特別支援教育について

発達障害の可能性のある児童生徒に対する早期支援研究事業

1.趣旨

 文部科学省において、平成24年に実施した「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」により、公立の小・中学校の通常の学級においては、学習面又は行動面において著しい困難を示す児童生徒が6.5%(推定値)程度の割合で在籍していることが明らかになっている。
 同時に、これらの児童生徒以外にも、何らかの困難を示していると教員が捉えている児童生徒がいることが示唆されており、学習面又は行動面で著しい困難を示すとされた児童生徒以外にも、困難があり、教育的支援を必要としている児童生徒がいる可能性があるとされている。
 また、低学年では学習面や行動面の問題は見えやすいが、高学年になるにつれて様々な問題が錯綜し見えにくくなる可能性があり、特に、早期からの対応が必要と指摘されている。
 このため、学習面又は行動面で何らかの困難を示すと教員が捉えている児童生徒に対しては、社会生活上の基本的な技能を身に付けるための学習やそれらの児童生徒を含めて全ての児童生徒が理解しやすいよう配慮した授業改善を行うなど、児童生徒がその困難を顕在化させる以前からの支援の観点も含め、発達の段階に応じた適切な支援を進めることが求められている。
 これらを踏まえ、本事業では、学習面や行動面で何らかの困難を示す児童生徒に対する指導方法の改善、早期支援の在り方について研究事業を行う。

2.事業の内容及び実施方法

 委託を受けた団体等は、小学校、中学校、中等教育学校、高等学校の中から研究事業を行う学校(以下「指定校」という。)を指定する。なお、単一の学校を指定することも、複数の学校を指定することも可能である。

(1)事業の内容

 指定を受けた学校においては、以下○1~○3の研究を行う。また、委託を受けた団体は、指定校において○1~○3を行う際に必要となる指導助言等を行う。

○1 学習面や行動面で何らかの困難を示す児童生徒を含むすべての児童生徒が理解しやすいよう配慮した授業等、指導方法の改善(一斉指導における指導方法の改善)
【取組例】

  • 学習内容をわかりやすく整理し提示する等の授業の構造化の工夫
  • 掲示物の整理整頓・精選、余分なものを覆うカーテンの設置、ICT等の活用による視覚的に整理された情報提示の工夫
  • 同じ授業の中で、補充的な学習や発展的な学習等の難易度が違う課題を用意し、児童生徒一人一人が課題を選択できる学習活動を取り入れた指導の工夫(ティームティーチングの活用)
  • グループ別指導、習熟度別指導等の学習形態の導入

○2 放課後補充指導等の学習面での配慮や視覚的・聴覚的な刺激の軽減、社会生活上の基本的な技能の習得等の行動面での配慮による指導方法の工夫(一人一人の教育的ニーズに応じた個別指導の工夫)
【取組例】
<学習面での配慮>

  • 教育課程外の時間(朝学習、放課後、長期休業等)を活用し、個々の認知の特性に配慮した各教科・科目の補充指導
  • 学習面において困難のある能力を補うための学習方法(ICレコーダー、デジタルカメラ、パソコン等の使用、口頭試問による評価等)の工夫

<行動面での配慮>

  • 座席配置の工夫やついたての設置等による視覚的・聴覚的な刺激の軽減
  • 校内生活のルール、適切な人間関係を維持するための社会的ルールをわかりやすく指導するなど、対人関係技能、社会生活上の基本的な技能を身に付けるための学習を積極的に取り入れた指導の工夫

○3 適切な実態把握等による早期支援の実施
【取組例】

  • 複数の段階的なアセスメント(学級全体へのアセスメント、特定の児童生徒へのアセスメント等)を活用し、発達障害の可能性のある児童生徒をその発達段階において可能な限り早期に把握するための工夫
  • 授業評価アンケート等の活用による、児童生徒に対する学習活動における支援の評価の実施
  • 教育相談、生活指導、生徒指導等において、上記アセスメント結果等を活用した校内支援体制の充実
  • 発達障害の可能性のある児童生徒に関する児童生徒への理解啓発の工夫
  • 保護者に対し、発達障害の可能性のある児童生徒への支援の方針の説明等による保護者との連携の充実

(2)研究方法

○1 「発達障害の可能性のある児童生徒に対する早期支援研究事業運営協議会」の設置
 委託を受けた団体等は、本事業を実施するに当たって、具体的な計画の策定や運営、連絡調整等を行う学校関係者及び運営についての指導・助言、研究結果の分析等を行う有識者等から構成される「発達障害の可能性のある児童生徒に対する早期支援研究事業運営協議会」を設置する。

○2 指導員(発達障害支援アドバイザー)の配置
 委託を受けた団体は、指定校における教職員と日常的に連携、協力をしながら発達障害の可能性のある児童生徒に対する指導を専門的な観点から行うための指導員(発達障害支援アドバイザー)を指定校等に一人または複数人配置する。なお、退職した専門性の高い特別支援学級教員、通級指導教室担当教員を指導員とすることが教育資源の有効活用という視点からも望ましい。
【取組例】

  • 発達障害の障害特性に配慮した一斉指導における指導方法の改善に係る指導助言
  • 同じ授業の中で児童生徒一人一人が補充的な学習や発展的な学習等の難易度が違う課題に取り組む際の指導の補助(ティームティーチングの実施)
  • 教職員の指示のもとで行う個別指導、グループ別指導、習熟度別指導、教育課程の時間外を活用した補充指導等
  • 専門的な観点からのアセスメントの実施及びアセスメント結果をもとにした指導方法改善のための指導助言

○3 指定校における校内体制の整備
 指定校は、校内委員会等の機能を充実させ、指導員(発達障害支援アドバイザー)との十分な連携を図るための校内体制を整備する。

○4 関係機関との連携
 指定校は、特別支援学校等の教育機関や児童発達支援センター等の福祉関係部局・機関等、厚生労働省の実施する発達障害関連事業等と可能な限り連携を図る。特に、委託を受けた教育委員会以外の団体においては、本事業の実施に当たっては、「発達障害の可能性のある児童生徒に対する早期支援研究事業運営協議会」構成員に教育委員会を入れるなど、近隣の教育委員会とも十分な連携を図る。 

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)

-- 登録:平成26年09月 --