資料6:これまでの議論の整理について

学校における医療的ケアの実施に関する検討会議
これまでの議論の整理


1.学校における医療的ケアに関する基本的な考え方について

(1)学校における医療的ケアに係る関係者の役割分担について
・教育委員会は、障害の有無にかかわらず、児童生徒等に対して学校教育の機会を提供し、学校における安全の確保を図る責務を負うものであり、学校において医療的ケアを実施する意義は、医療的ケア児に対し、これらの責務を果たすことにある。
・学校において医療的ケアを実施することには、例えば、日々の授業の継続性が保たれ、教育内容が深まる、教師と医療的ケア児との関係性が深まるなどの本質的な教育的意義がある。
・医療的ケア児に対して責務を負うのは教育委員会や学校だけでなく、医療行為について責任を負う主治医や、子の教育について第一義的な責任を負う保護者など、医療的ケア児に関わる者それぞれが、その責任を果たし、医療的ケアの実施に当たることが必要。
・教育委員会や学校は、安全に医療的ケアを実施するため、関係者の役割分担を整理し、各関係者が相互に連携協力しながらそれぞれの役割において責任を果たしていくことが重要。
・教育委員会や学校が関係者の役割分担を整理する際の参考となるよう、国が標準的な役割分担を示すことが必要。


(2)医療関係者との関係について
・学校における医療的ケアの実施に当たっては、医療の専門的知見が不可欠であり、教育委員会や学校における検討や実施に当たっては、地域の医師会、看護団体(訪問看護に係る団体を含む。以下同じ。)その他の医療関係者の協力を得て、小児医療や在宅医療などの専門的知見を活用することが必要。
・医療的ケアは、医師の書面による指示に基づいて行われるものであり、その指示の内容に責任を負う医師(主治医)との連携も不可欠。主治医は、医療的ケア児一人一人の健康状態、医療的ケアの範囲や内容、実施する学校の状況等を踏まえて指示書を出す必要があるため、学校は、主治医に対してこれらの情報を十分に提供するとともに、日々の医療的ケアの実施に必要な記録を整備し、定期的に情報を提供することが必要。
・主治医と学校との間で考えが異なる場合などには、必要に応じて教育委員会が間に入り、双方から意見を聴取し、解決に向けた建設的な対話を後押しするなど、双方の納得できる解決を促す役割を担うことが重要。また、必要に応じて主治医以外の医師や看護師といった医療関係者が主治医との情報共有や協議に関わることも有効。
・こうした対応に備え、教育委員会においては、医療的ケアや在宅医療に知見のある医師を学校医として委嘱したり、特に医療的ケアについて助言や指導を得るための医師(以下、学校医と合わせて「教育委員会の委嘱した医師」という。)を委嘱したりするなど、医療安全を確保するための十分な支援体制を整えることが必要である。
・医療機関等に委託し、派遣された看護師が、医療機関等の医師の監督の下、医療的ケアを実施することにより、医療的ケアに係る指示と服務監督を一本化し、指示系統を明確化することも考えられる。この場合、医療機関等から派遣される看護師は校長等の服務監督は受けないので、あらかじめ業務内容や手続等を十分に検討し、明確に定めておくとともに、安全委員会などを通じて、医療的ケアの目的や、その教育的な意義を十分に共有した上で、日々の教育関係者との連携を十分に図らなければならない。


(3)保護者との関係について
・学校における医療的ケアの実施に当たっては、保護者の理解や協力が不可欠。
・医療的ケア児の健康状態、医療的ケアの内容や頻度等、想定される事故等やその際の対応などについて、あらかじめ保護者から説明を受け、学校で実施可能な医療的ケアの範囲について双方で共通理解を図ることが必要。この過程において主治医や教育委員会の委嘱した医師、相談支援事業所に配置された相談支援専門員等を交えることも有効。
・学校と保護者との連携協力に当たっては、例えば、以下のような事項についてあらかじめ十分に話し合っておくことが必要である。
・学校が医療的ケア児の健康状態を十分把握できるよう、あらかじめ障害の特性や病状について説明を受けておくこと
・健康状態がすぐれない場合の無理な登校は控えること
・登校後の健康状態に異常が認められた場合、速やかに保護者と連絡を取り、対応を相談すること
・健康状態がすぐれずに欠席していた医療的ケア児が回復し、再び登校する日には、連絡帳等により、十分に連絡を取り合うこと
・緊急時の連絡手段を確保すること
・入学後においても、保護者との日々の情報交換を密にするとともに、あらかじめ窓口を定め、保護者の相談に対応することのできる体制を整えておくことが望ましい。
・保護者の付添いの協力を得ることについては、本人の自立を促す観点からも、真に必要と考えられる場合に限るよう努めるべき。やむを得ず協力を求める場合にも、代替案などを十分に検討した上で、その理由や今後の見通しなどについて丁寧に説明することが必要。


2.教育委員会における管理体制の在り方について

(1)総括的な管理体制の整備について
・各教育委員会は、以下のような域内の学校に共通する重要事項を検討し、指針(ガイドライン)等を策定するなど、総括的に管理する体制を整備することが必要。
・看護師の配置
・学校と医師及び医療機関の連携協力
・医療的ケアを行う看護師と認定特定行為業務従事者である教職員やその他の教職員との連携及び役割分担
・看護師や教職員の養成
・ヒヤリ・ハット等の事例の蓄積及び分析
・新たな医療的ケアへの対応に関する検討
・事故等の緊急時の対応
・総括的な管理体制を構築するに当たっては、教育、福祉、医療等の関係部局や関係機関、保護者の代表者などの関係者から構成される協議会(以下「運営協議会」という。)を置くことが必要。
・運営協議会の運営に当たっては、地域の医師会や看護団体などの協力を得て、在宅医療や医療的ケアに精通し、学校の環境等にも理解のある医師や看護師から指導や助言を得たり、構成員に加えたりするなど、医学的な視点が十分に踏まえられるよう留意することが必要。なお、他部局の既存の協議体がある場合は連携や統合など、効率的な運営に努めることが必要。
・運営協議会の運営を通じて、域内の学校における医療的ケア体制をバックアップするため、都道府県等レベルで医療機関、保健所、消防署等地域の関係機関との連絡体制を構築していくことが必要。


(2)指針(ガイドライン)等の策定について
・指針(ガイドライン)等を定めるに当たっては、対応の在り方を画一的に定めるのではなく、校内の体制や医療的ケア児の実態を十分に把握したうえで、各学校が個別に対応を検討することができるよう留意すること。
・特に、人工呼吸器の管理をはじめ、特定行為以外の医療的ケアについては、一律に対応するのではなく、個々の医療的ケア児の状態に応じてその安全性を考慮しながら対応を検討することが重要。


(3)学校に配置される看護師への配慮について
・看護師の配置に当たり、病院と異なり、医師が近くにいない中で医療的ケアを実施することへの不安を可能な限り解消するよう配慮が必要。例えば、域内や学校において指導的な立場となる看護師を指名し、相談対応や実地研修の指導をさせたり、一校に配置される看護師が少ない場合において、複数校の看護師を教育委員会に所属させることで、看護師が相互に情報共有や相談を行うことができるようにしたりすることも考えられる。


(4)都道府県教育委員会等による市町村教育委員会等への支援について
・都道府県教育委員会やその設置する特別支援学校においては、域内の市町村が設置する小中学校等の求めに応じて専門家による巡回指導を行ったり、関係者に対する研修を実施したりするなど、支援に努めることが必要。


3.学校における実施体制の在り方について

(1) 校内における組織的な体制の整備について
・各学校は、教育委員会の指針(ガイドライン)等を踏まえ、以下のような安全確保のための措置を講じ、これらを実施要領として策定することが必要。
・教職員と看護師との役割分担や連携の在り方の整理
・医療的ケアの実施に係る計画書や報告書の作成
・危機管理への対応を含む個別マニュアルの作成
・事故等の緊急時への対応
・ヒヤリ・ハット事例の共有
・近隣の関係機関との連絡体制の整備等
・これらを学校として組織的に進めることができるよう、校長の管理責任の下、関係する教職員、看護師、養護教諭、教育委員会の委嘱した医師等が連携し、対応を検討する場として安全委員会を設置することが必要。
・安全委員会の設置や運営、個々の医療的ケアの実施に当たっては、主治医のほか、教育委員会の委嘱した医師に指導や助言を求めることが必要。なお、緊急時に備え、携帯電話やタブレット端末等を活用した連絡体制を構築することが望ましい。


(参考)上記以外で、これまでに関係通知等において示してきた事柄について

・社会福祉士法及び介護福祉士法に基づく制度の概要(平成23年通知の2)
・特別支援学校において認定特定行為業務従事者となる者について(同3 1.)
(当該医療的ケア児との関係性が十分ある教師が望ましいこと、介助員等の介護職員についても関係性が十分に認められる場合には担当することも考えられることなど)
・認定特定行為業務従事者の養成について(同3 2.(2))
(第三号研修を前提とすること、他の特定行為を行う場合や他の児童生徒等を担当する場合には、その都度実地研修を行うことなど)
・校外学習やスクールバスにおける対応について(同3 2.(5)、平成29年付添調査結果事務連絡)
(看護師の対応を基本とし、慎重に対応すること。ただし、一律に保護者による対応とするのではなく、乗車中における医療的ケアの実施の要否など、医師の意見を踏まえながら、個別に対応可能性を検討して判断することなど)
・各特定行為の留意点(同3 2.(6)1)
 (喀痰吸引・経管栄養における具体的な留意点)
・実施に係る手順・記録等の整備に関する留意点(同3(6)2)
(連絡帳等や個別マニュアルの活用、医療的ケアの実施記録の整備など)
・特別支援学校以外の学校における考え方について(同4)
(主として看護師が医療的ケアに当たり、教職員がバックアップする体制が望ましいことなど)
・特定行為以外の医行為について(平成23年通知5、平成29年付添調査結果事務連絡)
(教育委員会の指導の下、個々の児童生徒等の状態に照らして看護師が対応するべきこと、一律に保護者による対応とするのではなく、個々の児童生徒等の状態に応じて個別に対応可能性を検討するべきことなど)

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初等中等教育局特別支援教育課支援第一係

(初等中等教育局特別支援教育課)