江東区では、平成14年度から、通常学級に在籍する学習や生活の面で特別な支援を必要とする児童・生徒への学習支援等を目的として、学習支援講師配置事業を開始した。
保護者の同意を得た上で、年度の初めに小・中学校長等から派遣申請を受け、個に応じた指導の一層の充実を図るため、区が非常勤講師として採用した教員免許状を有する人材を「学習支援講師」として配置している。
学習支援講師 集団行動 個別指導 校内体制の整備 保護者の同意
現在最も多い申請理由は、LD・ADHD・高機能自閉症等によると思われる学習上の困難に対する支援である。学習支援講師の配置に当たっては、派遣申請のあった全ての学校に指導主事が視察に行き、児童生徒等の実態及び学校の指導体制を把握し、講師を適切に派遣している。
学習支援講師は、主に、学級担任等の補助者として当該児童生徒等を支援しているが、派遣対象の児童生徒の学習等を支援するだけでなく、他の児童生徒の学習環境を確保している。特に、友達とトラブルが起きやすい休み時間にも支援に当たっている。
数年にわたって同じ学習支援講師が関わることにより、その児童生徒の生活に落ち着きが見られるようになり、集団での学習に適応することができるようになったという成果が数多く報告されている。
週当たり4時間から24時間と児童・生徒の状況によって配置時数に差はあるが、平成18年6月末現在、学習支援講師を配置している公立学校は38校で、対象児童生徒数は116名おり、昨年度に比べて9校、25名の拡充を図っている。
児童Aは、集団行動に課題があり、現在、週14時間支援を受けている。基本的な生活習慣や学習習慣を身に付けることを重視し、担任と連携して学習等に対する意識付けを行っている。講師の支援により、入学当時から比べると授業中に集中できるようになり、保護者も大変喜んでいるが、物事に一人で取り組むには、まだ時間がかかる。
児童Bは、多動傾向があり、友だちとのトラブルがあることから、現在、週9時間支援を受けている。講師による集合、整列、作業の始めの個別指導により、集団に適応できるようになってきた。
児童Cは、友だちとのコミュニケーションに課題がある。学習支援講師との関わりは3年目で、週6時間支援を受けている。算数の授業では、担任と連携して支援体制を組み、児童Cに応じた学習課題に取り組んでいる。講師がいる時は、落ち着いて学習に取り組んでいるが、いない時には、担任による個別指導が必要である。
児童Dは、多動傾向があり、友だちとのトラブルがあることから、現在、週9時間支援を受けている。講師が付き添い、受容的な態度で接することによって、活動に落ち着いて取り組めるようになり、友だちとのトラブルが少なくなってきた。
生徒Eは、自閉傾向があり、現在、週8時間支援を受けている。講師と生徒の信頼関係が厚く、生徒が感情をコントロールすることが困難な場面でも、コミュニケーションを図ることにより、落ち着きを取り戻すことができるようになった。学習に取り組む姿勢が確実に向上し、他の生徒の理解も深まっている。
生徒Fは、多動傾向があり、基本的な生活習慣が十分に身に付いていないため、現在、週8時間支援を受けている。講師が生徒に寄り添い、授業中、休み時間にも丁寧な指導に当たっている。水泳をはじめ、授業において個別指導を行うことによって、苦手な教科についても意欲的に取り組む姿勢が見られるようになった。
本区においては、「教育改革江東・アクションプラン21」における、個に応じた教育の充実の一環として、発達障害等の児童生徒に対する学習支援を位置付け、学習支援講師配置事業の継続・拡充を図っている。今後の課題としては、以下の3点が考えられる。
学習支援講師が、学習面等で支援を必要とする児童生徒等に適切に関わるために、区費の臨床心理士等による研修を実施し、実践的指導力の育成を図る。
学習支援講師を効果的に活用するために、大学の専門家等による研修を実施し、特別支援教育コーディネーターの養成を図り、校内委員会等の校内体制を整備する。
また、校内委員会等からの要請に応じ、巡回相談等のスタッフを派遣し、児童生徒等の障害の有無等を判断する医学・心理の専門家等の指導などに結び付ける。
全ての学校や保護者、地域に障害のある児童生徒等に対する理解と認識を普及啓発するために、各学校が研修や広報活動に活用できる資料を教育委員会で作成する。
-- 登録:平成21年以前 --