学校における医療的ケアの実施に関する検討会議(第1回)議事録

平成29年11月10日

【森下特別支援教育企画官】ただいまから学校における医療的ケアの実施に関する検討会議を開催したいと思います。本日は、大変お忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
 初等中等教育局特別支援教育課特別支援教育企画官の森下と申します。本日、最初だけ議事進行を務めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 冒頭ですが、特別支援教育課長の中村より一言御挨拶を申し上げます。
【中村特別支援教育課長】皆さん、こんにちは。学校教育における医療的ケアの実施に関する検討会議の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。文部科学省で特別支援教育課長をしております中村と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 委員の先生方におかれましては、御多忙中にもかかわらず本日の会議にお集まりいただき、ありがとうございます。医療技術の進展に伴いまして、たんの吸引や経管栄養など医療的なケアが必要な児童生徒等は増加傾向にございます。平成28年度では、特別支援学校で8,116名の児童生徒、小・中学校において同じように766名の児童生徒が在籍をされております。
 文部科学省では社会福祉士及び介護福祉士法の一部改正に伴い、平成23年に特別支援学校等における医療的ケアの今後の対応についての通知におきまして、基本的な考え方をお示しし、また平成25年度から看護師配置に係る経費の一部補助を行うなど、医療的ケアを必要とする児童生徒等に対する支援の充実に努めてきたところでございます。
 このたび制度の開始から5年を経過し、人工呼吸器の管理をはじめとした高度な医療的ケアへの対応等の新たな課題も指摘されるようになっていることから、これまでの実績、課題等を踏まえながら、学校における医療的ケアを、より安全かつ適切に実施できるよう、更なる検討を行うために、当該検討会議を開催する運びとなりました。
 どうか委員の皆様方におかれましては、忌憚のない御意見を賜りますよう、御指導いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
【森下特別支援教育企画官】本日の配付資料につきましては、議事次第に記載のとおりでございます。不足等ございましたら、会議の途中でも構いませんので、事務局にお申しつけいただけたらと思います。
 それでは、本日出席いただいております委員の先生方を五十音順で御紹介をさせていただきます。
 まず、豊中市教育委員会事務局児童生徒課副主幹支援教育係係長の植田陽子委員です。
【植田委員】お願いします。
【森下特別支援教育企画官】日本小児看護学会理事、公立大学法人兵庫県立大学看護学部教授の勝田仁美委員です。
【勝田委員】よろしくお願いします。
【森下特別支援教育企画官】国立大学法人筑波大学人間系教授、国立大学法人筑波大学附属久里浜特別支援学校校長、下山直人委員です。
【下山委員】下山です。よろしくお願いします。
【森下特別支援教育企画官】日本小児神経学会社会活動・広報委員会委員長、神戸大学大学院保健学研究科教授、高田哲委員です。
【高田委員】高田です。よろしくお願いいたします。
【森下特別支援教育企画官】全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会会長、竹内ふき子委員です。
【竹内委員】よろしくお願いいたします。
【森下特別支援教育企画官】続きまして、淑徳大学看護栄養学部看護学科助手地域看護学、谷口由紀子委員です。
【谷口委員】よろしくお願いいたします。
【森下特別支援教育企画官】全国特別支援学校長会副会長、東京都立光明学園統括校長、田村康二朗委員です。
【田村委員】田村です。よろしくお願いいたします。
【森下特別支援教育企画官】北海道教育庁学校教育局特別支援教育課学校教育指導グループ指導主事、津川周一委員です。
【津川委員】津川です。よろしくお願いいたします。
【森下特別支援教育企画官】日本小児医療保健協議会重症心身障害児(者)・在宅医療委員会委員、豊田市こども発達センターセンター長、三浦清邦委員です。
【三浦委員】三浦です。よろしくお願いいたします。
【森下特別支援教育企画官】公益社団法人日本医師会常任理事、道永麻里委員です。
【道永委員】よろしくお願いいたします。
【森下特別支援教育企画官】全国養護教諭連絡協議会会長、埼玉県立春日部高等学校養護教諭、村井伸子委員です。
【村井委員】村井です。よろしくお願いいたします。
【森下特別支援教育企画官】本日、御都合で御欠席の公益社団法人日本訪問看護財団事務局次長、安藤眞知子委員を加えまして、合計12名の委員で当会議を構成してございます。よろしくお願いいたします。
 続きまして、関係省庁からの出席者、御紹介いたします。
 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課の石井障害児支援専門官です。
【石井障害児支援専門官】よろしくお願いいたします。
【森下特別支援教育企画官】医政局医事課、奥野課長補佐です。
【奥野課長補佐】よろしくお願いいたします。
【森下特別支援教育企画官】医政局地域医療計画課在宅医療推進室、堤室長補佐です。
【堤室長補佐】よろしくお願いいたします。
【森下特別支援教育企画官】医政局看護課、後藤課長補佐です。
【後藤課長補佐】よろしくお願いします。
【森下特別支援教育企画官】社会援護局福祉基盤課福祉人材確保対策室の五十嵐介護技術専門官がご欠席となっています。
【森下特別支援教育企画官】文部科学省より、先ほど御挨拶申し上げました、特別支援教育課長の中村です。
【中村特別支援教育課長】どうぞよろしくお願いします。
【森下特別支援教育企画官】特別支援教育調査官の分藤です。
【分藤特別支援教育調査官】よろしくお願いいたします。
【森下特別支援教育企画官】同じく特別支援教育調査官の萩庭です。
【萩庭特別支援教育調査官】よろしくお願いいたします。
【森下特別支援教育企画官】特別支援教育課課長補佐の濵谷です。
【濵谷課長補佐】よろしくお願いいたします。
【森下特別支援教育企画官】初等中等教育局健康教育・食育課、松崎健康教育調査官です。
【松崎健康教育調査官】よろしくお願いいたします。
【森下特別支援教育企画官】よろしくお願いいたします。

【森下特別支援教育企画官】議事に入ります。
 最初に、当会議の座長の選出でございます。平成23年度に特別支援学校等における医療的ケアの実施に当たって検討会議を置いた際に文科省の担当の特別支援教育調査官を務められて、その後も筑波大学教授として特別支援教育について研究を深められ、学校の医療的ケアに精通されている下山委員に座長をお願いしたいと考えておるところでございますが、よろしゅうございましょうか。
(「異議なし」の声あり)
【森下特別支援教育企画官】ありがとうございます。では、よろしくお願いいたします。
 以降の議事進行は下山座長にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【下山座長】下山です。どうぞよろしくお願いします。座長を引き受けるに当たり、一言御挨拶申し上げます。
 御案内のありましたとおり、私は5年前に、特別支援学校における医療的ケアの在り方の整備に関わらせていただきました。そのときに残した宿題もございます。そして、この5年間、先ほど課長の御挨拶にありましたとおり、医療技術の進歩、あるいは学校での取組、様々なことがある中で、医療的ケアを必要とする子供の対応は進んできたと思います。しかしながら、たくさんの課題が生じてきたことも、また一面での事実かと存じます。
 このように学校の現場の関係者、そして医療、福祉、看護の関係の皆さん、この医療的ケアに携わる様々な専門分野の皆様の参加を頂き、御協力を頂きながら、子供たちにとって教育が充実するよう、学校の医療的ケアの在り方がどうあったらいいのかという整理をしてまいりたいと存じます。どうぞ皆さんの御協力、御支援をお願いしながら議論を取りまとめていきたいと存じますので、よろしくお願いいたします。以上です。

 それでは、議事に入ります。本会議の運営規則を決定したいと思います。
 本会議の運営規則について、事務局において案を作成していただきましたので、御説明申し上げます。事務局から説明をお願いします。
【森下特別支援教育企画官】  
 資料2を御覧ください。学校における医療的ケアの実施に関する検討会議運営規則の案をお諮りしたいと思います。
 主な内容は、この会議の公開についてでございます。一口で申し上げますと、原則公開で会議を進めていきたいと考えてございます。
 第1条、会議は公開して行うとした上で、例外的に、この会議の今後の流れの中で個人情報などを含む事項を取り扱う場合など、正当な理由により非公開とすることが適当だと委員で考えた場合には、会議の合意をもって非公開とすることができるという例外規定を設けております。ただし、現時点で非公開で行う議事を想定しているわけではありませんが、原則として公開で行いたいと考えているところでございます。
 第2条、傍聴の手続でございます。
 第3条でございます。会議資料の公開です。この今お配りしている資料につきましては、原則として全て公開としたいと思っております。例外的な事項については会議の公開と同様の規定を置いておるところであります。
 最後、第4条、議事要旨の公開ということで、会議の議事要旨を事務局で作成し、委員にも御確認を頂いた上で公開をさせていただきたいと考えておるところでございます。
 第5条には、その他の事項については、今後必要となりましたら、委員にお諮りをいたしまして定める旨、雑則として置いているところでございます。
 御審議のほど、よろしくお願いします。
【下山座長】この運営規則案について御質問や御意見のある方ございますでしょうか。よろしいですか。
 それでは、本運営規則案について御了承いただいたものとして進めさせていただきます。
 次に、事務局より、現在の学校における医療的ケアの対応について御説明願います。
【森下特別支援教育企画官】初回ということで、委員の皆様と現状の状況を共有させていただきたいと思います。
 資料3の資料をもとに、これまでの流れや制度の概要、現状等を御説明させていただきます。
 まず、学校における医療的ケアについてでございます。1ページ目です。
 医療的ケアとは、一般的に学校や在宅などで日常的に行われる医行為全般を指す言葉で、たんの吸引、経管栄養などが代表的ですが、それ以外にも導尿、酸素療法など多岐にわたるものです。
 本来、医行為は、医師や看護師などの免許がないと行うことができないわけですけれども、平成24年度の社会福祉士及び介護福祉士法の改正によって、たんの吸引、経管栄養の一部につきましては、特定行為として、福祉施設のヘルパーの方や学校の先生方などでも、一定の研修を受けて知事の認定を受ければ実施することができるようになったところであります。
 実際、学校においては特定行為として、たんの吸引や経管栄養を学校の先生が行っておりますが、それ以外の医行為が行われることもございますので、こうした行為については現状、看護師が配置されて当たっているというところでございます。
 3ページ目は今、学校等で認められている特定行為の概要でございます。
 その次のページが、特定行為以外も含めて、学校で行われている医療的ケアのあくまでも例示でございますけれども、黒い丸を付したものが特定行為で、経管栄養とたんの吸引ですが、たんの吸引はカニューレ内までとされていて、カニューレの奥から先は医行為として特定行為ではありません。しかし、こういった特定行為以外の医療的ケアが必要な児童生徒も在籍をしており、こうした行為については看護師が当たっているというところであります。
 医療的ケアを要する子供たちがどれぐらい学校に在籍しているかを示したものが4ページ目、5ページ目になります。
 4ページ目、これは特別支援学校に在籍している子供たちの数です。青が子供たちの数で、黄色い中央の部分が看護師の数で、オレンジの部分が特定行為の研修を受けた教職員の数です。3年分、経年で添えておるところです。
 一番右の昨年の、1年前の直近のデータでは、特別支援学校では幼児部から高等部まで、合わせて約8,000人が在籍をしているというところであります。グラフの色が薄い部分は「訪問教育」の児童生徒で、学校に在籍していますが、医療的ケアだけでなくて、障害の程度などを理由に、学校に来るのではなく、家や病院に学校の先生が来る形で教育を受けている生徒ということで、大体6,000人程度が学校に通っているというところであります。
 次のページを見ると、特別支援学校だけでなくて、最近では小・中学校に医療的ケアの子供が在籍するケースがあるということで、これ減っていますが、年によって若干変動ありますが、小・中学校9学年で700から800人程度の医療的ケアの子供が在籍しています。
 児童生徒に対して医療的ケアを行う方々の人数ですが、特別支援学校では、延べ人数で、約1,600人ぐらいの看護師と、約4,200人教職員が医療的ケアに当たっています。
 小・中学校では、420人ほどの看護師が配置されて、医療的ケアに当たっているというところであります。
 これ以外に、看護師がいない場合などに、保護者が付き添ってケアに当たっているという例もございまして、後ほどデータをお示しします。
 特定行為が制度化された5年前、文科省から各教育委員会に対して、医療的ケアを実施する体制を整備するように留意事項を通知をしています。現在、これをベースに体制整備がなされておりまして、図表としては6、7ページ、通知の文章としては8ページ以降に示してございます。
 
 まず、特別支援学校におきましては、看護師だけでなく教職員でも医療的ケアができるようになりましたが、各学校には、先生だけでやるのではなくて、看護師を適切に配置して、その看護師を中心に教員等が連携協力しながら特定行為に当たるように指導しておるところであります。
 また、特定行為業務従事者、2番目の丸ですが、教職員のことです。研修を受けた教職員については、特定の児童生徒との関係性が十分ある教員が望ましいということを指導しています。
 併せて、域内全体、広域的には、各学校の設置者である教育委員会が総括的な管理体制を整備して、学校内は、学校長を中心に組織的な体制を整備する。その上で医師や保護者との連携協力を行って体制を整備するように指導をしているというところであります。
 次の9ページ目、下の段でございます。今申し上げた都道府県の総括的な管理体制につきまして、もう少し具体的に指導方針を示しています。
 都道府県の教育委員会に対しては、看護師の配置、特定行為を行う教職員の養成、医師、医療機関との連携、医療安全に関する指針、ガイドライン、こういったものの提示など、総括的に管理する体制を、特に医師等が関与して整備するように求めているというところです。
 通常、各教育委員会では、医師にも入ってもらった医療的ケア運営協議会や連絡協議会といった形の検討会が置かれまして、そこでガイドラインを策定して、その域内の医療的ケアの実施の在り方等を定めて、総括的に学校管理・指導するという構造になっております。
 10ページ目、今度は各学校です。制度の上では登録特定行為業務事業者ということで認定を受けると、学校においても特定行為についてはできるようになります。各学校においては、先ほど申し上げた都道府県が定めたガイドラインの下で、各学校長が学校全体の責任者として、校内の看護師あるいは教職員の服務監督に当たります。
 この通知におきましては、この特定行為を行うために必要な手続、例えば看護師との連携、特定行為の実施内容を記載した計画書や報告書の提出等を行うことになっています。また、個別のマニュアルの整備など、特定行為を行うことのできる事業所として法令で定められた安全確保措置を講ずるように指導しているということです。
 これに加えて、特定行為を実施する場合には、主治医の方から指示書を頂くことになっております。これに加えて、学校あるいは教育委員会から委嘱をして、医療的ケアについて特別なアドバイスを頂くために委嘱する医師、指導医や学校医に指導を求めるように周知をしているというところです。
 その上で、学校内における組織的な体制として、例えば看護師だけが1人でやるのではなくて、教職員、看護師、養護教諭、こういった方々から成る安全委員会というものを置いて、学校医や指導医の指導の下、医療的ケアに当たる。こういう組織的な体制を整えることを求めているというところであります。
 11ページ目、特別支援学校、特に肢体不自由児を対象とする学校の場合、一つの学校に何人も医療的ケアを要する子供たちがいますので、複数対複数というか、複数の医療的ケア児に対して複数の看護師や教員が医療的ケアに当たるという体制が組まれております。
 この対応に当たっては、図でいうと左上の部分ですが、保護者から学校への依頼等、学校で実施することについて書面で同意を求めることとしておりまして、その際にはしっかり学校側から看護師や教員の対応能力であるとか、健康状態が優れない場合には、保護者の方で無理な登校は適当でないとか、そういったことについてもしっかりと理解を得て、保護者とも相互に協力することを通知で求めています。
 12ページ目、小・中学校においても基本的な考え方は同じです。教育委員会が総括的な管理体制をしきまして、その中で、学校も組織的な体制をもって医療的ケアに当たるというところは同じなのですが、特別支援学校と異なりまして、40人学級だったり、小学校低学年でも35人学級だったりという形の中で対応するということになりますので、小・中学校においては現状、教員が医療的ケアに当たるということはあまり想定しておらず、原則としては看護師を配置して、対応することとし、教員がバックアップする体制が望ましいと各教育委員会には指導しています。
 ただし、医療的ケアが軽微で実施頻度が少ない場合には看護師をずっと張り付けるのではなく、巡回する程度にとどめて、ヘルパーの方などを活用しても構わないという形で指導しています。
 小・中学校の場合は、医療的ケアが必要な児童生徒が1人とか2人というのが通常なので、そのために1人看護師を常勤で雇うということが財政上なかなか難しい場合には、配置するに至らなくて、保護者が付き添ってケアに当たっている例が一部あるという現状にございます。
 そのあたりの調査が14ページになります。
 医療的ケア児につきまして、保護者が学校生活の中でずっと付き添っている状況につきまして、特別支援学校については昨年、小・中学校については一昨年、それぞれ調査をしたものです。送り迎えだけとか、あるいは入学直後に付き添って情報を引き継いでいる例とか、そういったものは除いて、通年で保護者が付き添うことになっている人数の割合でありますけれども、特別支援学校につきましては、看護師の配置をずっと続けておる中で、現状、85%弱ぐらいのお子さんは、日中の保護者の付添いなく学校に通うことができているということです。ただ一方で、まだ15.4%ぐらいの子供は、保護者が学校に付き添っているという状況であります。
 付き添っている場合の理由が次のページでございまして、看護師がいない、足りないというのは、付き添う看護師がいないとか、常駐でないという場合も、まだ少なからずございますので、これからも看護師の配置というのは進めていかなければいけないのですが、注目されるのが、この中央のマル4番目の部分です。看護師が配置されているのに、付添いを求められているケースが目立っております。この理由を個別に聞いてみると、今回の会議の議題の一つでございますけれども、人工呼吸器のように、いわゆるたんの吸引とか経管栄養のような特定行為以外のケアについては、学校の看護師では対応できないということで、保護者の方に付添いをお願いしているケースが目立っています。
 このことは、実は最初にお話しした、通学できている子供と訪問教育になっている子供の割合にも実は反映されている節がございます。
 16ページですが、特別支援学校に在籍する子供が約8,000人。そのうちが6,000弱が学校に通っていて、訪問教育が2,000人ということで、大体3対1の割合になるというところです。
 この割合を、医療的ケアの行為別に見てみると、例えば、胃ろうや腸ろう、たんの吸引だと当然、母数では通学生の方が多いわけですから、御覧のとおり通学生の方が割合が多くなるわけです。
 ただ、人工呼吸器の使用している子供については、通学生が449人に対して訪問教育が884人ということで、3分の2が訪問教育になっており、学校に通うことができていないわけであります。
 訪問教育になるのは、人工呼吸器だけが理由でなくて、障害の程度もありますので、一概には言えないわけではございますけれども、人工呼吸器を使用していると、他の医療的ケアが必要な子供よりも訪問教育になる傾向があるということが明らかになっているところであります。
 また、18ページ目は、小・中学校でございます。小・中学校の保護者の付添いの状況です。小・中学校ですと、看護師の配置に至っていないケースもございます。その結果、保護者が付き添っているケースが46%に及んでおりまして、次のページ、理由を聞いても、やはりほとんどの理由が、看護師がいない、あるいは常駐していないという理由で、保護者の方に学校に来てもらっているという実態が多いようです。
 自治体によっては、例えば医ケアの時間が短いとか、定期的な導尿や経管栄養の場合には訪問看護を活用して、学校に配置するのではなくて訪問看護を活用して対応している例が出てきておりますので、そうした当時想定していなかったようなケース、訪問看護を活用する場合の留意点なども、この会議でいずれ御議論いただきたいと思っているところであります。

 ここまでが現状の御報告でございます。
 次に、文部科学省で、こうしたバックグラウンドを基に、どういった支援を行っているかというところをお話ししたいと思います。
 まず1つが、看護師の配置についての支援でございます。看護師配置事業ということで、教育委員会が学校に看護師を配置する際の費用、これの3分の1を国の方で負担をするという事業を行っております。予算積算上は、本年度1,200人相当分の金額を措置しておりまして、来年度は1,500人に増額要求をしているというところであります。
 この予算、必ずしも雇用する場合だけでなくて、例えば訪問看護ステーションとか、病院、医療機関に対して派遣、委託する場合にも活用できるとしていますし、例えば特定の特別支援学校に配置、あるいは小・中学校に配置して、近隣の小・中学校、複数の学校に巡回させるような、そういった形でも活用ができるように、柔軟性を持って制度を運用しているというところであります。
 また次の21ページ目は今年から始めた事業です。ここまで強調してきましたが、人工呼吸器などの高度な医療的ケアについてのモデル事業であります。保護者を付き添わせている例があると申し上げましたけれども、他方で、地域によっては保護者の付添いなく通っている地域もあるわけであります。例えば、指導医をしっかりと配置するとか、あるいは近隣の医療機関と連携をするとか、どういう体制を整えれば、学校も保護者も安心して人工呼吸器の子供を学校で受け入れられることができるかを研究していただくという事業でございます。
 今回、委員に加わっていただいている北海道教委や豊中市教委をはじめ、全国8自治体で研究を行っていただいておりますが、来年度は箇所数増えるよう、現在、増額を要求しておるというところであります。
 ここでの研究の状況は、委員を通じて、この会議でも共有いたしまして、例えば更に検討すべきポイントも御検討いただいて、ここでの議論とモデル事業を並行して進めていきたいと考えているところです。
 最後に、この議論の前提として、皆様と共有したいこととして、医療的ケアを学校で行う意義につきまして、教育的な視点から少しお話をさせていただきたいと思っております。
 今の説明でも、保護者の付添いの話をデータでお示ししたとおり、学校で医療的ケアできる体制を組むことで付き添わなくて済むのはそのとおりですけれども、学校でそのケアを行うことは、保護者のためだけではなくて、当然、一番大事なのは子供の教育的機会の確保のために、看護師の配置やモデル事業を推進しております。
 子供たちにとって、同年代の友達と学ぶことができる機会というのは、かけがえのないもので、これをどういうふうに確保していくかというものが、私ども教育行政の立場と思っています。
 ただ、医療的ケアを実施する意義は、単に授業に出られるだけではとどまらないわけでございます。
例えば、日々の経管栄養や導尿などを通じて、生活リズムを形成していくことであるとか、吸引や姿勢変換に当たって自分の意思をこうしたいとか、こうしてほしいとか、自分の意思や希望を伝える力を育成するであるとか、あるいはたんの排出を成功させることによって自己肯定感や自尊感情を向上させるであるとか、あとは安全で医療的ケアを通じることで教師や看護師との信頼関係を構築させることなど、医療的ケアが必要な子供たちが、大人になっていく上で、人生の中で必要な事柄、学校生活の中で学ぶべきことを、この医療的ケアを通じて身に付けることこそ、病院でもなく、家でもなく、学校で医療的ケアができるようにするということの意義と考えているところです。
 私どもから各学校現場にお願いしているのは、こうした教育的効果を最大限に発揮するために、学校では教育の専門家である教員と、医療の専門家である学校の看護師たちが密接に連携してもらわなければならないという点です。
 看護師は、その専門性を生かして医療的ケアを行い、教員はしっかりと教育的側面からサポートする。逆に教員の方も専門性を生かして人材育成の観点から授業を進めながら、看護師はそれをバックアップするという形で、教育と医療それぞれの専門家が手に手をとり合って、一人一人の子供たちの成長を最大限に促していく。これが学校における医療的ケアのあるべき姿なのかなと考えておるところでございます。
 今日お集まりの皆さん、もう御案内のことかとは思いますけれども、私どもの思いも共有いただいて、今後の議論に御協力いただけたらと思い、お話をさせていただきました。
 一旦、私の説明はここまで、以上でございます。

【下山座長】ありがとうございます。学校における医療的ケアの現状、そして最後のところは、学校で医療的ケアを行うことの意義というところまで御説明を頂きました。今の御説明について、御質問はございますでしょうか。よろしいでしょうか。御質問ないようであれば次に進みたいと存じます。
 それでは次に、この検討会議の進め方について、事務局より御説明願います。
【森下特別支援教育企画官】ありがとうございます。私の方から、この会議で検討いただきたいことにつきまして、お話させていただきます。
 この会議で検討いただきたいことにつきましては、会議の設置要綱にも記載してありますが、改めて、そのバックグラウンドと併せて御説明をさせていただきたいと思います。資料4に基づきまして、お話をいたします。
 まず1つ目でございます。学校における医療的ケアの実施体制の在り方についてと示しました。学校における医療的ケアにつきましては、教育委員会が全体の総括的な管理体制をしき、学校長を中心に、医師であるとか保護者と連携をしながら組織的な体制を整備するということで指導してきました。実際に現場でも、そういった体制を整えていただいて、子供たちが受け入れられているというところでありますが、基本的には教育側で全て最終的な責任を負う体制でケアが実施されているというのが現状でございます。
 こうした中、例えば、たんの吸引や経管栄養であれば看護師の方で対応するのに、人工呼吸器の管理が必要な子供の場合は訪問教育になる、あるいは保護者の方が付き添ってもらえないとなかなか難しいというケースが出てきているという現状がある。
 こうした背景につきまして、実は国会でも話題になりまして、国会の中で有志の超党派の国会議員で議論していただく「永田町子ども未来会議」がありますが、その提言でも、こういう課題が指摘されているわけであります。
例えば、医療的ケアですので、医師の方は、こういったケアであれば学校でも対応してくれれば、ちゃんと授業に受け入れることができるという意見がある一方で、学校の方としては、こうしたケアであれば、なかなか学校の体制では実施が難しい、と意見が分かれるときに、この提言の中では、そういう医療行為という専門的な事柄について、教育委員会とか、学校とか、そういう教育サイドの責任で、最終的な責任で行われていることで、こうした慎重な対応がとられてしまうのではないかという指摘がある。
 一方で、この提言の中では、さりとて、学校では医療的ケアだけ行っているわけではないので、学校のことについて、主治医などの医療サイドだけで判断するのは、それはそれで難しいのであろうということで、この中でも教育側と医療側で、それぞれどういう役割分担で医療的ケア児のサポートに当たるのかということを整理するように指摘されているというところであります。
 個々の事例においても、例えば、主治医としては学校に通えると考え、学校看護師もこの程度の医療的ケアであれば全部できると考えても、学校側で容認できないとか、あとは教育委員会の規程、ガイドラインの方で既に難しいとされているようなケースもあるということで、この検討会議の中では、例えば教育委員会が、ガイドラインを検討する際の医療機関の関与の在り方であるとか、教育委員会と学校といった教育側と、主治医等の医療側の役割分担の在り方などについて御議論いただきたいと考えております。
 また、制度ができた当初は、基本的には学校や教育委員会が看護師を雇用する形を想定していたというところですが、対象の子供が少ない学校を中心に、雇用するのではなくて、病院とか訪問看護ステーションから看護師の派遣を委託するというケースが出てきていまして、こうした場合の配慮事項などについても御意見を頂きたいと考えている次第であります。
 2ページ目です。人工呼吸器の管理等の特定行為以外の医行為を実施する際の留意事項ということで、現状、課題は、先ほどお話をしているとおりでございます。
 実は、たんの吸引などの特定行為以外の医行為については、特定行為ではありませんので教職員ではできません。通知では、これを看護師等が行うとした上で、個々に安全性を判断しながら対応可能性を検討するということが書かれているわけであります。このため、人工呼吸器の子供の受入れについては、各教育委員会が個別に判断をしているというところであります。
 先のモデル事業において、今、既に一部の学校に取り組んでいただいておりますので、そうしたモデル事業の状況を御報告いただきまして、特定行為以外の医行為に対応するための支援体制の整備、バックアップ体制の整備であるとか、校外の連携体制、あるいは緊急時の対応のポイント、こういったことについて、この会議で御議論いただきたいと思っております。
 また(3)ですが、学校において実施できる医療的ケアの範囲についてとしております。これは必ずしも特定行為を増やすという話ではなく、どこまでが、この特定行為、医行為の範囲なのか、どこまでが誰でもできるのかということについて、少し御知見を賜りたいと思っています。
 経管栄養一つとっても、例えばチューブ等の準備から始まって、胃ろうのキャップを外して、チューブと接続して、栄養を流して、チューブを外して、ふたを閉めて後片付け、水洗いしたりするという一連の流れがあるわけであります。
 例えば、準備とか片付けぐらいなら誰でもできるというのはあると思うが、例えば、医師によっては、胃ろうのふたを閉めるぐらいだったら誰でもできるんだとおっしゃる先生もいるんですけれども、逆に学校としては、そのふたの辺りから、そろそろ医行為の部分になってくるので、看護師なり特定行為の研修を受けた先生がやるべきじゃないかと考えるわけで、意外と、この医行為の中でもボーダーラインというか、どこまでが誰でもやってよくて、どこまでは先生でもよくて、どこまでは看護師でないといけないのか。時に看護師でもなかなか難しいなということもあったりして、戸惑うことがあるようなわけでございます。こうした点について少し御知見を賜りたいと思っているところでございます。
 これにつきましては、少し議論のための材料を学会の方などと相談して検討したいと思いますので、少し議論が進んでから、お諮りをしたいと思っているところです。
 また、(4)の校外学習や宿泊学習など、学校教育の中ではありますが、学校の校舎以外の場所での医療的ケアの体制の在り方や(5)学校看護師の研修の在り方、資質向上の在り方などについても、御議論をいただきたいと思っています。
 引き続き、当面のスケジュールについてお話をさせてください。資料5を御覧いただけますでしょうか。
 当面、5つほど論点をお示ししたうち、(1)と(2)の論点につきまして重きを置いて検討いただきたいと考えておるところであります。次回、年末か年明けになろうかと思いますけれども、先ほどお話しした最初の医療と教育の役割分担の件、実施体制の在り方の(1)の論点を中心にお話をいただくのが次回です。その後、3回目の会議では、人工呼吸器等の対応につきまして、モデル事業の事例発表をお願いして、議論をしたいと考えているところであります。
 委員の任期は、来年度いっぱい頂いております。年度明け以降も引き続き議論いただきますし、その後、切りが付いたところで、(3)以降の課題につきましても、こちらから現状をもう少し御説明をさせていただいた上で御意見、御議論賜りたいと思っているところです。
 最終的には、この会議として何らかの提言とか報告書という形でおまとめいただきたいと考えておりまして、私どもとしては、それを踏まえまして、今日お話をした、これまで学校に指導してきた通知を見直しを行いたいと考えています。
 また、たんの吸引と経管栄養といった特定行為につきましては、文科省が作成した、研修用のテキストを、あくまでも例示ということで公開しており、各自治体でアレンジしてもらっています。
 ただ、教職員用のテキストという形で作っておりますので、特定行為についてしか記載されていません。今回のモデル事業などの成果を踏まえまして、人工呼吸器などを学校で看護師が取り扱う場合のポイントなどについても、皆さんの御知見を賜って整理をしていって、全国に展開していきたいというところでございます。
 皆様の御意見を活かしてまいりたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
【下山座長】ありがとうございました。それでは、今の検討会議の進め方について事務局から御説明いただきましたが、御質問のある方ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
 こういった事務局から示された検討事項を中心に議論を進めてまいりたいと思います。この後、皆さんに意見交換をしていただきますけれども、その中で今日的な問題などについて御提示いただきながら、議論の柱立てを更に進めてまいりたいと存じます。
 今、議事は1番から4番まで来たわけですが、最後、今日は5番目、意見交換となっております。ここから、企画官からございました検討事項を含めまして、学校における医療的ケアについて、皆さんのお考えになっていること、あるいは問題の状況、あるいは、こういういい事例もあるよというようなお話もあるかもしれません。特段、議論の範囲は決めませんので、今日は最初ですから、皆さんの思っていることを、どうぞ御披露いただきながら、今後の議論の柱立てに役立ててまいりたいと存じます。
 どなたからでも結構でございますので、口火を切っていただけると助かります。いかがでしょうか。では、高田委員。
【高田委員】先ほど御提言いただきました問題につきましては非常に重要な点だと考えております。
 まず1つ、誰が責任を持って行っていくのかという部分なんですが、医療側でありますと、既に小児の在宅医療という形で、学校年齢以外の方たちへの医療の取組がありますし、学校が終わってからの取組もあります。もちろん、そこでのやり方をそのまま学校に持っていくというのは当てはまらないかと思うのですが、当然、連続したものですから、それらの中での整合性ということも考えないといけないと思います。それでないと、指示をする医師側としても戸惑ってしまう場合があると思います。
 それから、2点目は、日本小児科学会や日本小児神経学会では、医療的なケア体制を含めた研修事業を、毎年、各地で行っています。しかし、都道府県により、非常に大きな解釈の違いがあると感じています。
 先ほど御指摘いただきましたように、どこまでが医療的な行為か、どこまでが看護師のみが行う行為か、どこまでが研修を受けた教員ができるのか、どこまでが一般の教員でも可能なのかというような部分に関しましても、随分と解釈が違うと思っています。
 当然、地域ごとに持っている条件は違いますので、全国一律にということは、これは難しいと思います。また、厳格にここまでというように決めてしまいますと、実際の現場では動きにくくなってしまうことが生じます。ある程度オーバーラップする部分も出てくると思います。そのあたり、決められた範囲での行為を、どうすれば効果的に実現できるか、また、それぞれの経験をうまく他地域に伝えることができるかを考えることが大切だと思います。
 先ほどモデル事業の話も出てまいりましたけれども、事業を通じて悩んだ点、それをどのように解決したか、などを具体的にお示ししていただけると他の地域で実施する場合の参考になると思います。
【下山座長】  今、責任体制については、ある意味で小児の在宅医療でのことが参考にもなるということでもありますね。そういう整合性をとる必要もあるけれども、参考にもなるのではないかという御意見。
 最初の御意見は、在宅医療の責任体制の在り方は一つ参考になるんじゃないかということ。それから2つ目は、都道府県、自治体によって解釈の違いがあると。こういうところをどうやって効果的に伝えていくか、モデル事業のようなことが参考になるんじゃないかという御意見でした。
 皆さん、ほかにいかがでしょうか。関連しても結構ですし、また違った観点からでも結構でございます。
 では三浦委員。
【三浦委員】私は立場としましては、日本小児医療保健協議会重症心身障害児(者)・在宅医療委員会委員ということで出させていただいておりますけれども、高田委員と一緒に小児神経学会の方で医療的ケアにつきましては、もう20年ほど前から活動させていただいております。地域に医療的ケアが分かる医者を増やしていこうということで、医療的ケア研修セミナーを、明後日、分藤様にも出ていただき開催するのですが、14年前から開催しています。
 小児医療保健協議会は4つの協議会、4つの団体から成って、その一つが日本小児科学会ですけれども、この協議会の方で進めていますのは、小児在宅医療の医者を増やそうということです。小児在宅医療実技講習会というのを数年前から開催しておりまして、ホームページにも実技講習会マニュアルを作成して公開しております。
 実は小児在宅の医者が増えるということは、医療的ケアがある子たちを診てくれる医者が増えるということで、地域に密着した先生たちですので、小・中学校、養護学校にしっかり関わっていただけるような形になってくるのではないかなと思います。この活動を進めていく中で、本当に地域の学校に関わってくれる先生を増やしていけるのではないかなと思っています。地道にやっていかないといけないかなと思っております。
 主治医が誰かという話になるんですけれども、大きな病院に通い続けている方もいらっしゃるんですけれども、やっぱり遠いということもあって、地域の在宅の先生に主治医が移っている例というのも結構あります。その地域の在宅の先生たちをこれから学校の方も巻き込んでいく形があると、連携がうまくいくのではないかなと思っています。
 遠くの大学病院の先生とかと学校が連携しようと思っても、遠くてなかなか難しいので、やはり、これからは小児在宅の先生たちも巻き込んでいく。そのためには医師会の先生たちと仲よくするということも大事かなと思っていますので、一つの作戦としては、地域の在宅医療やっている先生たちをこれから巻き込んでいけたらなとは考えます。
【下山座長】今、地域での医療の取組ということで、小児在宅医が増えていけば、この環境が良くなっていくだろうというお話がありました。
 ボールを投げられました医師会の道永先生、いかがですか。
【道永委員】医療機関といいますか、この中に医師という言葉が出てくるんですが、まず学校医が、その中に入ります。もちろん主治医の先生と、あとここに指導医という言葉もありますよね。教育委員会が責任を持っているんですが、その中に、医師会が入りこんで、協力をしていくというシステムができていけばよいと思っています。医師会の中には小児在宅をやっている先生、あるいは医療的ケアを専門的にやっている先生というグループがあるはずです。まずそちらへの取組をやっていただければ、本当に地域で、そういう人を増やそうとしている努力をしている学会の先生方、また小児科の先生方がいらっしゃいますので、まずそちらで働き掛けていただければと思います。
 今、医師会と仲よくしていきたいというお言葉頂きました。医師会の中では非常に学会の先生方との協力が大切です。子供たちの健診についてもそうですけど、やっぱり小児科の先生方のお力がとても大事なので、まずその教育委員会と医師会の連携システムを作っていただければと思います。ありがとうございます。
【下山座長】私ども、どうしても組織を、この通知などに位置付けるということは今まで余りできなかったのかもしれない。今まで通知ではできていなかったかもしれません。そこに対する貴重なアドバイスかと存じます。
 ほかにいかがでしょうか。お医者さんが3人続きました。ほかの立場から学校における状況、お話しいただければと思います。
【三浦委員】もう一度いいですか。
【下山座長】では三浦委員。
【三浦委員】追加で、ちょっと話が違うんですけれども。先ほど22ページのところで、これから医療的ケアを実施するための教育的視点というのをとにかくしっかりさせていきたいという御発表がありました。とてもありがたいなと思っています。昔は教員が医療的ケアを実施するということに対して、教育的視点が大きく言われでおりました。実は愛知県は教員が特定行為をしていないので、ちょっと肩身狭い思いがありました。今回の観点としては、教員が必ずしもやるということの教育的視点ではなくて、医療的ケアが必要であっても学校へちゃんと通ったり、お友達と接したりすることで教育的意義を上げていこうということで、すごくいい取組というか、いい考え方かなと思いました。
 最近、地元の方で聞いたことですが、小・中学校で経管栄養の子がいて、親御さんが付き添っているとなかなか食べてくれないのだけれども、親御さんの在校時間を短くして、学校の先生が対応するようにしたら食べるようになってきたそうです。お母さんがいると甘えてしまうので、この子の社会的自立という視点から、やっぱりお母さんがいない方がいいのよねと担任の先生から聞きました。社会的自立という意味でも、保護者の付添いはなくしていかないといけないのかなと、最近感じましたので、発言させていただきました。
【下山座長】教育と医療的ケアの関わり、その意義といったあたりからの御発言でした。こういうことを議論していくというのは、とても日本の特別支援教育のいいところだろうと思うんですね。教育だ、医療だと分けるのではなくて、それを一緒に提供することに、子供たちにとっての意味があるというあたり。医療的ケアの取組がずっと目指してきたところだろうと思いますので、こういうことを強調していくという視点からのお話だったかと思います。
 ほかにいかがでしょう。では勝田委員。
【勝田委員】日本小児看護学会の理事として、今日はその代表として参加させていただいています。私も20年ぐらい前から、この医療的ケアが始まった頃から関わらせていただいて、その頃からでも、まだ看護師が結構、孤独にというか単独で、何をどこに、どう相談したらいいかも分からなくて混乱して、そして葛藤して辞めてしまうというものが繰り返されるような状況がありました。
 学会としても、特別支援学校看護師のためのガイドラインというのを作成し、それをホームページに載せていて、学校看護師としての姿勢というんですかね、そういったことに戸惑わないように。医療を持ち込もうとすると、すごいあつれきがあって、看護師としては本当に自分のアイデンティティーをがさっと崩されるような、そういう過程にもなっていましたので、それが少し緩和されて、自分たちの位置付けというんですかね、そういうのが分かるような形にと思って作成したガイドラインです。
 今でも非常に、まだまだ孤独で、同じ看護職として相談できる方がいないとか。中には自治体の中に、そういう相談体制、教育委員会の中に作って、その方に相談すればいいという体制になっているところなんかもありますけれども、まだまだ支援を、いろんな意味でしていかないといけないのかなと思っています。
 人工呼吸器のお子さんに関しても、看護師がなかなか受け入れてくれないとか、そういった話もちらちら聞くんですけれども、いろいろ看護師たちの話とか、実際に導入されて、保護者の付添いなしで学校へ来ているお子さんのこととか、いろいろと情報収集をしますけれども。受け入れをして子供さんが通えているところも、やすやすと別に登校できるようになっているというわけではなく、本当に慎重に段階を踏んで、保護者の方に来ていただき、週1から保護者に付いたままでいていただき、だんだん外れても大丈夫かなとか、1週間に1回から、もう少し増やそうとか。本当に1か月単位ぐらいでやっているところもありますし、子供さんの自発呼吸があるかとか、コミュニケーションとれるかとか、そういったことも含めて、1か月ぐらいから、長ければ本当に冬の時期を越せるかという1年ぐらい単位ぐらいで、徐々に、徐々に移行することによって、子供にとっても非常に楽でしょうし、保護者にとっても、看護師にとっても、学校にとっても、非常に安心で安全な受入れということになっていくのではないかなと考えています。
 ですから、それが本当に一人一人個別なので、一律にこうというふうには本当にできないだろうなと思いますけれども、そういう段階を踏むことによって、看護師も抵抗なく。もともと看護師は人工呼吸器、誰でも知っているかといったら、そうでは全然なくて、見たことも触ったこともない看護師はいっぱいいます。だからといって、病院に勤務していたら絶対に関わりますし、嫌とかそういう話ではないと思いますし、安心、安全がきちっと確保されれば、看護師もイエスと言うことが多分できると思っています。
 そのためには、その受け入れのところと、それから緊急時対応。今、医師の先生方がいろいろ言ってくださって、本当に地域の身近なところで緊急時対応とか、いろんな、できるような状況とか、相談できる体制とかがあると、本当にスムーズにいきやすいのではないかなと思っております。
【下山座長】学校における看護師の置かれている立場と、それから人工呼吸器などに限らず、やはり個別性を踏まえた慎重な移行をして、安心、安全な受け入れ、緊急時ということが整えば、難しい対応も進むのではないかというようなお話だったかと存じます。
 ほかにはいかがでしょうか。関連してありますか。高田委員。
【高田委員】先ほど個別性という言葉が出てまいりましたけれども、やはり個別性ということが非常に大切です。医療は個別的な対応というところに中心を置いております。それに比べますと教育の方は、ある意味で一律にとか、同じようにというような考え方が前面に出てまいります。そういう場合に、同じようにということに力点を置きますと、どうしても安全性を重視し、石橋をたたいても渡らないということに陥りがちです。といって普通の病院の医療をそのまま学校に持ち込んでいくことは問題があると思います。先ほど言いましたように教育を医療中心の場にすることはあってはならないと思っております。当然、学校は教育が中心で、それを補助する立場としての医療ということがあると思います。しかし、その場合に、やはり個別性、子供の状況に応じて判断する機会(医療関係者、教育関係者が共に話し合う場)を持つということが基本だと思っております。
 それから、もう一点、後でその話題が出てくると言っておられましたが、先ほど勝田委員がおっしゃられましたように、今、看護師の方たちが配置されておりますけれども、看護師の方々のキャリアやそれまでの経験に随分と差がありますので、子供さんの状況だけではなくて、それを取り巻く環境であるとか、バックアップのシステムとかいうようなことも考えたうえで、個々に判断していかないといけないでしょう。それからそういう看護師さんに対する研修ということも非常に大事だと思っております。
 私、兵庫県で、勝田委員と同じ地域ですけれども、今、小児科医会とか医師会等が中心になりながら小児在宅医療の研修会を年に2回しております。研修に参加される方々の大体半分以上が看護師さんですね。学校の先生方も来られていますので、研修のシステムというのは、必ずしも医療のプロフェッショナルのためだけじゃなくて、ある程度、多職種が同じような共通の理解を持つ機会を設けていくということが非常に大事だと考えております。
【下山座長】それでは今、個別の判断をどこかでシステムにということでしたが、谷口委員、お願いします。
【谷口委員】私は日本看護協会からこの会議に参加しているんですけれども、先ほど先生の方から、県によって、それぞれ行為の解釈が違うというお話がありましたけど、学校内でも、それは同じことが起こっていて、例えば養護の先生、あと看護師、教員の先生で、それぞれ子供の見立てもそうですし、行為についても解釈が違うというようなことが、やはり現場からは聞かれているところだと思います。
 ですので、まず研修というところもそうですし、学校の看護師さんの研修というのは非常に大事だとは思っているんですけれども、これ、実は訪問看護や病棟の看護師さんたち、基本的なところは同じ小児看護が原則になっているはずなので、まず、様々な領域にいる看護師さんたちとの連携という意味でも、一緒に合同研修であったりとか、そういった複合的な研修も、やはり必要になってくるのではないかなというところがあると思います。
 あともう一つ、指示書の扱いというところでは、やはり看護師は医師の指示の下にということになっておりますので。ただ、やっぱり、その指示書に対しても、お母さんの判断でいいですとかと書いてあったりとかすると、現場は、どうやっていっていいのか分からないというところもございますし、やはり先生方の指示の下というところを原則に、各都道府県で進めていくとか、ある程度決めないと動かない面もあるのではないかと思います。
 以上です。
【下山座長】研修の在り方と、それからお母さんの判断でという指示書にちょっと驚きましたけれども、そんな指示書もあるんですか。このシステムを、いろんな関係者で実施していくための指示書の標準的な形というのも必要なんでしょうかね。
 医療の関係、お医者さん、それから看護師さんから御意見ありましたけれども、まだ十分時間あるようです。 ほかに御意見のある方、どうぞ。三浦委員。
【三浦委員】看護師の研修ということで、先ほど私が言いました小児在宅医療実技講師会、現在は小児科学会が主催していますが、赤ちゃんネットワークという、医者の有志が始めてくださり、最近は小児科学会もしっかりコミットしてやるようになりました。小児科学会の理事長から全国の医師会の方に、「医療介護確保基金を使って、各都道府県で、小児在宅医療実技講習会を開催してください」と通知が出て、結構いろんな県で今、動きが出てきていると思います。
 その中で対象が必ずしもお医者さんだけではなくて、地域の訪問看護師さんも含めた形の研修にして始めている県もあります。学校の医療的ケアという話なのですが、小児在宅の研修会は訪問看護師さんたちに来ていただくと勉強にとてもなるかなと思います。参加される看護師さんが今後、地域の学校のケアを担っていただけるかもしれないので、地域の小児在宅医療実技講習会に、訪問看護師さんたちに参加してもらうというのが大事かなと思っています。
 個別に研修会とやっても、なかなか立ち上げが難しいので、今、医師会が力を入れ始めている、そういうのに乗っかるというのがいいのかなと思いました。
【下山座長】そういう講習会を学校から学校看護師に向けて情報提供をするといったようなことが大事になるだろうということでしょうね。
【三浦委員】学校看護師さんも、校長先生が出していただけるなら日程をやりくりして、その研修会に出るということもできると思います。多くは土日にやっているので、学校がないときかなと思いますので、地域の訪問看護師さんだけではなくて学校の看護師さんたちも出ていただければ、いい研修会になるのではないかなと思っております。
【下山座長】谷口委員。
【谷口委員】今の三浦先生のお話の続きで、実は今年度、山形県で看護協会の方で小児の訪問看護の研修をやったときに、やはり病棟看護師さんと、あと特別支援学校の看護師さん、保健師さんも交えて基本的な研修をやったところ、やはり学校の看護師さんたちからは、非常に今までは何となく看護職は学校には少ないので、なかなか連携する相手というのが見えなかったけれども、地域の人たちと、こういう取組の中で、顔が見えるつながりで、いろいろ相談していけるといいという前向きな意見なんかも聞かれているところなので、やはり、そういった医師会さんがやられている研修とか、看護協会がやっている研修も含めて、学校の看護師さんたちに出てきてもらうというのは非常にいい取組だと思います。
【下山座長】ありがとうございました。少し今度は教育関係といいますか、学校関係者、保護者の方、あるいは行政の方、こういう方々から御意見を頂戴したいと思いますが、いかがでしょう。では田村委員。
【田村委員】田村でございます。特別支援学校の校長会から出ておりますが、今日は小・中・高校等の方はいないので、ある意味で公立学校教育を代表してということで少しお話をさせていただきます。
 私は、特に肢体不自由特別支援学校の校長会長として、全国の肢体不自由特別支援学校が医療的ケアを学校の中で行う際の様々なことについて情報交換の場をずっと持てるようにやってまいりました。
 例えば、いろいろな研究会で医療的ケア等の健康管理に関する分科会を作ったり、医療的ケアや病気の状況などの調査をしたりしながら、どこの学校がどういう状況なのかということを共有しながら、学校の中で健康と安全がきちんと確保できて、その上に良い授業が成り立つようにということでやってまいりました。
 特別支援学校には視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱と、5つの種類の学校があります。障害種別に教育対応しているのですけれども、健康面と体の障害の面から、肢体不自由特別支援学校が主に医療的ケアを行うことで、学校で安定して授業が受けられるというお子さんを前提として、学校の機能として、医療的ケアを用意する中で、教育を蓄積してきた歴史があります。
 こうしたことについて、先ほどドクターの皆様からありましたように、現状では主治医の判断、それから学校で教職員が医療的ケアを行うための指導をお願いしている指導医の判断、そしてお子さんの個々のケースについての学校医の判断、こうした判断に加えて、校内の健康管理の教職員からも情報を集めつつ、校長の責任として、個々のお子さんに対して医療的ケアを安全にできるかどうかという学校判断をしているところです。
 自校所属の教職員が行うものですから、これは今、校長が責任を持って、やる、やらないというところの判断をしているのですけれども、実は、こうした蓄積ある中で今、例えば地域の区市町村の教育委員会からも、医療的ケアについて様々なニーズが寄せられる中で、特別支援学校のシステムを教えてほしい、それから就学前の保育所や幼稚園などの職員や看護師さんに対して実際に医療的ケアの現場を見せてほしいという依頼がたくさんあります。
 また、私の勤める学校は東京都内に所在しますが、東京の他の種別、肢体不自由以外の知的障害、視覚障害、聴覚障害の特別支援学校で、主障害に対応して、その種別の教育を受けることが望ましいお子さんが在籍し、医療的ケアがあるケースがあります。しかし、肢体不自由特別支援学校でないと常勤の看護師配置はないのです。そうした中で、どのように医療的ケアを開始していくかについて、近隣の肢体不自由特別支援校として立ち上げを応援してほしい、継続的な支援もしてほしいということについて、複数の御相談を頂いています。持っているノウハウを提供して、それぞれの学校が、お子さんの教育を安定して積み上げることにつながればとの思いで、スタッフを派遣するなどの、様々な応援をしています。今そういう動きもでています。
 東京都を例にとれば、東京都教育委員会も医療的ケアの運営協議の場を持っていますし、保健福祉の方でも協議の場が持たれています。こうした中で今、医療的ケアについて、保護者の御意見を伺う機会が増えています。一つの例として、本校で言いますと、通学困難から訪問教育を受けているお子さんに関しても、医療的ケアで通学が難しいというところはあるのだけれども、そこの通学の難しさを克服できれば。学校での集団の教育の場の良さを大事にしたい、お子さん同士の触れ合いのある中で刺激を受けたい、校外学習に行きたい、宿泊を伴う修学旅行等に行きたい。そうしたときに医療的ケアのことを避けては通れない。保護者が付添うという考え方もあります。しかし、実際に中学の生徒とも話したのですが、「お母さんがそばにいて授業を受けるのは、自分としてもちょっとつらい。」という意見を頂きました。お母さんも、そうおっしゃるケースもある。社会性を育てて、対人力を育てるときに、私たちが小・中・高のとき、そばに親が付いていたかどうかということで考えると、その意見も分かるのです。今、医療的ケアを受けているお子さん、そしてその御家族の教育の観点からも、さらにお子さんが教育を十分に受けられるために周囲が払っている負担や犠牲についても、是非考えてもらえませんかとの意見を頂くことが多くなってきています。
 一方で現状としては、学校でできること、できないことがあります。それから、先ほども幾つか出されていましたが、学校ごとに判断が異なるのではないかとの意見もあります。医療的ケアを行っている親同士が自主的な学習会を開いて、広く各校の情報を集めた上で、よくお話においでになります。
 もちろん、学校の置かれている地域によって看護師の求人の状況が違う、それから職員のスキルや若手や新人が多い・少ないといったように、学校ごとに条件や特性が異なります。その中で校長が個々に判断することになります。だから全国一律とはならないのですというお話をすると、そういうことなのかということもあります。一つの線がある中で、個々の状況を踏まえて、どのようにベターな判断をしていくかという話をしているところです。
 保護者の気持ちの問題、お子さんの教育の場の問題、それから看護師の確保も含めたスタッフの問題、それから学校と医療との連携の問題、判断の場所をどこに置くかの問題、そうしたことが、冒頭で説明のあった検討課題として全て含まれていると考えています。
医療的ケアを学校教育として最も長く数多くやってきている肢体不自由特別支援学校を代表する立場としての思いを意見として述べさせていただきました。
 是非この検討会議の中で、そうしたものに関して、一つの整理や光明が見い出せるようにと期待しているところです。
 以上です。
【下山座長】保護者の方が付いて教育を受けている子供さんの状況というものを具体的にお話しいただくとともに、様々な問題を指摘していただきました。中でも、先ほど来、何人かの方が共通におっしゃっているのは、その自治体による判断、それから学校での判断。一定の範囲あるいは手続は用意されているのだけれども、その解釈や取扱いが違っているということが、学校の現場の声としても、やはり強調されていたように思いました。
 様々なことをお話しいただきたいと思います。学校の立場、行政の立場から、ほかにいかがでしょうか。津川委員。
【津川委員】北海道の津川です。よろしくお願いいたします。今、道立特別支援学校には278名、特別支援学校で医療的ケアを受けている子供たちがいます。他県と比べて特徴になっているのが、その半分以上が訪問教育を受けているということです。これは単に医療的ケアの体制が整っていないということだけではなくて、北海道が広域であることが一つ大きな問題としてあるということが一つと、あと重症心身障害児施設の大きな施設が幾つかあるということで、そこで訪問教育を受けている学齢超過の方も含まれていますので、そういったところはありますが、まだまだ体制整備が必要と認識しております。
 その中で今回、文部科学省のモデル事業を受託して実施しておりますが、モデル校3校ということで行っています。実際には平成28年度、人工呼吸器を付けて通学している子供たちは道内の特別支援学校に13名在籍していて、そのうちの、自宅から通っている子供たちは4名。そのうちの1名が、保護者の付添いが今求められているということで、そのお子さんについても保護者の方が少しでも軽減できないだろうかということで、今、取組を進めております。
 このモデル校については、札幌といった比較的大きな病院のある地域の学校もありますが、モデル校の一つについては、札幌から特急列車で2時間半程度離れたところにあります。2時間半というと、私が今、東京から札幌に帰るのと同じぐらいの時間ということですので、そのような地域で生活している子供たちに対して医療的ケアの体制を整えられるためにはどうしたらいいんだろうか、そういったことも含めて検討をしております。
 北海道の中では、やはり医療的ケアの特定行為をどうしていくか、特定行為以外をどうしていくかという中の相談があったときに、我々のところに相談の電話が学校から掛かってきます。
 その中で多いのが、医行為になるのか、医行為ではないものかということと、逆に医行為の中でも、一般的医行為なのか、医師しかできない絶対的な医行為なのか、ここの判断についての判断というのも非常に多く寄せられています。
 この文部科学省の事業の中で意識調査をモデル校の先生方、それから看護師さんに対して実施したんですけれども、先生方からは、そういった人工呼吸器の子供たちを受け入れていくための体制整備として、看護師の配置を充実してほしいというような希望が大変多くありました。ただ、看護師さんに聞くと、看護師配置を充実するのではなくて、お医者さんとの連携を何とかしてほしい。そういったところで、やはり学校の看護師さんが、自分が最終ラインになっているということに対する負担感であったり、不安であったりというものを解消することが必要だと考えています。
 逆に医行為でないものという中で言うと、例えば赤ちゃんが鼻水取るときに使うスポイトのようなものも、これは機器を使って鼻水を取るようなことになるんだけれども医行為なんだろうかというような、大変微細にわたるところでも学校では慎重に判断しながらやっていきたいというところで、こういったところも、どのようにやっていくかということを私たちも、お医者さんですとか、医師法を管理している知事部局と連携しながら検討をしているところです。
 また北海道独自というところでは、広域というところで寄宿舎生に対する医療的ケアの問題があります。寄宿舎を設置している特別支援学校も多くあるんですけれども、寄宿舎には現状、看護師を今配置していません。先程話題に上がった校外学習と併せて、この寄宿舎という、学校教育の中ではあるんですけれども、日中ではない夜間の部分をどういうふうにしていくか、そういったことも検討課題として考えているところです。
 雑駁ですけれども、北海道の現状ということでお話ししました。以上です。
【下山座長】ありがとうございました。範囲の問題が話題になることが多いけれども、それには一定の手続を踏んで北海道はやっているということなんですね。そこでの、また問題点があれば、後日また出していただければと思いますが、また新たに寄宿舎での対応ということも問題提起いただきました。
 そのほか、いかがでしょうか。植田委員。
【植田委員】失礼いたします。今、北海道教育委員会の方が発言ありましたので、同じ文部科学省のモデル事業を私ども豊中市教育委員会は、地域の地元の公立小学校に通学される人工呼吸器のお子さんに、教育委員会として看護師を配置している事業ということで受託をさせていただいて、文科省の先生方と御指導、御助言頂きながら事業を進めております。少し本市の状況をお伝えさせていただけたらと思っています。
 本市は人口39万人程度の中核市でございます。政令指定都市よりは人口規模は少ないですが、保健所も豊中市の保健所、病院も豊中市の病院、そして教育委員会と市長部局という形で、オール豊中という形で、教育、福祉、医療が連携できたらという形で、この事業を進めさせていただいております。
 本市の場合は、地域の公立小・中学校に障害のある子も、ない子も、共に学び、共に育つ教育ということで、おおむね40年前から障害児教育基本方針ということに基づいて、住所がある地域の学校で一緒に学んでいただくということを長年にわたって取り組んできている市でございます。
 医療的ケアにつきましては、平成15年度から看護師資格のある介助員という職員を市単費で配置をして、医療的ケアの部分につきましては看護師、教師の方は指導に専念していただくという形で、業務をきっちり分ける形で取り組んできております。
 先ほど先生方のお話もありましたように、看護師の人材確保が大変、長年にわたって苦労してきております。学校固定配置で介助員の立場で看護師を配置してきたんですが、平成22年に大変看護師が不足する状態が生まれまして、平成22年以降、現在までは、学校に固定配置ではなくて、教育委員会の方に看護師をまとめて、必要な学校に医療的ケアの時間帯に看護師を巡回派遣するという形をさせていただいています。そういった部分を今回モデル事業のところで、事業についてレポートをさせていただくということなんです。
 主に課題として取り組ませていただいているのが、この看護師の安定的な継続的な人材確保をどうしていったらいいのかということについて、今回のモデル事業を踏まえて研究を進めていきたいと考えているところでございます。
 今回、課題の中にもありました、どこまでが教師で、どこまでが看護師かとか、責任の所在がどうなのかという形につきましては、ずっとずっと本市の中で、どうしたらいいのかということを、いろんな方に御意見を伺いながら、豊中市の判断という形で行って保護者様の方に御説明をさせていただき、御納得は頂けていないかもしれないですが、御理解をしていただきながら、ここまで何とか大きな医療事故もない状態で、本市の方は進めているような状態でございます。
 今回、この会議の中で本市の取組もいろいろ説明をさせていただける機会があるようですので、その中で先生方に、また御助言頂けたらと思うのは、やっぱり継続的な看護師確保をどういうふうに行っていったらいいかということは本当に喫緊の課題でございます。
 実は今、本市のやり方なんですが、教育課程に位置付いた、いわゆる時間割の部分につきましては、宿泊や校外学習も含めて、保護者の付添いなく、看護師の方が医療的ケアを実施させていただくという形で、保護者の方には最初の導入の部分の御指導いただく時間帯を除いては、おうちの方に帰っていただくようなやり方をさせていただいています。それで何とか看護師が確保できている状態で、毎日ぎりぎり看護師を配置できている状態なんですが、本来であれば、教育課程に準ずる時間帯、いわゆる中学校であれば部活動への参加ですとか、あるいは補習授業に参加される場合ですとか、あるいは時間割が1時間目から始まるのであれば、それより少し前には登校されていますので、8時頃から看護師がいた方がいいのではないかとか、そういった教育課程に準ずる時間につきましても、教育委員会としては看護師が配置できなければならないとは考えております。そこまで看護師を配置していこうとしましたら、もっとたくさん看護師がいないと配置ができない状態になっておりますので、どうすれば安定的な継続的な看護師確保ができるのかということを、また先生方から御助言いただけたらと思っております。
 以上です。
【下山座長】豊中市さんの状況の一端を御説明いただきました。これ安定的、継続的というのは決して待遇だけの問題じゃないということを含んでいるんでしょうね。いろんな整備が、そこには関わるということでしょうか。またいずれ、詳しく取組を御紹介いただく機会があるだろうと思います。
 ほかにございませんでしょうか。村井委員。
【村井委員】全国養護教諭連絡協議会の村井と申します。養護教諭は医学的、看護的な知識を学んできて、専門職として幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校、どこの学校にも配置されておりますが、職務としては養護教諭という職務の範囲内で、学校で子供たちの健康、安全のための指導、支援を行っております。医療的ケアに関しましては、学校全体の子供たちに関わる保健管理であるとか健康観察をしながら、個々の支援体制の中で、保護者、主治医、担任、学校看護師さん等とのコーディネーター的な役割を果たしているところです。この実施体制の中で、このような養護教諭の役割というものも明確にしていっていただければと思っております。
 以上現状をお伝えしました。
【下山座長】養護教諭の役割も検討をということですが、私の認識では現状でも、この医療的ケアにおいても養護教諭さんに大変大きな役割を果たしていただいていて、学校全体の取組の要になっていただいているという認識は持っていますけれども、更に突っ込んだ役割ということについて検討をという御指摘だろうと思います。ありがとうございました。
 竹内委員、いかがですか。
【竹内委員】保護者を代表いたしまして、よろしくお願いいたします。私は全国の肢体不自由の特別支援学校のPTA連合会の会長をしておりますが、連合会の方は全国218校、1万8,000人の会員を持っております。今まで全国の研修大会等で医療的ケアの子たちの現状ですとか、お母さんたちのそれぞれの地域からの発表を踏まえて、研修活動というのを年に1回、全国大会で行ってまいりましたけれど、そういう場で、やはり、それぞれの地域の違いというのを、とても情報として。もちろん、その研修大会でも、皆さんで検討課題として、その後議論もしますけれど、それ以上に、いろいろな情報を簡単にとれる社会になってきていますので、それぞれの地域の違いというのを、はっきりお母さんたちが分かるような状況になっています。
 ですので、余計、うちの学校はこういうところまではやっていただけるけれど、ここの地域はここはできていないということが、とても比べる材料になっています。比較することというのは悪いことではないかもしれないですけれど、お母さんたちの理解の上で、うちの子がどうして行きたい学校に行けないのかですとか、どうして私の付添いが離れられないのかというところで、不満というか、不安というか。そこの理解がきちっとしていなければ、それは、うちの学校はできていないと、お母さんたちは捉えているなというのを、とても感じてしまいます。
 今日のような、この検討委員会ですとか、いろいろな地区で、いろんな委員の先生方が、医ケアのお子さんが、どんなふうに教育を受けることが本当に必要だと、いろいろなところで議論していただいている、検討していただいているということを、お母さんたちも、本当に知らないお母さんたちの方が、とても多いと思うんですね。そこを、お母さんたちも、いろいろな資料で、文科省から、それぞれの教育委員会に体制整備がとれるようにという状態に、資料も含めて、こういうふうに体制を整えなさいと下りているということが、それぞれの学校も、こういうふうに準備をしています。それが実際に自分のお子さんが学校に通うときに、どういうふうに預けられるのか、渡せるのか、どう教育を受けれるのかといったときに、やはり、その時間をどれだけ、お母さんへの説明に時間をとってくださっているのか。そこは学校に入る前の段階から、あるのかもしれないなとも思います。
 先ほど先生から小児の部分、卒後の部分での、できているものが教育という学校の中に入るときに、途端にできなくなってしまうというか、その環境にはないという。それが教育だというと、いや、教育って、そうなのかなというところでは、そこに違いがあってはいけないというか、そこの12年間はできないという。
 保護者も、しっかりと理解ができる、違いがない説明を受けたいと思います。
 保護者の理解もそうですけれど、私たちPTA会長というか、会長のところに、こういうところはどうしたらいいんでしょうというふうに相談を持ってくる保護者の方もいます。私たちPTAの方も、じゃあ、そこはこんなふうに学校に説明をして、こういうふうにしたらどうでしょうかと相談に乗れる会長さんもいますし、そこは先生にお願いをしたいと思う会長さんもいると思います。
 医療的ケアのお母さんたちって、保護者の方は、孤立しやすいとも思うんですね。もちろん先生方の、学校の中では、医療的ケアの委員会も学校の中で立ち上げてくださっていますし、この先生に相談をしなさいというふうには、はっきり出していただいていますけれど、なかなか言いづらい内容。うちの子と隣の子と比べると、どうして私だけという思いも、なかなか言い出せなかったり。その相談の窓口的なものも、やはり、どういうふうに学校ごと、それぞれに置いていただけるかというところも、是非私は考えていただきたいことです。
 それぞれ先生方から今まで出ていた看護師の問題ですとか、そういったところでは私たち、お母さんたち、保護者も要望として、看護師を増やしてほしいということもお話をずっとしていますけれど、大変だということも分かりつつ、親としては、やはり子供が勉強したいと思うところに、また保護者が勉強させたいと思うところに、学校に通わせたいと思うのが一番ですし、集団の中でできる経験が、やはり成長だとも感じていますので、この検討委員会が、それぞれの地区に検討委員会をいろんな場所で持っていただいて、1人でも多くの医ケアのお子さんたちが健常と変わらずというのが。
 どうしても障害を持つ子供を抱えていますと、普通の子と同じようにさせたいという思いが本当に強いんですね。そこは、その思いが強ければ強いほど、同じに学校に通わせたいというところは強いと思いますので、委員の先生方にいろいろと御助言を頂きながら、保護者としても、そこを理解する。お母さんも勉強しなきゃいけないと思いますし、もう一つ済みません、責任という意味では、保護者の責任というものも、すごく私はあると思いますので、保護者が責任を持って学校にお願いをすること、看護師の方にお願いすることというのがとてもあると思いますので、そこの部分でも議論といいますか、お話にあげていただけるといいと思っています。
 どうぞよろしくお願いします。
【下山座長】24年度の法令改正を経て、制度として医療的ケアが運用できるということになりました。そして特定の行為以外は、逆に言えば看護師が行うという整理が、そこできちんとなされたわけですけれども、そこから始まってのいろいろな範囲や手続といったようなものが、それまでもなかったわけではないと思うんですけれども、しかしいろいろな違いになって現状は表れているという指摘でした。
 また、これを縛ってしまうということは、先ほど、一番最初に高田委員がおっしゃいましたけれども、厳格にいろんなものを運用すると、低いところにというか、平均的なところに合わせざるを得なくて、かえって縛ってしまうという問題にもなります。そういった中で、どのようなガイドラインといいますか、どのような取組の例といいますか、モデルといいますか、そういったものを示せるか。制度として決めて決まっていることと、それから、それを超えてガイドラインとして示すこと、そして良い取組の例といったようなあたりをどうするか。竹内委員の言われたことも含めてそうなんですけれども、先ほど来、随分捉え方の違い、解釈の違いということが出てまいりますので、大変大きな問題だということを御議論を通じて感じているところです。
 それでは、私が内々持っておりました、今日の最低限の目標として、委員の方全員にお話を頂くという目標は達成できました。しかし、まだ少し時間がございます。言い残したこと、それからこういう問題もあるよというようなこと、続けてお話しいただければと存じます。三浦委員、どうぞ。
【三浦委員】何度も申し訳ありません。豊中の方でも人材確保が、とても大変だとお聞きしました。愛知県の方でも、なかなか小・中学校の看護師さんが見付からないということもあって、新たな取組を始めています。すでに神戸市も始められたと思いますし、自治体が幾つかやっている方法です。訪問看護ステーションさんと契約をするのですが、医療じゃなくて市の方が予算を確保して、医療報酬と同等以上の報酬を払って、訪問看護師さんに学校に入ってもらうということを始めています。確かに1人ではなくて、訪問看護師さんの仲間と責任を分かち合えるということもあるし、個別の雇用だと辞職された時に大変困る、そういう心配がないということもあり、こういう方法は、今後広がっていくのではないかなと思っています。
 その際に、訪問看護師さんたちが、例えば人工呼吸器の必要な子供に朝からずっとついてケアをするというのはなかなか難しいと思います。医療的ケアにも大きく分けると、定時のケアと随時のケアがあります。定時のケアだけの人も中にはいらっしゃいますので、そういう定時のケアの人、例えば、導尿に1回、何時に行けばいいとか、昼だけ注入に行けばいいとかというのは、訪問看護師さんたちにとっては受け入れられやすい形なのかなと思います。
 ただ、常時、呼吸器の必要な子供にずっと付いてケアをするというのは、訪問看護師さんたちといっても、やはりなかなか出しづらいところがあると思います。そういう子供たちへの対応については教育委員会が看護師を雇用、しっかり確保するとかという形がいいと思います。医療的ケアで一括して対応を考えると、なかなか難しいところもあります。ケアの種類によって協力できる医療機関が違ってくるのかなとも思いました。
 自分のクリニックの看護師を、定時にだったら短時間学校に派遣することもできると言ってくれた開業医の先生もいらっしゃいました。定時のケアの子が何%ぐらいなのか。吸引の必要な子供は、いつ痰が出るか分からないので常時看護師がいないといけないと思います。定時のケアだけでいい子であれば、看護師を見つける別の道が開けてきたりするかなと思います。
 訪問看護師さん、ずっとやっていらっしゃった谷口さん、どうですかね。
【下山座長】では谷口委員、振られましたので。
【谷口委員】ありがとうございます。実際、私も訪問看護ステーションの管理者を長くやっていまして、保育園で人工呼吸器、それも動く人工呼吸器を付けているお子さんを預けたいという保護者の方がいたときに、保育園にコンサルに行ったりした経験もあるんですけれども。
 導尿に関しては、やはり先生がおっしゃったように、ある程度決まった時間というのがございます。ただ、あの子たちは、時間を決めてしまうと、水分をとるということが、なかなか、やっぱり、ほかの子供みたいにできなくなって、喉が乾いても我慢したりとか。きっと勝田先生にも御賛同いただけるかとは思うんですけど、看護的には、やっぱり飲みたいと思ったときに飲んで、おしっこしたいと思ったときに導尿とかということを考えると、やはり、そこは巡回でいいのかと。一定の看護師のジレンマが、ケアだけという、その処置だけというところでは、おっしゃるとおりなんですけど、子供は、やっぱりそこに生活が当然あるわけなので。
 なので、やはり、どちらがいいのかというのは非常に議論が分かれるところですし、千葉でも、自治体で訪問看護師さんに契約をして巡回という道を探ったところもあるんですけど、多分、日本全国、訪問看護が一市町村に一つしかないというようなところがあったりとか、なかなか看護師を見付けられない地域というのも多くございますので、やはり、その地域の特性に応じて、どういった雇用がいいのかということと、ケアだけをするのが看護ではないはずです。
 保育園とか学校にしても、訪問看護が行くと、生活の延長で学校に行っていると思っているのに、経管栄養何時とか、お昼は水分だけとか、そういう学校もあったりすると、訪問看護師としては、やっぱり、そこで、どうしてって。学校も生活の一部のはずなのに、どうして学校に行ったら、決まった時間にしかケアというか、経管栄養ができないのかとか、やはり、そういう葛藤が生まれるんですね。そこで、やっぱり学校に行くのが心理的に敷居というか、理解できないことが多いという戸惑いは、よく現場の看護師から聞かれるところではあります。
 なので、やはり訪問看護というのは一つ活用の道としてはあるかとは思うんですけれども、そこにまつわる看護管理とかケアマネジメントという考え方も、処置だけをするわけではないので、視点としては必要なのではないかと思います。
【下山座長】ありがとうございました。今、ケアを定時のものと常時あるものというような見方も必要ではないか。それによって看護師さんの活用といいますか、その形もいろいろ見えてくるんじゃないかという御議論と、それに関わって、看護というのは処置だけではないんだよということがございました。
 森下企画官が最初、看護師だけではなくて教員もバックアップするというようなこともお話しされていましたので、そのあたりと考え併せて今後御議論いただければなと思います。勝田委員、どうぞ。
【勝田委員】先ほどの葛藤の部分というのは、本当に特別支援学校でも、通常の学校でも、同じように起こるんですけれども。本当に看護職の方は一応、医療的ケアのために雇用されているという認識が、やっぱり大切だと私は思っています。それで、水分とか生活の部分というのは先生方が担っていらっしゃる部分がかなりあって、特別支援学校の中でも、その辺のところが。看護って本当に、その人の全部、家族まで含めて全部というのが看護の対象者というふうに、ずっと基礎教育で学んできているので、その辺の認識が全然、そのままでいこうとすると、非常に葛藤が大きくなってしまうんですけれども。
 例えば水分とかも、先生方にお願いすれば、きちっと。特に特別支援学級とかで、小さい単位で子供、児童生徒を見てくださっている先生方もいらっしゃると思いますので、何かその辺のところの整理が、すごくぐしゃぐしゃしたままだと、自分たちの役割は何なのか、先生方は何をしているのか、先生方は何をできる方々なのかというのが、本当によく分からなくて葛藤するというのが、特別支援学校の中でも、いっぱいあります。
 そういう整理が本当に大切で、先ほど看護師の確保のことがありましたけれども、特別支援学校の看護師の離職理由とかを研究された文献もあります。離職した理由に関してですけれども、確か、非常に上位が、やっぱり看護師と教諭との協働に関するストレスとか、分かってくれないとか、自分の看護師の立場を全然分かってもらえないとか、それから、いつも我慢しなければいけない立場にいるようでストレスだとか、一歩下がってないといけないんでしょうかとか、自分たちは専門家なんだけれども、吸引しようかと言ったら要らないと言われたとか、そういったことがあります。
 そういったことに、そこに何が含まれているのかと考えたときに、教育現場であるということは頭では分かっているんですけれども、看護師は病院の中で基本的にエネルギーの消耗を最小にするようにとか、その子に最も負担がないようにということを、常に子供のことを病院の中では考えて。だから、たんがたまっていたら吸引しようというのが普通の看護師なんですね。楽にしてあげようとか、そういう感じ。ただ、学校の中ですと、先生方って、話をよく聞いてみますと、その子供は吸引されるのは非常に苦しいので、自然排たんを促すために、吸引より前に体をいっぱい動かしますと。体をいっぱい動かして、自然排たんを促して、できるだけ吸引しなくてもよいように、どういうふうに持っていくかということを常に考えていらっしゃる。それはそれで、あっ、なるほどなと思いますし。その辺、本当に医療で私たちが現場の中でやってきたことと、学校の中で先生方が考えていらっしゃることとの違いがすごくあるなというのを、いつも思うんですね。
 ですから、そういったことを看護師がよく認識していると、先生方が吸引要らないと言った意味も理解できるし、楽にしてあげないで、こんな体動かしてとか思ってしまうようなところにも、非常に納得がいくのではないかと思います。
 だから、本当に離職理由は葛藤のことと、それから、やっぱり安全のことですね。こんな危険なところで働けない、私の看護師の免許が剥奪されてしまうんじゃないかというようなことも言ったりしています。
 それともう一つは、やっぱり待遇のことで、看護職って、子育て期を過ぎて働けるようになれば、いつでも正規職になれて、いつでも公務員にもなれるという職業なものですから、非常に待遇も、自治体によって、倍ほどの給料差があったりするんですね。そんなのもあって、なかなか。だから、正規とか、常勤とか、きちっとした雇用があれば、きっと、とても喜んで働くのではないかとは思っています。
 以上です。
【下山座長】ありがとうございました。多職種が一緒に共働するということが必然のこの取組の中で、お互いの役割を理解するとか、お互いの仕事の背景になっているものまで理解し合う、そういうことが必要だという御指摘だったかと思います。
 いろいろ御議論いただいておりますが、そろそろ時間にもなってまいりましたので、最後の1つか2つということにさせていただこうと思いますが。高田委員。
【高田委員】訪問籍の問題とも関連してくるかと思うのですけれど、要は、医療的ケアのある子たちの通学手段ですね。スクールバス等の手段をどういう形で保障していくのか一遍に解決するのは難しいと思いますが、何らかの方向性を考えないといけないと思います。
 それから2点目です。私は神戸市の医療的ケアの仕組みづくりを教育委員会と一緒に行ってきましたが、その中でも、いわゆるヒヤリハットとインシデント報告が重要と感じています。安全管理をする場合、ほとんどの病院では、そのような、事故にまで至らなかった例を集めております。千葉県でも、学校の中でのインシデント例を集めておられると聞いています。これまでに起こった事例等について、個人情報の保護ということも考えながら、ある程度透明化した形で共有できるということも必要だと思います。突発的な、例えば気管チューブが抜けてしまったとか、そういう、いわゆる医療的ケアという日常的なことでない場合の処置。一般的に起こりうる問題についても、やはり、ある程度議論をしておかないと、学校の先生方、現場の看護師さんが困るんじゃないかと思います。
【下山座長】ありがとうございました。議論の必要な事項ということで承りました。
 よろしいでしょうか。それでは……。
【三浦委員】最後に1つ。
【下山座長】短くお願いします。
【三浦委員】最近ちょっと聞いた話なんですけれども、お母さんたちが就労するようになってきたということで、医療的ケアが必要な子供のお母さんが、学校に付き添ったり、いつ呼ばれるか分からない状態だと非常に困るという話です。愛知県などは、まだ、おじいさんとおばあさんと同居したり、そばに住んでおられる人が多いので、就労できているお母さんもいるのですが、東京の医師から学校の医療的ケアのお母さんたちも仕事をしている、助けてくれる人もいないので、本当に困っているんだという話を聞きました。教育の保障という意味で、やはり、そういう点も考えていかないといけないことかなと思いました。
 これも聞いた話ですけれども、学校にお母さんが付き添えないので、週何回かは福祉の方にお願いして学校に行かないという話もあるようです。お母さんの状況も含めた社会情勢も、5年前の議論のときと比べると、かなり変わっている部分もあるのではないかなと思いましたので、最後に発言しました。
【下山座長】付添いの問題を検討する際の視点ということで頂きました。
 それでは、意見交換はここまでにさせていただこうと存じます。
 まだ御意見があろうかと存じます。御発言のなかった方はいらっしゃらないわけですけれども、まだ御意見のある方は、たくさんいらっしゃるかと思います。御意見、御質問ある方は、事務局にメール又はファクスで直接お寄せください。
 それでは、ここで事務局に議事をお返しします。
【森下特別支援教育企画官】ありがとうございました。皆様、本当に充実した議論をありがとうございました。たくさん課題があるということを改めて認識させられた次第でございます。これから、お知恵賜りまして検討を進めていきたいと思っております。
 次回の日程につきましては、また皆様の御予定、確認をさせていただきまして、改めてお伝えをしたいと思っております。
 今回、たくさん御意見を頂きましたので、座長と御相談をさせていただきまして、少し論点整理みたいなことを進めていって、次回以降、またお示しをしたいと思っております。
 次回ですけれども、先ほどお話ししたとおり、議題のうちの1つ目の学校における医療的ケアの実施体制の在り方について中心に議論を進めていきたいと思っております。
 今回、御説明した内容につきまして不明な点がありましたら、今、座長がお伝えしたとおり、私どもの方に御連絡を頂ければと思います。
  5分ほど早いですが、本日の議事はこれまでとさせていただきたいと思います。委員の皆様におかれましては、長時間にわたりまして、本当に熱心な議論ありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

―― 了 ――

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