特別支援教育について

国立大学法人愛媛大学成果報告書概要

1.テーマ
教員のエンパワーメントが発達障害児を地域の宝に変える:教育現場、教育委員会、医療機関と協働した学際融合的育成プログラムの構築
 
2.問題意識・提案理由
インクルーシブ教育システム構築に向けて、発達障害に関わる教職員の養成は、理解啓発のファーストステージから、現実的諸問題に対応できる問題解決能力の向上を目指すセカンドステージに移行しつつあると考えた。特に、合理的配慮を提供するために、
(1)教員個人に閉じた知識・経験ではなく、他者の知識・経験、全国的な取り組みについて情報収集する力、
(2)個別指導等において教材・教具として教員がICTを活用する力、
(3)保健医療福祉領域と連携をとりながら児童生徒の健康問題(てんかん、アレルギー、医療的ケア等)に対応する力
を高めることが必要と考え、本テーマを提案するに至った。
 
3.目的
大学の教員養成段階の学部生、及び大学院教育学研究課に派遣される現職教員に対して、特別支援教育の実践に必要な
(1)個に閉じた知識・経験ではなく全国的取り組みについて情報収集する力(情報収集力)、
(2)個別指導において教材・教具としてICTを活用する力(ICT活用力)、
(3)保健医療福祉領域と連携をとりながら健康問題に対応する力(健康問題対応力)
を養成するプログラムを実施し、短期間に専門的・実践的な知識・技能を有する人材を養成する。
 
4.主な実施内容
愛媛大学では、発達障害に関わる教職員の専門性を向上させ、適切な合理的配慮を提供できる教職員を養成するために、
(1)情報収集力、
(2)ICT活用力、
(3)健康問題対応力、
を高めることを目的とし、
(1)教員養成段階におけるプログラム開発、
(2)中核的な教職員に対する研修プログラムの開発を行った。
(1)教員養成段階におけるプログラム開発
特別支援学校教員養成課程における既存の科目(重複・LD等の心理、重複・LD等の教育課程及び指導法、代替コミュニケーション論等)に加え、「発達障害児の教育実践論」と「発達障害児の健康教育」を新設・実施した。
(2)中核的な教職員に対する研修プログラムの開発
大学院「特別支援教育コーディネーター専修」において、研修プログラム(アセスメントの方法と計画、言語・コミュニケーションの指導、発達障害児の医療、特別支援教育実施指導法研究(週1回の現場実習)等)を実施するとともに、新設科目「発達障害児の健康教育」を開設した。
(3)成果普及
育成プログラム、及び成果普及のための取り組みとして「TREASuREカンファレンス」を実施した(後援:愛媛県教育員会、松山市教育委員会)。当該取り組みの動画・配付資料等を、デジタル端末を用いたデジタル研修テキストとして公開し、次年度以降の「デジタル研修テキスト(特に反転授業の教材)」として活用する。
 
5.主な成果と課題
(1)教員養成段階におけるプログラム開発
平成25年度は、特別支援学校教員養成課程を中心にプログラム開発を行った。特別支援学校教員養成課程における既存の科目に加え、本事業においては「発達障害児の教育実践論」と「発達障害児の健康教育」を新設した(各授業の受講者数は約30名)。
更に、本事業に関連して、愛媛大学では教員免許の取得を目指す全学生に「特別支援教育概論」と「介護等体験事前・事後指導」を必修科目として課している(両科目とも履修者は約250人)。
平成26年度以降は、教員免許取得を目指す全学生対象とした育成プログラム案として発展させる。
(2)中核的な教職員に対する研修プログラムの開発
「特別支援教育コーディネーター専修」は、愛媛県・広島県・高知県教育委員会と連携し、特別支援学校教員免許状を取得していない現職教員が在学中に、一種及び専修免許状を取得するシステムとなっており、平成25年度には9名が修了した。
また、特別支援教育士(S.E.N.S)と単位互換があり、修了した現職教員等の多くが資格を取得している。
(3)成果普及
「TREASuREカンファレンス」を実施し、アンケートを回収できた参加者の9割以上から肯定的回答を得た。
また、当該取り組みの一部は、「デジタル研修テキスト」として平成26年度以降、iTunesUにてインターネット配信するとともに、反転授業の教材としても活用する予定である。
カンファレンスの当日に参加が困難な教職員も多いことから、現場で勤務しながらインターネット等を通して研修できるシステムの構築を目指す。

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

-- 登録:平成26年10月 --