(2)聴覚障害

聴覚障害とは

聴覚障害とは、身の周りの音や話し言葉が聞こえにくかったり、ほとんど聞こえなかったりする状態をいいます。聴覚障害の程度や聞こえ方、言語発達の状態が一人一人異なるため、聴覚障害のある子供には、できるだけ早期から適切な対応を行い、音声言語をはじめその他多様なコミュニケーション手段を活用して、その可能性を最大限に伸ばすことが大切です。

特別支援学校

聴覚障害に応じた教育的対応 

特別支援学校(聴覚障害)には、一般的に小学部、中学部及び高等部が設置され、一貫した教育が行われています。高等部には、普通科のほかに職業教育を主とする学科や専攻科が設けられていることもあります。
各教科及び自立活動の指導に当たっては、子供一人一人の実態等に即した個別の指導計画を作成し指導しています。特に、幼稚部、小学部では聴覚活用や言語発達に重点を置き、それ以降は、自立と社会参加を見据えた言語指導や情報の活用(読書の習慣、コミュニケーションの態度・技能など)、障害の特性についての自己理解や心理的な諸問題に関するものへと次第に移行した指導を行っています。
特別支援学校(聴覚障害)は、聴覚障害が比較的重い者が集団を形成しているため、障害の理解や自己理解がしやすい環境です。施設設備の面では、聴覚活用のための機器(オージオメータ、補聴器特性検査装置、補聴援助機器等)や、発音・発語指導のための鏡など、さらに、教科等の指導において、その理解を助けるための視聴覚機器(大型モニター等)が用意されています。

障害の程度

両耳の聴力レベルがおおむね60デシベル以上のもののうち、補聴器等の使用によっても通常の話声を解することが不可能又は著しく困難な程度のもの(学校教育法施行令第22条の3)

教育課程

聴覚障害のある子供については、それぞれ小学校、中学校、高等学校の教育課程に準ずる教育を行い、小学校、中学校又は高等学校の教育目標の達成に努めるとともに、障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服し自立を図るために必要な知識、技能、態度及び習慣を養うことを目標としています。
これらの目標を達成するために、子供一人一人の聴覚障害に伴う聴覚活用やコミュニケーション等の障害の状態等に応じた指導とともに、知的障害などを併せ有している場合もあることから、一人一人の障害の状態等を考慮した弾力的な教育課程を編成しています。例えば、「小学校・中学校・高等学校の各教科を中心とした教育課程」「小学校・中学校・高等学校の下学年(下学部)の各教科を中心とした教育課程」「知的障害特別支援学校の各教科を中心とした教育課程」「自立活動を中心とした教育課程」等、多様な教育課程を工夫して編成し指導しています。

通常の学級

聴覚障害に応じた教育的対応 

通常の学級においては、小中学校等で編成される教育課程に基づいて、各教科等の指導を学級、学年集団で行ったり、全体で学校行事に取り組んだりするなど、一斉の学習活動が基本となります。聴覚障害のある子供が各教科等を学ぶ場合、障害による困難さに対する指導上の工夫や個に応じた手立てが必要となります。例えば、子供が聞き取りやすい座席位置にしたり、教師の話声を子供の補聴器や人工内耳に直接届ける補聴援助機器等を使用したりするなど、教育における合理的配慮を含む必要な支援の内容や学習指導要領総則のほか、各教科等編の解説に示されている「学習活動を行う場合に生じる困難さに応じた指導内容や指導方法の工夫」等を参考とし、子供一人一人の教育的ニーズを踏まえ指導しています。

通級による指導

聴覚障害に応じた教育的対応 

通級による指導においては、各教科等の大部分の授業を通常の学級で学び、指導上の工夫や個に応じた手立て、教育における合理的配慮を含む必要な支援を受けながら、一部の授業について当該の子供の障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために、例えば、音や言葉の聞き取りや聞き分けなど、聴覚を活用することに重点を置いた指導を受けたり、抽象的な言葉の理解や教科に関する学習活動を行ったりしています。

障害の程度

補聴器等の使用によっても通常の話声を解することが困難な程度の者で、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とするもの
(平成25年10月4日付け25文科初第756号初等中等教育局長通知)

教育課程

通級による指導の聴覚障害のある子供については、それぞれ小学校、中学校、高等学校の教育課程の基、教育を行い、特別の教育課程を編成する場合には、特別支援学校小学部・中学部学習指導要領及び特別支援学校高等部学習指導要領に示す自立活動の内容を参考とし、指導目標や指導内容を設定して指導をしています。

特別支援学級

聴覚障害に応じた教育的対応 

各教科等の指導に当たっては、子供一人一人の障害の状態等を考慮し、教材・教具の開発・工夫を行ったり、個別指導やグループ指導といった授業形態を積極的に取り入れたりしています。また、子供一人一人の障害の状態や学習状況等に応じて、通常の学級の子供と交流及び共同学習を行い、教科学習を効果的に進めたり、社会性や集団への参加能力を高めたりするための指導をしています。
多くの学級では、聴覚活用のために、オージオメータや補聴援助機器を設置したり、発音・発語指導のために鏡を設置したりするなどの設備の整備や工夫をしています。

障害の程度

補聴器等の使用によっても通常の話声を解することが困難な程度のもの
(平成25年10月4日付け25文科初第756号初等中等教育局長通知)

教育課程

難聴特別支援学級は、小学校、中学校の学級の一つであり、小学校、又は中学校の目的及び目標を達成していく学級です。ただし、子供の障害の状態等に応じて、特別の教育課程を編成して指導できるようにしており、各教科等の他に、障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な自立活動を取り入れ、例えば、聴覚活用に関する指導や、音声(話し言葉)の受容(聞き取り及び読話)と表出(話すこと)に関する指導を行っています。さらに必要に応じて、学習や生活で用いる語句・文・文章の意味理解などの言語概念の形成や活用に関する指導や、コミュニケーションを通じた人間関係の形成に関する指導、障害の特性の理解やそれに応じた環境の調整などに関する指導を行っています。
また、子供の障害の状態等を考慮の上、特別支援学校小学部・中学部学習指導要領を参考にし、各教科の目標や内容を下学年の教科の目標に替えたり、各教科を知的障害者である子供に対する教育を行う特別支援学校の各教科に替えたりするなどして、実態に応じた教育課程を編成し指導しています。

参考資料

障害のある子供の教育支援の手引~子供たち一人一人の教育的ニーズを踏まえた学びの充実に向けて~
幼稚園教育要領、小学校、中学校、高等学校の学習指導要領
特別支援学校学習指導要領
聴覚障害教育の手引き
聴覚障害のある児童のための音楽指導資料