特別支援教育について

国立大学法人京都教育大学成果報告書概要

1.テーマ
教員養成段階及び現職教職員に対しての「発達障害」に関する研修プログラムの開発
 
2.問題意識・提案理由
近年,共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システムの構築が求められている。
すなわち,障害のある子どもが、他の子どもと平等に(教育を受ける権利)を享有・行使することを確保し、その状況に応じて、学校教育を受ける場合に個別に必要な合理的配慮を受ける必要がある。
可能な限り共に学ぶことができるよう配慮する(合理的配慮)を実施するためには、学校に勤務する教職員に対して、発達障害等に関する専門性向上が喫緊の課題となっている。
 
3.目的
教員養成と教育現場の教職員を対象とした2つの側面からのスキルアップを計るための発達障害に関する専門性向上プログラムの開発を行うことは、教職大学院,教育学研究科、特別支援教育特別専攻科、学部の教員養成段階と、教育現場の両面から発達障害に適切に対応できる実践的教育力を育む一貫性のある専門性向上プログラムの構築を目的とした。
 
4.主な実施内容
平成25年度は、学部生対象の取組として授業「特別支援教育」において、特別支援教育に関する基礎的・基本的な理論面を学ぶことを目的とし「特別支援教育テキスト」を履修学生全員に配布した。
また、現場の教職員からの講義を併用し教育現場における発達に関する課題や実際的な知識・技能を高める取組を進めた。特別支援教育に関する授業を履修した学生に対しアンケート調査を実施し「特別支援教育知識・技能評価シート」の作成検討を始めた。
現職の教職員に対しては、「DVD発達障害等に関する専門性向上ガイド」を制作し、京都府・京都市のすべての小学校・中学校・特別支援学校に配布した。
このDVDを作成した目的は、「発達障害について個人で学ぶために活用する」、「特別支援教育の校内研修に活用する」、「特別支援教育支援員、学生ボランティアの研修に活用する」、「保護者等の啓発に活用する」などである。
発達障害の基礎的・基本的理解及び学習の遅れ、不器用さ、不登校や反社会的な行動と発達障害との関連及びアプローチの方法を講義とロールプレイ、アセスメント方法を通して理解する内容となっている。
また、多くの離島をかかえた沖縄県立八重山特別支援学校及び支援圏域の広い北海道稚内養護学校に対し圏域の小学校・中学校数分を送付した。
 
5.主な成果と課題
学部生を対象とした授業「特別支援教育」は、平成24年度に作成した「特別支援教育テキスト」を活用し、加えて教育現場で実践に携わっている教職員からの講義を併用して実施した。
このような授業の実施は、学生アンケートからも、学生に対して特別支援教育への関心を喚起すること、特別支援教育の基礎的・基本的理論面を学ぶこと、教育現場における発達障害の教育に関する課題を把握し、実際的な側面からの知識・技能を学ぶことができることに意義があった。
しかしながら、アンケートの自由記述による回答には、不十分な回答や誤った理解に基づく回答もみられたことから、一面的な知識面の評価ではなく、関わりの経験や知識・技能に関する質的・段階的な評価が可能となるように工夫する必要があった。
「DVD発達障害等に関する専門性向上ガイド」は、京都府、京都市の小学校・中学校・特別支援学校に加え、多くの離島をかかえた沖縄県立八重山特別支援学校及び支援圏域の広い北海道稚内養護学校の圏域の保育所、幼稚園、小学校、中学校、各関係団体分のDVDを送付することとした。DVDの評価は次年度の取組となる。
次年度計画している特別支援教育担当中核教員スキルアッププログラムの開発に向け、京都府、京都市の小学校校長会、中学校校長会と連携し、京都府、京都市内の全小・中学校(約570校)の特別支援教育コーディネーターを対象に特別支援教育の現状と課題に関するアンケートを実施し(317校から回答)、取組の方向性に示唆を得た。

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

-- 登録:平成26年10月 --