特別支援教育について

第1章 特別支援教育体制の推進について

1.特別支援教育体制推進の経過

 平成15年3月、「今後の特別支援教育の在り方について」(協力者会議最終報告)において、LD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒を含む障害のある児童生徒への適切な支援体制の整備が指摘された。
 また、平成15年からの10年間を見通した「障害者基本計画」が閣議決定された。この計画においては「障害のある子ども一人一人のニーズに応じてきめ細かな支援を行うために乳幼児期から学校卒業後まで一貫して計画的に教育や療育を行うとともに、学習障害、注意欠陥/多動性障害、自閉症などについて教育的支援を行うなど教育・療育に特別のニーズのある子どもについて適切に対応する」ことが述べられている。障害者基本計画の前半5年間、平成19年度までの具体的な計画である重点施策実施5か年計画(新障害者プラン)においては、

  • 小・中学校における学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)等の児童生徒への教育支援を行う体制を整備するためのガイドラインを平成16年度までに策定する。
  • 盲・聾・養護学校において個別の支援計画を平成17年度までに策定する。
  • 盲・聾・養護学校に関して地域における教育のセンター的役割を果たす学校についての制度的検討を行い、平成15年度中に結論を得るとともに、その検討状況も踏まえて特殊教育に係る免許制度についても改善を図る。

 などの内容があげられている。

 これらを受け、文部科学省としては平成15年4月より、特別支援教育体制を推進するための事業を全都道府県に委嘱し、平成19年度までを目途に支援体制を整備することを目指し実施してきた(平成15・16年度は特別支援教育推進体制モデル事業、平成17年度からは特別支援教育体制推進事業)。
 この間、平成16年には障害者基本法の見直しが行われ、平成17年4月には発達障害者支援法が施行された。平成18年4月1日からは、LD及びADHDが新たに通級による指導の対象となり、同年6月には特別支援教育体制に転換するための学校教育法等の一部改正案が国会において可決、平成19年4月1日に施行されることが決定された。更に平成18年12月に施行された改正教育基本法第4条には、「障害のある者がその障害の状態に応じ、十分な教育を受けられる」ようにしなければならないことが規定された。

2.学校を支える体制整備の現状

 こうした状況の中で、体制整備は全国的に進んできた。平成18年度の特別支援教育体制推進事業の内容は以下のようなものであった。

  1. 調査研究運営会議の設置
  2. 特別支援連携協議会の設置
  3. 幼稚園、小・中学校及び高等学校におけるLD・ADHD・高機能自閉症等の幼児児童生徒に対する総合的な支援体制の整備(推進地域の指定、校内委員会の設置、特別支援教育コーディネーターの指名、巡回相談の実施、専門家チームの設置、個別の教育支援計画の策定)
  4. 特殊学級や通級指導教室の弾力的な運用についての研究
  5. 盲・聾・養護学校における特別支援教育の推進(特別支援教育推進校の指定、盲・聾・養護学校におけるセンター的機能、特別支援教育コーディネーターの指名、個別の教育支援計画の策定)
  6. 特別支援教育コーディネーターの養成研修
  7. 関連事業との連携
  8. 保育所の追加
  9. ボランティア等の地域人材を活用した支援体制の在り方についての優良事例の収集

 平成18年度には、幼稚園だけでなく保育所においても支援体制整備を進めることと、ボランティア等の地域人材を活用した支援体制の在り方についての優良事例の収集が新たに加わった。
 文部科学省では、平成15年度から、学校における体制整備状況について各都道府県別に調査を進めてきている。その結果を示したのが次頁以降の表1及び表2-1~2-5である。
 小・中学校については、昨年度と比較できる全ての調査項目で前回を上回っており、全体として体制整備が進んでいる状況がうかがえる。また、小・中学校については、「校内委員会の設置」「特別支援教育コーディネーターの指名」は、9割以上で、「実態把握」は、約8割の学校で実施されている。「巡回相談員の活用」は、約5~6割、「個別の指導計画の作成」は約3~4割、「個別の教育支援計画の作成」は、約2割で実施されている。これらの学校には、LD等のある子どもたちがおり、実際に個別の対策が行われていることがわかる。
 今年度新たに調査した、幼稚園と高等学校については、小・中学校と比較すると、全体として体制整備が遅れており、地域による取組の差が大きく、更なる体制整備が必要である。
 今年度新たに調査項目に追加した教員の「特別支援教育に関する研修状況」については、全体で約4割の実施率である。実施率の高い順に、幼稚園(約6割)、小学校(約5割)、中学校(約4割)、高等学校(約1割)となっており、一層の推進が必要である。

3.体制整備のための人材確保について

 これらの体制整備に加え、平成17年度の事業報告書において多くの都道府県教育委員会担当者が指摘しているのが、支援に直接携わる人材の不足であった。人材確保については、多くの自治体が工夫を凝らしており、ボランティアの活用も全国的に広がっている。
 平成19年度政府予算案には、地方交付税措置として、「特別支援教育支援員」が配置できる予算が計上されている。
 また、上記の特別支援教育体制推進事業についても、19年度から「学生支援員」を活用できる事業内容とする予定である。これらを活用しながら、各学校において体制整備が更に進められ、特別な支援を必要とする子どもたちへの支援が充実することが望まれる。

-- 登録:平成21年以前 --