(5)病弱・身体虚弱

病弱・身体虚弱とは

病弱とは,心身が病気のため弱っている状態をいいます。また,身体虚弱とは,病気ではないが身体が不調な状態が続く,病気にかかりやすいといった状態をいいます。これらの用語は,このような状態が継続して起こる,又は繰り返し起こる場合に用いられており,例えば風邪のように一時的な場合は該当しません。

特別支援学校

病弱・身体虚弱に応じた教育的対応

特別支援学校(病弱)には,一般的に小学部,中学部及び高等部が設置され,一貫した教育が行われています。病気等により,継続して医療や生活上の管理が必要な子供に対して,必要な配慮を行いながら教育を行っており,病院に隣接又は併設されている学校が多くあります。また,学校と離れた病院においても,病院内に教室となる場所や職員室等を確保して,分校又は分教室として設置したり,病院・施設,   自宅への訪問教育を行ったりしています。
治療等で学習空白のある場合は,グループ学習や個別指導による授業を行ったり,病気との関係で長時間の学習が困難な子供については,学習時間を短くしたりするなどして柔軟に学習できるように配慮しています。
健康の維持・管理や,運動制限等のために,自宅等から通学し学習をする子供もいます。

障害の程度

一 慢性の呼吸器疾患,腎臓疾患及び神経疾患,悪性新生物その他の疾患の状態が継続して医療又は生活規制を必要とする程度のもの
二 身体虚弱の状態が継続して生活規制を必要とする程度のもの(学校教育法施行令第22条の3)

教育課程

病弱・身体虚弱の子供については,それぞれ小学校,中学校,高等学校の教育課程に準ずる教育を行い,小学校,中学校又は高等学校の教育目標の達成に努めるとともに,障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服し自立を図るために必要な知識,技能,態度及び習慣を養うことを目標としています。
これらの目標を達成するために、一人一人の障害の状態等を考慮した弾力的な教育課程として,「小学校・中学校・高等学校の下学年(下学部)の各教科を中心とした教育課程」「知的障害特別支援学校の各教科を中心とした教育課程」「自立活動を中心とした教育課程」等,子供の実態等を考慮した多様な教育課程を工夫して編成・実施しています。自立活動の時間では,身体面の健康維持とともに,病気に対する不安感や自身の喪失などに対するメンタル面の健康維持のための学習を行っています。

通常の学級

病弱・身体虚弱に応じた教育的対応

通常の学級においては,小中学校等で編成される教育課程に基づいて,各教科等の指導を学級,学年集団で行ったり,全体で学校行事に取り組んだりするなど,一斉の学習活動が基本となります。病弱・身体虚弱の子供が各教科等を学ぶ場合,病気等による困難さに対する指導上の工夫や個に応じた手立てが必要となります。例えば,教室の座席配置,休憩時間の取り方,体育等の実技における配慮等の指導上の工夫や,体調や服薬の自己管理を徹底するなど,教育における合理的配慮を含む必要な支援の内容や学習指導要領総則のほか,各教科等編の解説に示されている「学習活動を行う場合に生じる困難さに応じた指導内容や指導方法の工夫」等を参考とし,子供一人一人の教育的ニーズを踏まえ、健康面や安全面等に留意しながら指導しています。

通級による指導

病弱・身体虚弱に応じた教育的対応

通級による指導においては,各教科等の大部分の授業を通常の学級で学び,指導上の工夫や個に応じた手立て,教育における合理的配慮を含む必要な支援を受けながら,一部の授業について当該の子供の障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために,例えば,健康状態の回復・改善や体力の向上,心理的な課題への対応などのための自立活動の指導をしています。

障害の程度

病弱又は身体虚弱の程度が,通常の学級での学習におおむね参加でき,一部特別な指導を必要とする程度のもの
(平成25年10月4日付け25文科初第756号初等中等教育局長通知)

教育課程

通級による指導の病弱・身体虚弱の子供については,それぞれ小学校,中学校,高等学校の教育課程の基,教育を行い,特別の教育課程を編成する場合には,特別支援学校小学部・中学部学習指導要領及び特別支援学校高等部学習指導要領に示す自立活動の内容を参考とし,指導目標や指導内容を設定して指導をしています。

特別支援学級

病弱・身体虚弱に応じた教育的対応

入院中の子供のために病院内に設置された学級や,小・中学校内に設置された学級があります。病院内の学級では,退院後に元の学校に戻ることが多いため,在籍していた学校と連携を図りながら各教科等の学習を進めています。入院や治療のために学習空白となっている場合には,必要に応じて指導内容を精選して指導したり,身体活動や体験的な活動を伴う学習では,工夫された教材・教具などを用いて指導したりしています。

障害の程度

一 慢性の呼吸器疾患その他疾患の状態が持続的又は間欠的に医療又は生活の管理を必要とする程度のもの
二 身体虚弱の状態が持続的に生活の管理を必要とする程度のもの
(平成25年10月4日付け25文科初第756号初等中等教育局長通知)

教育課程

病弱・身体虚弱特別支援学級は,小学校,中学校の学級の一つであり,小学校,又は中学校の目的及び目標を達成していく学級です。ただし,子供の障害の状態等に応じて,特別の教育課程を編成して指導できるようにしており,各教科等の他に,障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な自立活動を取り入れ,例えば,健康状態の維持,回復・改善や体力の回復・向上を図るための指導をしています。
また,子供の障害の状態等を考慮の上,特別支援学校小学部・中学部学習指導要領を参考にし,各教科の目標や内容を下学年の教科の目標に替えたり,各教科を知的障害者である児童に対する教育を行う特別支援学校の各教科に替えたりするなどして,実態に応じた教育課程を編成し指導しています。

参考資料

障害のある子供の教育支援の手引~子供たち一人一人の教育的ニーズを踏まえた学びの充実に向けて~
幼稚園教育要領、小学校、中学校、高等学校の学習指導要領
特別支援学校学習指導要領