入院児童生徒等への教育保障体制整備事業

1 趣旨
 平成24年7月に、中央教育審議会初等中等教育分科会においてとりまとめられた「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」においては、「(子供が)病院に入院した際は、病院に併設されている学校、あるいは、病院内に設けられた学校や学級に転校等をしなければ正式には、当該学校等の教育を受けることができない。退院すると以前在籍していた学校に戻ること、近年は入院が短期化していること、退院しても引き続き通院や経過観察等が必要なため、すぐに以前在籍していた学校に通学することができない子供が増えていること等を踏まえ、特別支援学校、病院内に設置された学級と在籍していた学校における転学手続の運用等を一層柔軟にしていくことを検討するべきである。」との指摘がなされており、長期にわたり又は継続的に入院する児童生徒等(以下「入院児童生徒等」という。)への教育的ニーズの把握及び支援を行う体制を構築することは喫緊の課題となっている。
また、平成26年5月の児童福祉法の一部改正に伴う参議院附帯決議では「児童福祉法の基本理念である児童の健全育成を着実に実施するため、長期入院児童等に対する学習支援を含めた小児慢性特定疾病児童等の平等な教育機会の確保等に係る措置を早急かつ確実に講じること。」と規定された。
 附帯決議を受けて実施した「長期入院児童生徒に対する教育支援に関する実態調査」の結果、長期にわたり入院した児童生徒の約4割には、様々な理由により在籍校による学習指導が行われていないことが明らかになった。
これらの状況を踏まえ、入院児童生徒等に対する、在籍校、病院、特別支援学校、教育委員会等の関係機関が連携して切れ目のない教育を行う体制の構築方法についての研究を実施する。

 

2 事業の内容
 (1)本事業の委託を受けようとする団体は、下記の1及び2の研究を実施する。実施に当たっては「推進地域」を指定し、1、2の取組項目よりそれぞれ一つ以上、計二つ以上を選択しつつ、地域や学校の実態等を踏まえながら、具体的な研究事項を設定すること。
1、地域や学校の実態等を踏まえた体制整備・連携方法に関する研究
 (取組項目)
 (ア)在籍校から病院に入院した児童生徒に対して、当該病院の所在する教育委員会等と在籍校を所管する教育委員会等の継続した連携方法の構築に関する研究
 (イ)後期中等教育を受ける入院生徒が、退院後に復学又は転学を円滑に行えるよう、関係機関の連携方法構築に関する研究
なお、連携に当たっては、学校側と病院側が日常的に連携・協力を行うための支援を行う学校・病院連携支援員(コーディネーター)を配置することができる。学校・病院連携支援員は、特別支援教育や小児医療、福祉制度にも詳しいメディカルソーシャルワーカーやスクールソーシャルワーカー、又は制度に詳しく研修等を受けた教員等の専門的な知識を有する者が望ましい。
2、入院児童生徒等に対する教育機会の確保に関する研究
 (取組項目)
 (ウ)入院児童生徒等への復学又は転学を見据えた指導内容・評価等に関する研究
 (エ)入院児童生徒等に対するタブレット端末等ICT機器及び通信機器等の有効な活用方法の研究
 (オ)入院児童生徒等への復学又は転学を見据えた交流及び共同学習に関する研究
なお、事業の実施に当たっては、入院中及び自宅療養時の児童生徒等に対し、学習の補充支援員(教員経験者が望ましい。)を配置することができる。
 (2)進捗状況の把握及び指導・助言
 本事業の委託を受けようとする団体は、推進地域の取組状況の把握、成果の検証等を行うため、外部有識者、推進地域の学校の教員、受託団体・設置団体の指導主事等からなる運営協議会を設置し、本事業に取り組む学校及びその設置者に対し、事業執行上の指導・助言を行うこと。

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)