特別支援教育について

第2章 都道府県・市区町村・学校の取組 個別の配慮が必要な子どもへの支援体制の工夫 学生ボランティア活用の視点から 宮城県仙台市

概要

 仙台市立中山小学校では、これまでも学生ボランティアによる児童への支援を行ってきたが、教師との連携不足や、支援内容が単発になるなど、十分な成果が上げられなかった。
 そこで、今年度、校内体制の見直しと学生ボランティアへの研修や支援対象児童の固定化を実施した。その上で、保護者と学校、学生ボランティアとの共通理解の上に立った個別の指導計画の吟味を行い、指導内容の焦点化、明確化を図った。
 その結果、児童の成長を担任や保護者と確認しながら対応できるようになった。

キーワード

 校内支援体制 学生ボランティア研修 共通理解 支援シート 支援ノート

1.実践の目的

  1. 児童の支援の充実を図るために、校内支援体制を整備する。
  2. 個別に支援の必要な児童への学生ボランティアによる支援システムの構築を図る。

2.実践の方法

  1. 校内支援体制を見直すとともに、配慮の必要な児童の特性について共通理解する。
  2. 大学や相談機関などの関係機関との連携を図る。
  3. 学生ボランティアによる支援システムを立ち上げる。
  4. 活動記録の累積・分析を通して、学生ボランティアによる支援の焦点化を図る。

3.実践の概要

1.校内支援体制の見直し

  • 個別の指導について担任だけの問題とせず全教職員がしっかり受け止め、対象児童へのよりよい支援の在り方を検討できる場として校内支援委員会を位置付ける。
  • 特別支援コーディネーターが学生ボランティアのとりまとめを担当し、研修計画や支援を行う。

2.学生ボランティアの受け入れ

  • 原則として一過性ではなく、ある程度長期にわたって支援活動が可能である学生に支援を依頼する。(活動内容や期日、時刻が折り合えば可能)
  • 学校での支援に関して、守秘義務、活動内容等について説明し、了解を得る。

3.学生ボランティアによる支援の開始までの手順

学生ボランティアニーズ調査(各担任に行う)

 →個別の指導計画吟味(支援シート、個別の指導計画)→ボランティア週配当計画表作成→支援の開始→支援ノートによる共通理解→ボランティア連絡会による支援の吟味

支援シート

支援シート 図

ボランティア週配当計画表

ボランティア週配当計画表 図

4.活動記録の蓄積・分析と指導方針の決定(支援ノートの活用)

  • 支援活動が終了したら、学生ボランティア活動記録(支援ノート)をつけ、支援を振り返ったり、担任と意見交換する手段として活用している。
    (支援内容と活動状況、他の児童等との関わり、感想等)
支援ノート(抜粋)・・・担任の先生との共通理解
7月11日 ○○君は、単位の理解が不完全でした。
割り算の筆算も式に立てると逆になりました。でも紙に書いて説明すると熱心に頑張っていました。
(担任から)
ここが○○君のすばらしいところです。
紙に書いて説明したのは、goodでしたね。これからも個別のサポートをよろしく、良い点をまた見つけてね。

5.学生ボランティアの研修の実施

  • ア 随時研修 (随時:担任と学生ボランティアによる打ち合せの時間)
  • イ 定期研修 (年4回:学生ボランティア連絡会として、日常的な問題の解決に向け今後の方針などを共通理解する場としている。また、事例を基に、担任と意見交換を行う場とも活用している。)
     ※ 学生の声は全教職員にも知らせ、校内で共通理解を図っている。
  • ウ 計画研修 (年3回:主に外部講師を招聘し、より専門的な見地から本校の取組について助言を受ける校内研修への参加している。)
  • エ 個人研修 (随時:学生ボランティアが行っている個々の課題に対する自己研修)

6.関係機関との連携や課題の引き継ぎ

 大学の特別支援教育センターとの事例検討による連携[学生の所属大学]
 学生の所属している大学の特別支援研究センターの教授を招き、学生ボランティアと一緒に支援困難事例について対策を協議し、支援シートの作成を行った。その結果、児童に大きな改善が見られた。

7.全体構想図

7.全体構想図

4.実践のまとめと今後の課題

(1)実践のまとめ

  1. 学生ボランティアを含めた機動力のある校内体制をとることによって、問題を担任のみのものとすることなく、学校全体で受け止めたり対応することができるようになった。
  2. 教職員が学生ボランティアと一緒に、発達障害に関する研修を行い、実態の把握と関係機関との連携を進めることによって、児童への指導方針と指導内容が明確になった。その結果、保護者も安心できる支援体制が組めるようになった。
  3. 指導内容をしっかり伝え、学生ボランティアとしての関わりを明確にすることによって、児童も違和感なく学生ボランティアの支援を受け入れ、意欲をもって活動することができるようになってきた。

(2)今後の課題

  1. 学生ボランティアとの一層の連携強化
  2. 学生ボランティアの人材確保と質の向上
  3. 学生ボランティアの日程調整及びこの支援システムの継続

-- 登録:平成21年以前 --