特別支援教育について

第2章 都道府県・市区町村・学校の取組 学校や地域に吹く新しい風-スクールヘルパー制度- 島根県出雲市

概要

 出雲市では、児童生徒のために、学校が家庭・地域と連携を深め、理解と協力を得ながら学校教育を推進していくために、教育活動の協力者として、地域の人材である「スクールヘルパー」を配置している。スクールヘルパーの存在は、特別に支援が必要な児童生徒等はもちろん、教職員や保護者にとっても大きな存在になっている。
 このスクールヘルパー制度は、平成9年度中学校でスタートし、翌10年に小学校でも始まり、今年10年目を迎えている、出雲市が全国に誇れる事業である。

キーワード

 スクールヘルパー 一人一人を大切にする 協働する支援体制

 周知の通り、今日の教育現場の抱える課題は多岐にわたっている。しかし、こうした状況にある今こそ、学校が家庭や地域社会と緊密な連携を図りながら学校教育を推進していくことが強く求められている。
 スクールヘルパー制度は、学校教育に深い理解と情熱があり、精力的に活動している地域の人を学校現場に派遣し、学校教育を支援してもらう制度である。
 本市では、このスクールヘルパー制度の活用により、「地域に開かれた」「一人一人を大切にする」学校づくりを積極的に進めているところである。
 以下に、スクールヘルパーについての具体的な内容等を述べる。

1.スクールヘルパーの3つの内容

 特別な教育的支援が必要な児童生徒数の増加などにより、様々な支援を必要とする児童生徒や学校現場の多様な状況に的確に対応でき、そのニーズに合った事業となるように、スクールヘルパーを次の3つの内容に分類して配置している。

(1)特別支援補助ヘルパー

 市内の小・中学校に在籍する、肢体不自由や自閉症など学校生活全般にわたって介助を必要とする児童生徒に対して、学習の補助、トイレでの介助、自立活動の支援等を行う。これにより、児童生徒が楽しく充実した学校生活を送ることができている。
 ※ 臨時職員(4月1日~7月20日,9月1日~12月29日,1月5日~3月31日)1日8時間で日給6,300円(賃金)、資格なし、保険等有

(2)特別支援教育ヘルパー

 通常の学級に在籍するLD(学習障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、高機能自閉症等軽度発達障害の児童生徒に対して、適切な対応や指導等教育的支援を行っている。これにより、こうした軽度発達障害のある児童生徒の学力保障もしていくことができる。
 ※ 臨時職員(4月1日~7月20日,9月1日~12月29日,1月5日~3月31日)1日5時間時給1,280円(賃金)教員免許状保有者、保険等有

(3)スクールヘルパー

 家庭・地域・学校を結び、学校内の教育活動の補完など、学校教育活動全般に渡って支援をしている。その中でも不登校、不登校傾向の児童生徒への支援、及び集団になじめない児童生徒への支援を中心に行っている。
 ※ 委嘱(4月1日~3月31日)、1日4時間で3,000円(謝金)、資格なし、保険等無

2.スクールヘルパー制度の特徴

(1)地域に開かれた

 「何か地域の子どもたちの役に立ちたい」「子どもや学校のために自分にできることをしたい」という思いをもっている地域の人材はたくさんいる。そうしたボランティアスピリッツをもった方々に学校現場に入ってもらい、学校の教育活動について、間接的な支援に留まらず、一人一人の実態に応じて身辺介助、個別の学習支援、交流学習の中での支援等、児童生徒に直接支援をしている。

(2)一人一人を大切にする

 現在の、「特殊教育」から「特別支援教育」へという流れの中で、ノーマライゼーションの理念に基づき、障害のある児童生徒が学校の教育活動への参画に向けた取組を支援するという視点から、彼らの教育的ニーズを把握し、適切な支援を行うことが必要である。また、学習上の困難を抱えた児童生徒に対する学力保証の視点からの支援も求められている。
 そして、まさにこうした一人一人を大切にするという観点に立っているのが出雲市の「特別支援補助ヘルパー」「特別支援教育ヘルパー」である。彼らは児童生徒一人一人のニーズに応じて、生活上、学習上的確な支援をしている。これにより、身体的な面だけでなく、心理的な面も含めて、児童生徒にとってなくてはならないかけがえのない存在となっているのである。

3.成果と課題

(1)成果

1.現場の声

 現場の教員の中から、今まで障害に悩み、落ち込み、できない自分にいらだっていた児童生徒から「人から大切にされている」「自分もやればできるんだ」「大変なのは自分だけではない」といった深い意味の言葉が出てきたという話を聞くことがある。
 スクールヘルパーの関わりにより、自尊感情、自己肯定感が育まれ、ひいては他者への共感的理解まで生まれてきている証である。

2.教育活動の幅の拡大

 この春、肢体不自由で全介助の必要な小学6年生児童が広島への修学旅行に参加した。「修学旅行に行きたい」という児童生徒が修学旅行に参加するためには、特別支援補助ヘルパーの存在なくしては成立しないことである。彼らの献身的な姿勢が児童生徒の夢や願いを実現させている。

(2)課題

1.求められる専門性

 発達障害の児童生徒が増えている中、その支援内容や支援方法も多様化しており、一人一人に適切な支援が行えるための「研修の機会」の充実が不可欠であり、これまで以上に専門的な研修と人材の確保が必要であると考える。

2.教員とスクールヘルパーとの連携による支援体制の構築

 子どもへの対応をスクールヘルパーに任せるのではなく、担任をはじめとする教員が、より適切な支援を行うための専門的な知識習得と、協働する支援体制を構築していく必要がある。

-- 登録:平成21年以前 --