特別支援教育について

霞城学園高等学校(公立)

都道府県名 山形県
学校名 山形県立霞城学園高等学校
学校所在地 山形県山形市城南町1-1-1
研究期間 平成21~22年度

1 概要

1 研究課題

 発達障がい等の特別な支援を必要とする生徒へのキャリア教育を通した支援の在り方について-関係機関と連携した取組を通して-

2 研究の概要

 現在本校で取り組んでいるキャリア教育を、発達障がいのある生徒への支援という観点からとらえ、社会人としての自立を視野に入れた支援の在り方について研究する。
 研究に当たっては、特別な支援を必要とする個々の生徒のニーズに適切に対応するために特別支援学校や関係機関の助言を得ながら、効果的な支援を目指す。
 本事業では、対象生徒を、発達障がいのある生徒だけではなく、心身面で特別な支援を必要とする生徒と幅広くとらえ、以下の5つのテーマを設定する。
 (1)教職員のスキルアップと校内の支援体制の在り方
 (2)個々の生徒のニーズに対応した、適応のための具体的な支援の方策
 (3)卒業後の自立に向けたキャリア教育の推進と就労等の支援の在り方
 (4)周囲の生徒・保護者等の理解を図り、支援の輪を広げるための方策
 (5)関係機関との連携による、支援のネットワークの構築に向けた調査・研究

3 研究成果の概要

 昨年度に引き続き、県内の専門家を外部アドバイザーに委嘱し、研究会を8回開催した。「教員の資質向上」「適応支援」「就労支援」「社会的自立のためのスキルアップ」をテーマにして、支援の方針や具体的な方策について研修を深めることができた。また、職員の研修会を3回開催し、特別支援教育を推進するための校内体制や、「ピアサポート」等について実践的に学ぶことができ、教員の資質向上に結びつけることができた。
 さらに、具体的な教育実践として「ライフスキル講座」を年間を通して実施した。全教科でユニバーサルデザイン化の学習プログラムの開発を行うとともに、「実践事例集」を発行した。
 本事業を通じて、特別支援学校や中学校、外部の就労支援機関との情報交換や連携を深めることができた。また、中間報告会と研究発表会を開催し、本校における特別支援教育の取り組みについて、広く普及を図ることができた。

2 詳細報告

1 研究の内容

(1)発達障害のある生徒に対する指導方針

ア 生徒の実態(把握方法も含めて)
 本校には、小中学校時代に不登校経験のあった者が多数入学している。また、他の高校を中退してきた生徒の中には、他者との関係作りが苦手であったことが原因と思われるケースも多く、精神面での支援を必要とする生徒も多い。
 これらの生徒の状況把握については、合格発表後に出身中学校や前籍校より「配慮を要する事項」として情報を得るようにしているが、発達障がいのある生徒の情報は限られているのが現状である。この背景として、中学校や前籍校段階では正式な診断がおりていないケースが多いことが考えられる。
 しかし、本校生徒の中には正式な診断が無くても、発達障がいの傾向と思われる特徴的な行動をする生徒が多く見受けられるので、診断の有無に関わらず、日常の授業や学校生活の中で、発達障がいの傾向を的確に捉え対応できるよう職員の資質向上を図ることが重要である。

イ 指導方針
 発達障がいの診断がなくても、発達障がいの傾向がある生徒については、発達障がいのそれぞれの特徴に応じた対応が有効であるケースが多い。そのような傾向が見られるケースについては、発達障がいにおける対応や支援の方策を適用してみることを原則としている。そのために、引継ぎの情報がなくても、本校入学後の授業や学校生活における特徴的な行動の把握や生徒の困り感の発見に努めている。また、職員全体の情報の共有化が重要であり、年度当初に「配慮を要する生徒」についての研修会を定時制・通信制それぞれで開催している。
 今年度はこれまでの本校の支援体制を「1次支援・2次支援・3次支援」に分類し、個別の配慮を要する生徒については、2次支援に位置付け、通常の授業やホームルーム活動の中で支援していくこととした。
 さらに個別の支援を必要とするケースについては、3次支援として個別の支援チームを編成して対応した。直接対応する担任をバックアップする目的から、メンバーは担任を中心に、教頭・特別支援コーディネーター・養護教諭・関係者から構成した。該当生徒の今後の支援の方針についての共通理解を図りながら、組織的に対応することにした。
 また、発達障がいの傾向がある生徒だけを対象とするのではなく、その生徒を含む授業やクラス経営をどのように改善する必要があるかの視点から、学校教育活動全般で対応することとし、これを1次支援に位置付けている。ここでは、「ユニバーサルデザイン」の視点に基づく様々な工夫に取り組んでいる。

ウ 成果と課題
 外部講師を招き、発達障がいについての特徴や対応のポイントについての研修を職員が積むことにより、特徴的な行動や生徒の困り感をより的確に把握できるようになってきた。また、具体的な対応の場面でも、発達障がいに伴うパニックを未然に防いだり、二次障がいに陥ることを予防することができるようになった。今後、さらに積極的な支援を行うためには、該当する生徒を含めた授業全体をどうわかりやすいものにする工夫や、よりよいクラス経営のための職員のさらなる資質向上が求められている。
 該当する生徒のスクリーニングは、これまでは出身中学校や前籍校からの引継ぎの情報と入学後の職員の観察が中心だった。今後は、より客観的な生徒の実態把握をするために、作成した「保護者対象のアンケート用紙」や「気になる生徒のチェック票」を活用したい。
 さらにこのようなチェックシートを含め、生徒の実態をより客観的に把握するための手立てを講じていく必要がある。

(2)発達障害のある生徒に対する授業やテストにおける評価方法等の工夫

ア 授業の際の配慮事項等
 発達障がいの生徒にとってわかりやすい授業は、一般の生徒にとってもわかりやすい授業であるとの視点から、「字を大きく書く」とか「必要のないところは消す」などの板書を見やすくわかりやすくするための工夫や、ゆっくり丁寧に短いセンテンスで説明する等の工夫を行っている。
 今年度は、小中学校における「個別の配慮項目」を参考に、本校の教員が日頃の授業で行っている工夫や配慮についてチェックするとともに、具体的な実践事例を集約し「ユニバーサルデザイン化の実践事例集」を発行した。

イ テストにおける配慮事項等
 必要に応じて別室でテストを受けることができるよう配慮している。

ウ 評価における配慮事項等
 特別の配慮は行っていない。

エ 成果と課題
 授業におけるそれぞれの教員の工夫により、該当する生徒にとってもわかりやすいだけでなく、他の一般生徒にとっても、わかりやすい授業を目指した改善が進んでいる。また、これまでそれぞれが実践してきた内容について、研修会を通じて互いに共有したり、事例集を通じて互いに参考にしたりすることができた。
 テストの内容や評価の問題については、評価の公平性の観点から現段階では通常の生徒と全く同じ基準で実施している。今後特別の配慮が必要かどうかについては、職員間で共通理解を図りながら、合意形成を図る必要がある。

(3)発達障害のある生徒に対する就労支援

ア 支援の方策と内容
 発達障がいの傾向のある生徒についても、一般生徒と同様に本校におけるキャリア教育の計画に基づいて対応している。しかし、それだけでは不十分な場合には、担任を中心に個別に対応するようにしている。
 特に明らかな障がいがあり、手帳を取得しての就労が必要なケースについては、山形障害者職業センターや村山障害者就業・生活支援センター等の外部の就労支援機関との連携を図りながら対応している。すぐに就労に結びつくのが困難なケースについては、関係機関とのつながりを在学中に構築し、卒業後も継続して支援が受けることができるよう配慮している。
 また、就労に結びつけるためには、挨拶の仕方や言葉遣い等の基本的なマナーを身につける必要もある。そこで今年度は「就労に必要なスキルチェック票」を作成し、活用するとともに、外部アドバイザーの方を講師に「キャリア学習会」を開催し、体験的な学びの機会を作った。

イ 成果と課題
 今年度は具体的な就労に結びつくケースまでには至らなかったが、個別の相談や情報交換を通じて、関係機関との連携を密にすることができた。今後は、それぞれの機関の支援の特徴を踏まえながら、より効果的な支援を連携して提供できるような体制強化をはかっていきたい。
 生徒を対象に行った社会的スキル向上のための研修会は、生徒にとっても好評であった。今後ともこのような体験的に学ぶ機会が必要である。

(4)全ての生徒に対する理解推進等の指導の在り方

ア 指導の工夫と取組
 発達障がいの傾向のある生徒には、クラス内での仲間のサポートも大変有効であり、支援を必要とする生徒のクラスにおいては、必要に応じて担任がクラスの生徒に発達障がいについての基本的な話をして、具体的な場面での対応についての理解を図るようにしている。
 特に今年度は、職員研修会で「ピアサポート」について学び、生徒同士がサポートしあえるようなクラスの人間関係作りの重要性について、理解を深めることができた。

イ 成果と課題
 支援を必要とする生徒の行動の特徴を理解することにより、普段の授業や生活の中で温かく見守ったり、必要なサポートができたりする生徒が増えてきた。また、支援を必要とする生徒に困り感が生じたときに、職員への連絡が迅速になされるようになり、クールダウンなどの対応が的確にできるようになった。
 今後は、「ピアサポート」の手法を取り入れ、同じクラスの仲間としてより積極的なサポートができるような人間関係作りを普段のホームルーム活動の中で取り組んでいけるようにしたい。

(5)教職員や保護者の研修等

ア 研修会開催の回数・時期・研修内容等
 これまでも、発達障がいについての本校独自の研修会や「配慮を要する生徒」についての事例検討会を定時制・通信制それぞれで開催し、職員の資質向上を図ってきた。今年度はさらに、教職員対象の研修会を3回実施した。
 6月には中間報告会における基調講演として「高等学校における個別支援―発達を踏まえた関わり―」について学んだ。午後からの第1回研修会では「高等学校におけるピアサポートの実践」について学んだ。第2回研修会は7月に開催し、就労支援をテーマに「障害への実際的対応」について、実践的に学ぶことができた。9月には「ユニバーサルデザイン」をテーマに、第3回研修会を開催し、支援の基本的な考え方と具体的な実践事例について、体験的に学んだ。
 また、保護者対象の研修会として、昨年度に引き続き定時制のPTA研修会と通信制における「通友会」主催の講演会をそれぞれ実施して、発達障がいについての理解を図る機会を設けた。

イ 成果と課題
 外部の第一人者の方を講師に招いての研修会で、発達障がいの特徴や対応のポイントをより深く理解することができるようになった。また、具体的な支援の方策についても、より実践的に学ぶことができ、現場での対応や支援に役立っている。
 生徒指導においても、単なる問題行動なのか発達障がいが関係しているのか、医療機関との連携が必要なのか等、複雑な事例が増えているので、より適切に対応できるよう、さらなる力量形成を図る必要があり、今後とも職員のスキル向上のための研修に力を入れていく必要がある。
 今年度は、本校に赴任してくる教員を対象として研修会を、年度当初に開催し、新任者の方の発達障がいについての理解を早期に図ることができ、職員全体の意識を高まることができた。

(6)その他の支援に関する工夫

 これまでの取り組みを通じて、それぞれの教員が教科指導やクラス経営の面で、独自に工夫してきた指導のノウハウが蓄積されてきている。今年度は「ユニバーサルデザイン化」の視点から、これらのスキルを全職員で共有し、全体での活用を図るため「実践事例集」を作成した。
 また、1次支援として一般の生徒も対象として社会的自立のためのスキルを高めるために「ライフスキル講座」を年間を通じて系統的に実施した。定時制では「総合的な学習」の時間の中で、3部1年次を対象に毎週の時間割に位置付け、年間30回のプログラムを実施した。
 通信制においては、「総合的な学習」として希望者を対象に年間10回開催した。学習内容や指導法については、外部アドバイザーの助言を得ながら試行錯誤で進めたが、生徒への事後のアンケート調査をみても、大変有効であったことが裏付けられた。

2 研究の方法

(1)特別支援教育総合推進事業運営協議会の設置

ア 構成

NO 所属・職名 備考
1 山形県教育庁特別支援教育室・指導主事  
2 FR教育臨床研究所・所長 外部アドバイザー
3 本校精神科校医 外部アドバイザー
4 山形県立霞城学園高等学校・校長  
5 山形県立霞城学園高等学校・副校長(研究委員長)  
6 山形県立霞城学園高等学校・教頭(1・2部)  
7 山形県立霞城学園高等学校・教頭(3部)  
8 山形県立霞城学園高等学校・教頭(4部)  
9 山形県立霞城学園高等学校・研究主任  
10 山形県立霞城学園高等学校・研究副主任  

イ 運営協議会開催回数・検討内容
 平成22年6月と平成23年1月に年間2回開催した。第1回の運営協議会では、今年度の事業計画と重点課題について協議し、全体の企画と運営について方針を立てた。
 第2回の運営協議会では、今年度の事業の総括と来年度以降の本校における特別支援教育の在り方について検討した。

ウ 特別支援教育コーディネーターの指名や個別の教育支援計画の策定等具体的な方策
 特別支援教育コーディネーターは、定時制・通信制のそれぞれの保健主事が指名されている。支援が必要な生徒には、個別の支援チームを編成し対応する体制をとっており、コーディネーターは、必要に応じてこのチーム会議を招集するとともに、メンバー全体で支援方針を立てる場合の調整機能を担っている。
 個別の教育支援計画は、支援チームで対応している生徒について、本校独自に作成したシートを用いて作成した。また、前年度からの継続のケースについては、8月に支援チームの会議を開催し現在の状況について検討を行った。

エ 成果と課題
 チームで対応することにより、多角的な視点から支援方針を検討することができ、より適切な対応ができるようになった。また、直接担当となるクラス担任等のサポート体制ができ、より組織的な対応ができるようになった。今後は、該当する生徒の経過を継続してみていくためにも、支援チームの打合せ会を定期的に開催するようにしていく必要がある。

(2)専門家の活用

ア 構成

NO 所属・職名 備考
1 FR教育臨床研究上・所長
2 本校校医 精神科医
3 スクールカウンセラー 臨床心理士
4 スクールカウンセラー 臨床心理士
5 山形県立ゆきわり養護学校・教諭
6 山形大学医学部・教授
7 山形県立上山高等養護学校・教諭
8 発達支援研究センター・代表
9 山形県立保健医療大学・教授
10 山形障害者職業センター・主任カウンセラー
11 村山障害者就業・生活支援センター・職員
12 山形大学大学院教育学研究科・教授
13 心理相談室「ハートハウスゆき」・代表カウンセラー
14 山形県立山形養護学校・教諭

イ 専門家の活用状況
 昨年度に引き続き「教員の資質向上」「適応支援」「就労支援」「社会的自立のためのスキルアップ」の4つのテーマを設定し、14名の専門家を、本事業の「外部アドバイザー」として委嘱した。テーマごとに研究会を開催し、本校における発達障がいの対応について助言をいただいた。全体では、年間で8回の研究会を開催するとともに、個別の事例については該当する外部アドバイザーの先生に来校の上ご指導をいただいた。

ウ 成果と課題
 それぞれの分野の専門家からアドバイスをいただけることで、個別の適応支援や就労支援で適切な対応ができた。また、特別支援教育に対する本校の教育方針等、学校経営の基本的な方向性についても指針を得ることができた。今後は、具体的な実践として定着させていくことが大きな課題である。

(3)関係機関との連携

ア 他の高等学校や技能教育施設、特別支援学校との連携
 地元の3校の特別支援学校の関係者を外部アドバイザーとして、参加いただいたことで、特別支援学校における実践事例やノウハウを活かすことができた。
 また、今年度新たに本校新入生の出身中学校との「情報交換会」を開催し、本校と中学校との連携の在り方について協議した。

イ 発達障害者支援センターやハローワーク等関係機関との連携
 山形障害者職業センターや村山障害者就業・生活支援センターの方に、外部アドバイザーとして参加いただいたことで、外部の支援機関の取組みや事業内容について理解を深めることができ、個別の就労支援で情報交換を図りながら、連携することができた。

ウ 地域の教育施設や人材等の活用
 発達障がいの子供の支援活動に取り組んでいる地元のNPO団体や、カウンセリングの相談事業を行っている地元の関係者に、外部アドバイザーとして定期的に参加いただいたことで、個別の適応支援で連携を図ることができた。

エ 成果と課題
 高等学校以外の特別支援学校や中学校、他の支援機関の取組みの事例について情報交換ができ、個別の支援の方策や、学校以外の場や卒業後の継続した支援の体制作りに大変有効であった。
 課題としては、個別の支援について連携を図る際に、「障害者」という表現がその支援団体にある場合、特に親の理解や承諾を得ることが大変難しく、具体的な支援まで結びつかないという現状がある。

(4)関連事業等との連携

 特になし

3 今後の我が国における発達障害のある生徒の支援の在り方についての提案等

 発達障がいのある生徒への個別の手立てが重視されている傾向があるが、実際の教育現場では、通常の生徒と一緒に授業や諸行事に参加している状況である。発達障がいのある生徒も含めた授業のあり方や学級経営全体をどのように改善していくかという、ユニバーサルデザインの視点が必要である。
 また、発達障がいについての理念を教育現場で根付かせるためには、職員の理解や資質向上が不可欠であり、教員養成の段階から組み込むことが必要である。
 ライフスキル教育については、今年度1年間を通して実施したところ、多くの成果がえられたので、全国的に普及を図る必要がある。

4 その他特記事項(エピソードを含む)

【発達障がいの生徒の特別支援チーム対応の事例】

「アスペルガー症候群の診断を受けている男子生徒」

○入学前の対応

  • 本校入学決定後、出身中学校より担当者が中学校時の個別の教育支援計画書をもとに、引き継ぎを行う。
  • 本校での特別支援チーム編成は、本人の学校生活の様子を見て判断することにする。
  • 中学校からの申し送りのあった配慮する事項について新年度開始早々に全職員に伝えて、授業がスタートする。
  • 本人・保護者と担任・部主任・養護教諭が面談をし、対応を打ち合わせる。(本人が学校生活に慣れるまで、保護者が教室の前で待機する等)

○入学当初から担任が行った個別対応

  • 連絡帳・電話を通じての母親との情報交換
  • 4校時(1部授業終了)終了後、本人職員室に行き、担任と連絡事項を確認し、連絡帳を通じて保護者へも伝える。
  • 授業の座席は入口に近い最前席、集会時の座席は出入り口に近い後ろの席に配置。
  • 気分を鎮めたい時には、先生に断って図書室か保健室に行くように約束。
  • 付せん紙を持ち歩き、教科の先生からの指示が視覚的に確認できるようにする。
  • 最初の定期考査時はクラスの他の生徒に配慮して別室受験を行い、保護者が近くで待機する。

○特別支援チーム発足と支援について
 ≪本人の困り感と周りの困り感≫

  • 5月中旬ごろから、クラスの仲間を意識した発言が多くなった。
  • 国語総合で、現代語から古典の分野に入り、ますますわからなくなってきている。
  • 数学で因数分解がわからないのでなかなか取り組もうとしない。
  • 宿題はやってくると自信もって授業に取り組めるが、やってこないと集中力に欠ける。課題のプリントをしてこないとき、他の生徒たちと答え合わせをしていても板書している答えを写そうとしない。写すように指示しても従わない。
  • 質問に対して答えてくれると「かまってくれる」と思い、行動がエスカレートする。
  • このような、授業中の彼の発言に、クラスの中にはストレスを感じている生徒がいる。

<困り感の整理>

  • クラスの生徒が、彼の言動・行動(質問のタイミング、内容、回数・声の大きさ等)にストレスを受けている。
  • 彼自身が一斉授業に適応できていない。

《改善の課題》
◎一斉授業を一人で受けられるようになる。

【支援内容】

 1日の終わりに、担任と養護教諭が教科担当者からの情報をもとにふり返りをさせ、一斉授業を受けるのに“不適切なことがあったら”教えていく。(夏休みまでを目安に実施)

【具体的な支援の流れ】

  1. 教科担当者は、授業の様子を4校時終了までに保健室に一報をいれる。
    (または、担任の机上にプリント〈メモ〉を提出してもらう)
  2. 最終校時終了後、職員室の担任と連絡の確認を行う。担任と共に保健室に行き、養護教諭と1日のふり返りを行う。

【成果】

 ◎ 全ての教科の授業で、良好になったわけではないが、改善が見られた。

【夏休み以降の支援】

  • 約1か月の休み以降は、休み前に戻ったように感じられた。また、前期期末考査の結果が中間考査よりも悪かったので、担任より「集団による一斉授業の受け方」と「本人の学習の仕方」を指導した。

【学習の仕方の支援】

○ 毎授業における教科の進度具合を教科書で確認する。

  • ノートで確認する。(ノートを取れなかったが教科によっては色チョークで書かれたところは写せるようになった。)
  • プリントを確認する。
  • 宿題の有無を確認する。
    ⇒授業で分からないところは家庭学習で保護者が復習を行わせる。(教科書を読むだけで理解が出来ているようだ)

【成果】

 ◎毎授業において、教科書をどこまで勉強したかを意識するようになった。課題も印をつけて行うようになってきた。
 ◎後期中間考査は、前期期末考査よりも良い成績であった。
 ◎冬休み明け以降は、保護者が担任に代わって学習支援を行っている。
 ◎現在は、4月から行っている連絡帳で双方の情報交換を行っているだけである。

【2年次に向けた特別支援】

  • 進級とともに、新年度に向けて特別支援チームの構成メンバーを早期に検討し、特別支援計画を作成する。

5 総括

 事業2年目の今年度は、昨年度実施した全国の先進校の視察の成果や、外部アドバイザーの先生方の継続的な助言をいただき、次の様な多くの成果を上げることができた。
 ○ 研修会による職員の実践的なスキルアップ
 ○ 各種チェック票の作成と活用
 ○ 「ユニバーサルデザイン化の実践事例集」の発行
 ○ ライフスキル講座の系統的・継続的な展開
 ○ 外部機関との連携による情報交換会や就労支援のためのキャリア学習会の開催
 また、中間報告会や研究発表会には、県内のほとんどの高等学校や特別支援学校の関係者に参加いただき、本校の特別支援教育の取組みについて、広く報告することができた。
 今後は、本校における実践をより深めていくとともに、その成果を広く発信し、特に県内の高校への普及を図っていきたい。

6 モデル校の概要

1 学級数と生徒数(平成22年5月現在)

課程   学科 第1年次 第2年次 第3年次 第4年次 合計
学級数 生徒数 学級数 生徒数 学級数 生徒数 学級数 生徒数 学級数 生徒数
定時制 普通科 3 128 3 101 3 79 3 45 12 353
3 128 3 101 3 79 3 45 12 353
通信制 普通科                   890
服飾科 1 13 1 10 1 6     3 29
1 13 1 10 1 6     3 919
4 141 4 111 4 85 3 45 15 1272

2 教職員数(平成22年5月現在)

校長 副校長 教頭 教諭 養護教諭 常勤講師 実習教諭 非常勤講師 事務職員 司書 その他
1 1 3 48 2 4 1 12 7 1 4 84

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)

-- 登録:平成24年10月 --