特別支援教育について

国立大学法人広島大学成果報告書概要

1.テーマ
発達障害のある児童生徒に応じた授業や学級経営ができる教員の養成及び専門家等との連携・協力により、教育活動の改善ができるファシリテーター型中堅教員の養成。

 

2.問題意識・提案理由
インクルーシブ教育システム構築のため、教員養成段階では、発達障害のある児童生徒の実態、学校・学級の状況に応じ、授業や学級経営の改善を具体化できる教員の養成が求められている。
現職教員対象の研修では、児童生徒の状況、学校・地域の状況に応じて、学校外の専門家等との連携・協力により、授業や学級経営等の教育活動の改善を具体化できる管理職の養成やファシリテーター型中堅教員の養成が求められている。
 
3.目的
(1)大学の教員養成段階における発達障害に関する専門的・実践的知識を習得するためのプログラムの開発及び実施と効果の検証。
(2)中核的な教職員(特別支援学級担当教員、通級による指導担当教員、特別支援教育コーディネーター、養護教諭、特別支援教育支援員、スクールカウンセラー等)に対する発達障害に関する高度で専門的な知識を習得するための研修プログラムの開発及び実施と効果の検証。

 

4.主な実施内容
(1)大学の教員養成段階における発達障害に関する専門的・実践的知識を習得するためのプログラムの開発及び実施

(ア) 授業科目(「LD等教育総論」(3セメスター:履修者115名)
(イ) 授業科目「言語障害教育総論」(5セメスター:履修者33名)
(ウ) 授業科目「特別支援教育」(5セメスター:履修者59名)
(エ) 授業科目「特別支援教育教材開発演習」(3・4セメスター:履修者11名)

(2)中核的な教職員に対する発達障害に関する高度で専門的な知識を習得するための研修プログラムの開発及び実施

(ア)「発達障害のある児童生徒の個別指導プログラムの作成・実施」(2日間:受講者35名、フォローアップ研修1日:受講者27名)
(イ) 米国、韓国及び我が国の研究者を招聘した「日本と海外における発達障害のある児童生徒向け教科書の普及の動向と展望」(シンポジウム)(2日間:受講者のべ250名)
(ウ)「特別支援教育の協働を促進するファシリテーションワークショップ1・2・3」(3日間:受講者のべ92名)
(エ)「発達障害のある児童生徒の在籍する学級の集団づくり」(1日:受講者43名)
(オ)「発達障害のある児童生徒のICT活用による支援に関するワークショップ」(1日:受講者54名)

 

5.主な成果と課題
(1)大学の教員養成段階における発達障害に関する専門的・実践的知識を習得するためのプログラムの開発及び実施

(ア) 授業科目「LD等教育総論」
成果:PDCAサイクルによるアクティブラーニングを促すことができた。
課題:TAの増員、課外学習時間の一部の授業時間認定などの工夫が必要。
(イ) 授業科目「特別支援教育教材開発演習」
成果:教材教具の作成を通し、児童生徒の実態把握と教材教具の使い方の示範の重要性などの実践的な知見を得ることができた。
課題:通常学級での教材教具づくりに必要な小学校との打合せ、教材教具の作成時間の確保が必要。

(2)中核的な教職員に対する発達障害に関する高度で専門的な知識を習得するための研修プログラムの開発及び実施

(ア) 「発達障害のある児童生徒の個別指導プログラムの作成・実施」
成果:児童生徒や保護者のニーズに応じた教材や手立ての評価・改善を行い、個別指導の実践力を高めることができた。
課題:発達段階や診断名の異なる児童生徒を想定した研修の実施が必要。
(イ) 「日本と海外における発達障害のある児童生徒向け教科書の普及の動向と展望」(シンポジウム)
成果:米国では教材の工夫やICTの活用などの合理的配慮に力を入れており、韓国では、発達障害児対象の特別支援学級用教科書や電子教科書、e-Book、e-learning仕様の教科書も開発・活用されていることが示された。
課題:デジタル教科書使用の推進や発達障害のある児童生徒に対応した教科書作成には、特別支援教育分野と教科教育分野の専門家との共同研究が必要。
(ウ) 「特別支援教育の協働を促進するファシリテーションワークショップ1・2・3」
成果:合意形成や構造化、コミュニケーションのスキルが向上した。
課題:受講者の知識・技能に応じて研修内容をコース化する必要性。
(エ) 「発達障害のある児童生徒の在籍する学級の集団づくり」
成果:望ましい人間関係を築くための学級経営のアイデアを学ぶことができた。
課題:研修内容を確実に実践に活かせる研修会開催時期の検討が必要。
(オ) 「発達障害のある児童生徒のICT活用による支援に関するワークショップ」
成果:DO-IT Japanで活用されているタブレットPCのアプリを操作しながら理解を深めることができた。
課題:受講生のリテラシーに応じた学習内容の設定が必要。

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

-- 登録:平成26年10月 --