特別支援教育について

横浜修悠館高等学校(公立)

都道府県名 神奈川県
学校名 神奈川県立横浜修悠館高等学校
学校所在地 神奈川県横浜市泉区和泉町2563番地
研究期間 平成21~22年度

1 概要

1 研究課題

 通信教育の特性を生かした発達障害のある生徒への支援の在り方
 -特別支援学校、保護者・地域、ボランティア等と連携したプログラムの開発-

2 研究の概要

 通信教育の特性を生かした学習支援(教育課程、指導方法、評価方法等)及び進路・就労支援等の在り方の研究を基盤とし、外部機関や外部の教育力等を視野に入れた体系的・組織的な支援プログラムを開発する。

3 研究成果の概要

1.学習支援

<すべての生徒への組織的支援>

  • わかりやすいスクーリングの実施と解答しやすいレポート作成に向けたスクーリング、レポートのユニバーサルデザイン化
  • レポート完成に向けた、学習支援としてのレポート完成講座の設置
  • 学習支援ボランティアの活用

<特性に応じた個別の支援>

  • 個別対応スクーリングの実施。
  • 学習支援チームによる支援及びケース会議の実施
2.進路・就労支援

<すべての生徒への組織的支援>

  • インターンシップの実施

<特性に応じた個別の支援>

  • 自立と社会参加を目ざした学校設定科目(キャリア活動1)の開設
  • 個別支援計画に基づいたインターンシップ、ボランティア等体験活動の実施
  • 様々な就労支援機関と連携した支援の実施
3.外部機関等との連携
  • 必要に応じ、総合教育センター、発達障害者支援センター、特別支援学校、児童相談所、ハローワーク、社会福祉協議会、地域作業所等と連携し、学校生活(学習、進路)についての支援を行った。

2 詳細報告

1 研究の内容

(1)発達障害のある生徒に対する指導方針

ア 生徒の実態(把握方法も含めて)
 新入生には入学手続きの際に、保護者から「健康調査票」「学習支援調査用紙(きめ細やかな学習支援を行うためのお願い)」を提出してもらい、これまで受けてきた支援や支援機関、手帳の有無等を把握した。平成22年度入学生のうち、手帳(身体・療育・精神)を持っていると申告した生徒は15名、発達障害があると申告した生徒は19名であった。これらに加え、22年度から「発達障害的傾向をつかむためのアンケ-ト(学校生活に関するアンケ-ト)」を行い、生徒の発達障害的傾向が明らかになった。また、必要に応じ適宜、保護者や中学校からも情報収集を行った。
 さらに、前期の途中で、学習状況等から、支援が必要な生徒の把握を行ったり、スク-リングが終了したところで、全職員に行動面、学習面、社会面(対人関係)等で気になっている生徒を挙げてもらったりし、集約したものを職員研修で活用した。
 また、発達障害を専門とする精神科医による個別相談会を平成22年度4回実施し、発達について不安を抱える保護者に専門医とつながる機会とし、専門医から助言をいただくことで、今後の学校としての支援方法を明確にした。
 保護者への支援として平成20年に立ち上げた「自立支援の会」に登録している生徒(33名)の中には、発達障害がある生徒が見られる。

イ 指導方針
 上記の実態把握からつかんだ情報で、個に関わるものは随時関係職員に伝え、全職員で共有すべき情報は研修等を利用して、共通理解を深めた。
 また、全般的な生徒への対応のポイント(1.生徒への対応は丁寧に。2.説明や指示は短く具体的に。3.発生した問題にはその場ですぐに対応。)を年度当初に研修で示し、全職員への徹底を図った。
 スクールカウンセラーとの情報交換、保護者教育相談会での個別相談、相談専用電話(悠コール)、面談等で知りえた事柄は、教育相談・学習支援センターが中心となって、内容を取りまとめ、できる限りの対応や支援を行っている。
 保護者が「自立支援の会」に登録している生徒に対しては、個別の特性に合った支援が実施できるよう、保護者や外部機関と協力・連携して、支援・指導に当たった。

ウ 成果と課題
 「発達障害的傾向をつかむためのアンケ-ト(学校生活に関するアンケ-ト)」を集計することで、生徒の全体像が明らかになり、診断のついている生徒など一部の生徒だけでなく、全ての生徒にわかりやすい対応をすることが大切だという認識が持てた。また、教員に「気になる生徒シート」を提出してもらい、ケース会議を持つことで、情報を共有し、支援の方法を工夫・確認することができた。
 学習状況から支援が必要と判断された生徒に対しては、担任を中心に対応をした。その後、学習状況が好転した後も、個別に声をかけることは、改善に向けて効果があった。
 課題として挙げられることは、学校生活に参加している生徒への支援は、上記の取組で行うことができるが、学校生活に全く参加できていない生徒についての把握は、入学当初に提出してもらった書類からのみであることから、難しくなっている。
 また、通信制のため、教員が、生徒の名前と顔が一致しにくく、指導を行いにくいことも課題として挙げられる。

(2)発達障害のある生徒に対する授業やテストにおける評価方法等の工夫

ア 授業の際の配慮事項等

  • 書字に課題がある生徒には、面接指導でのパソコン使用許可を与えている。
  • 授業内容をボイス・レコーダーで録音することや、登校や面接指導時の保護者同伴・同席について、特に制限は設けていない。(事前の申し出の必要あり)
  • スクーリングのユニバーサルデザイン化に取り組み、「修悠館スタンダード」(スクーリング開始の心がけ、スクーリングの中での心がけ)を全職員に提示し、分かり易いスクーリングの展開を図った。
  • レポートのユニバーサルデザイン化にも取り組み、レポート作成時のガイドライン(レポートでの「修悠館スタンダード」)を示し、「生徒が解答し易く、提出し易い。教員が添削し易い。」を基に、次年度のレポートを作成した。特に生徒が間違え易い箇所は重点的に改善した。
  • 体育では、障害の程度に応じて、個別の面接指導を行っている。
  • スクーリング中になかなかレポートが進まない生徒やスクーリングに出られなかった生徒を対象に、月曜日・水曜日・木曜日の5、6校時に、各教科週に2回の補習講座(レポート完成講座)を設けた。レポート完成講座でも難しい生徒には、TRY教室や担当の個別指導で、支援を行った。
  • 本校における指導計画をもとに、学習の遅れや理解・書字等に困難を抱える生徒に、「個別支援計画」等を参考にしながら「個別対応スクーリング」を実施した。生徒一人ひとりの対象科目に教科担当者が年度間を通して支援し、全ての科目ではないが、報告課題(レポート)の完成・単位修得に至った。必要によって「差し替え」や「絞り込み」レポートなどの教材開発を行い、教授法についても、生徒個々に合わせた具体的な取り組みについて、ケース会議なども実施し、意見交換・検討し、実施した。
  • 発達障害等がある生徒対象の学校設定科目「キャリア活動1」が開設され、作業体験なども含めた、生徒個々に合せた柔軟な取り組みが展開できた。

イ テストにおける配慮事項等

  • 必要に応じて、ルビ付問題用紙や拡大問題用紙等で対応しており、更に配慮が必要な生徒には、別室受験を認めている。別室受験では、書字に課題がある生徒には、パソコン使用や試験時間を延長するなどの対応も行っている。
  • 通常の形式の試験では合格が難しい生徒に対し、「個別対応スクーリング」に加えた個別の学習支援を行い、また、一人ひとりに応じた出題形式を取ることによって合格・単位修得へと導いた。

ウ 評価における配慮事項等

  • 平成22年度より、評価方法を、報告課題に重きを置く「総合到達度評価(試験のみによって評価を行わず、学習活動総体を総合的に評価する)」へと改善した。「個別対応スクーリング」対象生徒の評価方法についても、「総合到達度評価」の中に位置づけた。

エ 成果と課題

  • 平成22年度のレポート提出数は、前年度より飛躍的に伸び、それに伴い、単位修得率も上昇した。
  • 「個別対応スクーリング」の対象生徒は、個別の学習支援を受け、また一人ひとりに応じた出題形式でのテストを受けることによって、単位修得へとつながり、学習意欲や自尊心が向上した。
  • 基礎学力の定着をより図るため、1.分かり易いスクーリングの展開、2.取り組み易い・解答し易いレポートに改善するためのユニバーサルデザイン化(「修悠館スタンダード」)を更に進め、「(発達障害のある児童・生徒への)ないと困る支援」が、「(全ての児童・生徒への)あると便利な支援」になるように努力していきたい。
  • 「個別対応スクーリング」を受けている生徒の状況や課題、また、その教科担当者の取り組みや工夫を即時的に教職員に伝達・共有する方法について開発しきれなかった。今後は、「個別指導計画」を改善することで、全職員により、個々の生徒の状況や課題を共有していく方法を研究する。
(3)発達障害のある生徒に対する就労支援

ア 支援の方策と内容

  • 保護者が「自立支援の会」に登録している生徒で、卒業年次に当たる生徒には、個別の支援計画に基づき、インターンシップを複数回実施したり、ハローワークや地元の支援機関と連携し、就労支援活動を進めた。平成22年度は3名中1名が内定を受理した。
  • 保護者が「自立支援の会」に登録していて卒業年次ではない生徒には、「個別支援計画に基づくインターンシップ」、「ボランティア等体験活動」、「学校設定科目 キャリア活動1」により、社会的・職業的自立に向け、様々な学習や体験活動を行った。

イ 成果と課題

  • 就労に向けた支援は、在学中の早い段階から、社会的な基礎力や技能、態度、働くことへの意欲の育みや就労体験等の積み重ねが大切であるが、通信制という特徴ゆえ、そうした積み重ねをしづらい。
  • 保護者が「自立支援の会」等に登録していない発達障害のある生徒に対して、個に応じた就労支援をすることが難しい。発達障害のある生徒が多数いると思われる本校で、いかに広く、個に応じた支援をしていくかが、次年度以降の課題である。
(4)全ての生徒に対する理解推進等の指導の在り方

ア 指導の工夫と取組

  • 本校は幅広い年齢層で、様々な課題や障害等を抱える生徒が多数在籍している。そのため、お互いの違いを認め合うこと、ルールを守ることを中心とした指導を行っている。
  • 生徒及び保護者へのメッセージは、毎月「横浜修悠館通信」の送付をはじめとし、機会があるごとに伝えるように心がけている。

イ 成果と課題

  • 発達障害について、生徒への啓発活動は、障害のあるまたは障害が疑われる生徒が多数在籍する本校では、実施できない現状は変わらない。平成22年度も、教員側の理解を促進する研修を行うに留まった。今後、専門機関とも相談しながら、良い啓発方法を考えていきたい。
(5)教職員や保護者の研修等

ア 研修会開催の回数・時期・研修内容等

  開催日 対象 研修内容 講師
1 4月 職員 生徒対応留意事項、学習支援プログラム等 教育相談・学習支援センター担当
2 4月 職員 平成22年度入学生について 同上
3 5月 非常勤講師 生徒への対応について 同上
4 6月 保護者 「心の健康、体の健康~日ごろの相談業務を通して感じていること~」 本校スクールカウンセラー(臨床心理士)
5 8月 事務職員
外部機関
「思春期の発達障害による様々な困難に対し、家庭・学校・地域でどう支援するか」 佐々木 正美 川崎医療福祉大学特任教授
6 9月 職員 支援教育に関する職員研修会
「神奈川の支援教育について」他
総合教育センター教育相談課長他
7 11月 職員 ケース会議~『気になる生徒シート』を基にして~ 文部科学省研修担当
8 12月 保護者 「思春期のメンタルについて」 巡回相談員
(臨床心理士)
9 2月 職員 「アスペルガー症候群って知ってますか~発達障害の大学生支援ガイド~」 あつぎ心療クリニック精神科医監修DVD

イ 成果と課題
 職員研修においては、非常に多忙な状況の中でも、ほとんどの職員が研修会に参加し、発達障害やその支援の仕方等について、理解を深めることができた。職員室内図書コーナーにある発達障害関連書籍も活用されている。職員一人ひとりが、多様な生徒を相手にする日常の中で、研修会で得た知識を、実際の個別支援にどう活かしていくが課題である。
 保護者等向けの研修会では、発達障害に造詣が深く、現場を熟知している先生方の話を聞き、保護者及び多くの支援者(学校関係者を含む)に、新たな気づきや知識(知恵)が教授された。発達障害に対する理解を深め、支援の方策を探る上で、大きな成果を挙げたと思われる。

(6)その他の支援に関する工夫

 本校では、生徒が個別の時間割を作成し、授業時間ごとに教室を移動することとなっているため、発達障害のあるなしにかかわらず、校内で迷う姿が多く見られた。そこで、授業と授業の間の時間を15分取り、棟ごとに色を変えた校内案内・教室案内を各所に掲示し、試験等、通常と教室が異なる場合は、教室案内のプリントを入り口で生徒に配布したり、諸所に職員が誘導に立つことにより、スムーズに教室移動ができる生徒が増えた。

2 研究の方法

(1)特別支援教育総合推進事業運営協議会の設置

ア 構成

NO 区分 所属・職名 備考
1 学識経験者 横浜国立大学教育人間科学部教授 委員長
2 関係機関 神奈川県スクールカウンセラー協会代表 臨床心理士
3 関係機関 横浜市発達障害者支援センター相談員 臨床心理士
4 関係機関 県立瀬谷養護学校長  
5 関係機関 県立三ツ境養護学校総括教諭(連携支援部長)  
6 関係機関 県立総合教育センター教育相談部教育相談課主幹兼指導主事  
7 関係機関 県立総合教育センター教育相談部進路支援課主幹兼指導主事  
8 モデル校 県立横浜修悠館高等学校長  
9 モデル校 県立横浜修悠館高等学校副校長  
10 モデル校 県立横浜修悠館高等学校教頭  
11 教育委員会 教育局支援教育部特別支援教育課副主幹兼指導主事  
12 教育委員会 教育局教育指導部高校教育指導課指導主事  

【参考】 校内研究委員会(※は教育相談コーディネーター)

NO 所属・職名 備考
1 教頭 総括
2 経営企画グループ 総括教諭 学習支援・研修会
3 教育相談・学習支援グループ 総括教諭※ 研修会・実態把握
4 広報連携グループ 総括教諭 記録・学習支援
5 教育相談・学習支援グループ 教諭※ 進路・学習支援
6 教育相談・学習支援グループ 養護教諭 実態把握・記録
7 教育相談・学習支援グループ 教諭 学習支援
8 経営企画グループ 教諭 学習支援・記録
9 学校運営グループ 教諭 学習支援・実態把握
10 キャリア教育推進グループ 教諭 進路就労支援
11 キャリア教育推進グループ 教諭※ 進路就労支援
12 生徒活動支援グループ 教諭※ 研修会・学習支援

イ 運営協議会開催回数・検討内容

  開催 内容
1 22年 9月 モデル校事業実施計画概要について
2 23年 2月 モデル校事業実施報告について

【参考】 校内研究委員会

  開催 内容
1 22年 5月 役割分担、昨年度の振返り、平成22年度の予定について
2 22年 7月 今後の予定確認、各担当の進捗状況、事務連絡
3 22年 8月 今後の予定確認
4 22年 8月 今後の予定確認、各担当の進捗状況
5 22年10月 視察報告、後期の予定確認
6 23年 1月 平成22年度終了に向けて

ウ 特別支援教育コーディネーターの指名や個別の教育支援計画の策定等具体的な方策

  • 神奈川県の県立学校では、子ども一人ひとりの教育的ニーズに応じた適切な支援教育を推進するため、教育相談コーディネーターが各校1名以上指名されている。本校には、4名の教育相談コーディネーターがおり、いずれも運営協議会委員に任命されている。
  • 個別の教育支援計画については、保護者からの相談、または、職員からの気づき等から、特に支援の必要性が高い生徒に対し、生徒、保護者との面談を複数回実施し、外部機関のアセスメントなども参考に、17名の生徒について個別の支援計画(支援シート1、2)を作成した。

エ 成果と課題

  • 県内外の視察や各種研修会の内容については、委員会での報告や回覧という形で情報の共有を図った。また、全職員に対して、平成21年度中間報告と平成22年度取組内容及び協議会記録を配布し、情報の共有を図った。
(2)専門家の活用

ア 構成

NO 所属・職名 備考
1 横浜国立大学教育人間科学部教授  
2 神奈川県スクールカウンセラー協会代表 臨床心理士
3 横浜市発達障害者支援センター相談員  
4 県立瀬谷養護学校長  
5 県立三ツ境養護学校総括教諭(連携支援部長)  
6 県立総合教育センター教育相談部教育相談課主幹兼指導主事  
7 県立総合教育センター教育相談進路支援課主幹兼指導主事  

イ 専門家の活用状況

回数 内容
2 本校の取組に関する全体的な指導助言
5 ケース会議での助言、特別支援学校との連携調整
1 研修会講師

ウ 成果と課題

  • 専門的な立場から、本校の取組や個々のケースについて指導・助言を行ったり、研修会の講師を務めるなど、研究を進めていく上で大きな支えになった。
(3)関係機関との連携

ア 他の高等学校や技能教育施設、特別支援学校との連携
 「後期中等教育段階における様々な支援の在り方(報告)」に示された「県立高校と県立特別支援学校の連携について(案)」を先取りした形で、近隣の特別支援学校4校との連携(4校連絡)を開始した。

  開催 内容
1 22年 4月 平成22年度の支援、連携について
2 22年 6月 スクーリング見学及び協議他
3 22年 8月 特別支援学校での夏季作業体験、公開講座講師
4 22年 9月 前回の報告、個別対応生徒の状況について他
5 22年11月 特別支援学校校内実習及び授業見学
6 22年12月 交流フェスティバルボランティア参加について
7 23年 2月 平成22年度の活動を振り返って、来年度について

イ 発達障害者支援センターやハローワーク等関係機関との連携

  • ハローワークや就労支援機関(就労支援センター、障害者就業・生活支援センター)と、企業開拓からインターンシップ、求職登録や職業相談、企業との連絡調整、指名求人受理、職場定着、さらに就労継続へと、就労に関わる様々な段階で連携して支援に取り組んだ。
  • 発達障害者支援センターとの連携では、センター職員を講師として職員研修を行ったり、同センターが開催するセミナーに参加するなどして、生徒に対する個別相談の参考とした。

ウ 地域の教育施設や人材等の活用

  • 県立総合教育センターが生徒のアセスメントを行い、また、生徒・保護者からの相談に応じた。
  • 私立高等専修学校が主催する、発達障害に関するネットワーク会議やセミナーに職員及び保護者が参加したり、生徒対象に同校職員を講師として、本校でパソコン教室を行った。
  • 7名の外部ボランティアを活用し、「TRY教室」、「悠ROOM」、「架け橋教室」で学習支援等を行った。
  • 近隣の福祉団体の活動に、生徒がボランティアとして参加した。

エ 成果と課題
 諸関連機関との連携が定着しつつあり、支援の幅を広げるのに大いに役立っている。校務との関係で、連携を継続していくには困難な点も感じられるので、更なるマンパワーが必要である。

(4)関連事業等との連携

○文部科学省委託事業「特別支援教育総合推進事業巡回相談」との関連

ア 具体的な連携方策
 本校は平成20年度に上記委託事業研究協力校になり、3年目を迎えた。平成22年度より4回だった巡回相談が5回になり、発達障害を含むすべての障害のある生徒への支援体制整備を更に進めることになった。具体的には、授業観察を通じた指導・助言、ケース会議での助言、保護者対象講演会等の取組を行った。

イ 成果と課題
 巡回相談が3年目となり、支援体制の整備だけでなく、授業観察を通じた具体的な助言や、平成22年度から始まった個別対応授業に係るケース会議での助言など、より実際的な支援への助言を得ることができた。来年度は研究協力校を外れるが、3年間で得た支援の知識を、どう継続的に生かしていくかが課題である。

3 今後の我が国における発達障害のある生徒の支援の在り方についての提案等

 今回2年間にわたって発達障害のある生徒の支援について、通信制課程の中で様々な角度から、そのあり方を模索してきたが、個々の生徒に対して十分な支援を行うには、現在の高等学校における教育課程では、限界があるように思えた。
 本校に入学してくる生徒の中には、中学校において支援級等に所属していた生徒も多いことから、個別のスクーリングにおいて学習支援を行ったが、高校教育レベルとしては十分でないと判断せざるを得ない者もおり、報告課題(レポート)をある程度完成させることはできても、本来必要な知識や学力を身につけるまでには至っていない現状もある。
 このように、一人ひとりの生徒に十分な支援を行い、卒業後に社会人として自立させていくには、高等学校においても、義務教育と同じような、複数の教育課程の設定についての検討が必要であると考える。

4 その他特記事項(エピソードを含む)

 今回のモデル事業を通して、様々な取組を行ったことにより、本校職員一人ひとりの発達障害等に関する知識や理解が深まるとともに、レポートやスクーリングだけでなく、校内表示等においてもユニバーサルデザイン化を図るなど、職員全員の意識改革やスキルアップにもつながった。

5 総括

 2年間にわたってモデル事業に取り組み、通信制の課程における発達障害等のある生徒を含めたすべての生徒に対する支援のあり方について、検討を繰り返しながら実践してきた。その結果、ある程度の成果を得ることができたと考えている。
 特に発達障害等のある生徒については、生徒の実態把握から個別の支援計画作成までの流れや、個別対応スクーリングの展開、各科目における評価方法、校外の機関との連携等について、今後さらに検討を重ね、充実した支援ができるよう努めていきたい。
 最後に、この事業にご協力いただいた方々に心より感謝申し上げます。

6 モデル校の概要

1 学級数と生徒数(平成22年5月現在)

課程   合計
学科 学級数 生徒数
通信制 普通科 40 4562

※単位制のため学年の区分はありません。

2 教職員数(平成22年5月現在)

校長 副校長 教頭 総括教諭 教諭 養護教諭 非常勤講師 実習助手 ALT 事務職員 司書
1 1 1 6 46 1 17 0 1 5 1 80

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)

-- 登録:平成24年10月 --