八戸市では平成13年に「八戸市教育支援ボランティアセンター」を設立し、地域の人材(資格を必要としない一般の方)を学校教育や社会教育に活用するため、「教育支援ボランティア人材バンク」を設置している。当センターではコーディネーターを配置し、依頼者(学校等)とボランティアの調整を行っている。
現在は、児童生徒の障害の多様化が進んでおり、各学校より「特別な支援を要する児童生徒のサポート」を要請されるケースが多くなってきている。
平成18年12月末現在、特別支援ボランティア登録者は18名、そのうち13名が小・中学校で、2名が養護学校で活動している。
本稿では実際に支援の依頼があったケースをもとに現状と課題について述べていく。
八戸市教育支援ボランティアセンター 教育支援ボランティア人材バンク 特別支援ボランティア
派遣依頼:
対象児童:
顔合わせ:
Sさんに依頼した理由
ボランティア(Sさん)は、児童が望む課題を決めて、50分間にわたり算数の授業の補助をしている。児童の学習のために、Sさん自身も算数の予習をし、活動に臨むようにしている。
Sさんが支援活動に従事するようになってからの児童は、会話は困難ではあるが、単語の羅列などで自分の意志を伝えることができるようになるといった変化が現れた。児童の担任教諭(依頼者)は、Sさんが支援することによって、児童が教室内でも活発になってきたと述べている。
Sさんはボランティア活動の経験はあったが、特別支援教育に関しては経験がなかった。しかし「当初は戸惑いもあったが、直接には関わらない先生の言葉かけなど学校側からの温かい心遣いに触れ、がんばってみようと思った。」と述べており、学校側のボランティアに対する気遣いが活動を続けていける要因となっている。
またSさんは「ボランティアをするのは、人のためではなく自分のため。ボランティアの経験によって、自分自身も成長していると感じる。長続きのコツは、楽しみながら無理せず、気長にやっていくこと。」とも述べている。
当事例を通じて明らかになったことは、児童が困っていることに対して特別に支援をしてくれる人がそばにいることで、児童自身も成長できるという点、学校側も安心して授業が進められ、他の児童のためになる点、子どもたちと接することによってボランティア自身も成長できるということである。
このように、学校現場でボランティアが活動することによって様々な効果が見られたが、同時に課題も明らかになった。
1点目は、ボランティア従事者の負担である。概要で述べたとおり、八戸市では特別支援に関するボランティアが少なく、遠方からの従事者が多く存在する。Sさんの場合は比較的居住地に近い学校で活動できているが、バスで出向いているケースもある。当市の教育支援ボランティア事業は無償であるため、それに伴い交通費等がボランティア自身の負担(保険の掛金のみ対応)となる。今後はボランティア従事者の有償化も検討する必要がある。
2点目は、特別支援ボランティア登録者が少ないという点である。年1回特別支援ボランティア研修会を開催しているが、ボランティア人材を確保するまでに至っていない。児童生徒の障害の多様化により、学校側からボランティアへの支援の要請が今後増加することが予想されるため、経験豊富な退職教員等を活用するといった方法も検討していかなければならないと考える。
本稿では、特別支援教育に関して、実際に支援の依頼があったケースをもとに成果や課題について述べてきた。事例より特別支援教育にボランティアを活用することによって、支援を受ける児童はもちろんのこと、ボランティア自身も活動を通じて成長することができていることが明らかになった。今後も当市では特別支援教育にボランティアを活用していくが、学校とボランティアが負担にならないよう行政が支援していくことが継続に当たって必要となってくるのではないかと考える。
-- 登録:平成21年以前 --