(1)視覚障害

視覚障害とは

視機能の永続的な低下により,学習や生活に支障がある状態をいいます。学習では,動作の模倣,文字の読み書き,事物の確認の困難等があります。また,生活では,慣れない場所においては,物の位置や人の動きを即時的に把握することが困難であったり,他者の存在に気付いたり,顔の表情を察したりするが困難であり,単独で移動することや相手の意図や感情の変化を読み取ったりすることが難しい等があります。

特別支援学校

視覚障害に応じた教育的対応 

特別支援学校(視覚障害)には,一般的に小学部,中学部及び高等部が設置され,一貫した教育が行われています。また,寄宿舎を設置している学校もあります。
各教科及び自立活動の指導に当たっては,子供一人一人の実態等に即した個別の指導計画を作成し指導しています。例えば,弱視の子供には,見え方の状態に合わせて拡大や白黒反転した教材を使用して指導したり,弱視レンズなどの視覚補助具やコンピュータ操作の技能の習得を目指したりするなどの指導をしています。
また,高等部を設置している学校では,普通教育を主とする普通科及び専門教育を主として行う学科(理療科等)を設置し、自立と社会参加に必要な知識や技能の習得を目指した指導をしています。

障害の程度

両眼の視力がおおむね0.3未満のもの又は視力以外の視機能障害が高度のもののうち,拡大鏡等の使用によっても通常の文字,図形等の視覚による認識が不可能又は著しく困難な程度のもの(学校教育法施行令第22条の3)

教育課程

視覚障害者である子供については,それぞれ小学校,中学校,高等学校の教育課程に準ずる教育を行い,小学校,中学校又は高等学校の教育目標の達成に努めるとともに,障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服し自立を図るために必要な知識,技能,態度及び習慣を養うことを目標としています。
これらの目標を達成するために,一人一人の障害の状態等を考慮した弾力的な教育課程として,「小学校・中学校・高等学校の下学年(下学部)の各教科を中心とした教育課程」「知的障害特別支援学校の各教科を中心とした教育課程」「自立活動を中心とした教育課程」等,子供の実態等を考慮した多様な教育課程を工夫して編成・実施しています。

通常の学級

視覚障害に応じた教育的対応

通常の学級においては,小中学校等で編成される教育課程に基づいて,各教科等の指導を学級,学年集団で行ったり,全体で学校行事に取り組んだりするなど,一斉の学習活動が基本となります。視覚障害のある子供が各教科等を学ぶ場合,障害による困難さに対する指導上の工夫や個に応じた手立てが必要となります。例えば,拡大教材等を活用することや,実験や観察の際に危険のない範囲で近づいて見ることができるようにすること,照明や外からの光の入り方に配慮して教室内の座席の位置を検討すること等で見えにくさに配慮することなど,教育における合理的配慮を含む必要な支援の内容や学習指導要領総則のほか,各教科等編の解説に示されている「学習活動を行う場合に生じる困難さに応じた指導内容や指導方法の工夫」等を参考とし,子供一人一人の教育的ニーズを踏まえ指導しています。

通級による指導

視覚障害に応じた教育的対応 

通級による指導においては,各教科等の大部分の授業を通常の学級で学び,指導上の工夫や個に応じた手立て,教育における合理的配慮を含む必要な支援を受けながら,一部の授業について当該の子供の障害による学習上又は生活上の困難さに対する指導上の工夫や個に応じた手立てが必要となります。例えば,拡大教材等を活用することや,実験や観察の際に危険のない範囲で近づいて見ることができるようにすること,照明や外からの光の入り方に配慮して教室内の座席の位置を検討すること等で見えにくさに配慮することなど教育における合理的配慮を含む必要な支援の内容のほか,視知覚や視機能の向上を図る学習や,地図やグラフ等の資料を効率的に読み取るための視覚補助具の活用方法を学習する等の障害の状態等で生活上又は学習上生じる困難さの改善・克服を図る自立活動の指導をしています。

障害の程度

拡大鏡等の使用によっても通常の文字,図形等の視覚による認識が困難な程度の者で,通常の学級での学習におおむね参加でき,一部特別な指導を必要とするもの
(平成25年10月4日付け25文科初第756号初等中等教育局長通知)

教育課程

通級による指導の視覚障害者である子供については,それぞれ小学校,中学校,高等学校の教育課程の基,教育を行い,特別の教育課程を編成する場合には,特別支援学校小学部・中学部学習指導要領及び特別支援学校高等部学習指導要領に示す自立活動の内容を参考とし,指導目標や指導内容を設定して指導をしています。

特別支援学級

視覚障害に応じた教育的対応 

各教科等の指導に当たっては,子供一人一人の障害の状態等を考慮し,教材・教具の開発・工夫を行ったり,個別指導やグループ指導といった授業形態を積極的に取り入れたりしています。また,子供一人一人の障害の状態や学習状況等に応じて,通常の学級の子供と交流及び共同学習を行い,教科学習を効果的に進めたり,社会性や集団への参加能力を高めたりするための指導をしています。
多くの学級では,子供が可能な限り自らの力で学校生活が送れるよう,例えば,眼疾患によってまぶしい場合があるため遮光カーテンや調光できる照明を設置したり,一人一人に拡大読書器を配置したりするなどの施設・設備の整備や工夫をしています。

障害の程度

拡大鏡等の使用によっても通常の文字,図形等の視覚による認識が困難な程度のもの
(平成25年10月4日付け25文科初第756号初等中等教育局長通知)

教育課程

弱視特別支援学級は,小学校,中学校の学級の一つであり,小学校,又は中学校の目的及び目標を達成していく学級です。ただし,子供の障害の状態等に応じて,特別の教育課程を編成して指導できるようにしており,各教科等の他に,障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な自立活動を取り入れ,例えば,視知覚や視機能の向上を図る学習や,地図やグラフ等の資料を効率的に読み取るための視覚補助具の活用方法を学習する等の障害の状態等で生活上又は学習上生じる困難さの改善・克服を図る自立活動の指導をしています。
また,子供の障害の状態等を考慮の上,特別支援学校小学部・中学部学習指導要領を参考にし,各教科の目標や内容を下学年の教科の目標に替えたり,各教科を知的障害者である児童に対する教育を行う特別支援学校の各教科に替えたりするなどして,実態に応じた教育課程を編成し指導しています。

参考資料

障害のある子供の教育支援の手引~子供たち一人一人の教育的ニーズを踏まえた学びの充実に向けて~
幼稚園教育要領、小学校、中学校、高等学校の学習指導要領
特別支援学校学習指導要領
点字教科書編集資料