地域人材の活用について、今回、取り上げた実践事例の特徴を以下の観点に従ってまとめた。
教員免許を持っている、教員免許を取得中である、あるいは教員としての経験がある、大学等で心理学関係の専門家になるための学習をしている、特殊な技能がある等を生かして活躍している例があった。具体的には以下のとおりである。
児童生徒等の様子を観察して助言を行う、悩んでいる児童生徒の相談に直接携わる。
児童生徒等の観察や心理検査などを行い、校内委員会で作成する個別の指導計画等の話し合いに参加する。
学校を支援する人材の研修や養成に携わる。
教室に入り、直接、児童生徒に対する支援を行う。あくまでも教員の授業進行を補助する立場で行う。個別の児童生徒に対応する場合もあれば、学級全体を対象に支援する場合もある。
人形劇など、ふだんの授業では接することができないような活動を提供する。伝統的な遊びを伝えるなどの活動を行う例もある。
障害のある子どもにとって使いやすい教材を開発し、学校に提供する。
なかなか手が回らない細かな環境整備に力を貸している例があった。床や壁の補修、庭木の手入れ、花壇の整備などに対する特殊な技能を生かしている。
上記と似ているが、特殊な技能を生かして特殊な用具を修理している例。
教員の専門性を補完し、また、手が不足する面に対する援助を行っている例。
外国語を学んでいる人材が、増えてきている外国人児童生徒への支援を行っている例。
基本的には、専門的な資格を求めていない。ある程度の研修やボランティア経験などがある人材が学校支援を行う。
注意がそれている場合に声をかけるなどして、授業の補助を行う。
ある程度の基礎的な知識を身につけた上で、外出する際、車椅子を押したり、トイレの介助をしたりする。
幼少期の子どもが生活面で支援を必要とするような場面に対して、支援を行う。
教員だけでは目が届かないようなところにまで目を配り、危険を避け、安全を確保するための補助を行う。
学生などの場合、障害のある子どもが遊ぶときに相手をしたり、集団との仲立ちをしたりする。危険な遊びをしないで、安全に過ごせるように配慮する。
放課後、学校に残って遊びや学習などを行う場合に、個別に、あるいは少人数の集団に対して支援を行う。
人材をどのようにして確保するかは、地域の実情に応じた工夫が行われている。教育委員会がコーディネーター役を果たしていることが多いが、個々の学校が直接人材募集をすることもある。
特定の団体と連携することで、一定の専門性のある人材を確保する。大学の学生、大学院生、あるいは大学教員などの、ある分野に関して専門的な知識のある人材が多い。特別支援教育をテーマに活動しているNPOやボランティアグループ、ボランティア研修を受けた市民をボランティアグループとして組織した上で協力を求めるなどの例があった。
特別な資格を必要としない場合には、広報などを利用して、広く公募することもある。募集した後、簡単な研修を行う場合もある。
学校支援などのテーマの基に、人材養成研修講座の募集を行い、その受講修了者を活用する。ある程度の知識・技能が見込める上、依頼する側や当事者が適性を見極める時間がもてる。
地域人材を活用して研修を行う場合には、人材を養成する人材が地域で増えていくというメリットもある。
下記のような資格を求めている場合があった。支援内容と資格とは密接に結びついていると同時に、地域人材に対する報酬の額に反映している。要求する資格の専門性が高いほど、報酬も高くなる傾向があった。
学校教育の場において、安心して任せられる要件を満たしていると思われる。
教員免許に準ずるものとしてとらえられる。
特定の資格を有している場合のほかに、大学院で学んでいる場合も含まれる。
その地域に居住し、共に子どもたちを育てていくという立場である。
ボランティアなどの場合は、様々な希望者がある。学校長が面接等を行い、責任を持って推薦するなどの手順を踏んでいる例があった。
教育現場に地域人材が入って支援することにより、児童生徒に対する教育的効果だけでなく、幅広い範囲での成果が認められた。
児童生徒に対しては、以下のような成果が報告された。
など
学校や教員に対しては、以下のような成果が報告された。
など
その他、以下のような成果も指摘されている。
今後の課題としては以下のような点が指摘されている。
地域人材を養成することが人材確保につながる。間口を広く募集し、段階的に経験や研修を積むことで意識や専門性を高めていく。つまり、身近な地域で簡単な内容で支援してくれる人材から始めて段階的に養成していくことを考えていく必要があるだろう。地域人材の調整役としての活躍も特別支援教育コーディネーターに期待されるが、地域人材を組織化し、相互の情報交換やモラル、技能の向上を図ることも有効である。
なお、報酬については、支援行為自体には支払われず、交通費などの経費を補助するという場合から、人材を一定期間専属的に活用するために非常勤講師として雇用するといった場合まで、様々な例があった。支援内容と求める資格、用件などに応じて、慎重な検討が必要なところだろう。それぞれの長所、短所を分析していく必要がある。
-- 登録:平成21年以前 --