(7)自閉症・情緒障害

自閉症・情緒障害とは

自閉症とは、①他者との社会的関係の形成の困難さ、②言葉の発達の遅れ、③興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする発達の障害です。その特徴は、3歳くらいまでに現れることが多いですが、成人期に症状が顕在化することもあります。中枢神経系に何らかの機能不全があると推定されています。
情緒障害とは、周囲の環境から受けるストレスによって生じたストレス反応として状況に合わない心身の状態が持続し、それらを自分の意思ではコントロールできないことが継続している状態をいいます。情緒障害の状態の現れ方や時期は様々であり、状況に合わない心身の状態を自分の意思ではコントロールできないことにより、学校生活や社会生活に適応できなくなる場合もあります。また、児童生徒本人は困難さを感じているにもかかわらず、その困難さが行動として顕在化しないため、一見すると学校生活や社会生活に適応できているように見えてしまう場合もあります。

通常の学級

自閉症や情緒障害に応じた教育的対応

通常の学級においては、小中学校等で編成される教育課程に基づいて、各教科等の指導を学級、学年集団で行ったり、全体で学校行事に取り組んだりするなど、一斉の学習活動が基本となります。自閉症や情緒障害のある子供が各教科等を学ぶ場合、障害による困難さに対する指導上の工夫や個に応じた手立てが必要となります。
例えば、自閉症のある子供の場合、複数の指示や口頭による指示を理解することの困難さに対して、板書で指示を視覚的に示すなど、合理的配慮の観点に基づいた適切な配慮の下で指導をしています。また、情緒障害のある子供の場合、周囲の視線に敏感であったり、周囲の状況が気になりやすかったりすることに対して、落ち着くことができる席の場所などを事前に把握しておくなどの配慮を行った上で指導をしています。
このように、教育における合理的配慮を含む必要な支援の内容や学習指導要領総則のほか,各教科等編の解説に示されている「学習活動を行う場合に生じる困難さに応じた指導内容や指導方法の工夫」等を参考とし,子供一人一人の教育的ニーズを踏まえ指導しています。

通級による指導

自閉症や情緒障害に応じた教育的対応

通級による指導においては、各教科等の大部分の授業を通常の学級で学び、指導上の工夫や個に応じた手立て、教育における合理的配慮を含む必要な支援を受けながら、一部の授業について当該の子供の障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために、自立活動の指導をしています。
例えば、自閉症のある子供については、他人との意思疎通に関わることや対人関係、社会生活への適応などの困難さを改善・克服を図る指導をしています。また、選択性かん黙等の子供については、人との意思疎通や主体的なコミュニケーションなどの困難さを改善・克服を図る指導をしています。

障害の程度

自閉症

自閉症又はそれに類するもので、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度のもの
(平成25年10月4日付け25文科初第756号初等中等教育局長通知)

情緒障害

主として心理的な要因による選択性かん黙があるもので、通常の学級で学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度のもの
(平成25年10月4日付け25文科初第756号初等中等教育局長通知)

教育課程

通級による指導の自閉症・情緒障害のある児童生徒については、それぞれ小学校、中学校、高等学校の教育課程の基、教育を行い、特別の教育課程を編成する場合には、特別支援学校小学部・中学部学習指導要領及び特別支援学校高等部学習指導要領に示す自立活動の内容を参考とし、指導目標や指導内容を設定して指導をしています。

特別支援学級

自閉症・情緒障害に応じた教育的対応

自閉症やそれに類するものや心理的な要因による選択性かん黙等がある児童生徒を対象としています。
特別支援学級では、一斉指示を理解することに困難があったり、周囲の環境に対してストレスを感じてしまったりすることから、情緒的に不安定になってしまった際に、具体的な方法を通して落ち着きを取り戻すことができるよう、子供一人一人の障害の状態等に応じた指導内容や指導方法の工夫を検討し、適切な指導を行っています。

障害の程度

一 自閉症又はそれに類するもので、他人との意思疎通及び対人関係の形成が困難である程度のもの
二 主として心理的な要因による選択性かん黙等があるもので、社会生活への適応が困難である程度のもの
(平成25年10月4日付け25文科初第756号初等中等教育局長通知)

教育課程

自閉症・情緒障害特別支援学級は、小学校、中学校の学級の一つであり、小学校、又は中学校の目的及び目標を達成していく学級です。ただし、子供の障害の状態等に応じて、特別の教育課程を編成して指導できるようにしており、各教科等の他に、障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な自立活動を取り入れ、例えば、苦手な聴覚刺激の調整を自ら行うことで心理的な安定を図ることや話し言葉以外のコミュニケーション手段を有効に活用して他者との意思疎通を図ること等に関する指導をしています。
また、子供の障害の状態等を考慮の上、特別支援学校小学部・中学部学習指導要領を参考にし、各教科の目標や内容を下学年の教科の目標に替えるなどして、実態に応じた教育課程を編成し指導しています。

参考資料

障害のある子供の教育支援の手引~子供たち一人一人の教育的ニーズを踏まえた学びの充実に向けて~
幼稚園教育要領、小学校、中学校、高等学校の学習指導要領
特別支援学校学習指導要領