特別支援教育について

第2章 都道府県・市区町村・学校の取組 大学との連携による学生ボランティアの活用 愛知県刈谷市

概要

 愛知県刈谷市の小・中学校は、同市にある愛知教育大学との連携を深め、市内の特殊学級合同行事や各校の普段の授業において、学生のボランティアを活用している。子どもたちにとって学生ボランティアは、気さくに勉強を教えてくれたり、いろいろな手助けをしてくれたりするお兄さん・お姉さんという存在になっている。また、学生にとっては、学校現場を直接知る良い機会になっている。

キーワード

 大学との連携 学生ボランティア 小・中学校 通常の学級 特殊学級

1.刈谷市の特殊学級合同行事での学生ボランティアの活用

 毎年、刈谷市特別支援教育推進協議会(以下「特推協」と記す。)が主催となり、刈谷市内にある21の小・中学校の特殊学級在籍の子どもたちが集まり、運動会・もちつき会・卒業生を送る会などの合同行事を行っている。その際、愛知教育大学の学生ボランティアを活用している。

(1)合同運動会における学生ボランティアの活用

 毎年5月に行われる合同運動会では、運動会前に特推協の担当者が市内の全小・中学校の特殊学級担当者にボランティア学生の必要数・男女別・その他希望を取りまとめる。そして、その内容を愛知教育大学の障害児教育担当の教官に伝え、ボランティアの学生(障害児教育専攻の学生)を運動会当日派遣してもらう形をとっている。
 ボランティアの学生は、弁当持参で自家用車や公共交通機関を使い各自会場へ来る。会場では、特推協の担当者が、学生一人一人に、どの学校のどの子どもたちに付いて支援するのかを連絡する。学生ボランティアは、担当する児童生徒についての情報や支援の仕方について、各学校の教師から指導を受ける。
 運動会終了後、学生はボランティアの取組を振り返るため、感想を書いて提出する。その感想用紙は、回収後、各校の担任に渡される。

(2)成果

 ボランティアの希望があった1人の子どもに対し、1人のボランティア学生が担当するということを基本としているので、ボランティアの学生が、担当の子どもの演技を間近で支援したり、すぐに賞賛の言葉をかけたりすることができるため、子どもと学生が楽しそうに関わっている様子を見ることができた。普段は限られた人間関係で生活している子どもたちにとって、若い学生と触れ合う機会は貴重であったと考える。
 運動会の運営上の役割がある教師にとっては、運営に力を注ぐことができた点も良かった。更に、運動会終了後にボランティアの学生に書いてもらったレポートを読むと、子どもの運動会での詳しい様子や、教師とは違った子どもの見方が書かれており、その後の指導の参考になった。
 学生にとっても障害のある子どもたちと直接触れ合うことで、障害への理解を深めるよい機会となっていると考える。

2.定期的な各学校での学生ボランティアの活用

(1)内容

 障害児教育専攻の学生56人が、愛知教育大学の授業(総合演習1及び2)として、刈谷市内の小・中学校21校に、各校2~4人の配当でボランティアに来ている。
 期間は年間を通してであり、時間については、学生の来校できる曜日・時間を優先する。

(2)事例 -A小学校での学生ボランティアの活用

 現在4人の学生(全員女性)が、ほぼ週1日の割合で、学生ボランティアとして来校している。朝は8時25分までに来校し、職員の朝の打ち合せに参加している。終了時刻は、各学生のその日の大学の授業に応じて、適宜決めている。

1.通常の学級における学生ボランティアの活用

 現在、大学4年の学生1人が、基本的に、毎週木曜日の午前中に1年生を担当している。1時間目は1組、2時間目は2組、3時間目は3組、4時間目は4組の授業に入る。そして、各学級に在籍する発達障害のある子どもを中心に個別の支援を行う。支援の方法については各担任と授業前に、主にどの子に付くのか、どのような支援を行うのかなど、あらかじめ打ち合せておく。

2.特殊学級における学生ボランティアの活用

 現在、大学4年の学生1人、3年の学生2人が特殊学級を担当している。週1日の割合で、学生が都合のつく午前中に来ることにしている。主に担当する子どもを決めて支援している。
 具体的な活動としては、国語の授業では、子どもたちが家族についての紹介文を原稿用紙に書く際、学生ボランティアは、担当の子どもの書く内容を確かめたり、書き方の支援をしたりした。また、図工の授業では、4年の子どもたちが初めて板をのこぎりで切ったり、釘を打ったりするとき、板を持ったり、道具を使うときの補助をしたりした。危険を伴う作業であったが、子どもたちは安心して作業に取り組むことができた。そして、良い作品を仕上げることができ、とても喜んでいた。

(3)成果

 毎週同じ学生が来校し、子どもたちと関わりをもつことができるので、子どもたちは、とても学生ボランティアの来校を楽しみにしている。そして、学生ボランティアと気さくに話をしたり、勉強で分からないところを聞いたりする姿が見られるようになってきている。
 学校側として、授業に集中することが難しい子どもへの支援や学習の理解が遅い子どもへの支援等、担任教師の補助的な役割を担ってくれるので助かっている。また、体育の授業では、授業前に教具の準備や授業後の教具の片付け、到達度別の学習での子どもへの支援等、とても貴重な存在となっている。
 また学生側として、将来教師になった場合の具体的な授業のイメージをつかむことができるだけでなく、障害のある子どもたちに対する指導法を現場の教師から直接学ぶことができたり、自分でアプローチできたりする良い機会になっている。

3.今後の課題

 学生ボランティアの立場が、教師でもなく、教育実習生とも違う存在で、どこまで子どもの指導や支援を依頼したらいいのか迷う点が課題として挙げられる。また、学生の都合が優先されるので、学校として必要な時に支援が受けられないことも課題である。

-- 登録:平成21年以前 --