特別支援教育について

志貴野高等学校(公立)

都道府県名 富山県
学校名 富山県立志貴野高等学校
学校所在地 富山県高岡市末広町1番7号ウィング・ウィング高岡内
研究期間 平成21~22年度

1 概要

1 研究課題

 特別な支援を必要とする生徒に対する校内の支援体制の整備を図るとともに、特別支援学校、富山大学ほか関係機関とのネットワーク構築を推進する。さらに就労支援や授業工夫等、教育支援の可能性を追求し、高等学校における特別支援教育の在り方を研究する。

2 研究の概要

  1. 個別支援体制の整備
  2. 生徒対象の講演会や教職員対象の研修会実施による発達障害への理解促進
  3. 各教科における授業工夫や事例検討会による個別指導計画の作成など支援の在り方の研究
  4. 学習支援や就労支援における関係機関との連携と地域人材の活用

3 研究成果の概要

1.校内支援体制の構築

 モデル事業の中心となる特別支援推進委員会の構成員を初年度より拡大し、進路指導主事、生徒指導主事を加えるとともに、コーディネーターを昼間部、夜間部の2名体制と増員して、障害を持つ生徒や気になる生徒への効果的な支援計画を作成できる仕組みを構築した。
 2年目に外部専門家も入れた特別支援推進事業運営協議会をあらたに開催し、事業一年目の検証と2年目の方針を確認した。

2.出身中学との連携

 発達障害を持つ生徒や気になる生徒の個別指導計画の早期作成に向けて該当生徒の情報収集が肝要であり、教育相談部・保健部による出身中学校訪問を実施し、中学側の積極的な協力もあり大いに役立った。

3.発達障害を持つ生徒の早期把握と個別指導計画の作成、及び人間関係作り援助プログラムの実施

 新入生において発達障害を持つ生徒や困り感のある生徒を早期に把握し、対応することで、学校生活への適応力を高めることができた。必要に応じて事例検討会やケース会議を開催することにより教職員の問題意識も高まった。

4.発達障害等のある生徒の理解と支援のための研修

 研修会の開催は発達障害に関する知識や理解を深め、生徒や教職員の意識向上につながった。
 教科毎の研修会では、個々の生徒に対する適切な指導について共通理解を図り、互見授業を通してお互いの手法を研修できた。
 HRでのソーシャルスキルエデュケーションプログラムは、回を重ねる毎に積極的に生徒が取り組むようになった。よりよい人間関係作りのコツや人付き合いのコツを学ぶことができた。

5.支援員の活用

 生徒の困り感や実状を踏まえ、授業担当者との協議の上で、小・中学校で授業支援経験のある大学生による授業支援を実施し、個々の生徒に対応した丁寧な学習サポートが実施できた。
 また、教員支援員を情報科、図書室、保健室に配置して、生徒への個別対応や学習支援を行った。

6.地域人材の活用

 富山大学や医師、発達障害者支援センター「ありそ」の指導員から講演や指導をいただき発達障害者への様々な面からの支援の在り方を検討した。

2 詳細報告

1 研究の内容

(1)発達障害のある生徒等に対する指導方針

ア 生徒の実態(把握方法も含めて)
 学校不適応経験者が新入生の3割以上の割合で(平成22年度は新入生118名中47名)入学する。その原因の主なものとして、心身の不調、家庭の事情、学習面の不振、発達障害などがあげられる。そこで、生徒の実態や状態を把握した。

  • 富山県立雄峰高等学校で実施されている「プロフィールカード」による調査を平成21年度から実施した。担任の後、スクールカウンセラー(臨床心理士)がチェックを行い、必要に応じてカウンセリングを行う。(チェックカードの作成)
     入学時に提出する健康管理カード(保健調査票)をもとに、心身面で気になる生徒に関して、入学時に養護教諭、スクールカウンセラーによる保護者面談を実施した。
  • 平成22年度は、教育相談部、保健部が、新入生全員の面談を実施した。入学時までの状況・様子、LD傾向、ADHD傾向の有無、困り感などを簡単に聞き取った。(聞き取りカードの作成)
  • 教育相談部・保健部により新入生徒全員の出身中学校訪問(14校84名分)を実施し、中学校時の様子を聞いた。
  • 定期的に特別支援推進委員会を開催し、情報交換を行っている。

イ 指導方針
 学校不適応経験者が半数を占め、すべての生徒に対して基礎基本を重視した個々に応じた指導を目指してきた。発達障害のある生徒も含めて、相互の人格を尊重した良好な人間関係を育み、自己肯定感を覚えるような学校生活を過ごすことも目標の一つとした。発達障害のある生徒にとっても大切な目標であると考える。

  • 基礎的、基本的学習事項の定着と個に応じた適切な支援を探る。
  • 自主的、自律的生活態度の育成と良好な人間関係づくりの手だてを探る。
  • 研究の中心として、特別支援推進委員会が効果的に機能するための手だてを探る。

ウ 成果と課題

(ア)成果

  • 平成22年7月現在、本校全体でLD1名、広汎性発達障害6名の発達障害もつ生徒の在席を把握できた。その他、可能性のある、疑いのある生徒もいる。これらの生徒について、職員会議で情報の共有を図っている。
  • 心身の不調、家庭の問題、学習面の不安、発達障害があるなど、様々な問題を抱えている生徒が多いことがわかった。(発達障害の有無にかかわらず支援が必要な生徒が多い。)
  • 新入生面接を実施したことで、生徒と話しやすい雰囲気ができた。また、出身中学校訪問時の協議に役立った。
  • 出身中学校訪問は、すべての中学校において好意的な対応をいただき、今後も連携を取ることをお願いできた。
  • プロフィールカードをスクールカウンセラーがチェックすることで、スクールカウンセラーとの情報の共有化を図ることができた。また、カウンセリングにつなぐことが容易になった。

(イ)課題

  • 今後も入学式時の保護者面談(希望制)と教育相談部オリエンテーションとをスクールカウンセラーが行う。
  • プロフィールカード、出身中学校訪問、新入生全員との面談の継続と活用法の研究を続ける。
  • 保護者から情報入手する手だてを考える必要がある。
  • 重篤にならないと気づかない生徒もいる。生徒自身の困り感を把握する手だてについて、研究を進めなければならない。
(2)発達障害のある生徒に対する授業やテストにおける評価方法等の工夫

ア 授業の際の配慮事項等
 初年度の授業のユニバーサルデザイン化を目指した各教科での研究会等を通じて共有化し、学んだ方法をもとに単位制の特色を生かした授業選択、他部履修、少人数教育、希望者への個別指導などで対応している。
 各教科で以下の取り組みを行っている。

(ア)国語科

  • 学力に応じてさまざまな難易度のプリントを用意する。
  • LDの生徒に対し、拡大コピーや読み書きしやすく作り直したプリントを用意する。字の大きさやフォント、改行幅、解答やメモ記入欄の書きやすさなどの工夫をする。
  • 生徒の実態に対応した学び直しの内容にする。

(イ)地歴・公民科

  • 地球儀の使用や写真パネル・地図の掲示・DVDなど、視覚に訴える教材を多用し、理解の程度を確認し説明する。
  • 授業内容の精選を図り、歴史の大きな流れを理解させる。
  • 平易な言葉でゆっくり説明する。
  • 見やすいようにプリントを拡大する。
  • 同じ学習内容を、質問形態がちがうプリントで何度も復習し、進みすぎないよう配慮する。
  • 板書内容をまとめたプリントを配布する。
  • 授業中の質問内容なども事前にプリントに記入し、突然指名されて困らないようにする。
  • 授業で配布するプリントの用語にルビをつけ、内容はビジュアル化に努める。
  • 試験前にプリントやノートのチェックをして、一人一人の達成状況を把握し、個別指導を行う。
  • 歴史、倫理用語をピックアップして辞書で調べさせ、学習内容の理解を深める。

(ウ)数学科

  • 書くことを苦手とする生徒に、プリントを作成し、要点をまとめ、問題に取り組みやすくする。プリントが多くなると整理できなる生徒がおり、ファイルを準備する。簡単なプリントだけでは、学力がある生徒にとって満足感が不足する恐れがあり、演習問題等も随時できるように付け足しておく。
  • 基礎計算も覚束ない生徒に、授業の最初に簡単な計算ドリルや解説を行う。計算練習に時間をとりすぎ、授業内容に支障をきたさないようにする。
  • 狭い範囲の授業内容でこまめに評価を行い、達成感を味わいやすいようにする。授業に対する参加意識をもたせる。

(エ)理科

  • DVDや絵・図を多用し、視覚的、感覚的に理解できるように努める。
  • 最初の授業で、四則演算や分数式の復習をする時間を設け、小中学校の内容を復習しながら授業を進める。個別指導で、基本的事項の定着を図る。
  • レポートやノート作成に重点を置き、その中で科学的な見方や論理的な考えを養うよう指導している。
  • 新聞や科学雑誌の記事、身の回りの品物を取り上げ、生活と科学の関わりについて気づかせ、理科についての興味関心を引き出すよう工夫している。
  • 生徒実験や演示実験をできるだけ多く取り入れ、理科に対する興味関心を持ち、具体的なイメージをつかませるようにしている。
  • 実験においては、事前にガスバーナーの使い方や基本的な器具の操作を十分時間をかけて練習し、安全でスムーズに実験が行えるよう配慮している。
  • 重点的項目に絞り、実験や映像を交え、時間をかけて、学習させる。

(オ)英語科

  • プリントの本文中の単語に通し番号をつけ、和訳の箇所を穴埋め式に行い、空所に通し番号の単語の意味を入れることによって、和訳を完成させる。辞書を引く練習をしながら、教科書の本文の意味を整理し、確認する予習プリントを作成した。
  • 板書の工夫として、本日行う授業の流れの目安を、白板の横に掲示する。
  • 教科書の本文を拡大コピー機を使って、掲示用を作成。授業中に掲示し、行間に日本語の意味を書き、見やすいようにした。
  • 英語1において、学習支援員が一人配置された。本校の卒業生ということもあり、同じ目線に立って、授業の補助ができた。板書を写すのが苦手な生徒に対しては、個別に指示してもらうことが出来た。また、難しい日本語の表現を、分かりやすく説明してもらうというメリットもあった。
  • LDなどの発達障害では、「聞くこと」「話すこと」「読むこと」「書くこと」「計算すること」「推論すること」のうち、一つ以上が極端に苦手とされている。英語では、4つの技能(speaking,writing,reading,listening)を総合的に運用できることを目指す。個々の生徒が、どの部分が弱くて、どの部分を伸ばすか、視覚支援と聴覚支援を区別した教材を工夫する。

(カ)保健体育
 a 保健

  • プリントや板書の他、DVDや補足資料など、視覚的にとらえやすい教材を利用し、興味関心を持ち、理解しやすくしている。
  • 新型インフルエンザや口蹄疫の流行などニュース等で身近に起こった出来事を取り入れる。
  • 理解できるようにゆっくり説明し、理解できたか質問等をして確認している。
  • プリントの文字を大きめにし、ルビをつける。

 b 体育

  • 授業での約束事を学期最初の授業で確認する(約束事を張り出し、1つずつ読み説明する)。
  • 生徒の体調に合わせ、ランニングの周回を変更したり、課題を与えたり、生徒に無理がないようにしている。
  • 新しい単元に入る際、ホワイトボードや実際にコートなどを利用し、ルールや練習の仕方を理解できるようにゆっくり丁寧に繰り替えし説明している(小中学時代、不登校の生徒も多いためルールや打ち方を全く分からない生徒がいるため)。
  • 人前で声をかけられることを嫌がる生徒に、さりげなく近づきアドバイスし、注意している。授業の終わりや休み時間に話をしている。
  • 重点項目や身近な出来事に絞り、DVDや補足資料などを交えながら、ゆっくりとしたペースで学習させる。
  • グルーピングを工夫し、授業に取り組みやすい環境を設定する。
  • 生涯スポーツを目指す中で、一種目でもやろうと思える心と体を育てる。

(キ)芸術
 a 音楽

  • ギター、キーボードの指導では、フレットや鍵盤に色別の音名シールを貼り、取り組みやすくした。音名シールがあることで苦手意識が軽減され、積極的に取り組んでいた。また、全体指導の際も音名シールがあることで指示が行き渡りやすかった。
  • 箏の指導では楽譜を目で追いながら弦を弾くことや、手の形や力の調整が難しい生徒がいる。ペアワークにすることで、演奏している場所をペアの人が指さしすることで見失いにくくなった。手の使い方や力の調整は個別に実演しながら指導を行った。教師やペアの人の演奏を見ることで改善された生徒も多かったが、手の使い方や力の調整が難しい生徒もいる。

 b 美術

  • 自分の用具を準備してこない生徒が多いので2週前ぐらいから繰り返し準備してくるよう伝えた。予備を準備したが、対応しきれないことも多く、別メニューで対応している。
  • 集中できる時間がきわめて短いので、頃合いを見て、進んでいる生徒の作品を見せ、講評を行った。また、関連する古今東西の作品も話題にして、飽きさせないようにしている。
  • 制作スピードに個人差(技術・意欲差)がある。自分の作品を完成することを目標とし、丁寧に取り組むよう指導している。
  • 授業で次のことを約束している。

 ○学校を休まず、授業に出席する

 ○携帯電話は切る

 ○授業中は、漫然と制作せず、本時の制作目標を立てる

 ○毎時、次回の授業内容を確認する

 ○共有の道具等は大切に使う

 c 書道

  • 教科書の文字サイズで読み取れない、難解な語句はほとんど理解できないLDの生徒に対して、補助拡大資料を作成。難解な語句については大きくわかりやすい板書を心掛け、丁寧に説明する。授業の進度は遅くなるが、「ゆっくりペース」が他の生徒にも好評で授業に取り組む雰囲気がよくなった。
  • 書く姿勢の悪さ、ペンや筆の変な持ち方、でたらめな書き順など基本的なことができない、基礎基本の定着がみられない生徒に、どうしたら確かで美しい文字を書けるのか?何が正しい姿勢か?用具用材はどう用いればよいか?正しい書き順がなぜ大切か?の問いかけをもとに、模範や参考例を見て、自ら納得して実践できるようにした。
  • 課題に対する指示が徹底しない、好き気ままな作品制作をする生徒に対して、特に臨書作品制作における共通課題については実際に範書し、順序立てて再度説明することで指示内容の理解につながるよう努めた。それでも、好き気ままに制作する場合は個別指導を通して指示内容の1つだけでも取り組めるようアドバイスした。
  • 意欲や集中力が持続せず、半紙1枚書き終えておしまいといった生徒には興味関心がもてるようにビデオ鑑賞をしたり、作品批評会をしたり、公募展への出品を薦めたりした。

 (ク)情報科

  • 学習支援用PCソフトの利用「特打!」
     キーボード操作の能力にかなりの差がある。アルファベットが分からない、ローマ字がわからない、不器用などが本校の生徒に見られる特徴である。これらを克服するために、各自がキーボード演習用のソフトウェアを利用することによって学習を進める。4時間程度練習を行い、その後、毎時間の開始前5〜10分程度練習を行う。各自のペースで学習でき、不得意な生徒が何とか実習できる程度の入力ができるばかりでなく、キーボード操作が得意な生徒にとってもより高速に正確な入力ができるようになった。
  • WEB学習教材を利用して各自のペースで学習
     著作権等の学習については「社団法人著作権情報センター」のWEBの教材を利用し、各自のペースで学習を進めた。進度をゆっくりとり、理解の早い生徒はWEBの中の関連情報を見るなどしてより学習を進め、理解の遅い生徒はWEB問題を解答させ、上級レベルまで合格させた。WEBを見終わった生徒は、上記のキーボード演習を行った。
  • 実習(課題制作)中心に、最初に過去の完成した作品を見せ、各自で全体のイメージをつかんで学習に入る。実習を中心に学習を進め、できるだけゆっくりとした進度で行い、ある程度の課題の完成度を見る。また、能力の高い生徒についてはより高い完成度を目指させる。
     評価はレポート、スライド作成、発表などに細分して評価し、特定の作業が苦手な場合でも、ある程度の評価ができるよう配慮した。
  • 教員支援員の協力(必要な生徒にマンツーマン指導)
     教員支援員により学習をすすめた。スキルが不足している生徒については、生徒の席まで移動してポイントを指導し、理解力の不足している生徒は支援員を隣に置き、マンツーマンで学習を進めた。生徒のつまずきにリアルタイムに対処して学習を進め、有効であった。特に自発的に学習しようとしない生徒にはパソコンなどのソフトによる学習よりも断然有効である。しかし、支援の必要な生徒が1人であればうまく運用できるが、複数以上いた場合には多数の支援員が必要となる。また、支援を受けている生徒は、以前にも増して自ら学ぼうとせず支援員の指示を待つようになっている点が気になる。

 (ケ)家庭科

  • できる限り、一時間の学習課題は精選し、絞る。
  • 課題に対し、各自が自分で取り組み、記入していく形式の主体的学習プリントを工夫している。
  • 実習での手順は矢印(→)を使って流れ図で示している。
  • 作業内容を示すときは、言葉や文字だけでなく、手本や写真、図を取り入れている。内容を視覚化、簡略化することで、文として理解することができなくても、作業内容が理解できるよう工夫している。
  • 作業の進行度、到達度を確認してから、次の作業を進める。
  • 一斉指導で到達、習得できなかった場合は個別指導を行う。

イ テストにおける配慮事項等
 特別な配慮はしていないが、配慮が必要な場合は推進委員会で検討し、実施することにしている。

ウ 評価における配慮事項等
 特別な配慮はしていないが、評価は定期考査を中心に出席率、課題のこなし方、授業態度等、総合的に行っている。

エ 成果と課題

(ア)成果

  • 各教科の創意工夫をもとにした授業の実践は、指定校となった平成21年度以降、生徒アンケート結果(下表)にも表れ、発達障害を持つ生徒のみならず、様々な要支援生徒に、学習意欲を高める効果が上がっている。

 学習に関する生徒アンケート(平成22年12月実施)(単位%)
 A:そう思う B:やや思う C:やや思わない D:そう思わない

内容 年度 A B C D
あなたは授業にまじめに取り組んでいる 22 35 44 17 4
21 32 49 16 3
20 27 49 19 5
あなたの学力は向上している 22 15 37 32 16
21 11 35 37 16
20 9 34 33 24
先生の授業の教え方に満足している 22 30 48 15 7
21 27 53 19 1
20 16 59 19 6

(イ)課題

  • 授業の中で、個々の生徒の困り感を的確にとらえ、授業の組み立てやわかる授業への工夫が必要である。
  • 学力差のある生徒に、個々の力に応じた到達目標を持たせることが大切である。
  • 特別支援にこだわらず、日頃の授業においても、それぞれやってみて良かった方法・悪かった方法の具体例を持ち寄って話し合うことは有益である。
(3)発達障害のある生徒に対する就労支援

ア 支援の方策と内容

  • 発達障害のある生徒が就職しようとするとき、どのような支援方法があるか情報収集した。
  • 性格検査(SG式総合生徒理解調査)や職業適性検査(SG式一般職業適性検査)を実施した。
  • 障がい者相談支援センター「かたかご」、高岡障害者就業・生活支援センター、富山障害者職業センター等で、就労支援の実践例を学んだ。
  • 進路指導部の教員が障害者合同就職面接会に参加し、実際の就労活動の現場を体験し、実態を把握した。

イ 成果と課題

  • 実施した性格検査や職業適性検査は、支援を必要とする生徒への支援には直接結びつかなかったが、進路意識の向上に役立った。
  • 具体的にどのような支援ができるかは、ケースバイケースであり、一人ひとりの状況を見極め、対応することの必要性を理解した。
  • 関係機関とのつながりをもったことは、今後の就労支援を考えると成果である。
  • 先進校の取り組みを参考に、本校の現状を検討協議し、就労支援を進めるためには、本人・保護者・周囲の生徒・地域企業・ハローワーク・障害者支援センタ ー、教員の十全な理解と協力が必要なことを確認した。
(4)全ての生徒に対する理解推進等の指導の在り方

ア 指導の工夫と取り組み
 自分自身の考えや行動を振り返り、より多くの人と互いに気持ちや考えを通わせることができる方法を学ぶ機会を設定した。

(ア)平成21年度

  • 5月15日 昼間部1年次生保健統一HR「人間関係について考える」
  • 10月31日 文化祭ステージ発表 生徒保健委員会プレゼンテーション
    「人間関係お悩み相談室 〜人間関係について考える〜」
  • 7月〜1月(計11回) 夜間部1年次生 ソーシャルエデュケーション
    プログラム
    講師 富山県心の健康センター心理職
    受講者 夜間部生徒11名(一年次生)
     生徒のソーシャルスキル,自尊心,自己効力感,感情調整能力,社会適応力の向上と、そのためのソーシャル・エデュケーションプログラムの開発とその効果の研究を目的として、発達障害を有する生徒を含む夜間部1年生11名に対して、全10回行う。
     「SST」とは何かから始め、自分の良いところを探し、会話練習や嫌なことに対する対抗スキルを学び、相手を大切にするスキルを学んだ。

(イ)平成22年度

  • 5月21日 昼間部1年次生保健統一HR「人間関係について考える」
  • 11月6日 文化祭ステージ発表 生徒保健委員会プレゼンテーション
    「人間関係お悩み相談室 〜人間関係について考える パート2〜」
  • 11月〜1月(計8回) 昼間部1、2年次生 ソーシャルエデュケーションプログラム

(ウ)この他に下記の講演会を実施した。(8回)
 a 平成21年度

  • 5月20日(昼間部)、7月10日(夜間部)
    「友人づきあいやバイトで疲れないコツ、リラックスのコツ」
    講師 本校スクールカウンセラー
    内容 人づきあいやアルバイト先でうまくコミュニケ−ションをとるコツ及びリラクゼーション法と勉強に集中するコツを教わった。
  • 9月7日(昼間部)、1月12日(夜間部)
    「みんな違って、みんないい−特別なやり方が必要な脳をもった人の話−」
    講師 富山大学人間発達科学部 准教授
    内容 疑似体験を通して発達障害について学んだ。自分の得意なことで周りの人を手助けする気持ちが育った。
  • 9月15日(夜間部)
    「親と子のきずな −母親・父親予備軍の皆さんに伝えたいこと−」
    講師 高岡市医師会看護専門学校教務課長
    内容 助産の仕事と看護師育成の経験から得た次世代の若者に伝えたい命の大切さ、素晴らしさについての講話
  • 3月 8日(昼間部)
    「役に立つ心理学のマメ知識 −ストレスの時代を生きる−」
    講師 富山大学人文学部准教授
    内容 発達の理論から「『今』を知る」と「ストレスの仕組みと攻略法」の2点について学んだ。

 b 平成22年度

  • 6月10日(昼間部)、7月6日(夜間部)
     「みんな違って、みんないい−特別なやり方が必要な脳をもった人の話− パート2」
     講師 富山大学人間発達科学部准教授
  • 12月 8日(夜間部)
    「心理検査(エコグラム)を通して自己を知る」
    講師 本校スクールカウンセラー
    内容 エコグラムの実施と結果についての説明。
  • 1月11日(昼間部)
    「DVは身近な問題」
    講師 高岡市男女平等推進センター相談員
    内容 デートDV(若い恋人間にある暴力行為)について学ぶ。

イ 成果と課題
(ア)保健の統一ホームルームでは、人間関係について考えるきっかけとなり、相手の気持ちを尊重することの大切さに気づいた。
(イ)ソーシャルスキルエデュケーションプログラムでは、回を重ねる毎に、積極的に取り組むようになり、発言も多くなった。また、授業やホームルーム活動に意欲的に取り組む生徒が増えた。
(ウ)よりよい人間関係づくりのコツや人づきあいのコツを学び、相手の気持ちを尊重することの大切さに気づいたことは良かった。あわせて、ストレス対処法を学んだのは、心の健康づくりに役だった。
(エ)発達障害について学ぶことで、生徒は発達障害への理解をもつことができた。
 また、手助けを必要とする人に、自分にできることをしてあげようとの気持ちをもつことができた。

(5)教職員や保護者の研修等

ア 研修会開催の回数・時期・研修内容等
○平成21年度

(ア)4月15日 「プロフィールカード活用研修会」
 講師 スクールカウンセラー
 内容 本年度より実施したプロフィールカードの活用ガイド。

(イ)7月21日「発達障害者支援センター「ありそ」の活動について」
 講師 発達障害者支援センター「ありそ」センター長
 内容 就労支援を行っている「ありそ」の活動を学び、発達障害のある人の就労支援について理解を深める。

(ウ)7月22日 「発達障害のある生徒への支援について考える」
 講師 富山大学人間発達科学部 准教授
 内容 発達障害の概略を学び、実践的な支援のあり方について理解を深める。

(エ)2月 8日 「発達−模擬事例を通した研究討議−」
 講師臨床心理士
 内容 発達障害をもつ生徒が入学してきた場合どのような支援ができるか、模擬事例を通して研究する。

(オ)2月24日 「これからの特別支援教育−知的遅れのない発達障害の理解と支援−」
 講師 東京学芸大学名誉教授
 内容 特別支援教育の歴史的背景、発達障害は個性、基礎的具体的支援のポイント。

○平成22年度

(ア)7月22日 「SSE(ソーシャルエデュケーション)プログラムの活用」
 講師 富山県心の健康センター心理職
 (富山大学人文学部准教授喜田祐子先生と本校スクールカウンセラー山藤奈穂子先生がサポート)
 内容 21年度に実施したソーシャルエデュケーションプログラムについての知識や理解を深め、より効果的に活用できるようにする。

(イ)7月28日 「心の病気などを抱える生徒への支援について考える−事例を通した研究討議−」
 講師 富山大学人文学部准教授
 内容 心身の不調を抱える生徒への支援を考える。マッピング法(略式)を用いて、生徒の支援から悩みを理解し、教師の視点から支援策を考える。

(ウ)8月24日 「発達障害のある生徒への支援について考える−事例を通した研究討議−」
 講師 富山大学人間発達科学部 准教授

(エ)11月30日 富山県定時制通信制高等学校教育研究発表大会及び特別支援教育モデル事業指定校報告会での講演
 会場 富山県民劇場「オルビス」
 演題 「発達障害の指導と理解」
 講師
 大阪教育大学名誉教授、日本LD学会副理事長
 特別支援教育士資格認定協会理事長
 内容 特別支援教育の基本的な考え、自立につながる学力支援の必要性、発達障害の特徴と学び方を学ぶことの大切さ。
 講評 富山県教育委員会県立学校課
 主幹

  1. 支援体制の整備については、校内委員と外部の有識者からなる特別支援推進事業運営協議会と校内委員にからなる特別支援推進委員会が設置され、有識者による助言を踏まえ、教員間の情報交換や研究が行われやすいように工夫されている。こうした体制が教員の障害に対する理解、教員への支援に有効に機能しているという点で参考になった。
  2. 研修等による理解促進については、教員対象だけでなく、生徒に対する研修、保護者に対する研修など、研修会が精力的に企画、実施されている。特に、生徒対象の研修会は、一般の生徒が発達障害のある生徒に対する接し方を学ぶという点で参考になった。
  3. 支援のあり方の研究については、SSEやソーシャルスキルトレーニング、教科研修会、事例検討会、ケース会議など多岐にわたる研修が目的に合わせて適正な規模で実施されている。多面的な研究や情報の共有が効果的に行われている点で参考になった。

○教科研修会

(ア)平成21年度

  • 国語
     富山県立となみ野高校の藤岡陽美教諭を講師に招き、発達障害の事例について紹介してもらった。授業工夫だけでなく、定時制における支援の在り方について研修した。
  • 数学
     生徒の実状の確認を行った。個々の生徒の困り感を踏まえた授業工夫例について意見交換し、「わかる授業」はいかにするべきかについて研修した。
  • 英語
     城西国際大学福祉総合学部の庄司妃佐教授を講師に招き、軽度発達障害ほかについてのレクチャーを受け、他校の教諭も参加しての発達障害を持つ生徒に対するアセスメントと授業支援について研修した。
  • 理科
     発達障害の具体例と対処について改めて理解を深め、理科授業における特別支援の在り方について研修した。
  • 地歴公民
     富山県立ふるさと支援学校の朴木基樹教諭を講師に招き、実際の個別支援を事例として発達障害のある生徒への指導について研修した。
  • 保健体育
     富山大学大学院医学薬学研究部准教授の関根道和先生を講師に招き、「睡眠からみた健康づくり」についての研修を実施し、望ましい生活習慣の確立を目指し、生徒個々の理解を深め、生徒の困り感を探る一助とした。
  • 芸術
     モデル事業指定校報告会参加者より、同校での個別支援例を報告してもらい、組織的な支援だけでなく、該当生徒との具体的対応等について研修した。
  • 商業
     本校生が多数進学する富山情報ビジネス専門学校の教員を講師に招き、卒業生の専門学校進学後の適応状況を確認することによって今後の指導に生かすための研修とした。
     多様化する生徒情報を交換しながら、連携していくことが必要であるとの共通認識を得た。

(イ)平成22年度
 21年度に実施した各教科の研修会をふまえた取り組みを各教科実践し、互見授業と相互評価をとおして、本校生徒の実態に応じて実際の授業の中で各教科において授業研究をすすめた。

○ 分掌での教職員研修会

(ア)平成21年10月26日の学校訪問時に、特別支援教育に関するテーマを設定し協議した。

  • 教育相談部関係
     特別支援推進委員会が効果的に機能するための主体的な活動の在り方、また支援の必要な生徒の実態把握の方法、教職員の意識、対応力、指導力等の向上等について、県教委の指導、助言を得た。
  • 生徒指導部関係
     発達障害と診断された生徒や、常識で考えられない行動をとる生徒が増加した。また、どのように指導していけばよいか苦慮している現状について協議した。
     おかしいと思ったらケース会議を開き対応を考え、診察が下れば組織的に対応しなければならないとの助言をいただいた。
  • 進路指導部関係
     当該生徒の就労支援のあり方について協議した。先進校の取り組みを参考に、本校の現状を検討協議し、就労支援を進めるためには、本人・保護者・周囲の生徒・地域企業・ハローワーク・障害者支援センター、教員の理解と協力が必要なことを確認した。

(イ)平成22年度には下記の研修会を実施した。

  • 保健・教育相談部
    1. 平成23年2月3日 ソーシャルスキルエデュケーションの総括研修会
      助言者 富山県心の健康センター
      平成21・22年度の2年間に実施したソーシャルスキルエデュケーションについてのまとめの研修
       来年度からHR時に実施するための課題を明確にし、対応を検討した。
    2. 平成23年3月18日 スクールカウンセラーとの年間総括研修会
       一年間を振り返り、カウンセリングを受けた生徒の状況と今後の対応について、スクールカウンセラーを年次別に分けて実施し、保健・教育相談部員とまとめを行った。
  • 特別活動部
     平成23年2月23日 「ボランティア啓発活動に関わる支援」
     講師 高岡市社会福祉協議会 高岡市ボランティアセンター ボランティアコーデネーター
     本校では、社会的体験を積むことにより、人間としての社会性を高めるために、従来より生徒に対してボランティア活動への参加を呼びかけている。今回の研修では、意欲的にボランティア活動を行うため教員はどのよ うな環境づくりが必要か、そしてまた、どの様なアドバイスが効果的か、具体的な例をあげて細かく助言していただき、啓発活動がより一層重要であることを再確認した。
  • 生徒指導部
     平成23年2月23日
     講演 「特別支援を要する子どもの教育について」 —カウンセリング心理学からの提案—
     講師 上越教育大学大学院准教授
     発達障害のあるなしにかかわらず、その子に何が必要か、どのような指導で課題を達成できるか、その指導は誰が担当できるか、検討の仕方は共通している。問題行動への対応は、「なぜそうするのか」ではなく「その行動によって何がしたいのか」を生徒に問いかけるべきであり、そこから解決の糸口を見つけ、より良い方法を助言することが大切だということを学んだ。

(ウ)先進校(主な取り組み)視察の報告を職員会議に行った。

  • 平成21年度
    1. 平成21年 7月17日 東京都立秋留台高等学校(学び直しの実現)
    2. 平成21年 7月18日 千葉県立姉崎高等学校(徹底した生徒指導ときめ細かな学習指導)
    3. 平成21年 9月28日 京都府立朱雀高等学校(総合学習の時間を利用した学力回復の取り組み)
    4. 平成21年 9月29日 京都市立白河総合支援学校(職業自立を推進するための実践研究)
    5. 平成21年10月 5日 新潟県立出雲崎高等学校(授業等におけるユニバーサルデザイン化への工夫)
    6. 平成21年10月 6日 障がい者就業・生活支援センターこしじ(出雲崎高等学校との連携)
    7. 平成21年11月25日 群馬県立前橋清陵高等学校(「いいところ・できること探し」から支援へ)
    8. 平成21年11月26日 東京都立世田谷泉高等学校(特別支援内容のデータベース化)
    9. 平成21年11月26日 静岡県立浜松大平台高等学校(支援員の活用)
    10. 平成21年11月27日 愛知県立衣台高等学校(事例収集及び、クレペリン検査等の実施)
    11. 平成22年 2月 5日 長野県立望月高等学校(モデル事業指定校報告会)
    12. 平成22年 2月 8日 兵庫県立姫路別所高校(モデル事業指定校報告会)
  • 平成22年度
    [モデル事業指定校報告会]
    1. 平成22年 8月25日 新潟県立出雲崎高等学校
    2. 平成22年12月 3日 山形県立霞城学園高等学校
    3. 平成23年 1月18日 東京都立足立東高等学校
    4. 平成23年 2月18日 長崎県玉成高等学校

(エ)発達障害研修会・講演会の感想(アンケートをとった研修会のみ記載)

  • 平成21年度
期日 研修・講演題目 感想結果(人)
5月20日(昼間部) 「友人関係やバイトで疲れないコツ、リラックスのコツ」 役立つテーマだった
 生徒186/224
7月10日(夜間部) 「友人関係やバイトで疲れないコツ、リラックスのコツ」 役立つテーマだった
 生徒17/26
7月21日
(教員)
「発達障害者支援センター『ありそ』の活動について」 役立つテーマだった
 本校20/20
他校  7/8
7月22日(教員) 「発達障害のある生徒への支援について考える」 役立つテーマだった
 本校22/22
他校 5/5
9月 7日(昼間部) 「みんな違って、みんないい-特別なやり方が必要な脳をもった人の話」 役立てていきたい
 生徒169/190
12月17日
(保護者)
学校保健委員会主催「叱らなくてすむ子育て」 役立つテーマだった
 保護者17/17
1月12日 (夜間部) 「みんな違って、みんないい-特別なやり方が必要な脳をもった人の話-」 役立つテーマだった
 生徒14/21
役立てていきたい
 生徒19/21
保護者1/1
2月 8日(教員) 「発達障害のある生徒への支援について考える-模擬事例を通した研究協議-」 役立つテーマだった
 本校18/18
2月24日(教員) 「これからの特別支援教育-知的遅れのない発達障害の理解と支援」 役立つテーマだった
 本校21/22
他校24/24
3月 8日(昼間部) 「役に立つ心理学のマメ知識-ストレスの時代を生きる-」 役立てていきたい
 生徒121/129
  • 平成22年度
期日 研修・講演題目 感想結果(人)
6月10日
(昼間部)
「みんな違って、みんないい特別なやり方が必要な脳をもった人の話パート2」 役立てていきたい
 生徒 233/253
7月 6日
(夜間部)
「みんな違って、みんないい特別なやり方が必要な脳をもった人の話パート2」 役立てていきたい
 生徒 21/23
7月22日(教員) 「SSE(ソーシャルスキルエデュケーション)
プログラムの活用」
役立てていきたい
 本校教員 28/28

イ 成果と課題

(ア)教科研修会、互見授業により、発達障害に対する知識・理解の深まり、問題意識の共有化、指導法の工夫と共有化が図られた。

(イ)事例検討会では様々な支援のアイデアが発表された。これまでの研修の成果が表れた。

(ウ)個別の指導計画が立てやすくなった。

(エ)今後授業のユニバーサルデザイン化や生徒の視点をふまえた、わかる授業の実践に取り組む。

(オ)本校の来年度以降の中長期ビジョンに、発達段階のバランスが不十分な生徒に対する効果的な支援などの指導法の研究や、発達課題をかかえる生徒の支援に向けた全般的な体制をつくるためのさらなる研究を重点課題に掲げた。

(6)その他の支援に関する工夫

ア スクールカウンセラーに、教職員への支援員を依頼した。これまで不十分だった担任や年次主任との打ち合わせや指導の確認が行えた。

イ 教員支援員を情報科と図書室、保健室においた。生徒への個別対応や学習支援で有効であった。(情報科の教員支援員については、教科研修[情報科]を参照。)
 困り感をもった生徒の多くが自分の居場所として図書室、保健室に来室し、支援員が生徒の話し相手となり、生徒の精神安定に役立った。

ウ 授業支援員導入の取り組み
 授業支援員は、一年目は主として夜間部生徒の英語、国語、数学の授業時に活用した。基礎学力面で大きな差があるため、個別指導時に支援員がつくことで、個々に対応した丁寧な学習サポートが行えた。
 二年目は、支援員の活用を拡大した。支援員は、富山県教育委員会県立学校課特別支援教育係の助言を得て、小学校でのスタディメイトジュニアの経験を持つ富山大学人間発達科学部大学生に依頼した。

(ア)各教科における授業支援の目的

  • 国語1
     プリントを多用しての授業において、集中できない生徒や作業に取りかかれない生徒等への支援。
  • 日本史A、日本史B
     資料(カラーコピー)、学習プリントを配布し、授業の進行を支援。
  • 数学1
     学習障害(LD)を持つ生徒の支援及び学力差の極めて大きい講座における個別支援
  • 生物1
     気に掛かる生徒のサポートなど。
  • 英語
     支援員がユニバーサルデザイン化の研究を補助すること及びアスペルガー症候群と診断された生徒等への個別支援。
  • 美術
     作品作成に時間のかかる生徒の支援。
  • 情報
     生徒の学習支援。

(イ)支援員の感想

  • 支援員A
     国語で、授業の流れに遅れがちな生徒を中心に支援を行った。最も支援を必要とする生徒に支援が集中することが多かったが、スモールステップの説明は有効だった。
     また、直接の支援と言うより、生徒とともに問題解決していく形での授業も経験した。
  • 支援員B
     最初は説明を受けた支援のイメージがわかず、あまり馴染みのない日本史Aということもあり、戸惑いと不安が大きかった。先生からのアドバイスで、徐々に指示に応じた支援に取り組むことができた。明らかな支援が必要な生徒が、いなかったため、授業進行に乗り遅れないような助言等が主な支援であった。授業に支援者として参加できたことに感謝したい。
  • 支援員C
     生徒一人ひとりの数学の能力の違いに驚いた。そのため、必要な支援が一人ひとり異なり、支援の仕方も変えなければならなかった。質問の多い生徒には、繊細な対応の中で、前向きな言葉で励ますことの重要性も感じた。
  • 支援員D
     生物では、なかなか集中できない生徒を見守る事が主で、生徒と一緒に授業を楽しむことで、生徒理解と支援につながったように感じた。
     デッサンでは、集中できない生徒とのコミュニケーションを心掛けたが、反応のない生徒もおり、支援は、生徒の特性の理解でもあることを学んだ。
     生徒の特性や発達段階を踏まえた指導の必要性を強く感じた。
  • 支援員E
     小中学校で、つまずき、足踏みしてしまっている生徒を目の前にし、高校数学の意義と必要性について支援を通して改めて考えさせられた。
     英語については、学ぼうとする姿勢がよく感じられる生徒が多く、生徒と一緒になって有意義な授業にできたのではないか。
     国語では、担当者の明確な指示により、求められた支援がよく認識できた。
  • 支援員F
     英語に関しては一斉授業の中での配慮は難しく、どこまで関わるべきか迷いながら支援する場面も経験した。はっきり診断をもらっているA君については、英語に対する抵抗感と語彙力がかなり低いことで、段階的には有効といわれる指導でも、あまり効果を実感できなかった。授業の目的を柔軟に考え、ますますの授業工夫の必要性を感じた。(あらすじを日本語にし読ませる。単語の意味をより簡単な言葉で伝える。ワークを拡大コピーしたプリントを活用する。等)
     日本史Bでは、発達障害のある生徒への声かけは不要という指示により、どの生徒をどのようにサポートすべきか戸惑った。また、受講生について十分な理解がないままでは、授業中の生徒の様子をサポートが必要と見るべきか、授業参加の意思がないとみるかの判断が難しく、先生の意図をくみ取っての十分な働きができず、申し訳なく思った。授業に支援者として参加できたことに感謝したい。
  • 支援員G
     情報では、旅行計画の作成(ワード入力、パワーポイント作成、発表)において、手が止まっている生徒に対して、具体的な指示と積極的な声かけで流れを作り、時には、ともにプランを考えたり、進み具合を確認しながら、生徒自身の主体的活動に繋げた。
     国語総合の授業では、板書を書き写す際の支援が主であった。集中力や忍耐力が不足している生徒、学習意欲が低い生徒、時間はかかってもしっかりやろうとする生徒等が混在する中で、もう少しやれたのではと言う思いとともに改めて、声かけや支援の難しさを実感した。

 (ウ)授業支援の現状と課題

  1. 平成21年度
    • 国語
       最も支援を必要とする生徒は、取り組む姿勢はよいが、発問の意図等を解できないことが多く、スモールステップでの説明が必要であり、その役割を主に支援員にお願いした。
       そのため、全体に対する支援というより、特定生徒を支援する場面が多くなった。その際本人はもちろん周囲の生徒が違和感を持たない配慮が、それぞれの授業で大切になると思われる。
    • 数学
       具体的支援内容(困っている生徒への声かけやアドバイス、何がわからないか、どう進めればよいか等について根気強く丁寧に説明他)を伝え、特定生徒等の現状も説明した上で実施したが、困り感をはっきりと表せない生徒も多く、話しかけてくる特定の生徒に支援が偏る傾向も見られた。板書時や説明時の支援についてもまだまだ、研究の余地がある。
    • 英語
       生徒の実態を説明し、ぼんやりしている生徒・板書の仕方・辞書のひき方・解答のヒント等のサポートを支援員に依頼した。特定の生徒のみならず、疑問点を遠慮なく尋ねる様子が見られ、特にプリント学習時などで効果的であった。ただ、何が効果的な支援なのかについては、まだ手探り状態が多い。
    • 総括
       今回の授業支援は、ごく一部の授業で実施したに過ぎず、関わった授業担当者も6名にすぎない。それぞれの検証は、今後も教科研修会の中でも協議し、今年度の授業支援にもつなげていきたいと考えている。
  2. 平成22年度
    • 国語総合
       プリント学習が多いため、支援員には、「作業にかからない生徒や、作業が遅れている生徒に一緒についての指導する。」および、「グループ学習で、人数の少ないグループに入って生徒とともに活動する。」等の支援を依頼し、実践した。特に問題となることはなかったが、指導に従わない場合の対応など、受講生徒について十分な共通理解のもと、具体的対応について協議し、確認することが必要と思われる。
    • 日本史A
       今回支援員には、生徒への指示のみを依頼し、配布したプリントへの書き込みができない生徒への指示や、教科書を開いていない生徒への指示、プリントの回収が主な支援であった。支援員自身の主体的な支援をどう考えるか?説明が主の授業でどのような支援を行えばよいか?また、歴史の授業での望ましい支援の在り方については、今後、教科としての検討が必要であると感じた。
    • 日本史B
       日本史Aと同様に、生徒への指示のみを依頼したが、受講生に発達障害の生徒がいたため、留意し、生徒への注意、指導は担当者で行った。ここでも、支援員自身にも戸惑いが伺え、担当者として、支援依頼を的確にすべきだったと反省している。日本史Aと同様に、支援の在り方について検討が必要と感じた。
    • 生物1
       授業内容等を授業前に打合せて、実験では、実習助手と協力して気になる生徒への指示確認や声かけを、座学では、板書を写す作業でのサポートや理解確認等をそれぞれ、行ってもらった。支援が必要な生徒の把握と理解のためには、十分に話し合う時間が必要であり、事前事後の時間が少なかった。また、受講生が多い教室では、支援員が机間巡視するには、それぞれの個別支援を考えると空間が不足し、活動しづらい場面もあった。
    • 英語
       個別学習指導の時間と一斉指導の時間を一つの授業で分けて行ったがアスペルガーの診断を持った生徒は、一斉授業では、ついていく事が困難であった。また、一部ユニバーサルデザインを導入して試行したが、基礎学力をつけるまでには至らなかった。支援員が教室に入ることにより、きめ細かく対応できた良い面の一方で、受容的な雰囲気に便乗して、ざわつく場面もみられた。
       軽度発達障害を専門的に学んでいる支援員だったので、「見立て」もしっかりしており、個々の状態にあわせた対応ができた。また、ユニバーサルデザイン化に向けた教材開発や対応の仕方など、率直な意見を聞くことができ、有益であった。
       支援員の活用に関して、支援員が授業集団に入ることによって、教師と生徒という「関係性」が変わるが、支援員と生徒の「距離感」が大切で、打合せだけではカバーできない臨機応変な難しい判断に迫られる場面もあり、支援員自身の専門性(教員免許取得、心理学専攻等)も必要に思われた。
    • 美術
       生徒の「見方」、「考え方」、「技術」には、相当の差があり、話しかけられることに抵抗を感じる生徒もいる。支援員になじみ、段階的な支援までに時間はかかったが、生徒に近い年齢で親近感が持てたようだ。実際の授業支援は、後期途中からの実施で、もう少し早い段階での実施であれば、より大きな効果が期待できたと考えられる。また、支援員(大学生)にとっても単位認定等、メリットのある支援員制度が築かれることを望む。
    • 情報
       支援員によるパソコン使用が不得手な個別の生徒の課題作成支援を実施することで、授業担当者が、全体を見通せる時間が生まれた。支援員が、特定の生徒にかかりきりになると、他の生徒からみた不公平感につながりかねず、慎重な対応が必要に思われた。
    • 総括
       授業支援2年目は、6教科7講座で、4名の支援員により実施した。今 回は、比較的人数の多い昼間部の講座がほとんどで、実験や演習等の生徒自身が主体的に活動する時間が多い講座も含まれており、一斉授業の中での個別支援の在り方についての具体的な研究を進める上で、貴重な授業支援であった。授業支援の効果は、担当者、支援員それぞれが実感しているが、それに伴う具体的な課題も見えてきた。今後さらに各教科等で、研修を重ね、支援員を活かし、授業を充実させる方策等を検討する必要がある。
  平成21年度 平成22年度
支援員数 4名 4名
時間数(h) 227h 141h
支援教科
(科目名)
国語(現代生活と文芸)
数学(数学1、2)
英語(英語1)
国語(国語総合)
地歴(日本史A・B)
理科(生物1)
英語(英語1)
美術(デッサン)
情報(情報A)

エ 保健室支援員の活用
 困り感をもった生徒の保健室来室件数が多く、養護教諭だけで対応が困難なため、保健室支援員を配置した。
 支援員の配置により、問題を抱えた生徒が同時に複数来室した時、タイミングを逃さず複数で生徒への支援・対応ができた。また、保健室登校傾向の生徒が常在している場合も別室対応を依頼でき、他生徒との個人的内容の相談にも対応できた。
 養護教諭が生徒の相談・指導中に、他の生徒が来室した場合、中断することなく余裕をもって対応できた。
 支援員の勤務時間は週3回の午前中3時間(9〜12時)のため、生徒が多く来室する放課後(12時30分頃)の時間帯とうまく合わなかった。
 メンタル支援の場合は、年度当初から支援を開始した方が、生徒との人間関係が構築しやすく、生徒も安心しスムーズにコミュニケーションがとれたのでないか。
 不安定な生徒が増加してくる5月の連休明けや、夏季休業明けな時期であれば、もっと有効な支援が期待できたなどの課題があげられる。

2 研究の方法

(1)特別支援教育総合推進事業運営協議会の設置

ア 構成
 平成21年度(特別支援推進委員会を研究の中心に据えた。)

NO. 所属・職名
1 教頭
2 教育相談部主任・特別支援コーディネーター
3 保健主事
4 年次主任(4名)
5 夜間部主任
6 教育相談部員(3名)

 平成22年度

No. 所属・職名
1 教頭
2 教育相談部主任・夜間部主任
3 保健主事・特別支援コーディネーター(昼間部)
4 教育相談部・特別支援コーディネーター(夜間部)
5 進路指導主事
6 生徒指導主事
7 年次主任(1~4年次、4名)
8 養護教諭(2名)
9 教育相談部員(2名)
10 保健部員

   は、2年目に追加

イ 運営協議会開催回数・検討内容
 平成21年度は特別支援推進委員会を8回開催した。平成22年度は4回開催している。

ウ 特別支援教育コーディネーターの指名や個別の教育支援計画の策定等具体的な方策ケース会議の開催

ウ 特別支援教育コーディネーターの指名や個別の教育支援計画の策定等具体的な方策ケース会議の開催

 平成21年度に、年次主任、担任、生徒指導主事、特別支援コーディネーター、養護教諭、スクールカウンセラー、担当医、富山県発達障害支援センター「ありそ」発達支援担当員、高岡支援学校特別支援コーディネーターとで発達障害のある生徒の指導、支援についてケース会議を開く。
 また、この会議での協議を受けて、教科担当者会議を開き、個別の指導計画を作成した。

エ 成果と課題

(ア)平成21年度は教育相談部長が特別支援教育コーディネーターを兼ねたが、昼間部、夜間部それぞれに特別支援コーディネーターが必要であるとの反省から、平成22年度からは、特別支援コーディネーターを2名とした。

(イ)個別の教育支援計画に取り組むことも意識して、中学校との連携について検討し、中学校訪問を行うことにした。

(ウ)委員会を軸として、生徒の困り感や、抱える問題点を早く理解し、どんな支援が必要かを協議し、必要に応じてケース会議を開催し、個別の指導計画の作成を行うことで、支援の仕組みが構築できた。

(エ)発達障害に対する基本的な知識理解が進む中で、個別事例の協議を重ねての具体的支援を通して、委員会メンバーだけでなく、教職員全体の問題意識も高まった。

(オ)ケース会議での協議をもとに個別の指導計画を作成した。広い視野と情報の多さが指導計画を作りやすくする。

(カ)より広い視野や見識から、常に特別支援推進委員会に指導・助言する人が必要であると考え、運営協議会を設置し、適確な助言をいただいた。

(2)専門家の活用

ア 構成 特別支援推進事業運営協議会委員

No. 所属・職名
1 富山大学人間発達科学部 准教授
2 発達障害者支援センター「ありそ」センター長
3 富山県立高岡支援学校長
4 富山県教育委員会県立学校課 主任指導主事
5 富山県厚生農業協同組合連合会 高岡病院 小児科部長代理 医師

イ 専門家の活用状況
 特別支援推進事業運営協議会を開き、昨年度の取り組みを報告し、今後の課題などについて協議した。
ウ 成果と課題
 一年目の本校の取り組みを評価していただくとともに、二年目の方針と課題を確認できたことは大きな成果であった。

〈第1回特別支援推進事業運営協議会記録抜粋 平成22年6月14日開催〉

  • 教員: 入学してきた生徒にどのような支援ができるか、教員がどのように研修し、対応するか、授業を中心として、研修によって、生徒の自己肯定感を高められるか、試行錯誤した。
     良かった点は教員が指導力を高めたこと。発達障害とは何か学ぶことができた。しかし、個々への対応が難しいと感じた。ケース会議で個別支援を行ったことが本人にとってよかった
  • 委員:外部とのネットワークが必要。
  • 委員:スクールカウンセラーが必要と言ったが、共通理解がないと、その子は成長しない。事例研究は何回もあった方がよい。高校でも事例研究は大切だ。志貴野高校の対応を評価する。
  • 委員:養護教諭の役割が大事。学校と医療と連携を取る際、医療費の問題が出る。保護者は診察代を支払うのに疑問を持つ。
  • 委員:発達障害という概念だけでなく、学習面、就労面などしっかり押さえている。授業のプリントの工夫、視聴覚的な教材など。授業中で、生徒の居場所のため座席自由など。実践的に取り組む視点は何かという取り組みが大事である。
  • 教員:就労支援は、従来からやってきた。モデル事業によって、発達障害という視点を意識できるようになった。
  • 教員:全体の部分でルールは必要だが、共通理解を持って、生徒を育てていくことが必要だ。
  • 教員:ケース会議を即応してやっていきたい。保護者向けの講演もしたい。ユニバーサルデザイン化を意識して、良いやり方を考えたい。出口支援をしたいという思いはあるが、現実は厳しい。保護者・本人・受け入れ先の理解が難しい。就職・進学の道筋をつくれないかが課題。
  • 教員:心の病気など不登校生徒も多い。これらの生徒にも、事例検討会を行いたい。
  • 教員:研修会などで、個別に対応することに慣れている。学校の中で十分、個別指導をしている。しかし、卒業後、社会に出たとき、「人間として受け入れる社会」になっていない。ソーシャルスキルトレーニングがどの程度できるか。また、学校でできることはどの程度か。
  • 委員:学校にも限界がある。スタッフ、社会の問題。この2年間で整理してもらいたい。学校でできることとできないこと。マッチング。ソーシャルスキルトレーニング。それができなければ、支援員を活用すればよい。そして、これらの事例を積み上げていく必要がある。2年目になると「何が大事か」整理する必要がある。学校の限界が明らかになるだけでもよい。
  • 委員:一年目の全体像をとらえることから、二年目は個に進む段階に来ている。プロフィールカードも全体像をつかめたので、次は一人ひとりのつまずきに、具体的にどう対応するか、一つ一つの事例を積み重ねていく必要がある。
  • 委員:生徒観察の情報の共有が難しい。教員間でも温度差があり難しい。
  • 委員:関係者全員の支援と体制としてどこまで続けていけるか難しい。支援学校では、全員かかわらざるをえない。個人ファイルも使っているが難しい。高岡支援学校をセンター的機能として、一緒にやっていきたい。分からないところは分からないと言ってほしい。これからはマンパワーが必要。小学校ではスタディメイトなど活用している。高校においてもそのような支援員が必要。どんな効果があったかやどんな支援員がよいかなど、整理してもらい、県の方から志貴野高校に後押してもらいたい。志貴野高校次第で支援員の配置も大きく変わってくる。是非、成果をまとめてもらいたい。
  • 委員:関係機関とネットワークを作ってほしい。支援員についても、県の方で予算化したい。支援員を活用して、これだけできるという成果を示してほしい。
(3)関係機関との連携

ア 他の高等学校や技能教育施設、特別支援学校との連携

(ア)高岡支援学校との連携。

  • ケース会議に招き、助言を仰いだ。
  • 公開研修会に参加してもらい、交流を深めた。
  • 教科研修会の講師として招聘し、助言・指導を仰いだ。

(イ)他の定時制通信制の高等学校との連携

  • 富山県立雄峰高等学校から「プロフィールカード」の使用許可を得ている。
     データの比較、活用法の研究等連携をとりながら継続して行いたい。
  • 他の定時制通信制の高等学校でも、心身の不調、家庭の事情、学習面の不振、発達障害があるなどの理由から多くの不適応経験者が入学していると思われる。連携を取りながら、研究を進めていきたい。
  • 本研究発表の報告会を県定通教育研究会とあわせて実施することで、多くの定通高校教員の参加を得た。

(ウ)他の高等学校への普及公開
 公開研修会には、県内の全日制高校や定時制高校、私立高校、支援学校からの参加があり、特別支援教育への関心の高さを感じている。

  • 平成21年7月21日「発達障害者支援センター「ありそ」の活動」
     外部参加 8名 本校職員 44名
  • 平成21年7月22日「発達障害のある生徒への支援について考える」
     外部参加 8名 本校職員 42名
  • 平成22年2月24日「これからの特別支援教育−知的遅れのない発達障害の理解と支援−」
     外部参加 36名 本校職員 31名 保護者 1名

イ 発達障害者支援センターやハローワーク等関係機関との連携
 発達障害者支援センター「ありそ」に、ケース会議や個別相談会の講師を依頼している。また、本校から就労支援研究会に参加するなど連携を強めている。

ウ 地域の教育施設や人材等の活用

(ア) ケース会議に市内の医師を招き、助言を受けた。

(イ) 富山大学人間発達科学部阿部美穂子准教授に、特別支援教育に関する講演を受け、授業についての助言もいただいた。阿部准教授と発達障害者支援センター「ありそ」、同大学准教授水内先生などで開いている「障害者就労支援研究会」に本校から参加した。

(ウ) 富山大学人文学部喜田裕子准教授、山藤奈穂子SCが中心となり、本校でのソーシャルスキルエデュケーションプログラムについて実践、研究している。

(エ) ジョブサポートティーチャーを活用している。

エ 成果と課題
 進路意識の醸成や対人関係能力の育成が特に求められる本校生徒の実態に鑑み、全校生徒の指導に携わるジョブサポートティチャー(JST)が配置されている。JSTが毎年行う全員面接に際し、より、ゆっくり丁寧な面談を心がけ、発達障害支援のあり方を模索した。

3 今後の我が国における発達障害のある生徒の支援の在り方についての提案等

1 発達障害に対する理解と研修

 本県の県立学校の約6割で、発達障害等の特別な支援を必要とする生徒が在籍している現状がある。(平成21年度、県校長会での調査による)しかし、発達障害に対する理解は、担当教員に限定されがちであり、その特性を踏まえた支援の必要性について研修し、支援を実践できるために今後とも、理解啓発を推進する広報や研修が必要である。

2 中学校や保護者との連携

 高等学校における発達障害を持つ生徒の支援は、まず生徒情報の把握から始まる。個人情報であるが、中学や保護者からの情報は高校での支援に欠かせない。保護者の理解は、高校における生徒支援の大きな支えになることから、中学校訪問や中高連絡会での情報交換を密にすること、保護者対象の発達障害等の講演会の実施、保護者の理解を得た個別指導計画の作成と実施といった信頼関係に基づく連携が大変重要である。

3 授業における個別支援の在り方

 支援員による授業支援を実施して、個別支援をより効果的に幅広く行え、授業研究にも有効である感触を持った。大学生や教員経験者等を活用し、支援員を配置する必要がある。
 また、授業のユニバーサルデザイン化を目指し、「わかる授業」の展開に努めることが肝要である。

4 その他特記事項(エピソードを含む)

1 保健の統一ホームルームの取り組みのねらいは、1.自己を見つめ直す、2.人間関係の陥りやすい盲点に気づく、3.ライフスキルを学びうまく活用することで問題に対処できることを知ることである。生徒の感想には、「改めて自分自身を振り返ることができてよかった」「人間関係について考えるきっかけになった」「相手の気持ちを尊重することが大切」といった言葉が多くあげられた。このことは、目標に一歩近づくきっかけとなった取り組みと評価できる。
 今日、いじめ・不登校が問題となっているが、普段から人間関係をつくる教育を行い、問題発生を予防することが大切で、学校不適応経験者が半数近くを占める本校において、継続的な人間関係づくりにおける援助は必要不可欠と考える。また、これを実施したことで「人間関係面でのトラブルが一年間なかった、思いやりの心が育っていたと思う」との担任からのコメントがあった。

2 平成21年7月より11回にわたり、富山県心の健康センター心理職 水上祐子先生を講師として、夜間部1年次生に対してソーシャルスキルエデュケーションプログラムを実施した。始めは下を向いていた生徒が多かったが、回を重ねる毎に、積極的に取り組むようになり、発言も多くなった。また、授業やホームルーム活動に意欲的に取り組む生徒が増え、効果が伺えた。しかし、10月後期入学による途中参加の生徒で、うまく自己表現ができず、途中で参加できなくなった生徒もいた。生徒自身への事前のケアをはじめ、実施時期等については、生徒の実情に応じた計画が大切である。
 平成22年11月より昼間部1,2年次5クラスの生徒に対して、HRの時間を利用して、ソーシャルスキルエデュケーションプログラムを実施した。これは、HR時を利用して担任が担当できないか、昨年度同様に富山県心の健康センターの心理職を助言者として、研究を行った。各クラス3回のプログラムを実践したが、クラスの中には、自己開示を避けてHRに出席するのに抵抗を示す生徒も出てきた。定時制の場合、心身の問題を未解決のまま入学している生徒が多く、ソーシャルスキルエデュケーションプログラムを導入する際は、実施時期や担当者、内容に注意を要することがわかった。

3 年度末の11月〜2月に、2年間の本研究をかえりみて、本事業終了後の次年度以降の研究と推進等について、本校の中長期ビジョンに係る委員会で協議し、教職員全員からも意見を聞き取って骨子を作成した。分掌や年次ごとによる領域別の研究会議を実施することで、学校をあげた支援の体制づくりを進めることとしている。

5 総括

1 教室に入れない(なじめない)、不登校や問題行動などの学校不適応を示している生徒の一部に、発達障害が起因していることがわかった。(ただ、高等学校段階では、二次障害をもっている生徒もいて、改善や支援が困難な例もあった。)

2 小、中学校との連携、または、早い時期に診断があると、支援の手だてが講じやすく、高等学校段階で初めて発達障害があることがわかった場合は、支援が困難であることが多い。

3 本事業を通して、発達障害教育について教職員の理解が深まった。また、発達障害教育に関する様々な研修から支援のあり方についても関心が深まった。

4 授業のユニバーサルデザイン化など、支援の手だてを研究・実践していく中で、発達障害の有無にかかわらず、向学心の向上や学校不適応の改善により、生徒たちの授業理解が深まった。また、わかりやすい授業、よい人間関係づくり支援、教職員とのコミュニケーションが生徒にとって大切であるという認識が深められ、共有されるようになった。

5 保護者にも発達障害の疑いがあるなどの場合、理解協力が得られにくいが、スクールカウンセラーによる保護者相談等により、必要に応じて、外部専門機関につなぎ、広く進路情報等も共有化を図るなど、保護者との連携を強化することが生徒支援に不可欠であることを認識した。

6 専門学校、就職先との卒業生、進路希望生徒の状況や支援の手だてについての情報交換は有益であったが、一人ひとりの事例にもとづく進路支援は、相手先、保護者の理解が重要である。

7 各種専門機関との連携、アドバイスは支援のための参考となり有益であった。

6 モデル校の概要

1 学級数と生徒数(平成22年5月現在)

課程 学科 第1学年 第2学年 第3学年 第4学年 合計
学級数 生徒数 学級数 生徒数 学級数 生徒数 学級数 生徒数 学級数 生徒数


昼1部 普通科 2 33 2 40 2 32 1 11 7 116
情報ビジネス科 2 35 2 29 2 21 1 7 7 92
昼2部 情報ビジネス科 1 16 1 12 1 18 1 4 4 50
生活文化科 2 30 2 26 1 20 1 3 6 79
夜間 普通科 1 2 1 9 1 6 1 1 4 18
国際教養科 1 2 1 2 0 0 1 1 3 5
  9 118 9 118 7 97 6 27 31 360

2 教職員数(平成22年5月現在)

校長 教頭 教諭 養護
教諭
兼務
教諭
臨任
講師
非常勤
講師
実習
助手
ALT 事務
職員
司書 その他
1 4 44 2 1 3 14 2 1 4 0 13 89

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初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)

-- 登録:平成24年10月 --