろ出ましたように、地域医療の問題を大学病院あるいは医学教育だけで解決するというのは非常に難しいことであると感じています。この会で議論されたことを踏まえて、この報告の中に是非、国の施策としての地域医療の基本的な方向性を打ち出すよう求めるような部分を入れて頂きたい。例えば、昨年総務省、文科省、厚労省が地域医療の計画を各県に作るように呼びかけを行ったと思いますが、その具体化がされれば、医師の配置の問題も動きが見えると思います。一定の秩序がないところでは、大学毎、地域毎バラバラの統一のとれない医師の配置が続くと思います。

○高久座長
 へき地医療は、基本的には地方自治体の問題ですね。国の問題ではなく地方自治体の問題である。そこのところを少しはっきりさせた方が良いかもしれないですね。大学病院の貢献は重要ですが、最終的な責任は、自治体にある。
 どうぞ。

○橋本委員
 今の御意見と同じようなことなんですが、この辺が書いてある今おっしゃるように地域医療を担う医師の養成ということですから、最初の入学時点とか、3ページの学部教育はこれでよろしいと思いますが、4ページから卒後教育にかかわる論点以降は、大学病院に焦点を絞っている、大学病院だけに焦点を絞っていた。ですから、やっぱり今お話しするように、地域医療というのは大学病院だけの問題ではないということで、特に5ページから新医師臨床研修の問題、総合診療医という、大学病院の総合診療医ということだけを考えれば、これでいいと思いますけれども、やっぱり地域医療全体を担うプライマリ・ケアという立場から見ると、これだけではやや不足であるし、ちょっと混同している部分もあると思いますけれども、この議論を書いていただきたいと希望します。

○高久座長
 橋本先生おっしゃるとおりなのですが、これではどうしても大学病院を中心とした医学教育の報告書になると思います。

○辻本委員
 私ども患者にとってみれば既に十分、そこの部分は教育されていなければいけない点だと思うことばかりのように思います。ここに書いてあることのすべての、つまりは時代の変化の中で患者さんたちがたとえへき地であってもどんどんとニーズを高めています。そうした患者側の時代の要請や変化に応えることの必要性といった大前提のところが全く触れられていないのですね。そこのところを書いていただくことで、医学教育が変わろうとしているところが見えてくると、患者としては希望も持てるわけです。やはりそこの部分もしっかりうたっていただくことがどうしても必要で、各大学や学生さんに、この思いが伝わるのではないでしょうか。

○高久座長
 どうもありがとうございました。他にどなたか。どうぞ。

○吉新委員
 へき地医療の事業をやっている立場で言わせていただきますと、従来からへき地医療というは医師確保と同義語といわれていまして、医師確保こそがへき地医療と言われてきたわけです。それはやっぱり医科大学が、確かに地元にある医科大学がへき地医療に関心を寄せていただいて、いろいろな仕組みをつくったり、生涯教育のチャンスをつくっていただくと大変、現場としては心強いと思います。先ほど高久先生がおっしゃったように、へき地医は都道府県の地域医療計画の中に、必ずへき地医療計画を記載するということになりました。さらにへき地医療支援機構というしくみがあって、へき地医療の担当専任官がいて、地元大学のスタッフがへき地を支援するメンバーとして複数名用意されるように増えて欲しいと期待しているところです。医師を養成する地元の医科大学が、へき地を支援する仕組みをつくっていただくと、へき地をになう医師も安心してへき地行って、また戻ってこれるといいますか、本当にこの趣旨でやっていただければへき地に働く医師にとって、とてもありがいたいことだと思います。

○高久座長
 よろしいでしょうか。まだある方、どうぞ。

○田中委員
 この中で、触れられていないわけではないんですけれども、分野別偏在ということは一つあったと思うんです。だから地域で医師不足の深刻な問題、一つはやっぱりある特定の分野が足りないというのはあると思うんですね。総合診療医はもちろん重要ですけれども、分野別偏在に対して、卒前、卒後でどう対処していくかというようなやっぱり記載された方がよろしいのではないかと思います。

○高久座長
 確かにおっしゃるとおり、分野別の偏在の問題は大きいと思います。医学教育の中で偏在を訂正するというのはかなり難しくて、行政の中で対処をするほかないのではないでしょうか。産科の授業時間を増やしたら学生が産科に行くということはあり得ない。なかなか難しいと思います。確かに地域医療を担う医師の養成といった場合に、診療科の偏在の問題も触れざるを得ないと思います。少し触れておいた方が良いかもしれません。

○小谷補佐
 そこにつきまして、そういった問題があるということは、私ども認識しておりまして、これまで5回御議論いただいた中では、総合診療医の育成ということでかなり焦点が当たりましたので、それを取りまとめて今回こういったたたき台を示させていただきました。もし、診療科偏在のための学部教育、あるいは卒後教育、こういった有効策があるという御意見が出ましたら、是非お願いしたいんですけれども。

○高久座長
 外国では小児科のプライマリ・ケアは家庭医が行っているのですね。家庭医が産科までは難しいと思いますが、かなりの部分は家庭医、総合診療医がカバーしている。プライマリ・ケアの教育をもう少し充実して広い領域の診療をカバーしてもらうということは、今のところ難しいですね。どうなのでしょうね。

○水田委員
 これだけ議論が進んで、専門化されたと思うんですね。またこう引っつけてしまって、浅い知識で全部やれというのは無理だと思うんですね。そんな総合診療といっても…。

○高久座長
 日本の場合、一番問題なのは、患者さんが直接、大学病院や総合病院に大勢来るために、病院の外来・救急が破綻しているということです。イギリスのように家庭医を経てとか、アメリカのHMOのようにゲートキーパー医を経てというプロセスがないものですから、患者さん自身もどこの病院に行っていいかわからない。インターネットを使って自分で調べたり、時の名医などという本で調べて病院に来る。幅広い診療能力を持っているか第一線の医師がいないから、直接、病院野専門家のところに来る。医療費の面でも無駄ですし、このような状況は患者さんにとって良いようで、本当はあまり良くないと思います。医療へのフリーアクセスというのが、患者にとって本当に良いことなのか。大都会の場合はまだできますが、地方では、直接専門医に行くことは不可能ですね。そうすると、家庭医的な機能を果たす医師がいないと困る。都会でもそうですね。

○水田委員
 イギリスの場合は、結局はあれは一つは行政的に必ず家庭医を持って、家庭医を持てと言っていますよね。そして、それでその次のステップということになっていますでしょう。ちょっとあのとおり、あれはちょっと無理だと思うんですね。日本もそれするんなら、やはりそれぐらいの物理的なことをしないとできないんではないでしょうかね。

○高久座長
 アメリカでもそうですし、ドイツでも一般内科、スウェーデンは一般総合科を介していくことになっています。日本はそういう意味ではまったくフリーで、そのことには良い点もありますが、大変です。しかし、この問題はここでの議論ではなくて、医療体制の議論になると思います。総合診療医の養成を後期研修でするのならば、どの程度の総合診療能力を持った医師を養成するかということを定めておく必要がある。大学は専門医を養成することは得意ですが総合診療医を、例えば各大学にある総合診療科で養成できるかというと、私は疑問だと思います。総合診療医を大学で養成できるのかということが問題になりますね。

○松尾委員
 補足よろしいでしょうか。今高久先生がおっしゃたことは非常に重要だと思うんですけれども、ここにも書いてあるように35の大学で医師の紹介のシステムが大学別でつくられているというふうに書いてあるんですが、現実には地域で本当に医者が足りないということで、なかなか人事システムがうまく動いているのか、破綻しているのかといえば私はかなり破綻に近い状態ではないかというふうに思っています。
 それで、今の総合診療医もそうなのですけれども、やっぱりどの地域にどれぐらいの専門家が必要で、大学としてどのぐらいの人を育てたらいいのかというところ、基本的にはグランドデザインがなくて、医師を送れと言われる。各大学では火の車で人事をやっているというのは現実ですから、それ是非この中にやっぱりそれ以上のグランドデザイン、例えば、地方の人が急病にかかった時に、どんなシステムで専門家まで行くのかということをちゃんと描いてほしい。そうではないと、大学の方も不安、どれぐらいの医師をどのぐらいつくって、どの辺に送るのかというのは、非常に場当たり的になっているということですので、医師配置のグランドデザインの重要性を是非入れていただきたいと思います。

○高久座長
 本当は県単位で考えることですね。各県に1大学あるわけですから。地域の医療の中で、開業の先生と中規模の病院と大学病院とでどのような医療供給システムをつくっていくかということは、本来は地域ごとの課題ではないでしょうか。北村先生。

○北村委員
 地域枠のことが書いてありますけれども、それが県だと小さいと思うんですね。例えば東北大学が東北の宮城県だけのことを考えればいいのかというと、そうではなくて、東北にあるすべての医科大学は東北地方全体を考えた方が、いわゆる東北大学の関連病院の広がりから考えても当然のことですし、それから地域枠に抵抗している先生もおられて、その心はというと、研究者・教育者が育ちにくくなってしまうと。地域枠に入ってきた分、研究者に行く分が減るので、定員が増えるならばいいんですけれども、そういうことを考えると、やはり研究者・教育者を特にそっちの方に力を入れる大学と、新規枠をもっと増やして、臨床医を力強くつくる大学と、大学に色分けするということもあると。そういうようなことを考えると、各県の大学が考えるというそういう小さい枠ではなくて、もうちょっと大きいブロック単位で考える必要があるんではないかと私は思います。

○高久座長
 どうもありがとうございました。他にどなたか。どうぞ。

○橋本委員
 今のお話ですけれども、現実に医事課長、御存じではないかと思うんですけれども、今度の臨床研修必修化によって、大学病院とそれから県医師会と、それから地域の厚生局と、それから中核病院ですか、そういった連絡協議会がもう既にできて、ある部分では走り出しているんではないかと思いますが、そういうものを大いに活用すれば、こうした問題はある程度取り去っていくのではないでしょうか。ちょっと中のことは知らないんですけれども。

○中垣課長
 ではちょっとよろしいでしょうか。何か私どもに言われているような意見、かなり多かったようですから、どうしようかと思っておったんでございますけれども、今ですと、私ども地域医療協議会というのも、任意の団体であるんですが、これは今度この通常国会に医療法の改正も出しますけれども、それを義務化にして、その中では県の行政の方と、それから大学病院の方、そういった方も入ってやっていくということにしております。それで、高久先生おっしゃったように、では誰が医師の確保とかそういうのを責任を負うのかという問題でありまして、結局それは知事さんに一義的には負ってもらうんであろうということでありますが、その中で国の責務は何か、その知事の責務は何か、市町村長の責務は何かというようなことを書いてやっていこうというふうには思っております。
 御指摘の産科、小児科みたいなものにつきましては、特に一般には東北地方が一番医師不足が言われておるわけでございますけれども、私ども3省の検討会の下のワーキング・グループの中でその小児科、産科のワーキングをやっておりますその中では、医療機関の集約化といった形で、非常に産科の医師とかを特に薄く配置するのではなくて、拠点となる病院に集中させて行うというような形で、既に東北地方などでは各医大、医学部のその主任教授さんが集まっていろいろなことを始めていらっしゃるというようなことを聞いております。
 私ども、そういった私どもの取組ということで3省でやっておりますし、そういった中で、どこまでは確かに大学の守備範囲かということがあろうかと思いますけれども、基本的にどういった心構えを持って医師になってもらうかというのは、もちろん入学試験の時からもあると思うんですけれども、だからその動機付けといいましょうか、そこをやっぱりやっていかないと、あまりにも自由にやっておると、結局全体としてのこれは全体の医療もそうですし、医師、あるいは大学の首を絞める形にもなってしまうということもあると思いますので、そこをどう書くかというのは難しいところ、高久先生もおっしゃったようにあると思いますけれども、もしそういう問題意識があるということは、やはり書いた方がいいのかなとは思います。

○福田委員
 今の課長の御指摘の点は大変大事でして、社会的にこの視点を考えた場合、これから医学を目指す者、あるいはそれを育てていく者が、自由に自分の利益追求でやっていくこの世の中のパターンとしてあり、その限界がまさに出てきていることが大きな原因の一部だと私も考えています。それではせっかく地域医療計画をつくっても、若手医師等が本当に行く気があるのかが問題です。これははっきりしていて、魅力がないと自分のためにならないと行かないことはっきりしています。肉体的にきついところは行かない、これは正直言ってそうなってしまっているわけです。社会全体がそういう傾向に見えますので、抽象的かもしれませんけれども、それを社会にアピールして、これから医学を目指す者はそういうスタンスで臨んで欲しいというのを強くアピールしていく必要が非常にあると思います。
 たしか研究者育成のために、私どももMD/Ph.Dコースを用意していますけれども、現実に入ってくるのは臨床のお医者さんになりたいだけなんです。そういう名目でプログラムをつくっても、そこ行ってくる人は、入学の時は研究者になるなどと前面に出してきますけれども、本音は医師の資格をとりたいだけになってしまう。
 こういう社会の中で、一つ一つ潰していくのは非常に大変ですけれども、国民に向けて、社会に向けて言うべきことの必要性を非常に感じております。

○大橋委員
 ちょっと議論、外れてしまうかもしれませんが、この書き方、地域医療を担う医師の養成・確保に的を絞るということで、それはそれとしてよろしいですが、やはり医育機関といいますと、我々としてはそれだけでいいのかという問題があると思います。国民が望んでいるのは、量の確保についての提言だと思うんですが、やっぱりそこに、常に質的に確保を考えていかないといけないと思います。このがんの問題にしても、地域において医師により医療の質が違って、セカンドオピニオンを得るために東京に行かなくてはいけないなんていう議論になっているのが取り上げられているわけですね。大学あるいは大学病院というところは、キーワードはやっぱり地域の大病院とどこが違うかというと、クリエイティブ、創造的な教育、研究、診療をやっているかどうかということだと思うのです。それを失ったら、大学病院はないと思うんです。そのために、診断・治療にしても、そういう面で今までもあるものもそれは患者さんに提供するということも、それは大事です。スタンダード守ることも大事だと思うんです。けれども、新しいものをつくっていくということが、やっぱり大学病院あるいは大学医学部に課せられていると思います。地方の大学によっても、やっぱりそれを失ったら学生は来ないのではないかと思います。
 それで今、福田先生がおっしゃったように、システムではそれはだめだと思うんですよ。ですから、やはりある程度大学院のその後のこういう研修、あるいは専門医育成、あるいは大学病院、その臨床の大学院の在り方等々、全部かかわってくると思うんですけれども、まくら言葉をどこかにやはり量と質ということを、常に我々意識しながら育成していくんだ。それがやっぱり医育機関の置かれている責任なのではないかと、国民に対する。その一方で教育者育成とか、私どもでやっているワーキングとかは、そういう質の担保という意味でやっていると思います。ですから、一連の報告書を出す時には、その量の問題と質の問題というのは、常に国民にちゃんと明示できるようにしていただけるとありがたいなと思っています。

○高久座長
 福田委員と大橋委員が言われたことは非常に重要な問題です。報告書の中の資料の4をご覧になっていただきますと、地域医療を担う医師の養成・確保が一つ、それから、最終報告に向けた検討課題として、入学者の選抜の方法、大学病院における専門医養成の在り方、教育者・研究者の養成、こういうことも今後この会で議論していただくことになります。医学教育の改善・充実に関するこの報告書の中では、むしろ2の方が一番重要です。しかしながら時代の要請ということもあって、1の地域医療を担う医師の養成・確保ということもとり挙げました。この両方です。今日は主にこの資料の5の1について、御議論いただければと思います。
 どなたか。

○小谷補佐
 時間がまだございますので、最終報告に向けた検討課題といたしまして、こういった事項を盛り込むべきとかという形での御意見賜れば、次回、骨子案を作成する際に参考とさせていただきます。

○高久座長
 資料の4、もう一回ご覧になっていただきたいと思いますが、2の最終報告に向けた検討課題ということで、9つのテーマが挙げられています。これ以外に取り上げる問題がありましたら、おっしゃってください。

○吉田委員
 先ほど大橋委員の御発言の中にあったかと思いますけれども、ランセットとかニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンなんかの原著論文は日本からのものは非常に少ない。それは何に原因しているかというと、いわゆるポピュレーション・ベースド・メディシンに対する医学教育の不足があるという、欠陥があるということは今まで議論してきたものだと思います。それがこれ、この中に入っていないような気がします。
 もう一つ加えていただいたらいかがでしょうか。

○高久座長
 大学における臨床研究の推進ということですね。

○福田委員
 臨床研究の問題は非常に重要な議論点です。

○高久座長
 入れたらいいですね。

○福田委員
 今のことに関して、この間の大橋先生のワーキング・グループがありましたし、昔から言われているのは、やはり戦前からそうだったと思うんですが、医学研究というのはやっぱり基礎研究が一番格が高いという視点だと思います。その次に臨床研究あるいは社会医学研究・公衆衛生です。公衆衛生は戦後に入ってきてからです。医学教育というのは次元が低いと考えられているようにも思われます。これが今までの伝統的な概念であり、卑近な例を出すと、教授選考がこのような図式になってしまったわけです。その結果として、結局、臨床研究はおざなりになったという形で出てきてしまっている。それから、疫学研究、社会医学研究のような公衆衛生大学院の発想などはもっと遅れている。
 この構造は大きく変えなければいけない時期に来ていると思います。そういう視点から見るとその背景は何だったのかということは一目瞭然です。結局、これまでの経緯がそのまま今の結果にあらわれているだけに過ぎないと思います。是非それを変えるチャンスをつくっていただくような視点も入れていただければと思います。

○吉田委員
 先生、蛇足ですけれども、エビデンス・ベースド・メディシン、EBMのエビデンスというのは何か。これは臨床研究の成果そのものだと思うんですね。ですからもう一度、是非そこら辺は入れていただきたいと申し上げたいと思います。

○高久座長
 他にどなたか。

○田中委員
 先ほど申し上げたことにもなるんですけれども、分野別偏在に対して、大学によって、例えば再教育とかいろいろな方法はあると思うんですよ。例えば産科は今もう本当に深刻な状況で、里帰り出産はもうお断りという地域がいっぱい出てきています。しかも、今度の後期研修に必修科の1期性が入るわけですけれども、それは多分、厚労省は把握しておられるかもしれませんが、聞くところによると、産婦人科の医師は半減している。半分以下だというふうに。ですから、深刻な社会問題化するというは、今も既に社会問題ですけれども、さらにそれが非常に顕著になるのも時間の問題だと思うんですね。その時に大学もやっぱりそれを認識しているということと、それからそれに対して、例えば進路変更を誘導することは難しいですけれども、それは希望者がいた場合に、それを再教育するシステムも大学として提供すること、そういったような形で議論を少ししていただいた方がいいのではないかと思います。

○高久座長
 小児科も少ないですね。

○水田委員
 小児科が減った原因が、聞いたところによりますと、今までは小児というイメージだけで入ってきて、かわいいかわいいと。それが現実として2年間研修しますと、小児科の研修というのは現場を見て、とてもではないというんで、何か研修が終わった後、変わってしまう。がっかりして、お笑いみたいなんですけれども、なんか500人の希望者だったのが300人になってしまう。

○高久座長
 うちの小児科の教授もそうおっしゃっていましたね。どうぞ。

○吉新委員
 暮れに行われた小児科と産婦人科の、医師を確保するというワーキング・グループのメンバーの一人でしたが、そこでも議論されましたが、産婦人科の診療報酬の手当が薄いんではないかと。要するに頑張っても3Kで、しかも収入が見合わない、相当効率が悪いというようなことが一つ問題だと思います。
 また、私の勤務する病院は、24時間、365日、小児科をやるということで、今小児科の常勤医が11名いるんですけれども、暮れになると夜間時間外に150人ぐらい、患者さんが来るんですけれども、小児科は結構日中はあるんですね。夜働く小児科がいない、夜の小児科がいないんですね。あと、ジェネラリストが昔は小児科にも診療していたんですけれども、昔みたいにジェネラリストが、プライマリーの部分のやるということが、日本か羅なくなりつつあるという問題があります。小児科が少ないと社会問題になる原因は多分その辺なんではないかと思います。小児科医はいるが、夜の小児科が少ないというのが、現場の本当の声ではないかと思うんですけれども。

○松尾委員
 我々の大学でも、含めて大体400名ぐらいの研修希望者ですね。これは6年生ですけれども、将来何科にやりたいかといってアンケートとりますと、小児科結構多いんですよ。すごく多いんですけれども、実際研修終わってみると、水田先生言われるように希望者も激減するということで、これは研修制度が悪いんではなくて、小児科になった途端、例えば3人ぐらいで小児科勤めていますと、3日に1回必ず呼ばれるんですね。そうすると、女性が多いということもあって、もうとてもじゃないけどやれないので、内科や他のところに変わってしまいます。あるいはパートタイマーになってしまうということの事例が頻発して発生して、希望者は多いけれども、やっていられないという状況があると思います。

○名川委員
 やはり分野別の偏在の問題は、いろいろな要素が絡んでいて、教育の問題で扱うのはかなり難しいと思いますね。たしか、邉見先生でしたでしょうか、一つの解決方法としては、診療科別に入学定員枠を設けるといったこと、極端な御意見というと怒られますけれども、あったかと思います。ですから最初から例えば小児科の枠を何名定員としてとると。こういったところはひょっとしたら教育に関係するのかもしれませんけれども、これは医学教育全体に大変な弊害を生む可能性もあって、ちょっとこの場では、難しいと思います。医療全般ではもちろん重要な問題で、教育という観点からも、やはり常に頭には置いておかなければいけませんけれども、報告書としては書きにくいんではないかなと思います。

○小川委員
 もう殆ど申し上げる事はありませんが、資料4で、医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議ということで、これはやっている訳でありまして、それで高久先生の御質問は、この2のところで最終報告に向けた検討課題の9“その他”“付言”として加えるべきものは何かということですけれども、そういう観点で見ますと、医学と社会とのコミュニケーションといいますか、“社会の中の医学”とか、“社会に開かれた医学教育”というか、そのようなものを加えては如何かと思いました。そういう観点はそもそも論からいいますと、この社会的要請によって、今回1地域医療というものが出てきて、2救急救命医療教育の重視、或いは医療事故に対する配慮などがありますね。これは全て地域の社会からの要請という感じで、受けとめて我々が心しなければいけないという事で論点になりました。これらを今後、医学教育に如何ように強化して取り入れていこうかということ、大きなコアになっていますので、付け加えてはと思います。
 それから、国際社会における医療の貢献、日本の医学教育を受けた人達が育って、国際的にどのようなコミュニケーションを取るのか、役割を果たすべきかを講ずる点も重要です。国際的な視点に立った考え方というのをどこかで、医学教育の中に、やはりどこかに入れて戴きたいと思います。

○高久座長
 そうですね。何て言ったら良いですか。

○高久座長
 この中に入らないですね。専門医養成の在り方の中に国際的視野とか、そういうことを入れることはできると思います。社会との接点を積極的に求めていくというようなところでも良いですね。

○小川委員
 医学教育とか医療の在り方について、かなりシリアスなコメントを言われるメディアの方々に我々の大学では来て戴いて、学生や教職員に講義をしてもらいましたら、とても素晴らしいコミュニケーションがあって、いろいろ文句は言われるし、殆どが正しい事ではあるんですけれども、「ではどうしたらいいか」ということをやはり一緒に考えるという姿勢が生まれてくると思います。国際的な視野に立ってといいますと、例えばJICA(ジャイカ)等、そういう人に来てもらってお話をすると、パキスタンに行って医学ボランティアをやろうかなというのが、今度の地震災害の時などに5、6人ぐらい、そういう医師団も自発的に出てきますので、これからの日本の在り方、あり様としては医療をコアとしたコミュニケーションというのがどこかに必要ですね。

○福田委員
 今の御指摘は、結局この医学教育にしろ、それから医療制度を含めた研修の考え方にしろ、社会の中での一つです。それ抜きにして考えられませんが、私どもだけで固まって、こうだああだという内輪の議論だけでは通じない話です。ですから小川先生おっしゃったように、社会に向けたメッセージとしてどう出すという視点を書かなければいけなくて、2点目はコア・カリキュラムに関しては我が国の医学教育の国際的な比較の点からもやはり英文化して出さなければいけないと思います。前のコア・カリキュラムは不完全ですけれども、英文化いたしました。外国へ向けたメッセージもちょっと入れておいた方がいいかなというのは前から感じていました。

○高久座長
 他にどなたか、ここにつけ加えておくべきことがありますか。どうぞ。

○寺尾委員
 6番の地域医療を担う医師確保に関する大学病院の役割というところで、実際我々が悩んでいる部分というのは、いろいろな制度ができあがって、その中でそれぞれの個人をどういうふうに当てはめていくか。現実問題として、例えば私どもへは来年、65人入ってくることになっているわけですけれども、その中で君は大学院に入れよと。大学院の定員をきちっと出さなければいけないから、大学院に入りなさいということを指導する。一方、君は専門医制度というのは、例えば外科ですと今のポスト、必修科の3年で専門医はとれません。ですから外科の場合は専門医制度から除外するとか、それに要するに後期研修を担うのか、大学に、それから研究者を養成するのか、あるいはここにあるこの本来の地域の医療を担うのか、そういう4つのものをどういうふうに振り分けて考えていくのか。これは今後国として制度的にも考えていかなければいけない問題で、今今日結論が出るわけではないですけれども、今後検討すべき課題であるということを最後に一言申し上げます。

○高久座長
 それでは何か。どうぞ吉村委員。

○吉村委員
 今この地域医療を担う医師といいますと、総合診療医のことを皆さん頭に置かれると思うんですけれども、総合診療医がいるからすべて地域医療が成り立つかといったら、今いろいろ議論出ていますように、やはり小児科も医者もいります、産科の医者もということですから、この検討すべき課題の(2)の6ですか、大学病院における専門医養成の在り方で、今回大変よくできていると思うんですけれども、専門医として総合診療医の専門医をつくるということ、大変結構だと思うんですけれども、それプラス、やはりバランスよくすべての診療科の医師を育てるという視点が必要ではないかと思います。

○高久座長
 総合診療医の問題は1の方の地域医療という観点からです。当然2の方では各スペシャリティーのことが問題になると思います。
 他に何か、よろしいでしょうか。この1の方も、2の方もまとめるのは大変でしたが、この2の方のテーマはこれでいくことになると思います。今後ともよろしくお願いします。
 1の方の地域医療を担う医師の養成・確保については多数の御意見をいただきましたが、事務局の努力で、この報告書の案ではかなりよくまとまったものが1に関して出ていると思います。これから2の方に移る中で、当然ワーキング・グループの御報告がかなり重要なものになっていくと思います。皆さん方の御協力を得て、何とか2の大学病院が抱えるいろいろな問題について、前向きの報告書を出したいと思います。よろしくお願いします。
 その他について、何か報告することありますか。他に何か。

○小谷補佐
 次回の日程でございますけれども、今日はスケジュールのところでは、まだ3月上旬ということしか書いておりません。2月8日に厚生労働省の医師需給の検討会が行われるということを聞いておりますので、そこでの議論を見ながら、厚生労働省の議論の進捗状況も踏まえて、また各委員の皆様に御都合の方をお伺いして設定したいと思います。よろしくお願いいたします。

○高久座長
 それでは2月8日過ぎになると思いますがよろしくお願いします。それではどうもありがとうございました。

○小谷補佐
 モデル・コア・カリキュラムの改訂に関するワーキング・グループでございますが、2月23日に15時〜17時で文部科学省で行います。またこれも任意参加でございますので、文書の方で案内させていただきますので、よろしくお願いいたします。

−了−


(高等教育局医学教育課)

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