特別支援教育について

第2章 都道府県・市区町村・学校の取組 スタディ・メイトの養成と活用 富山県

概要

 LD・ADHD・高機能自閉症等の児童の学校生活を支援するための有償ボランティア(スタディ・メイト)を、知的障害及び肢体不自由養護学校7校において70名養成し、市町村が小学校に派遣する経費の補助を行った。スタディ・メイトを希望する地域の方で、教員免許等を有する方の他、経験や熱意のある方を募集。養成講座(7回)修了者名簿を市町村に提供した。運営協議会を開催し、スタディ・メイト通信を発行した。

キーワード

 スタディ・メイト LDの児童への人的支援 養成講座 養護学校等のセンター校 修了者名簿 通信発行

1.スタディ・メイトの養成

 本県では、平成17年度より県内全域で「特別支援教育体制推進事業」に取り組み、一定の成果がみられるようになっているものの、小・中学校等の通常の学級に在籍するLD・ADHD・高機能自閉症等(以下「LD等」という。)の児童生徒への人的支援を求める声は高く、18年度、LD等の児童の学校生活を支援するための有償ボランティア(スタディ・メイト)を小学校に導入した。
 導入に当たって、LD等の障害や支援の在り方についてスタディ・メイトに一定の知識と経験を有してもらうために、知的障害及び肢体不自由養護学校7校において養成講座を実施した。本県では、各盲・聾・養護学校が、それぞれセンター校として支援に当たる学校や地域を分担している。スタディ・メイト派遣後のバックアップが円滑にできるようにと考え、センター校の支援の分担を基に、養成講座を受ける養護学校を指定した。

(1)スタディ・メイトの募集(4月~6月)

 県広報等でスタディ・メイト希望者を募集した。資格等については以下のように定めた。

  • 教員免許状所有者及び準ずる者。(準ずる者;保育士・看護師等の免許状所有者、当該事業に関する識見や経験、理解や熱意のある者。)
  • 教員免許状及び理学療法士等福祉の専門職の資格取得を目指す者。
     申し込みは、小学校で受け付けた。77名の応募があった。

(2)養成講座の実施(6月~9月)

 養護学校7校における研修は、県総合教育センターにおいて半日7回分の研修内容を作成し、各養護学校はこの内容に基づいて養成講座を実施した。研修内容の作成に当たっては、盲・聾・養護学校の特別支援教育コーディネーター養成講座の内容を参考にした。
 共通の研修内容を提示したことで、各校で一定の水準を保つことができたと思われる。

研修内容 講師
守秘義務等服務に関すること(1回) 小学校長
小学校における特別支援の実際(1回) 小学校特別支援教育コーディネーター
LD等の障害の理解(2回) 大学教員
養護学校特別支援教育コーディネーター
行動のとらえ方と支援(4回) 養護学校特別支援教育コーディネーター等
体験研修;児童生徒との関わり方(6回) 養護学校特別支援教育コーディネーター等

 養護学校における養成講座は、スタディ・メイトに大変好評だった。養成講座について、受講者の多くから次のような評価をいただいた。

  1. 発達障害についての基礎的理解ができた。
  2. 障害のある子どもとの関わり方を体験的に学ぶことができた。
  3. 養護学校の教育について理解を深めることができた。
  4. 養成に当たった養護学校の特別支援教育コーディネーター等との結び付きができた。
  5. 他のスタディ・メイトとの結び付きができた。
     4、5からは、一人で小学校に派遣されるスタディ・メイトにとって、拠り所ができたことが伺える。特に4は派遣後のフォローに直結する大切なことである。

2.スタディ・メイトの派遣(10月~)

 養成講座を修了したスタディ・メイト70名に修了証を交付し、修了者名簿を市町村に送付した。その名簿に基づき市町村が希望する小学校とスタディ・メイトの調整を行い、派遣した。18年度は、養成が修了してからの派遣となったため、派遣期間は18週である。

(1)活用範囲等

 スタディ・メイトの支援の対象は、小学校低学年の医師の診断のあるLD等の児童とし、支援は1日4時間として、児童の実態等に合わせて学校が時間設定をした。市町村は、1回当たり2,000円をスタディ・メイトに支払い、県はその半額を補助した。
 18年度は、12市町の22小学校に28名のスタディ・メイトが派遣された。

(2)通信の発行

 事業の円滑な実施と充実を目指し連絡協議会を開催したところ、子どもが落ち着いた、学習に参加できる時間が長くなった、子どもがスタディ・メイトの来るのを心待ちにしている等の成果の報告があり、事業について概ね好評を得た。このようなスタディ・メイトの活用とその効果について広く啓発するために、スタディ・メイトや担任、校長等の寄稿による通信を発行し、市町村教育委員会、小学校、養成に当たった養護学校等に配付した。

3.今後に向けて

 市町村からは、幅広く活用するために活用範囲について見直してほしいという要望が強く、多人数特殊学級への支援にも活用したいという意見が寄せられた。19年度、「特別支援教育支援員」が地方財政措置されることを受け、市町村の要望はほぼ解決できる。県内全ての市町村が、19年度、特別支援教育支援員を配置したいと考えており、県に期待することとして、1特別支援教育支援員の養成研修、2支援員の資質向上研修の要望が強く寄せられている。スタディ・メイト養成研修の経験を生かし、今後も前向きに取り組んでいきたい。

-- 登録:平成21年以前 --