特別支援教育について

第2章 都道府県・市区町村・学校の取組 夏季休業中のボランティア養成の取組 山口県

概要

 夏季休業中に、PTAと学校が連携し、児童生徒のために学校の施設等を活用してサマースクールを開催しており、この活動を支援するため、高校生、大学生、一般市民等からボランティアを募集すると共に、併せて参加者を対象に、障害についての理解や支援の方法等を学ぶボランティア養成講座を実施している。回を重ねるごとにボランティアの参加が増えてきており、日々の教育活動への支援についても検討している。

キーワード

 サマースクール PTAとの連携 ボランティア養成講座 学校ボランティア人材バンク

1.取組の内容について

 山口県立周南養護学校(肢体不自由)では、例年、PTAと学校とが中心となり、夏季休業中に児童生徒のためのサマースクールを校内や隣接する肢体不自由児施設を会場に開催してきた。
 この活動には、地域のボランティアを募集していたが、平成16年度からは、サマースクールに先立ってボランティア養成講座を開催し、人材育成を併せて図っている。
 この取組は、保護者と学校が連携を深め、協力し合うことと、地域の人々にボランティア活動を通して、障害のある児童生徒を地域社会の中で支え合い、育てていくことの必要性についての理解・啓発を図ることを目的として実施されている。
 サマースクールとボランティア養成講座の活動内容を示すと以下のとおりである。

実施日 サマースクール活動内容 ボランティア養成講座
第1週(金曜日)
  • 朗読と音楽の集い
研修講座:活動の実際
(新応募者対象)
第2週(金曜日)
  • プールで遊ぼう
  • 体を動かそう(カローリング、ボッチャ等)
研修講座:支援の基礎的な技術と留意点
(プール介助、運動支援等)
第3週(金曜日)
  • わっしょい周南夏祭り(ステージ活動、ゲーム、模擬店等)
研修講座:障害のある人の生活と障害の理解
(車椅子の介助、食事介助、生活支援等)
第4週(金曜日)
  • 楽器を鳴らそう
  • うどんを作ろう
研修講座:地域における生活について
(楽器演奏、調理活動の介助・食事介助等)

 ボランティアの募集は、PTAと学校が協力し、周南市内の全高等学校及び総合的な学習の時間等で交流のある市外の高等学校、大学及び関係機関への文書依頼、市の広報等による一般公募を行った。本年度は、市内外の高校生、大学生、一般市民からの応募があり、保護者、教職員も積極的に活動に参加した。
 この取組の特色は、参加したボランティアに対し、サマースクールの活動に先立って研修講座を実施し、事前に障害の特性についての理解や支援の仕方について研修した後、活動に参加するなど、支援の目的や留意事項等を理解しながら体験できることにある。
 また、それぞれの講座には、本校教員及び経験豊かなボランティアが、研修講座の講師やリーダーとなり、参加する児童生徒の実態に即した支援について説明するとともにボランティアの経験に応じた内容となるよう配慮している。
 第1週では、初心者のボランティアは、経験豊かなボランティアが進める朗読や音楽の集いを参観し、活動の実際を体験した。第2週以降は、障害の理解、介助、コミュニケーションの取り方、地域における支援の在り方等について、講義や討論を通じて経験のあるボランティアと共に学び、その後、サマースクールでの支援活動に当たるなど、効果的なボランティア養成を行っている。

 ボランティア養成講座の運営方針と留意事項を示すと以下のとおりである。

  • PTAと学校とが連携して実行委員会を組織し、企画・運営を行う。
  • 研修講座の講師は、本校教員や経験豊かなボランティアが担当し、障害の特性の理解や支援の在り方について、サマースクールの活動内容と関連付けた講義、演習を実施している。
  • 初めて参加したボランティアの養成及び経験者のグレードアップに焦点を当てた講座内容となるようプログラムを編成している。
  • ボランティア参加者に、2学期以降の学校行事等の案内を送付し、情報提供と共に継続的な参加を依頼している。
    ※ ボランティアは、高校生、大学生、一般・地域の方で資格等は必要とせず、無償である。養護学校教員や福祉施設職員、保護者が協力した。

2.取組による成果と課題及び今後の取組について

(1)成果について

 サマースクールにおけるボランティア養成講座も3年を経過し、高校生、大学生、一般ボランティアの継続参加も増えた。また、保護者の参加も増えており、サマースクールの企画・運営も充実してきた。とりわけ教員、保護者、ボランティアの協働により、相互の連帯感が深まると共に地域における活動への理解や認識も広がってきた。

(2)課題について

 ボランティア養成講座については、日々の教育活動の中で、児童生徒のニーズに応じた恒常的な支援を行うために、より組織的で質の高い人材養成が必要である。
 また、地域の行事や総合的な学習の時間等を通じて、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒との交流の機会を通じて、早期からの相互理解を進めていくことが必要である。

(3)今後の取組について

 現在、市内の工業高校生による総合的な学習の時間での車椅子の修理等のボランティア活動が行われているが、今後、これらを児童生徒との交流の場として拡充するとともに、高校生として自分ができる支援を考えさせるなど、日常的かつ主体的な支援が行えるように働きかけたい。
 また、本県では、特別支援学校(本県では総合支援学校(仮称)と呼ぶ。)への移行に向けて、平成18年度から2年間、「総合支援学校(仮称)体制整備モデル事業」を実施しており、本校は「交流・共同学習モデル研究」の指定校として実践研究を行っている。
 このモデル研究の中で、本年度から「学校ボランティア人材バンク」制度を立ち上げ、サマースクールに参加したボランティアに加え、地域の企業ボランティアや市民ボランティア団体へも登録を呼びかけ、地域で継続して支援できる体制づくりを進めている。
 更に、ボランティアの人材養成についても、モデル研究の中で、大学等との共同による地域人材の育成・活用について検討を進めている。

-- 登録:平成21年以前 --