特別支援教育について

国立大学法人兵庫教育大学成果報告書概要

1.テーマ
「大学院と学部が協働する研修プログラム開発」~ニーズ調査をふまえた学びのデザイン構築とエッセンシャル版作成~

 

2.問題意識・提案理由
通常学級での発達障害への対応や配慮の重要性が高まっている。
行動問題などへの喫緊の対応がある一方で、「特別でない特別支援教育」と言われるように、本来の学校教育や授業・学級経営の力量を高めることは、対象となる子どもへの支援・配慮へつながる。
大学院のミドルリーダー育成と学部養成(若手教員研修)を一体として考え、研修システム化することが重要である。
ミドルリーダーとしての研修を受けた教師が、学部段階の教育の一端を担うことで、自らの学びを伸張することが期待される。

 

3.目的
本学大学院特別支援教育コーディネーターコースの取り組みを活かしながら、新たに学部養成段階の教育を見据えたカリキュラムづくりを目指す。
これにあたって、コースの現職教員大学院生が、学部授業でファシリテート役を務めるようカリキュラムを組み立てる。
まず、国内外の学校における発達障害支援や研修制度の実態や、学校教員と学校現場のニーズをふまえ、一貫性と協働性のある研修プログラム開発をおこなう。
この成果はエッセンシャル版として、教育委員会が実施可能なものとして還元を図る。

 

4.主な実施内容
○ニーズ調査:
(1)教職キャリアをふまえた教員のニーズ調査を106名を対象に実施し、KJ法を用いて年代ごとに質的にまとめた。
(2)都道府県教育センター等の研修担当指導主事を訪問し、研修の方向性、通常学級における特別支援教育を進めるための人材育成などについてインタビュー調査を実施した。
○学部における取り組み:
課外プログラム「通常学級における特別支援教育」を策定し、2年次学生を対象に参加者の募集をおこなった。
2年次後期のプログラム「通常学級における子どもの教育ニーズ」を実施した。
○大学院における取り組み:
「特別支援教育論」において、プロジェクト型学習に関しての予備的検討を実施した。
また、予定を前倒して、「特別支援教育授業方法論」をワークショップ型授業へ改編して、その評価をおこなった。
平成26年度より、M1前期に「特別支援教育リーダーのための創発的コミュニケーション」「特別支援教育と通常学級の授業づくり・学級経営」を新設するための教務上の手続きをおこなった。
○成果普及:
公開講座「第2回発達障がい支援アドバンスド講座」を開催し、イギリスThe Park School校長による特別講演「学校マネジメントと校内研修システム」、分科会「通常学級における特別支援教育〈子どもの学び合い、教師の学び合い〉」を実施した。委託事業中間報告書2013を作成し、都道府県教育センターなどへ送付した。

 

5.主な成果と課題
○ニーズ調査:
経験年数で見ると、
(1) ~10年:クラスでの授業・学級経営に関する基本的な指導スキルに関することや子ども間の関係づくりに悩んでいること、
(2)11~20年:授業・学級経営の工夫を進化させていく必要性に加えて、教員間でのコミュニケーションや教師の集団づくりに課題が大きいこと、
(3)21~ 年:情報や意識の共有や次世代リーダー育成など学校マネジメントに関する課題意識が大きいこと、を確認できた。
教育センター指導主事等を対象とした調査では、初任者を対象として学校管理職も
関わる授業ビデオによる研修会、生徒指導担当者研修への参画などユニークな取り組みが見られた。
○学部における取り組み:
課外プログラムの参加者は、学生定員160名に対して31名であった。
学部生の参加者を対象におこなった事前・事後アンケートの記述内容については現在分析中。
既設科目の「応用教育実習」「教職実践演習」については、今後、学部の専門部会担当者との打ち合わせが必要である。
○大学院における取り組み:
「特別支援教育授業方法論」の内容を改編して、校内研修会を想定してのプレゼンテーション、担任との相談場面を想定してのコンサルテーションについてワークショップ型学習を導入した。
コンサルテーションでは、その場面を再現するために演劇づくりを導入してグループ発表をしたが、発表後の質疑・応答で演劇表現への理解がより深まることがわかった。
アクティブラーニングへの意欲が高まる傾向にあること、ストレート院生は現職教員院生から「学校の現状」「教師としての姿勢」を学び、一方、現職教員院生はストレート院生から「新鮮で柔軟な発想をすること」を学んでいた。
演劇づくりワークショップを材料にして、今後、エッセンシャル版の試作をおこなっていく。

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

-- 登録:平成26年10月 --