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参考

これまでの意見等の整理


1. 入学時点に係わる論点
(1) 入学定員の在り方
協力者会議における委員の意見

・医師の過剰労働がクローズアップされているが、医師の絶対数が足りない。
・このままの医師数とするのであれば、コメディカルを増やして、医療体制そのものの中での医師の果たすべき役割を限定しないと、患者のためにはならない。
・勤務医不足の一因は、勤務医が過酷な勤務実態と将来への展望のなさに耐えかねて大量に開業していることにあるのではないか。
・地域医療における医師不足は医師絶対数の不足だけではなく、若い医師が地方に定着しないために生じる「医師偏在」こそが問題であり、その理由は、1専門医研修(困難例の治療、高度医療技術研修)の機会が少ない、2医師不足による精神的、肉体的な負担(小児科、産婦人科など)、3経験できる症例、疾患が少ない、4子どもの教育など生活上の不安、が挙げられる。
・地域の医療ニーズは総合診療的なものが高く、必ずしも専門家を全部そろえることではない。
・大学院生が増加したのは事実であるが、全員がその後研究者になるのではなく臨床に戻るので、大学院生が増えたので医師不足につながるということはない。
・新医師臨床研修が始まって2年間が過ぎても、若手医師はそのまま後期研修として臨床研修病院に残り、大学病院における医師不足の状況はまだまだ続くのではないか。
・地域に医師が足りないという議論の原点はその病院に医師が足りないということであって、そもそもそこに病院が必要なのかという病床数の過剰ということについても考えることが必要。
・病院の数と医師の数とのバランスについて、大きな視点で方向性を示すことが必要。
・20年前から始まった入学定員の削減は、人口10万人に対しての必要医師数や医療費の抑制という視点だけで検討されている。
・イギリスの人口は日本の半分ぐらいだが、医学部定員は日本と同じくらいになっており、日本では本当に医師が過剰で入学定員を削減しなければならないのか今からでも議論すべき。
・患者の医療に対する要求は高まっており、削減目標に向けて医学部の入学定員をさらに削減するというのはいかがなものか。
・医学部における女子学生が増加しており、女性医師の労働確保の観点を踏まえても、患者や国民の立場からすると、入学定員は増やして欲しい。
協力者会議における参考人の意見

・日本の医師については1総数が足りない、2地方に足りない、3小児科、産婦人科が足りない、4研究者が足りない、5行政機関、保健所で足りない、が、1駅前のビル開業の内科医は増えている、2心臓外科医のような特定の分野については増えている。
・平成10年当時と医師の仕事の質、量ともに増大している。質については、インフォームド・コンセントが重視されることにより、術前、術後の説明に時間をかけるようになった。量については、平均在院日数の短縮化により大変増えている。
・大学院を重点化した大学が、地方から医師を吸い上げている。
・専門分野の細分化が見られる。
・今の日本の医療は若い医師の向上心と責任感で成り立っているが、労働基準法の遵守により、ますます難しくなっている。
・ほとんど24時間、365日オンコール体制というように、病院医師のクオリティ・オブ・ライフが低いため、昔は定年前か卒後10年くらいして開業していたが、現在は部長クラスの医師がどんどん開業している。
・医学部の新たな入学定員の増員は行われておらず、北海道、東北地域においては、医療施設に従事する医師数が、中国、四国、九州地方に比較してかなり少なくなっている。
・へき地を含む地域の病院・診療所等においては、地域医療に従事する医師不足が深刻化しており、診療体制の維持が困難な状況にある。
・今後、へき地で開業している医師の高齢化などにより、医師不足がさらに深刻化するおそれもある。
・地元大学医学部卒業医師の大都市圏への流出、法人化及び臨床研修義務化等の大学を取り巻く環境の変化により、専門医療における医師不足も、郡部の自治体病院を中心に深刻なものとなっている。・総合診療医として、1専門化した科の複数の病気を診ることのできる者、2専門分化による全体の中の見落としを見ることのできる者、3医療経済や医療疫学のような基礎と臨床の隙間を診ることができる者、4トリアージのできる者、5研修医を教えるための講師、の5つのタイプの人材が必要。
・医師需給の見直しに当たっては、行政や地域医療の関係者が、何科で何人不足しているのかということを、積み上げ方式でガラス張りで議論して欲しい。
・入学定員における診療科枠や講座別の定員枠を設けて欲しい。
・専門医の養成については分野別の育成計画と入学定員を関連付けて検討して欲しい。
・医師不足地域の医学部の入学定員の拡大と地域枠の創設が必要。県立の医科大学の入学定員は、県の判断で増やせるようにして欲しい。
・自治医科大学の入学定員と医師不足地域への配分枠の拡大が必要。
各種団体・機関の意見

・日本の医療機関が先進諸国に比べ少ない医師数で過剰な勤務により医療を支えている現状に加え、今後女性医師の増加に伴うワークシェアリングの必要性が増加することなどにより、我が国の医師数の相対的な不足は依然続くと予想されるため、特に地域医療に貢献する医師養成の充実の観点から、医学部入学定員の在り方を検討する。また、専門医の不足解消について、各「講座」ごとに入学定員を設定すべきとの意見が一部で出されているが、このことは、多方面から慎重な検討が必要な課題である。(国、地方公共団体、大学医学部)
【地域における医師の確保等の推進について(提言)(平成17年3月 国立大学医学部長会議・国立大学附属病院長会議)】
・自治医大の定員枠の見直し等 医師確保の困難さの度合いに応じ、原則都道府県一律となっている定員枠を弾力的に見直す。
・将来の医師需給の推計は、この中間報告書で述べてきたような、医療の質と量の変化をはじめとした医師の需要側の変化、労働法規の遵守、女性医師の増加などの供給側の変化を十分考慮に入れたものとすべきである。また、総量としての医師の数だけではなく、診療科別、地域別に需給の推計を行うことにより、現在医療の場で起こっている変化やその対策が明らかになると考えられる。併せて、医師需給を取り巻く変化の定量的な分析や将来推計に必要なデータを得るための基盤整備を進めていく必要がある。
【医師の需給に関する検討会中間報告書(平成17年7月 厚生労働省)】
・自治医科大学卒業生は、その大多数が、出身各都道府県において、へき地・離島等における勤務義務を果たし、義務終了後もへき地等において勤務を継続するものも多い。自治医科大学の定員枠を見直すことによって、効率的にへき地・離島における医師の確保が進むことが期待される。
【へき地保健医療対策検討会報告書(平成17年7月 厚生労働省)】
・自治医科大学入学者の定員枠の拡大【提案・要望書(平成17年6月(九州知事会)】
・医師不足地域の医学部の入学定員の拡大及びへき地医療を担う医師の養成を目的とする自治医科大学の入学定員と医師不足地域への配分枠の拡大を図ること。
【要望書(平成17年6月 青森県)】
・医師不足地域の医学部については、地方の判断による入学定員の増を認めること。
・医師が不足している地域への配分枠の拡大ができるよう自治医科大学の入学定員を増員すること【提言・要望書(平成17年6月 福島県)】
・地域医療を担う医師の都道府県格差を是正し、医師不足が深刻化している地域の医師を確保する観点から、医科大学入学定員の削減方針を撤回し、医科大学入学定員の増員を図るなど、必要な措置を講じること。特に、筑波大学及び自治医科大学の入学定員を増員すること。
【提案・要望書(平成17年7月 茨城県)】
・医学部定員については、医師の地域偏在を踏まえ、見直しを行い、医師不足地域の医学部への「地域枠」設定による定員増を図ること。
・へき地医療の確保及び向上という建学精神をもつ自治医科大学の入学定員の在り方について、医師の地域偏在改善の観点から厚生労働省と検討すること。
【平成18年度政府予算に対する要望書(平成17年6月 新潟県)】
・地域の実情に応じた大学医学部への入学定員の見直し
【平成18年度国の予算編成に関する提言・要望書(平成17年6月 三重県)】
・女性医師の増加に対応する産前・産後休暇、育児休暇の代替要員の医師を確保するため医学部定員の増員を図ること。
【提案・要望書(平成17年6月 島根県)】
・小児科、産婦人科、麻酔科をはじめ医師の不足・偏在状況を改善するため、診療科別の入学定員を採用、または、いわゆる「講座」別の定員を設定。
【医師の地域別及び診療科別不足・偏在の改善に向けての要望(平成17年2月 全国自治体病院開設者協議会、社団法人全国自治体病院協議会)】

(2) 地域枠の取扱い
協力者会議における委員の意見

・地方に医師が不足している原因の一つとして学生は親元で仕事をしたいという気持ちを持っていることがある。地元に医師を供給するためには、入学者に占める地元出身者の割合を高めることが必要。
・地元の学生を入学させるためには、1校当たりの推薦枠を増加させるとともに、大学側が高校を訪問したり、逆に高校の校長を招いたりして、校長にどの程度の生徒を推薦すればよいのか理解を促すことが必要。
・地域枠を設けることにより、限られた対象校にきめ細やかに大学の情報を発信するとともに、県民を挙げて医師育成をどうするのかということについてマスコミも参加しての意識改革をすることにもつながった。
・地域枠の設定に当たっては、高等学校校長会や市町村で、趣旨の説明、協力依頼を行うともに地域マスコミを介して県民全体への趣旨説明、生徒向けの説明会などを行うことにより、優秀な学生を確保できた。
・理数系に特化したスーパー・サイエンス・ハイスクールには医師志望の生徒が多く、ここに的確な情報を提供することは有効であったし、校長の支援も得られた。
・地域枠を設けても地域医療問題に関心を持つようなプログラムでの教育を継続的に行わないと、地域枠で医学部に入学しただけで終わってしまう。
・アメリカにおいては医師が少ない地域の出身者を地域枠として入学させている例があり、地域枠についてはそのような学生を選抜する方が有効ではないか。
・地域枠で入学した学生は、病院で働くゼネラリストの核となるように、特別なプログラムを組むことが必要ではないか。
・地域枠を設けても卒業し、義務を果たすとまた都会へ出て行ってしまうのではないか。
・地域枠については、かなり当該地域の細かな解析をしないと、妥当性については勘案できない。
協力者会議における参考人の意見

・現在の地域枠については、枠を作らなくても本来の成績で合格する人数を「枠」として設定しているとの指摘もある。国立大学であれば、最低3割、最高5割を目指して設定して欲しい。
各種機関、団体等の意見

・「地域特別推薦枠」などの学部入試方法の改革を行い、地域医療を担う優秀な医師の育成を図る。(大学医学部)
・医学部入学者に対して、地元入学者への奨学金(一定期間、地元医療へ従事すれば返還免除)等の修学支援を行い、地域からの進学希望を増加し、優れた人材を確保する。(大学医学部)
【地域における医師の確保等の推進について(提言)(平成17年3月 国立大学医学部長会議・国立大学附属病院長会議)】
・医師確保が困難な都道府県における医師確保対策に資するものとして、入学定員の地域枠の拡大を推進する。その際、奨学金の有効活用等、実際に地元に定着することを促す施策を併せて検討する。
【医師の受給に関する検討会中間報告書(平成17年7月 厚生労働省)】
・文部科学省によれば、平成17年度7大学において地域を指定した入学者選抜を実施しており、平成18年度からさらに7大学が実施する予定となっている。これにより医師の地域への定着が期待される。
・自治医科大学などへき地・離島の保健医療サービスの向上を目的とした開学の精神を有する医学部の環境が、学生にへき地・離島の保健医療に従事する医師を持続させることができる。奨学金制度を実施する都道府県は、奨学金制度や地域を指定した入学者選抜を通じ、へき地・離島の保健医療サービスの提供に実効性のある取組が期待される。
【へき地保健医療対策検討会報告書(平成17年7月 厚生労働省)】
・地域医療を担う医師の養成と地域への定着を促進するため、奨学金制度の構築や医学部入学定員の地域枠設定など、新たなシステムを構築すること。
【決議 (平成17年5月 全国自治体病院経営都市議会協議会)】
・医師の地域偏在を改善するため、入学定員に「地域枠」を設定、または、その枠を拡大
【医師の地域別及び診療科別不足・偏在の改善に向けての要望(平成17年2月 全国自治体病院開設者協議会、社団法人全国自治体病院協議会)】
・大学医学部のへき地医療従事医師養成特別入試(入学)枠の設定
・当該特別枠医学生等に対する修学資金貸与制度の創設(自治医科大学に準じたへき地勤務の義務年限あり)
【へき地医療における医師の確保対策について(平成17年6月 四国知事会)】

(3) 学士編入学の現状と課題
協力者会議における委員の意見

・学士編入学枠を増やすことによって地域医療に興味関心を持つ医師が増えるのではないか。
・学士編入学については、1クラスで学生が2層化してしまうのではないかという懸念があり、編入学を100パーセントにすればメディカルスクール構想につながることから、この点について検討が必要。
・4年制のメディカルスクールのコースを試行的にでも実施することが必要。
・18歳という年齢が未熟にならざるを得ない社会状況があり、若い人がきちんと踏むべきプロセスを踏んで、教えられるべきことを教えられてはぐくまれていくという観点からの手立てが必要。

(4) AO入試等入学者選抜方法の改善協力者会議における委員の意見
・少子化の中で医学部へ入学する学生が極端に成績優秀な人間に偏ってきており、日本全体の知的財産という観点から考えると、それほどまでに医学・医療に偏った人材が来ていいのだろうかと感じる一方で、入学後に目的意識が欠如し、大変優秀だが本来の医師になるべきモチベーションが落ちてしまうという事例も目に付く。
・医学部の入学志願者の中には、資格を持ちたい、社会的な安定を保ちたい、ある意味でプライドを持ちたい、ということで必ずしも医師への動機付けが十分でなく、入学後の留年が問題になっているケースがある。

2. 学部教育に係わる論点
(1) 地域医療を担う医師の養成の在り方
協力者会議における委員の意見

・国立大学であっても、地域にある医科大学において、地域医療として従事する医師の育成に、地域に唯一存在する医育機関として同じように責任を果たさないと存在意義がないと県民から言われるような状況になっている。
・地域に唯一存在する医育機関は、地域の自治体とも相談しながら、医師育成、医療人育成、あるいは医療人の提供を考えなければならない。
・総合診療のできる医師をどうやって育成していくのか、というのが大きな課題の一つ。
・専門医、家庭医、勤務医などの必要数を踏まえた上で、医師の養成システムを考えていくことが必要。
・卒前教育における地域医療の学習を有効なものにするために、カリキュラムの上で充実させることが必要。
・特に地域医師やそれを支援する医師を望む学生に、地域医療教育コースを設けてはどうか。
・鹿児島大学における離島実習や自治医科大学における実習を見直し、地域の医科大学に導入できないか。
・学生が早期から地域医療の現場に赴いて、地域住民の生活意識や医療ニーズについてアンケートをとるなど、地域のことを肌で感じる経験をすることが大切。
・日本の医者として当然持つべき家庭医としての能力を明らかにし、学習の目標とすることが必要。
協力者会議における参考人の意見

・1県1医大構想の理念に基付いて地域医療を担おうとしていた新設医科大学が最近は旧設医大の分野に進出しようとしているが、原点回帰すべき。
・医学部医学科はすべて社会の要請と無関係で、横並び。現在のように小児科が足りなければ医学部小児学科が設置されるべき。
・麻酔科、放射線科、病理のようなドクターズ・ドクターを養成しないと、欧米の医療との格差が生じる。
・総合診療医と救急医の位置付けを卒前教育の段階からしっかりとして欲しい。
・セイフティー・マネージャーの養成が必要。
各種機関、団体等の意見

・医療資源の有効活用及び、社会のニーズに適した医療の確保のためにも、幅広くプライマリーケアのできる医師を養成していくことが必要である。
【医師の需給に関する検討会中間報告(平成17年7月 厚生労働省)】
・地域医療の意義と重要性を体験させるために、学部教育、卒後臨床研修カリキュラム等の見直し、改善を行う。(大学医学部及び附属病院)
・また、医学部のカリキュラムに、一定期間僻地等の地域医療機関での実習等を含む「地域医療教育コース」を設けることなどにより、地域医療支援医師の育成を行う。(大学医学部)
・離島・へき地医療などの地域医療を担う医師を育成する教育システムを研究し、大学は教育する講座の設置(寄附講座の設置を含む)に取り組み、国及び地方公共団体は、その後方支援を検討する。(国、地方公共団体、大学医学部)
【地域における医師の確保等の推進について(提言)(平成17年3月 国立大学医学部長会議・国立大学附属病院長会議)】
・医師の臨床研修の必修化を契機として、患者の症状全般を診るという総合診療への関心が高まり、へき地・離島での診療の総合性に関心を持つ医師は徐々に増加している。このため卒前教育や臨床研修など、あらゆる機会をとらえて、へき地・離島での診療への関心をさらに高めるよう努めるべきである。
【へき地保健医療対策検討会報告書 (平成17年7月 厚生労働省)】
・大学医学部における地域医療教育の充実
【平成18年度国の予算編成に関する提言・要望書(平成17年6月 三重県)】
・医学部医学科に地域医療を専門とする講座を設置するなど、地域医療に貢献する医師を養成。
【提案・要望書(平成17年7月 鳥取県】
・大学のカリキュラムに地域医療を取り入れるとともに地域医療を積極的に推進する体制を確立すること。
【提案・要望書(平成17年6月 島根県)】
・少子化が進行する中、安心して子どもを生み育てられるよう、小児救急医療体制及び小児専門医の育成・確保を図ること
【要望書 保健医療の充実について(平成17年7月 大分県)】

(2) モデル・コア・カリキュラムに基づく学部教育の充実
協力者会議における委員の意見

・学部教育では国家試験のために卒業試験を半年も早めてしまって、実質的に5年半の教育しか行っていないところがあるが、いかがなものか。
・大学の医学教育では職業訓練と教育が混乱してしまっているが、これらはまったく違うものであり、職業訓練がまったく欠落してしまっている。
・現在の医学教育においては基本的な医療安全の教育が不十分であり、医療安全の観点を教育の中心に据えることが必要。
各種機関、団体等の意見

・特に不足が指摘されている化学療法、放射線療法の専門医のためには、大学の医学教育において、化学療法や放射線療法についての基本的な知識教育が行われ、卒後さらに大学附属病院等における臨床教育が行われることが望ましい。このため、大学において、がん診療全般を横断的に見ることのできる化学療法及び放射線療法などを専門とする講座の設置等、教育体制の整備に努める必要がある。
【がん医療水準均てん化の推進に関する検討会報告書(平成17年4月 厚生労働省)】
・文部科学省及び厚生労働省は、医師及び看護師の養成機関における医療の安全に関する教育の推進を図る観点から、次の措置を講ずる必要がある。1大学医学部及び看護系学部の安全に関する教育について、それぞれモデル・コア・カリキュラム及び看護学教育検討会報告を踏まえたものとなるよう、その促進を図ること。(文部科学省)
【医療事故に関する行政評価・監視結果に基づく勧告(平成16年3月 総務省)】

(3) 診療参加型臨床実習の在り方
協力者会議における委員の意見

・医学部の学習量があまりにも多過ぎて、1年次から専門の授業を行う学校もある。共用試験への対応のために学生の負荷が増えているのではないか。
・共用試験の位置付けについて法的根拠も含めて明確にすることが必要。
・患者の生の声を聞く学習を取り入れることが重要。
・地域や患者との交流をより充実させて欲しい。
・患者と接する第1番目となる外来の初診の実習はほとんどやられておらず、なおざりにされてきている。卒前の段階でも関連病院に出して初期診療外来実習をさせることが必要ではないか。
・学生の診療行為に対する法的な根拠を明確にすることが必要。
・学生の医行為を可能とする法的措置を確立し、新医師臨床研修制度のプログラムの一部を卒前教育に取り入れて、卒前卒後の一貫した研修システムを構築することが必要。
各種機関、団体等の意見

・国民あるいは地域住民の付託に応える質の高い医師育成のために、標準評価試験である共用試験(CBT)及び客観的臨床能力試験(OSCE)を大学医学部自らの責任で、平成17年度から導入する。(大学医学部)
【地域における医師の確保等の推進について(提言)(平成17年3月 国立大学医学部長会議・国立大学附属病院長会議)】
・従来、大学の医学教育、臨床実習は医療の高度化による専門化に対応して専門教育が重視され、より実践的な家庭医、プライマリケアなどに関する教育がおろそかにされてきた傾向があった。この事が新臨床研修制度導入の一つとして挙げられており、医育機関としては真摯に反省せざるを得ない。従って、早急に家庭医、プライマリケア等の実践的医学教育を充実させ、それに対応した臨床実習を構築して行く事が求められている。
・学生が実施できる医行為に制限があるのは当然である。しかし、現状では学生の医行為の責任の所在、教官の教育体制などを含む教育環境が十分ではなく、効率的かつ実践的な臨床実習が難しい。この観点から、臨床実習の教育環境の整備が不可欠である。
【臨床研修/臨床教育環境充実・改善に関する提言と要望(平成17年6月 全国医学部長病院長会議】
・地域における総合診療やプライマリ・ケアの実践、習得
【医師の地域別及び診療科別不足・偏在の改善に向けての要望(平成17年2月 全国自治体病院開設者協議会、社団法人全国自治体病院協議会)】
・大学医学部における「地域医療に関する教育」を充実(へき地実習を必修化)すること。
【へき地医療における医師の確保対策について(平成17年6月 四国知事会)】

(4) 教育能力開発の推進
協力者会議における委員の意見

・大学病院は理想の医師を育成するのに適した場所ではない。優れた医師を養成している外国の大学と比較して教員の数が少ないし、診療と教育に情熱のない教員や医師がたくさんいる。

3. 卒後教育に係わる論点
(1) 地域医療を担う医師養成の在り方
協力者会議における委員の意見

・新医師臨床研修においては「地域保健医療」が必修科目になっているので、そのプログラムの在り方について注意することが必要。
・新医師臨床研修における3ヶ月の地域医療プログラムは、医師にとっての非常に重要な地域医療の初期体験である。
・地域医療のプログラムについては、指導医自身が地域医療の重要性を理解しておらず、そのような指導医への働きかけが必要。
・地域を担う医師を供給するのに研修医を配置するということがよく言われるが、若手医師が最先端の医学で専門領域を勉強したいという気持ちを持つのは当然であり、それを抑え付けることには無理がある。
・大学を卒業後も、研修医の期間中は先輩医師のもとへ行って自分たちの問題を解決する仕組みを医科大学ごとに作ることが必要ではないか。
・地域の医療ニーズに応えるため、総合研修、あるいは総合臨床、総合内科といったものを一つの専門として認めて、研修を行うことが必要。
・プライマリー・ケアの能力を育成するための組織や仕組みを作らなければならない。
・地域の医療を担う医師をいかに育成するかということと、地域医療を担う医師を育てる臨床系大学院をどのようにマッチさせればよいのか議論が必要。
・地域の医師を確保するためには、ある程度のレベルに達した医師や専門医を再教育し、プライマリケアのできる熟練医師を育てることも一つの考え方である。
協力者会議における参考人の意見

・開業医が増えているが、開業しても総合診療ができないと困るので、総合診療を学ぶために、2年間程度地域医療を研修してはどうか。
各種機関・団体の意見

・各地域全体として大学病院と地域医療機関(病院・診療所)・保健所等が連携した卒後臨床研修体制を整備し、医学部学生への積極的な情報提供を行い、地域での卒後臨床研修者数を増やすとともに、地域医療への定着化を図る。このなかで、地域医療を一定期間(半年〜1年)経験する等のコースを設ける。(地方公共団体、大学医学部)
・地域で総合的に診療を行う医師の育成体制を確保する。(大学と医療機関の連携)
・へき地医療を理解させるために「へき地医療の専門履修コース」を設定するなど、専門研修体制を整備する。(大学医学部及び附属病院)
・専門医、指導者等の育成を目指した後期臨床研修制度(仮称)や臨床系大学院の組織並びにカリキュラム改革等を行い、臨床研修終了後の医師が総合的医療やへき地医療を学べるコースを大学院に設置し、国及び地方公共団体は財政的に支援する。(国、大学医学部)
・退職後医師を含めて、地域医療に関わることを希望する様々な年代の医師が総合的医療やへき地医療を学べるコースを大学院に設置し、国及び地方公共団体は財政的に支援する。(国、地方公共団体、大学医学部及び附属病院)
・地域医療、特にへき地医療を担っている医師が、定期的に一定期間大学病院や地域中核病院または外国の医療機関において、医学・医療の進歩を学べるよう受け入れ側体制の整備や研修期間中の代替医の派遣制度の整備を図る。(国、地方公共団体、大学医学部及び附属病院)
・大学病院における研修登録医制度などを活用して、病院回診、症例検討、手術技法の修得、諸検査技法の修得などを通じ地域の医師の生涯研修システムを構築し、地域医療を担う医師に、その存在意義と重要性を認識、理解してもらう取り組みを行う。(大学病院)
【地域における医師の確保等の推進について(提言)(平成17年3月 国立大学医学部長会議・国立大学附属病院長会議)】
・医師の臨床研修の必修化を契機として、患者の症状全般を診るという総合診療への関心が高まり、へき地・離島での診療の総合性に関心を持つ医師は徐々に増加している。このため卒前教育や臨床研修など、あらゆる機会をとらえて、へき地・離島での診療への関心をさらに高めるよう努めるべきである。また、へき地保健医療アンケート調査において、へき地診療所医師に臨床研修におけるへき地
・離島研修への期待について尋ねたところ、臨床研修を契機として、へき地・離島での診療への関心が高まることが期待されている。こうしたことを踏まえると、卒後臨床研修においてへき地・離島での診療の実習を経験する医師を増加させることを通じて、臨床研修医に将来のへき地・離島における勤務についての関心を持ってもらうことが重要である。
【へき地保健医療対策検討会報告書(平成17年7月 厚生労働省)】

(2) 大学病院における卒後臨床研修の現状と課題
協力者会議における委員の意見

・医師の地域偏在の理由の一つとして、学生は卒業後、研修の充実している病院を選んで大都会に行く、ということが挙げられる。
・大学では研修医への処遇に限度があり、また、プライマリケア中心のプログラムであるため、専門教育中心の大学では初期研修にふさわしくないのではないかと言うことで、どんどん大学から研修医がいなくなっている。
・地方の大学では研修医が激減して崩壊寸前になっているが、地方大学が崩壊すると周辺の地域医療も崩壊してしまうので、新医師臨床研修制度は見直しが必要。
・卒後すぐに大学病院以外の病院で研修することによって、大学では経験することの少ない疾患を勉強することや他学出身の人達と切磋琢磨することによって生じる連帯感を経験することは良いことである。
・1年次は全員が大学以外の病院で研修を行い、2年次は大学病院で研修をしながらその後の方向性を決め、大学病院での専門研修へ続けるようにすると良い。
・大学病院の研修医が少ないから制度が悪いというのはおかしな話で、多くの研修医が大学病院を希望するような病院になるように大学側も変わる努力が必要。
・研修には学生からの意見を反映させることが必要で、そのための仕組みが必要。
・研修医や学生、関連病院会からの要望により、2年目のプログラムについて、1年間を必修科も含めて外の関連病院で行うというプログラムも加えた。
各種機関・団体の意見

・新臨床研修制度の導入と共に大学病院における臨床研修医在籍状況の推移は制度の導入前の平成15年度72.6パーセントから、導入後平成16年度55.9パーセント、平成17年度49.2パーセントと大幅に減少しつつある。ことに一学年の研修医総数が20名以下の大学病院は全国で実に14施設に及んでいる。医学研究・教育施設におけるこの様な人材不足は、近未来における医学・医療研究の沈滞の可能性を強く危惧させるものである。これは医学・医療研究の国際競争力の低下をもたらし、世界のトップレベルを維持している日本の医学研究と高度先進医療の低下につながって行くことが予想される。結果的に、国民の医療と福祉の大きな危機をもたらすことを危惧させるものである。
・医学部教育における実効的で実践的な臨床実習の充実は、卒後の新臨床研修制度と重複する。前述した卒後の新臨床研修制度がもたらす地域医療と将来の医学研究への影響は国民の福祉に直結する重大問題である。従って、卒前教育において実践的医療を含む臨床実習を確立するとともに、これと関連し卒後の研修期間、研修施設、研修教育内容などの観点から、幅広く新臨床研修制度を見直す必要がある。
・生涯教育を基本とする医学教育においては卒前・卒後の一貫した教育理念が強く求められる。卒前医学教育は文部科学省、卒後医学教育は厚生労働省によって指導監督が行われており、今後、両省における、一貫した卒前・卒後を通じた医師養成教育及び医師生涯教育を推進する行政システムが強く望まれる。
【臨床研修/臨床実習教育環境充実・改善に関する提言と要望(平成17年6月全国医学部長病院長会議】

(3) 大学病院における専門医養成の在り方
(4) 大学院(特に臨床系大学院)の役割と充実方策
協力者会議における委員の意見

・医療人の育成という視点からは、医療人の生涯研修といったところまで、地域にある国立大学法人の医科大学としては責任を負わなければならないと感じている。
・医師の養成については1年、2年の問題ではなく、5年、10年の養成システムでなければならず、1施設だけでそのような養成をすることは不可能であり、大学病院、専門病院、場合によっては中小病院もローテーションしながら、大体10年くらいかけて、家庭医としての専門医も含め、しっかりした専門医の養成をすることが必要。
・後期の専門研修について大学全体としてしっかりしたシステムを作り上げていくことが必要。
・臨床研修が終わって、専門医への道となる専門研修は大学病院で行うべき。
各種機関・団体の意見

・都会を中心に分布する臨床研修病院に研修希望者が集中する一方、研修希望者が少ない地域では、医師の過疎化がすすみ、地域医療が崩壊の危機に瀕している。新医師臨床研修制度においては地域保健・医療研修が必修科目とされているが、今後も、地域保健・医療研修の更なる充実のため、卒後臨床研修プログラムの見直しが必要である。さらに、卒後2年間だけでなく、卒後3年目以降についても診療経験を通じて地域医療の重要性についての認識を深める必要がある。
・研修医に対しては、精神面や安全管理などの点で、きめ細かな配慮が必要であり、卒後3〜7年目の医師が指導医とともにチーム診療の中で研修医をサポートする必要がある。
・国立大学には「知識・技術の創造拠点」「中核人材の養成拠点」「社会的な寄与」という果たすべき役割があり、優れた医師を育成・輩出するという医育機関としての責務は重大なものである。
【地域医療を活性化する国立大学病院専門医養成システム(平成17年8月 国立大学附属病院長会議)】

4. 教育者・研究者養成に係わる論点
(1) 医系分野で求められる教育者・研究者の現状と課題
(2) 教育者・研究者養成における卒後臨床研修の位置付け
(3) 学部・大学院を含めた具体的な養成方策(MD/PhDコース、医科学 修士を含む)
(4) 公衆衛生大学院の現状と課題
協力者会議における委員の意見

・医療、介護、福祉の問題は大変経費がかかるものであるが、人間が生活していくうえでの必要経費であり、負の部分として考えるのではなく、むしろ国際社会の中で新しい医療法を開発したり、新しい介護方法を提言していくことが重要。
・積極的に研究を推進して、知的財産の発信の拠点として日本が先進的なリーダーシップを執ることが国際的使命である。
・大学院の重点化により定員が増えたことで大学院生が増加したが、昔は大学院に行く人は成績優秀であったのに、現在は定員を埋めるために必ずしも優秀でない者もいるのではないか。
・例えばアメリカでは、スクール・オブ・パブリック・ヘルスで養成された専門家がやるようなことを日本の場合では医師がやらなければいけなくなっているのではないか。
協力者会議における参考人の意見

・大学ではいっぱしの臨床家のような顔をして、病院ではいっぱしの研究家のような顔をした人がいるが、どちらかに帰趨をはっきりさせて欲しい。本当の研究者は少ない。
・基礎研究は重要だが、基礎研究も最後は患者に結びつくので、ある程度研究をしたら患者を診ることが医療の根本ではないか。
各種機関・団体の意見

・研究者養成を主たる目的とする教育課程においては、研究者としての基本を身に付けさせるという観点から、例えば、遺伝子に関する技術、RIの取扱い、タンパク質解析、細胞培養、統計処理、研究計画・デザインの立案など、研究者に求められる医学・生命科学研究の遂行に必要な基本的知識・技術をコースワークで修得させることが必要である。
・優れた研究能力等を備えた臨床医・臨床歯科医等の養成を主たる目的とする教育課程においては、臨床医、臨床歯科医など高度の専門性を必要とされる業務に必要な技能・態度を修得させるほか、例えば、医の倫理、臨床心理、医師と患者関係、臨床研究方法・指導法など、臨床医・臨床歯科医に求められる資質や能力を涵養するために必要な内容をコースワークに盛り込むなど、体系的かつ組織的な教育活動が必要である。
 また、併せて、病気の原因、新しい診断・治療法の開発・評価、臨床疫学など、患者に対する診療を通じた臨床研究のテーマを課し、博士論文作成のための研究指導を行わなければならない。
 このほか、先に示したように、コースワークの中に、関連学会における認定資格(専門医など)の取得に必要な教育内容を取り込むこともできるが、この場合、大学院博士課程としての教育課程であることと、当該資格取得のための教育内容との整合性を図る必要があることに留意すべきである。
・医学・歯学系の修士課程の大学院は、医学部・歯学部卒業者以外を対象とし、当該課程終了後に医学・歯学系の博士課程に進むことを想定して設置されているが、実際には、課程本来の目的に沿って、4年の医学・歯学の博士課程と合わせた研究者養成のプロセスを担っている面と、医学・歯学に関する専門知識を有し、幅広く医療関連分野で活躍する高度専門職業人の育成を担っているという両面があり、このような現状に対応した教育が必要である。
・医療疫学、医療経済、予防医療、国際保健、病院管理等の幅広い分野を含む公衆衛生分野の大学院については、高齢化等の進展に対応して、また、医学、歯学、薬学等のヒトを対象とした臨床研究・疫学研究の推進を図るためにも、公衆衛生分野における高度職業人の育成が課題となっている。
・このため、欧米の状況も踏まえ、2年制の専門職大学院として、大学院の整備を進めていくことが必要であり、また、それに必要な教員の養成やカリキュラムの開発、修了者の社会での活躍の場の拡大など、関連する施策を進めていくことが求められる。また、その場合の教育内容については、各専門領域に共通するコア科目の修得と、各専門領域における専門科目の修得とを組み合わせるような工夫が必要である。
・博士課程(後期)においては、当該分野における研究者養成とこの分野の教育者の育成を主たる目的とし、その目的に相応しい教育内容とすることが適当である。
・医療疫学、医療経済、予防医療、国際保健、病院管理等の幅広い分野を含む公衆衛生分野の大学院については、高齢化等の進展に対応して、また、医学、歯学、薬学等のヒトを対象とした臨床研究・疫学研究の推進を図るためにも、公衆衛生分野における高度専門職業人の育成が課題となっている。
・このため、欧米の状況も踏まえ、2年制の専門職大学院として、大学院の整備を進めていくことが必要であり、また、それに必要な教員の養成やカリキュラムの開発、修了者の社会での活躍の場の拡大など、関連する施策を進めていくことが求められる。また、その場合の教育内容については、各専門領域に共通するコア科目の修得と、各専門領域における専門科目の修得とを組み合わせるような工夫が必要である。
・博士課程(後期)においては、当該分野における研究者養成とこの分野の教育者の育成を主たる目的とし、その目的に相応しい教育内容とすることが適当である。
【医療系大学院の目的とそれに沿った教育等の在り方について(平成17年4月 中央教育審議会大学分科会大学院部会医療系ワーキング・グループ)】

5. 教育研究病院としての大学病院に係わる論点
(1) 地域医療を担う医師確保に関する大学病院の役割
協力者会議における委員の意見

・医師の適正配置については、必ずしも住民・自治体の要求が地域の医療の質を保つための医師の不足によるのではないことも考えられるので、県や関連病院会からの委員を含めた委員会で、公平な立場からの県の医師の配置というものを見ていけるのではないか。
・大学病院が地域に貢献した場合には、病床数を増やしたり研修への補助金を増額するような仕組みを作ることが望ましい。
・総合診療部がある大学病院が増えてきているが、まだまだ総合診療医の受け皿が少なく、総合診療医を目指す者の展望が開けてこないという現実がある。
・総合診療医の位置付けを明確にし、病院でもこれを増やしていくことが大切だということを社会制度としてアピールしたり、補助したりするスキームが必要。
各種機関・団体の意見

・国立大学病院の地域医療への支援体制等の強化等を図るために、地方財政再建促進特別措置法の改正も含め、地方自治体による国立大学病院への公的支援の促進策を検討する。(国、大学医学部)
・地域の医療機関で一定年限勤務することに対して、給与面での優遇や経歴としての評価等インセンティブが働くシステムを構築する。(地方公共団体、大学医学部及び附属病院)
・診療科単位で行っている医師紹介の窓口を一本化し、各病院あるいは各地区単位に拡大して紹介を行う等透明性・公平性を確保し、社会への説明責任を果たしうるを早期に検討する。(大学医学部及び附属病院)
・近隣の大学と協同して医師紹介が可能となるシステムを構築する。(大学医学部及び附属病院)
【地域における医師の確保等の推進について(提言)(平成17年3月 国立大学医学部長会議・国立大学附属病院長会議)】
・例えば、旭川医科大学では、眼科領域での遠隔医療システムによって、患者が遠方の医療機関を受信しなくても、身近な地域で、対面で専門医の診察を受けることとほぼ同等の成果が得られている。
・こうした地域の事情を踏まえて、すでに組織的に取り組まれている成功事例等を取り上げ、必要な支援方策等を検討する必要がある。
・医師を養成する医育機関は、卒業後も医師の研修を担うとともに、地域医療に対し、医師を適切に配置する調整を行うなど、幅広い対応を行ってきた。
・医育機関・学会等は、今後も地方自治体との連携を深めるとともに、へき地医療の向上に協力する必要がある。
・文部科学省では、大学における医師紹介システムの明確化及び決定プロセスにおける透明性の確保を推進しており、平成17年3月現在、35大学で、医師紹介窓口を一本化している。この他、地域医療支援委員会を大学内に設置し、行政機関及び医療機関と連携するなどの取組が行われている。
・また、地域の医療機関、医育機関など関係諸機関が参加し、地域における具体的な医師確保方策について検討を行う場として、都道府県が中心となった、医療対策協議会が設置されてきている。このような協議会及び当該協議会への参画・協力の制度化を含めた充実を図ることが適当である。
【へき地保健医療対策検討会報告書(平成17年7月 厚生労働省)】

(2) 教育研究病院としての大学病院の役割を適切に果たすための組織体制の在り方
協力者会議における委員の意見

・良き臨床をするということはとても大事なアウトカムの一環であり、目視できるメインの部分であるが、それを推進するための良き教育、良き研究も、未来を切り開くために推進していかなければならない。いかなるバランスのもとに教育、研究、診療の3つのファクターを実行・実現させるかが大きな課題。
・経営的視点だけで大学病院を評価してしまうと、臨床の教員が診療と経営だけで疲弊し、研究教育活動が低下し、その大学自体に魅力がなくなってしまうという問題が生じる。
・大学と地域の大病院との棲み分けや役割分担を整理することが必要。
・学生の教育、卒後の教育、患者の治療を含め大学病院に医師が不足しているし、診療科によっても麻酔科、救急、小児科、産婦人科、外科系の教員が足りない状況にある。
・臨床系教員は診療に多大な時間を割かざるを得ない状況にあり、研究、教育に深刻な影響を与えている。実感的には教員の管理業務も含めた診療の比重は70パーセントくらいであり、全員が臨床、教育、研究を発展させようと使命感に燃えて働いているが、どうしてもしわ寄せが教育と研究に及んでしまうとともに総労働時間も長く、厳しい現実の前に疲れ切っている状況がある。
・医療を行っている側や医学教育を行っている側が自己改革をして、国民に分かるような形でしっかりと説明責任を果たし、人員と財源を増やさないと良い医療ができないことを明らかにすることが必要。
・医療安全を確保しなければならないために、学生の実習が非常にしづらい。

(3) 女性医師増加に伴う環境整備
協力者会議における委員の意見

・女性医師が本当に医師として1だけ働くことが人生なのか、ある時期は0.7でも他のこともできているということでいいのではないか。
・あれもこれもすべてやりたいという考え方の女性が多いが、そういった価値観が少し変わることがあってもいいのではないか。
協力者会議における参考人の意見

・医師国家試験合格者の33.4パーセントが女性であり、入学者の40パーセント以上を女性が占める大学も少なからずあるので、今後、女性医師をどのように活用するのか、ということが大事。
・女性医師については、性差医療や女性外来などのニーズもあり、活躍の場も広がっているが、産休・育休により現場を離れることで医療の進歩についていけなくなったと感じてしまう人もいる。病院管理者の間では、労働力的には0.7くらいで考えている者が多い。
各種機関・団体の意見

・近年、全体の医師数に占める女性医師の割合は年々高まっており、その労働力を確保することは重要であり、このため、結婚、出産等で一時医療現場から離れた女性医師の復帰のための環境整備が求められており、女性医師が育児しながら勤務できる労働環境(託児所、育児所)や職場復帰を支援するシステムの整備のほか、ワークシェアリングにも取り組む必要がある。
・また、男性医師の女性医師受入に対する意識改革を図るとともに、女性医師についても一層の職業人としての意識改革が必要である。
【地域における医師の確保等の推進について(提言)(平成17年3月 国立大学医学部長会議・国立大学附属病院長会議)】


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