都道府県名 東京都
学校名 東京大学教育学部附属中等教育学校
学校所在地 東京都中野区南台1-15-1
研究期間 平成21~22年度
「中等教育学校における特別支援教育の推進と課題」
後期課程(高校生)の発達段階における指導のあり方、単位認定について
教職員の意識の変容について、組織の支援体制等
平成16年制定の発達障害者支援法の規定や特別支援教育における理念から後期中等教育においても研究を推進され、現場において実践されていくことが求められている。しかしながら小学校や中学校に比べ、後期中等教育の学校現場では遅々として進んでいないのが現状である。この原因は何であるのかを突き止め、それを改善していくには何が必要になるのかを検討することを本研究課題とする。他高校のモデル事業との相違は、中学入学段階で適性検査により選抜されているので学力は中程度以上の学校であるといえる。ほとんどの生徒が後期課程(高等学校)卒業時には大学進学を希望し、90%以上の生徒が4年生大学、専門学校が数名であり就職する生徒はほとんどいない。つまり高等学校卒業時には就職指導を考えていない学校である。各授業では出席について3分の一ではなく5分の一で指導しているなど単位認定が厳しい学校である。国立附属学校の使命もあり、生徒保護者教員3者について特別支援教育推進を学校の主たる目標に意識付けが難しい学校である。
中等教育学校という特性のひとつに、他モデル校が生徒の出身中学校との連携を苦慮するなか、本校では生徒を6年間の中で全教員が観察、認知できる環境があることである。また公立学校ではないため、教育委員会等の直接のサポートを得られないという問題点もかかえる。しかしながら従来のモデル校の中には私立学校が少なく、全国の高校の4割程度をしめる国立附属学校や私立学校のために、本校がモデル校として取り組む価値は高いと思われた。また同じ学校の教員からも賛同が得られるのではないかと期待した。さらに教育委員会のような資源を持たない場合に、関係機関とはどのような機関が適当で、どのような支援を得られるかについても研究が必要であると考えた。
特別支援教育を推進せねばならないという使命感はあるもののもう少しまわりの状況を見ながら教員との連携の中で出来ること出来ないこと、さらにできることはないか、工夫してみることはないかという視点がコーディネーターだけではなく多くの教員に育ってきた。それは従来から学級担任をはじめ多くの教員が困っている生徒の話を丁寧に聴いて対応してきた。その困り感に寄り添う気持ちをそのままに、その情報をひとりで抱え込まずに皆で共有して教員全体で支えていこうということが特別支援教育の本来であろう。
そのためにもさまざまな形で教員の意識を変容するための手立てを考え実行してきた。その結果、何か新しいことを一から押し付けられていると感じている教員はほとんどいなくなってきたように感じられるまでになってきた。教員集団の大きな変容は子どもたちへのより丁寧にみていく方へ変化していくことだろう。その意味でこのモデル事業を引き受けて取り組む価値は高かったと考える。
ア 生徒の実態(把握方法も含めて)
教員の支援体制を整える必要がある。既存の仕組みに対して支援体制の充実を考えた。
以下はその組織および会議の運営方法・生徒の実態を把握するための支援票について述べる。
●学校内で生徒を支える組織
特別支援教育委員会
保健室、ほっとルーム(相談室)
教務部、生活指導部、進路指導部などの分掌等
○特別支援教育委員会の組織(委員)
副校長(2名)、コーディネーター、サブコーディネーター、各学年主任(6名)、養護教諭、スクールカウンセラー(以下SC)
必要に応じて他の関係教員
○特別支援教育委員会の主な活動
定例会
支援体制に関する協議
ケース検討会
委員に加えて、学年毎に授業担当者やその他の関係教員も参加し、気になる生徒の情報交換や支援の方向性の確認等を行う。個別指導計画・個別支援計画を作成するための良い機会とする。
臨時会
緊急度の高いケースに関する検討会。
校長やSC、委員以外の教員も参加し協議を行う。各教員のさまざまな視点が生徒を多面的に理解することに役立つ。SCの専門的な見解を聞くことにより、より具体的かつ効果的な支援計画を検討できる。
立ち話的な検討会(ミニ会合)
関係教員のみで職員室や保健室などで頻繁に行う情報交換のための連絡会合。
○特別支援教育委員会以外の活動
ほっとルーム連絡会
主にSCと養護教諭による情報交換会。必要に応じ委員以外の教員も参加。
具体的な支援の方向性を確認したり、役割分担を行ったりする。
●生徒の実態把握のための教員共通認識の用紙
○支援票につなげる用紙
気になる生徒一人ひとりに支援票を作成している。作成者は原則的には担任教員だが、気になる生徒がいれば教員が誰でも記入できる。どのようなことが得意か不得意か、何かあれば記録しておく。その積み重ねで本来の支援計画や指導計画作りにつなげていきたい。
●教員への支援と啓発
○生徒支援を直接担当する教員へのサポート
生徒への支援を担当する教員(多くの場合は学級担任または学年に所属する教員)のサポートを行う。支援を担当する教員の意向を尊重しつつ、支援の具体的方策を検討する。その際教員一人では支援に限界があり負担も大きいため、チームでの役割分担を考える。
学級担任または支援を担当する教員のメンタルヘルスにも留意し、気軽に相談できる環境を整える。
従来は難しい生徒を抱えることで学級経営が大変になった。それを管理職や周りの教員からみると、こうした教員は力がないと判断されたりすることがあった。そのため教員の中に難しい生徒がいた場合抱え込んでしまう傾向が見られる。こうした傾向も啓発によって多くの教員が関わりチームを組んで対応する中で改善していきたい。
○教員研修の立案・実施
校内での刺激
校内研究会の実施
学校の中でどのような支援をしていくかの合意形成
外部講師による概論の指導
校外での刺激
視察(出張研修)
モデル校や特別支援学校視察に伴い、特別支援教育コーディネーターだけではなく、他の教員も視察に参加することで、学校内に特別支援教育を推進するコーディネーター以外に理解者を作ることがこうした特別支援教育を推進していく大切な原動力となる。
他校において特別支援教育に関する研究会開催
○その他
特別支援関係書籍の活用
イ 指導方針
困り感のある生徒へ寄りそうというあたりまえの支援ではある。それは従来から学級担任を含め取り組んできたことであるがその情報を教員間で共有してチームで支えていこうという指導である。
ただし、それぞれの学校が教育目標にそった支援・教育的配慮を行うべきである。
ウ 成果と課題
成果
生徒のことで問題を抱えた教員が抱えこむよりも情報を共有してチームで考え、支援していこうという考え方が浸透してきた。こうした考え方が特別支援教育推進には大切なことと考えている。
課題
●どこまで特別支援できるのか
通常の高等学校においては特別支援教育を主たる教育目標においていない現状がある。現在の高校において特別支援教育導入についての準備が出来ているとはいえない。理念理想ばかりが強調され、どこまでも対応すべきかの混乱が起きている。高等学校に特別支援教育が遅れている原因の一つであるが、それは義務教育学校でない高等学校においては全国一律の支援や教育的配慮を求める風潮をこの2年間で感じ取ってきた。
高校へ進学する生徒・保護者はどのような支援・教育的配慮を求めるかを考えて高校選択をするべきであろう。高校を選択出来るという自由さを保障されているということである。学校や教員側はどこまで提示できるかを合意形成しておかねばならないだろう。合意形成できるまでの特別支援教育についての正しい理解が学校・教員側に必要なのは言うまでもない。支援を必要としている生徒の困り感は放置することはできない。具体的な支援が必要である。
●教員の負担感
現場の負担感を感じる原因として、特別支援教育についての正しい理解がなされていないということが大きい。
●会議時間の確保
ケース検討会を持たなくても、学年会の一部の時間を支援の検討に充てる、個人情報の保護に留意した上でメールを活用する、などが有効な手段であろう。教員同士の積極的な情報交換である。情報交換が行える教員同士の人間関係、ネットワーク作りを日ごろから心がけていくことが特別支援推進に必要なことである。
●診断書について
信頼性の問題
受容を迫るかどうか
診断書のある生徒とない生徒とで教員側の支援や対応を変えるべきか
単位認定に関し配慮なのか特別扱いなのか
その際に他の生徒や保護者の理解を得られるか
さまざまなトラブルのときにどのように解決を図るのか
トラブルの原因を発達障害のせいにしていないか
重大な問題に発展したときに裁判になった場合に備えて準備をしておくべきではないか
ア 授業の際の配慮事項等
●指導場面
イ テストにおける配慮事項等
ウ 評価における配慮事項等
●評価の基準
エ 成果と課題
ア 支援の方策と内容
大学進学を主とする通常学校において就労支援は直接な問題ではない。しかし昨今の経済事情の変化で就職せざるを得ない生徒も出てくることも考えられる。ハローワークとの連携をとり引き続き考えていきたい。
イ 成果と課題
就職者がほとんどいない中で目立った成果はあげていない。
課題としては今後自分の特性に合った職業を選択できるのか、こうした特性はある種さまざまなスキルで代替できることがあるが高等学校の段階でどこまで助言するべきなのか検討できていない。
ア 指導の工夫と取組
思春期や青年期前期における発達段階について、管理職や各学年担任団において個々に発達が異なることを説明した。例えば50m走のタイムが速い子もいれば遅い子もいる。背の高い子もいれば低い子もいる。こうした見て分かる違いは認めやすいけれど、友達の作り方が得意な子もいれば苦手な子もいる。相手の良さを見つけて認め合ってほしい等。
イ 成果と課題
中高6年一貫教育の中では子どもたちの中にも徐々に認め合う土壌がある。6年間同じ友達と過ごすという中では認め合いがなくては過ごすことが出来ないのだろう。とくに高等学校にあたる後期課程進学時には大きな友達関係のトラブルは収まってくるのがほとんどの教員の見立てである。
後期課程進学までの前期課程では発達障害があるなしに関わらず、なかなか友達を認め合うことが難しい時期である。個々の生徒そのものが発達段階にバラツキがある中ではさまざまな問題が発生する。こうした問題を引きずらないように指導をすることで後期課程へ進学できるのだと経験的に考えている教員は多い。
ア 研修会開催の回数・時期・研修内容等
●校内研究会
●ケース検討会
担任であっても、生徒と顔を合わせられる時間は限られており、自身で得た情報だけで十分に生徒を理解することは困難である。ケース検討会において、他の授業や部活動、自治活動、その他での情報を得ることで、生徒を多面的にとらえることができる。もちろん担任以外の教員にとっても、新しい情報を得ることで生徒理解が進む機会となる。また教員間での共通理解が得られると、支援への協力体制も作りやすい。
ある生徒への支援が成功すると、教員はその経験から他のケース支援への指針を得ることができる。現在抱えているケースを、過去の「支援の経験」と照らし合わせてみることで、支援が円滑に進む例は多い。必ずしも同じ方法で問題が解決するとは限らないが、支援にあたって「試せる方法、使える手段」が増えることは解決の可能性を拡げる助けとなる。さらに、この「経験」を教員間で共有することで、学校全体の支援体制が強化される。
このようにケース検討会は生徒個人の支援だけでなく、学校全体の支援推進にも役立つものであると考えられる。
●授業検討会
授業検討会は、東京大学教育学部佐藤学教授との連携研究で行っている「学びの共同体」の中の実践のひとつである。
授業検討会では授業見学後、意見交換を行うが、授業の内容ではなく生徒の様子に着目して観察・意見交換をする点が、一般的な教科中心の授業検討会とは異なる。最近「他の教科の授業での生徒の様子を見ることは生徒理解に大変役立つ」という教員の声をよく耳にする。これまでの実践を振り返って、授業検討会が生徒理解の貴重な場になっていたということを改めて実感しているのである。このような、特別支援教育の概念が導入される以前からの既存の実践が、見直してみると特別支援教育につながっていたという教員の気付きは大変価値のあるものととらえている。
これまでの実践が「実は特別支援教育であった」という教員の実感は特別支援教育推進に大きな意味を持つであろう。なぜなら、本校に限らず多くの学校において、教員の特別支援教育に対する「特別視」や「困難視」が推進の弊害になっていると感じられる場面が少なからずあるからである。この「実は特別支援教育であった」という実感は、「特別視」や「困難視」を払拭し、特別支援教育に対する教員の意識を変える原動力になるのではないかと考えられる。
●出張研修
○視察学校・教育委員会(訪問順)
○視察の成果
1)特別支援教育のとらえ方
2)学習
3)単位認定
4)ソーシャルスキルトレーニング(SST)
5)その他支援一般
●本校での具体的活用(研修で得たヒントから実践したこと)
イ 成果と課題
●研修による教員の意識の変化(研修後の聞き取り調査から)
●特別ではない特別支援教育
○全ての生徒への還元
「特別支援教育」という名称から、特定の生徒だけを支援するものと誤解されがちだが、全ての生徒一人ひとりへの支援をより丁寧に行っていこうというのが根本理念であろう。程度の差こそあれ、全ての生徒に支援が必要である可能性を想定し、関わっていく必要がある。
また特に支援が必要な生徒のことを考慮して、学習環境整備や授業方法の工夫をすることは、その他の生徒に対しても、生活しやすい環境、わかりやすい授業を提供することにつながる。
○自校の文化との融合
定時制と全日制で、普通科と職業科で、いわゆる進学校と教育困難校で、都会にある学校と地域密着型の学校で、・・・など、それぞれの学校で担っている使命も生徒の能力や適性なども異なり、当然支援の到達目標も異なる。
たとえば、ほとんどの生徒が就職を目指す高等学校の場合、就労のためのスキルは必須であろうし、地域によっては高卒資格取得がどうしても必要という場合もある。大学進学を前提とした生徒の多い高等学校では学力を高める必要があるであろう。このように、それぞれの高等学校にそれぞれの支援の到達目標がある。
まずは各学校の支援到達目標に関して校内で合意をとり、その上で具体的な支援策に関しても自校に合わせた形にしていく検討が必要であろう。
○生徒の立場を考慮
「支援を受ける人の立場に立つ」ことは、学校に限らずどのような場面においても支援の基本であろう。集団の中で一人ひとりの立場に立つことは困難であるかもしれないが、生徒の発達段階に加え、認知や行動の特徴、得手・不得手なども考慮し、生徒の視点に立った支援策を検討する必要がある。
○既存の実践の再評価と活用
既存の実践の中にも特別支援教育の視点を持ったものもある。それらを再評価し特別支援教育の実践として活用していくことが可能である。特別支援教育は既存の実践の延長線上にあるとわかることで、教員の特別支援教育に対する「特別視」が緩和される。
生徒に関する情報や実践経験はこれまで教員個人で蓄積していく傾向が強かったが、学校全体で蓄積し共有することで学校全体の財産となり、当該生徒への支援だけでなく他のケースの支援への指針ともなる。確実性を高めるため、口頭での共有だけでなく記録での共有が望ましい。
○困り感の具体的解決の有効性
発達障害が疑われる生徒に対しては、即効性のある対症療法的支援が有効な場合が多い。例えば、近視の生徒に眼鏡、難聴の生徒に補聴器を使用するように、計算に困難を抱える生徒に電卓、読みに困難を抱える生徒にテストの拡大版、コミュニケーションの不得手な生徒にソーシャルスキルトレーニングなどを取り入れてみる。すぐには根本的解決にはつながらなくても、対症療法的支援の積み重ねで間接的に問題解決が期待できる場合があるのではないだろうか(例:成績の改善→単位認定、人間関係の改善→不登校の解決など)。
発達障害が疑われる生徒の場合、「成長を待つ」「気付きを待つ」といったこれまでの常識は意味を持たないことも多い。一方で、状況に応じたスキルを示すことが有効であることが多い(SSTの積極的活用)。
生徒の困り感を解消する対症療法的支援には副産物も期待できる。それは家庭からの信頼を得るきっかけになることである。実のある支援が得られると理解されれば、保護者からの信頼は高まり、学校と家庭とで協力して支援を行える可能性も高くなる。
○生徒理解へのヒント
これまで解決の糸口がつかめなかったケースに発達障害の症状を照合してみることで、支援策が見えてくることがある。診断の有無を重要視するのではなく、学んだ発達障害に関する知識を生徒観察に生かしていくことは有用である。
課題
●予算削減について
2年次に予定していた予算が急に3分の一に削減され、研究計画の変更を余儀なくされた。
とりわけ視察は費用がかかるが、特別支援教育を推進していくモデル校としては貴重な機会であった。その費用がかけられないということは特別支援教育を推進していくことにブレーキをかけることである。モデル校を起点として周辺の学校へその考え方が広まっていく。その効果を考えたら実に有意義な費用であると断言できる。視察の効果が数値でも実証できた。今後このような途中で計画が変更になることがないように求めたい。
ア 構成
NO | 所属・職名 | 備考 |
---|---|---|
1 | 東京大学教育学部附属中等教育学校 校長 | 教育学研究科教授 |
2 | 東京大学教育学部附属中等教育学校 副校長 | 後期課程 |
3 | 東京大学教育学部附属中等教育学校 副校長 | 前期課程 |
4 | 東京大学教育学部附属中等教育学校 教諭 | 特別支援教育コーディネーター |
5 | 東京大学教育学部附属中等教育学校 教諭 | サブコーディネーター |
6 | 東京大学教育学部附属中等教育学校 教諭 | 6年学年主任 |
7 | 東京大学教育学部附属中等教育学校 教諭 | 5年学年主任 |
8 | 東京大学教育学部附属中等教育学校 教諭 | 4年学年主任 |
9 | 東京大学教育学部附属中等教育学校 教諭 | 3年学年主任 |
10 | 東京大学教育学部附属中等教育学校 教諭 | 2年学年主任 |
11 | 東京大学教育学部附属中等教育学校 教諭 | 1年学年主任 |
12 | 東京大学教育学部附属中等教育学校 養護教諭 | 保健室 |
13 | 奈良女子大学附属中等教育学校 副校長 | 外部アドバイザー |
14 | 名古屋大学大学院教育学研究科 教授 | 外部アドバイザー |
イ 運営協議会開催回数・検討内容
毎月1回開催 外部アドバイザーの方は参加できない場合はコメントを頂いた。
月 | 検討内容 |
---|---|
4月 | 入学者の情報交換及び今後の指導計画,昨年度からの気になる生徒の情報 |
5月 | 新学期当初の生徒指導及び遠足における生徒の取り組み状況 |
6月 | 体育祭における生徒の取り組み状況報告と行事おける生徒の可能性 |
7月 | 夏季休業前に生徒にどのような指導をしていくか |
9月 | 夏季休業中の情報と後期に向けて委員会の方針について |
10月 | 文化祭における生徒の取り組み状況報告と行事における生徒の可能性 |
11月 | 校内研究会での取り組み及び校内委員会への助言 |
12月 | 校内研究会での校内の教員の意識についての検討 |
1月 | 校内研究会での教員の意識の数値分析と次年度以降への助言 |
2月 | 研究報告会に向けて計画概要とその準備状況 入学検査における情報 |
ウ 特別支援教育コーディネーターの指名や個別の教育支援計画の策定等具体的な方策
●特別支援教育コーディネーターの指名について
個々の学校に合った特別支援教育の推進を考えるとはたして特別支援教育コーディネーターはどのような資質を持つ教員が担当するべきなのか。他校への調査をかけて本校の目指すものとの違いを視察だけではなく調査分析もかけなければその違いを数値で示すことはできない。おそらく共通として求められる資質はあると考えている。
本校での教員への調査では、発達障害への知識・理解や教員間の連携をとるコーディネート力などが求められた。
●個別教育支援計画の策定について
本年度の富山の志貴野高校の報告会において大阪教育大学名誉教授の竹田先生が講演された中にあったが、今後センター試験への診断書に付加される書類となり得るであろうとのことだがまだまだ個別支援計画にあたる前段階を進めているだけである。
用紙を作って無理にでも形を整えることはできるかもしれないが、それは本来の教員同士の意見を合意してその学校にあった特別支援教育を推進するなかでの連携にはなっていない。全国規格のものもない。こうした用紙を策定する会議があれば具体的な発言をしていきたい。
エ 成果と課題
個別支援計画の作成について引き続き検討していきたい。
ア 構成
NO | 所属・職名 | 備考 |
---|---|---|
1 | 明治学院大学 教授 | 教育心理学 |
2 | 東京大学大学院教育学研究科 教授 | 臨床心理学 |
3 | 東京大学大学院教育学研究科 教授 | 身体教育学 |
4 | 東京大学コミュニケーションサポートルーム室長 | 精神科医 |
5 | 名古屋大学大学院教育発達科学研究科 教授 | 発達心理学 |
イ 専門家の活用状況
コーディネーターを中心として必要に応じて連絡を取らせて頂いて協力を頂いた。
ウ 成果と課題
心理学的見地や医学的見地からも丁寧に生徒をみることが出来た。
専門家が忙しすぎるとなかなか頻繁に相談することができない。
コーディネーターの個人的なつながりで連携をとっているケースをどのように引き継ぐか難しい問題である。
すべての学校が専門家を求めることが不可能であろう。
ア 他の高等学校や技能教育施設、特別支援学校との連携
●他の高等学校との連携
国立附属学校であることから本校のコーディネーターが校内研究会の講師という形で参加できた。その際、本校の教員も研究会に参加し、意識の変容に役立った。
A大学附属中学高校(併設型中高一貫校) 2回
B大学附属中等教育学校 1回
●全国附属高等学校連盟での発表
全国の附属高校が集まる場でコーディネーターが発表し、意見交換を出来た。その際に本校の教員も参加し、意識の変容に役立った。
イ 発達障害者支援センターやハローワーク等関係機関との連携
ハローワークとは進路指導の関連で連携をとりつつある。そのときに特別支援の考え方も入れていきたい。
ウ 地域の教育施設や人材等の活用
地域の学校評議員の方の力をお借りすることを計画中である。
エ 成果と課題
他の高校との連携
特別支援教育の話を聞くだけではなく、他校との研究協議会で意見の交換ができるということは大きい。教員の意識の変容に効果的である。
相手校も意識が高まり、こちらにもメリットがあるが旅費がかかることは問題である。
新しい考え方を導入することではある程度の予算がかかるということである。
教育課程についての議論が校内研究会で出来た。
単位認定や卒業判定につながるものである。
●高等学校において
高校独自の特別支援の配慮の範囲をオープンにするべきである。一人一人の生徒を丁寧にみていくのはどこの学校の教員であっても理解できる。しかし現状では普通高校か特別支援学校かの2者択一で生徒保護者が選択してきており、学校現場では対応できない。具体的例をあげると出席も3分の一をこえなければ大丈夫と指導する学校もあれば5分の一を超えなければ大丈夫と規定している学校もある。あるいは卒業単位も学校によって異なることを生徒保護者には十分に通知されていない。
●教員について
教員研修の場を増やす
モデル校のコーディネーターを積極的に講師として活用する
教育委員会の指導主事も困っているのが現状であり、モデル校での実践経験は貴重な戦力となりうる。
●特別支援教育コーディネーターと学校の風土
現在コーディネーターに権限がない。手当もつかないから、しり込みして引き受けたがらない教員が多い。したがって校内で教員の連携を高める中で徐々に進めるしかない現状がある。
生徒の問題行動が起こったときには学年で抱えることなく、生活指導主任が学年をこえてその問題に介入することが認められている学校・教員の風土がある。まだ特別支援教育に関してはそうした風土が育っていない。したがって学校間に取り組みのばらつきが出てくる。このことも高等学校での特別支援教育が遅れる原因の一つである。モデル校の中には教頭がコーディネーターを兼務する場合があったと聞く。
●高等学校の教員の専門性
教科の専門性が中学校や小学校に比べて高い高等学校の教員は自分の専門外のことに不安を感じたり、入り込むことに慎重に考える教員が多い。その専門性を高めることばかりが近年強調されすぎたのではないか。医学と同様に自分の専門外は診ないでは子どもの支援につながっていかない。
●子どもをどのようにみるかという学問の軽視
学校現場の教員として子どもを丁寧にみることが当たり前のことであるから学問として学ばずに経験だけに任されていることが多い。近年教職実践学の重要性が高まっている。
●視察の効果
視察をすることで他校のさまざまな子どもたちの様子や取り組まれている教師の様子から啓発されていく教員は多く見られた。教員の交流は予算がかかることではあるがコーディネーターを引き受けてみたいという教員が増えたりもした。
●センター試験での特別配慮の実施開始
現場での混乱は大きい。診断書の扱いのときに生徒の家庭任せになっているところが多いと聞く。学校の中には受容の指導へつなげることが就労につながるところもあるようだ。
エピソード
特別支援教育を推進していく中で各モデル校のコーディネーターは困りながらも前向きに処理をしていた。特別支援学校のカリキュラムをそのまま自分の勤務校に上乗せし、その負担感でいっぱいになったり、報告会でコーディネーターが「愚痴からいわせてほしい」と切り出す場面も見られた。
精一杯子どもたちのために取り組んでいることが報われるような制度も確立していただきたい。
2年間の特別支援教育推進に取り組んできたことは多くの教員の意識の変容に役立ち、このことはとりもなおさず子どもたちを丁寧にみていくことにつながっていくと考えている。
「みる」は「見る」だけであってはならないのであえて本文中大部分において「みる」と平仮名で表記した。「診る」や「看る」や「視る」ができなければならない。そうした中でより子どもたちがみえてきて教育できるのである。
本校も国立附属学校として教育学部の教官をはじめ多くの研究者から最先端の学問に触れ、その学問を検証・実践するフィールドでもある。通常の高等学校ではそれぞれの教育目標を掲げ、必ずしも特別支援教育を主たる目標にしていない学校も多いだろう。既存の目標の中に子どもを丁寧に見るという視点から特別支援教育を推進していくことが大切であり、発達障害もその一つの特性と見ることが必要である。
前期 課程 |
学科 | 第1学年 | 第2学年 | 第3学年 | 合計 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
学級数 | 生徒数 | 学級数 | 生徒数 | 学級数 | 生徒数 | 学級数 | 生徒数 | ||
全日制 | 普通科 | 3 | 120 | 3 | 120 | 3 | 120 | 9 | 360 |
科 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
計 | 3 | 120 | 3 | 120 | 3 | 120 | 9 | 360 | |
後期 | 第4学年 | 第5学年 | 第6学年 | ||||||
全日制 | 普通科 | 3 | 117 | 3 | 117 | 3 | 112 | 9 | 346 |
科 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
計 | 3 | 117 | 3 | 117 | 3 | 112 | 9 | 346 | |
計 | 18 | 706 |
校長 | 教頭 | 教諭 | 養護教諭 | 非常勤講師 | 実習助手 | ALT | 事務職員 | 司書 | その他 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 38 | 2 | 15 | 2 | 1 | 5 | 0 | 3 | 69 |
初等中等教育局特別支援教育課
-- 登録:平成24年10月 --