特別支援教育について

都道府県名　北海道
学校名　北海道札幌北高等学校定時制課程
学校所在地　北海道札幌市北区北25条西11丁目
研究期間　平成21～22年度

1　概要

1　研究課題

　発達障害のある生徒へのソーシャルスキル指導の在り方に関する実践研究

2　研究の概要

　本校（定時制）では、医師から診断は受けていないものの、LD、ADHD等の発達障害と考えられる生徒や、自閉症があり施設に通所している生徒など、特別な教育的支援を必要としている生徒の入学が増加している。こうした状況を踏まえ、発達障害について理解を深め、教職員の実践的な指導力の向上を通して、障害のある生徒の社会性の育成を図ることが喫緊の課題となっている。
　また、近年、定時制においては、特別な教育的支援を必要としている生徒など、多様な生徒に対応した教育活動の充実が求められていることから、本事業の研究成果の啓発・普及を通して、高等学校における特別支援教育の推進を図っていきたい。

3　研究成果の概要

　この事業を通して、発達障害について教職員の理解を図るとともに、校内体制を整備し、発達障害のある生徒及び発達障害の状態を示す生徒への指導の在り方について研究、実践した。このことにより、全ての教職員の発達障害のある生徒への指導及び支援に係る意識が向上し、指導及び支援の充実が図られるとともに、発達障害のある生徒を含む全ての生徒への指導が充実してきた。教職員の生徒に寄り添いながらの粘り強い指導もあり、例年に比べ早い時期から学校に落ち着きが見られるようになった。

1　発達障害についての理解の充実

• 外部講師を招いた校内研修会の実施（平成21年度3回、平成22年度1回）
• 大学教授を助言者に招いた学習会の実施（平成21年度12回、平成22年度9回）
• 事例研究会の実施（平成22年度）
• 先進的な取組を行っている学校への訪問や、研究会参加等の研修成果を全教職員へ環流

2　校内体制の整備・充実

• 特別支援委員会の充実（委員の拡充と定期開催）
• 大学教授を招いた学年会の実施（平成21年度3回）

3　指導体制、指導方法の充実

• 発達障害のある生徒への指導方針の策定と実践
• 学習会の成果を踏まえた授業改善
• 習熟度別少人数学習の導入（平成21年度数学科・体育科、平成22年度数学科・体育科・英語科）
• 社会性の向上を目指した国語科における絵手紙指導の充実
• 大学生による学校支援ボランティア活動の導入（平成22年度）

2　詳細報告

1　研究の内容

（1）発達障害のある生徒に対する指導方針

ア　生徒の実態（把握方法も含めて）
　本校には、発達障害の診断を受けている生徒、施設から通っている生徒、また、診断は受けていないが発達障害の状態を示す生徒も在籍している。そのため、平成21年度に1学年の生徒を対象とした実態把握を、担任及び教科担任が北海道教育委員会が例示しているチェックリストを用いて行った。併せて、専門家に授業中の様子を観察してもらい、生徒の実態についての助言を得た。
　平成22年3月と平成22年5月には、「生徒の困り感に関するアンケート」を在校生全員について行い、専門家に分析してもらった。

イ　指導方針
　担任、教科担任及び専門家の実態把握によって抽出された生徒を対象として、障害の特性などについて情報を整理し、さらに教科担任会議や職員会議で報告することで情報の共有化を図った。さらに、専門家から発達障害の特性と指導する上での留意点についても助言を受け、教職員の共通理解のもと次のような指導方針により指導及び支援に当たることとした。

• 生徒一人一人の特性を把握し、特性に応じた支援を行う。
• 様々な場面で生徒に積極的に声を掛け、生徒との信頼関係を早い段階で築く。
• 多動性、衝動性のある生徒に対しては、その場での説明や指導を大事にし、活動内容を理解させる。
• 理解、成長には時間がかかるので、あせらずゆっくりと繰り返し指導する。

ウ　成果と課題
〈成果〉

• 発達障害の特性を把握し、個々の生徒の障害の状況等に応じた指導をすることにより、対象の生徒が周りとの関係を良好に保ち、授業内容もより理解できるようになった。
• 発達障害のある生徒はもとより、様々な教育的な支援を必要とする生徒に対して、教師が適切な場面で声を掛け、必要に応じて面談、指導をすることにより、早い段階で学校が落ち着いた雰囲気になった。
• 「生徒の困り感に関するアンケート」においては、他校（通信制課程）の生徒及び大学生のデータと比較するなどして、本校の生徒の実態を把握し、指導方法の改善に活かすことができた。

〈課題〉

• 発達の検査やその特性に応じた指導方法等について外部関係機関との連携を強化する必要がある。
• 授業においては、発達障害の特性を把握し、わかりやすい教材を用意する、集中が維持できる時間を考慮してトピックを入れるようにするなど、展開の工夫・改善をさらに進める必要がある。
• 社会性を高める機会として、行事や部活動等における指導の充実を図る必要がある。

（2）発達障害のある生徒に対する授業やテストにおける評価方法等の工夫

ア　授業の際の配慮事項等

• 授業においては、高校生としてのプライドを傷つけないように配慮しつつ、基礎・基本の確実な定着を図る。そのため、授業は生徒の実態にあった進度ですすめ、繰り返し学習させ、「分かる楽しさ」を実感できるような授業をめざす。
• 操作をしたり、比較ができる具体的な教材・教具を用いたり、ICTを活用することにより、生徒の授業に対する興味・関心を高めるように工夫をする。
• 難しい漢字にはルビを振るなど、生徒の実態に応じた教材を作成する。
• 周りからの刺激に配慮した座席位置を工夫する。
• 1年生の「数学1」、「英語1」、「体育」、3年生の「体育」において習熟度別少人数学習を取り入れ、個に応じた指導を行う。
• 「大学生による学校支援ボランティア活動」を導入し、個に応じた指導を行う。
• 国語科において「絵手紙」指導を通して、表現力を高め、社会性を育成する。

イ　テストにおける配慮事項等

• 試験日程、試験範囲の確認を十分に行う。
• テストの設問の表現を理解しやすいよう工夫する。
• 事前準備のための勉強会、事後の補習等を実施し、繰り返し学習内容の定着を図る。

ウ　評価における配慮事項等

• 全ての生徒に対してテストの結果だけではなく、ノート提出、小テスト、授業における行動の観察など多様な観点からの評価を工夫する。
• 年度当初に、各教科における評価方法を生徒に周知し、理解させる。

例）「数学1　授業プリント　№1（はじめに）」の内容から

エ　成果と課題
〈成果〉

• 校長や、専門家による授業参観をした後に行われる学習会などにより、授業における配慮事項について各教科で研修を進めることができ、授業改善の観点を次のように明確にすることができた。
1. 「分かる楽しさ」を実感させるために、生徒の実態にあった授業内容を工夫する。
2. 机間巡回指導等で生徒の様子をしっかり観察し、必要に応じて声を掛ける。
3. 性急に成果を求めず生徒のゆっくりとした成長を認める。
4. うまくいったこと、できたことは積極的に褒める。
• 平成21年度より数学科と体育科で実施した習熟度別少人数学習は、個々の生徒に目が行き届き、生徒の障害の状況に応じた指導が可能となった。効果が大きかったので、平成22年度には、英語科も取り入れた。
• 「絵手紙」を教材にした国語の授業は、表現力の育成、個性の発揮、言葉の伝え方等において効果があり、生徒が生き生きと意欲を持って取り組んでいた。また、手紙を渡す相手のことを意識させることにより、社会性の向上を図る上で有効であった。
• 「大学生による学校支援ボランティア活動」の導入により、生徒一人一人に丁寧な支援をすることができ、個に応じた指導を行う上で有効であった。

〈課題〉

• 習熟度別少人数学習やティームティーチングの導入を複数教科で行うには教員が足りないため、可能となるような工夫が必要である。
• 絵手紙の指導については、1年生を中心に実施しているが、表現力やコミュニケーション能力を育成するためにはいずれの時期に実施することが効果的かをさらに検討する必要がある。また、実施回数についても経費等も踏まえて検討する必要がある。
• 「大学生による学校支援ボランティア活動」をより有効なものにするための授業プランの在り方についてさらに検討する必要がある。

（3）発達障害のある生徒に対する就労支援

ア　支援の方策と内容

　平成21年度は福祉制度を活用した就労支援は実施していない。平成22年度は自閉症があり、在籍中から通所施設を利用していた生徒が、卒業後そのまま障害者の雇用・自立支援をしている食品製造の会社で働くこととなった。
　発達障害のある生徒を含め、全ての生徒に対して自分の将来について見通しを持つことができるように次のような指導を行ってきた。

• 1年次から、HRや面談等を利用した進路指導を行った。
• 「総合的な学習の時間」の中で、先輩の話を聞く機会を設けたり、進路講演会などを実施した。
• 2年生、3年生で希望生徒を対象にインターンシップを実施した。
• 個別に進路相談、面接指導を実施した。

イ　成果と課題
〈成果〉

• 発達障害の状態を示す生徒を含め、生徒の進路に対する意識が高まり、進路活動に積極的に取り組んだ。

〈課題〉

• 福祉制度を活用した就労支援を充実させる必要がある。
• インターンシップ等の就業体験をより多く積ませ、望ましい勤労観や職業観を高めるとともに、特別活動や部活動などを通し社会性や協調性をさらに育成していく必要がある。

（4）全ての生徒に対する理解推進等の指導の在り方

ア　指導の工夫と取組
　全校集会やHRにおいて、生徒がお互いを理解し、支え合いながら同じ教室で生活していくことの大切さについて理解を深める機会を設定するよう工夫しており、その際、障害のある生徒の行動の特性を説明するとともに、苦手なことを要求しないことや、やさしく声を掛けるようにすることなど、接し方について指導をした。

イ　成果と課題
〈成果〉

• 全体指導により、他の生徒が発達障害のある生徒の困難な状況や気持ちに気付くようになり、授業中に分かりやすく教えたり、実習では手を貸したり、給食の時間に話しかけたりするようになった。また、学校祭などの行事においては、声を掛け一緒に作業をしている光景も見られるようになった。

〈課題〉

• 授業において生徒同士の「学び合い」を体験させることや、特別活動において協調性を育成する効果的な指導方法をさらに研究する必要がある。
• 発達障害のある生徒と上手にコミュニケーションをとることができない生徒が一部にいるため、発達障害の理解推進等の具体的な指導を組織的に行う必要がある。

（5）教職員や保護者の研修等

ア　研修会開催の回数・時期・研修内容等

（ア）外部講師による校内研修会の実施（4回）
　平成21年度第1回　平成21年7月8日（水曜日）「発達障害を理解する」
　講師：石狩教育局義務教育指導班指導主事（特別支援教育スーパーバイザー）北海道新篠津高等養護学校教諭
　内容：生徒の実態把握の方法及びユニバーサルデザインについて
　平成21年度第2回　平成21年12月7日（月曜日）「発達障害と非行」
　講師：北海道教育大学教職大学院教授
　内容：発達障害についての説明及び事例について
　平成21年度第3回　平成22年2月9日（火曜日）「発達障害の理解と支援」
　講師：北海道教育大学札幌校教授
　内容：発達障害についての説明及び特別支援教育について
　平成22年度第1回　平成22年11月9日（火曜日）「事例研究と生徒の実態」
　助言者：北海道大学大学院教授
　内容：
　1．ネグレクトに関する事例研究
　2．生徒の困り感に対するアンケート分析

（イ）授業研究や校内特別支援委員会等への専門家による助言
　助言者：北海道大学大学院教授
　内容：助言者に授業後の学習会（8回実施）や学年団の会議（3回実施）に参加してもらい、授業者が苦労していることなどについて、意見や感想を述べ、それらについて発達障害支援の観点から指導の在り方について助言を受けた。さらに、校内特別支援委員会への参加やコーディネーターとの打ち合わせにより、委員会の活動計画や生徒の指導法についても助言を得た。

（ウ）他校への視察

• 発達障害支援モデル事業指定校への訪問
  　北海道名寄産業高等学校
  　北海道士別東高等学校
  　和歌山県立和歌山東高等学校
  　群馬県立前橋清陵高等学校
• 「学生支援員」導入校への訪問
  　北海道札幌東高等学校
• 「知的障害生徒自立支援コース」を設置する学校への訪問
  　大阪府立八尾翠翔高等学校

（エ）各種研究会、報告会への参加

• 平成21年度特別支援教育連携セミナー
• 北海道高等学校教育相談研究会第38回研究大会
• 日本発達障害ネットワーク第2回研修会
• 日本教育心理学会第52回総会
• 平成22年度北海道教育大学附属特別支援学校公開研究協議会
• 平成22年度国立特別支援教育総合研究所セミナー　など

（オ）成果の普及等
　本校の現状と取り組みを次の研究会等で報告するともに、参加者から助言を得た。

• 平成21年度石狩管内高等学校教育研究会
• 平成21年度札幌市南・豊平・中央区特別支援地域ネットワーク第5回学習会
• 特別支援教育士の会北海道支部平成21年度春期研修会
• 平成22年度北海道高等学校教育課程研究協議会
• 平成22年度特別支援教育総合推進事業研修会「特別支援に関する協議会」
• 北海道札幌西高等学校定時制課程校内研修会
  　次の2校には、本校に視察訪問をしていただいた。取組を紹介するとともに、情報交換をすることができた。
• 東京大学教育学部附属中等教育学校
• 北海道三笠高等学校

イ　成果と課題
〈成果〉

• 校内研修会において、発達障害について外部講師から説明を受け、発達障害の特性や指導方法などについて理解が深まった。
• 「事例研究」では、授業やその他の場面での気付き、担任と教科担任との連携の重要性、外部機関との連携の必要性を学んだ。
• 学習会では、発達障害の特性を理解した授業の進め方などについて適切な助言を受け、授業改善に役立てることができた。
• 他校への視察や各種研究会、報告会への参加によって得られた情報を全教職員に還元し、全教職員が発達障害についての理解を深め、意識を高く持つようになった。

〈課題〉

• 研修会を踏まえて、授業の進め方や生徒指導について、より具体的な指導方法を研究する必要がある。
• 発達障害のある生徒も含め、どの生徒にも「分かる授業」の実現に向けて、各教科で研究を深め、実践する必要がある。
• 教科担任会議などにおいて、教員間の情報の共有化を推進する必要がある。
  必要に応じて外部専門機関と連携し、適切なアドバイスを受けて生徒の指導に役立てる必要がある。

（6）その他の支援に関する工夫

　発達障害や発達障害の状態を示す生徒に対しては、様々な場面で生徒を観察し、必要に応じて声を掛けることが大切であることから、授業中だけではなく、給食室や廊下等、さまざまな場面で積極的に声を掛けるようにした。

2　研究の方法

（1）特別支援教育総合推進事業運営協議会の設置

ア　構成

NO	所属・職名	備考
1	北海道札幌北高等学校　教頭
2	北海道札幌北高等学校　教務部長	委員長
3	北海道札幌北高等学校　養護教諭	副委員長、コーディネーター
4	北海道札幌北高等学校　教諭	各分掌から4名
5	北海道札幌北高等学校　教諭	該当クラス担任
6	北海道大学大学院　教授	助言者

　本委員会は、平成18年度に設置され、特別支援教育に関する校内研修会等を実施してきた。本モデル事業の推進に当たり平成21年度にその人員を拡充し、教務部2名（部長含む）、生徒指導部2名、進路指導部1名のほか、該当生徒が所属するクラスの担任、北海道大学大学院教授が構成員となっている。さらに、該当生徒が所属する学年の主任も適宜加わっている。

イ　運営協議会開催回数・検討内容
　必要に応じ適宜開催し、計16回開催した。期日及び議題は次のとおりである。

• 平成21年度
  第1回5月26日（火曜日）
  　議題：事業説明会報告、今年度の活動
  第2回6月22日（月曜日）
  　議題：石狩教育局・本庁との打合せ報告、学校訪問報告、生徒の実態把握、発達障害学習会、校内研修会
  第3回9月14日（火曜日）
  　議題：見学旅行引率支援、発達障害学習会報告
  第4回9月25日（月曜日）
  　議題：見学旅行引率支援、発達障害学習会、研究会報告、今後の活動の確認、教務規定
  第5回11月11日（水曜日）
  　議題：見学旅行引率支援報告、発達障害学習会、校内研修会、学校訪問
  第6回12月3日（火曜日）
  　議題：発達障害学習会、校内研修会、研究会参加
  第7回2月3日（水曜日）
  　議題：発達障害学習会、校内研修会、学校訪問報告、研究会報告、学生支援員、来年度の活動予定
  第8回2月19日（金曜日）
  　議題：発達障害学習会、アンケートの実施、学生支援員の導入、来年度の活動予定
  第9回3月19日（金曜日）
  　議題：生徒の実態把握、来年度の活動予定
• 平成22年度
  第1回5月10日（月曜日）
  　議題：今年度の活動、学校支援ボランティア活動
  第2回7月16日（金曜日）
  　議題：学校支援ボランティア活動、発達障害学習会
  第3回10月18日（月曜日）
  　議題：学校支援ボランティア活動、第2回校内研修会、研究会報告
  第4回11月24日（水曜日）
  　議題：配慮を必要とする生徒、第2回校内研修会、研究会参加
  第5回11月26日（金曜日）
  　議題：配慮を必要とする生徒
  第6回2月1日（火曜日）
  　議題：研究会参加、今年度の反省
  第7回3月
  　議題：来年度の活動

ウ　特別支援教育コーディネーターの指名や個別の教育支援計画の策定等具体的な方策
（ア）特別支援教育コーディネーターの指名
　平成18年度より、養護教諭が指名されている。平成22年度は特別支援委員会の中から選出しており、校務分掌への位置付けはされていない。
（イ）個別の教育支援計画の作成
　今年度は、該当生徒について、教科担任会議や職員会議で情報を共有し、基本的な内容を確認した。

エ　成果と課題
〈成果〉
　特別支援委員会の構成メンバーを拡充し、定期的に開催することにより、学校としての取り組みをスムーズに展開することができた。
〈課題〉
　個別の教育支援計画の充実と活用の在り方について研究を進める必要がある。

（2）専門家の活用

＜石狩管内専門家チーム委員＞
ア　構成

NO	所属・職名	備考
1	札幌はな発達クリニック　医院長
2	石狩振興局保健環境部保健福祉室子育て支援・相談担当主査
3	石狩振興局保健環境部千歳地域保健室健康推進課子育て相談担当主査
4	千歳市役所保健福祉部こども療育課発達相談係長
5	石狩振興局保健環境部児童相談室指導援助課判定援助係長
6	北海道教育大学札幌校　准教授	委員長
7	北海道拓北養護学校　教諭	副委員長
8	北海道札幌北高等学校定時制　教頭
9	千歳市北進中学校　教諭
10	恵庭市立柏小学校　教諭
11	北広島市立大曲東小学校　教諭
12	当別町立当別小学校　教諭
13	当別町立当別幼稚園　教諭
14	北海道教育庁石狩教育局義務教育指導班　指導主事

イ　専門家の活用状況
　研究を始めるに当たり、石狩管内専門家チーム委員である石狩教育局の特別支援教育スーパーバイザーに助言を受けるとともに、校内研修会の講師を依頼した。

ウ　成果と課題
〈成果〉

• 研究の始めに当たり助言を受けることで、研究の推進計画を具体化させることができた。
• 専門家チームの中から、講師として招聘し、校内研修会を実施することができ、教職員が発達障害について基本的な理解をすることができた。

〈課題〉

• 今後も多様な生徒が入学してくることが予想されるため、小・中学校との連携のために、専門家チームを積極的に活用する必要がある。

（3）関係機関との連携

ア　他の高等学校や技能教育施設、特別支援学校との連携
　本事業の平成19、20年度モデル校の北海道名寄農業高等学校と、平成20、21年度モデル校の北海道士別東高等学校から、実践研究の取組についての説明と助言を得るとともに、継続的に資料の提供を受けている。
　北海道札幌西高等学校定時制課程とは、本校の取組を紹介しながら、情報の交換をすることができた。
　北海道札幌高等養護学校には、特別支援学校における授業の様子、使用教科書、実習などについて説明を受けた。

イ　発達障害者支援センターやハローワーク等関係機関との連携
　発達障害の相談（検査）で札幌市教育センターと連携し、生徒の特性について詳しい説明を受け、今後の指導についての助言を頂いた。
　児童相談所や子ども自立支援団体には虐待について相談をし、協力して生徒を取り巻く環境改善に努めることができた。

ウ　地域の教育施設や人材等の活用
　自閉症のある生徒が見学旅行に参加するに当たり、当該生徒が利用しているケアホームの職員の方に同行してもらった。
　平成22年度には、学校支援ボランティア活動で北海道教育大学札幌校と連携することができ、大学生に支援をしてもらうことができた。

エ　成果と課題
〈成果〉

• 定時制における研究の在り方については、同じ定時制である北海道士別東高校学校の取り組みが参考になった。
• ケアホームの職員が見学旅行に同行したことにより、円滑に見学旅行を実施することができた。引率支援の際に、自閉症の生徒に対するタイミングの良い声の掛け方や見守り等、支援の方法について参考となることが多かった。
• 事例に応じて様々な外部専門機関と連携でき、生徒の特性に合った指導ができた。
• 大学生による学校支援ボランティア活動の導入により、生徒一人一人丁寧に指導することができ、個に応じた指導に効果があった。

〈課題〉

• 関係機関とどのように連携し、どのような協力を得る必要があるのかを明確にした上で、連携・協力の体制づくりを進めることが必要である。
• 同じような状態を示す生徒が在籍する高等学校と、さらに積極的に実践の情報交換をしていく必要がある。
• 該当生徒の就職については、早い段階からの指導が大切なことから、ハローワーク等との効果的な連携について研究する必要がある。
• 大学だけではなく、地域からの支援ボランティアの活用を考えていく必要がある。

（4）関連事業等との連携

　特になし。

3　今後の我が国における発達障害のある生徒の支援の在り方についての提案等

　発達障害のある生徒が高等学校に進学しようとする場合、高等養護学校の定員など様々な事情で普通高校で勉強したいという本人・保護者の希望から定時制高校を選ぶ事例はますます増えてくると予想される。定時制高校には、発達障害のある生徒はもとより、精神疾患のある者、不登校経験者、他の高等学校を退学した者など様々な生徒が在籍している。コミュニケーションをとることが苦手だったり、問題行動を繰り返す者もいる。そのため、定時制高校では、生徒一人一人のニーズに合った支援が必要であるが、小・中学校の特別支援学級や高等養護学校とは学級定員や教員数が異なり、人的な面での配慮による指導の充実は難しい。
　一人一人の障害の状況に対応した支援を充実するために、平成21年度、1学年の数学において導入した習熟度別少人数学習は、教員の持ち時間の増加や使用教室の割り振りなど、さまざまな課題があったが、教員の理解の下、実施することができた。担当教員からは「強く手応えを感じている」との報告を受けており、生徒からも「勉強が分かるので楽しい」、「個別に親切に教えてくれる」等の感想を聞いている。生徒にとっては「自分のことをしっかり見てもらっている」と実感でき、大学教授からは「大変有効である」との助言を得ている。この成果を受けて、平成22年度にはさらに1学年の英語、1，2学年の体育にも導入し、数学と同様にたいへん効果があがった。このように、習熟度別少人数学習はたいへん効果的であることから、定時制高校においては速やかに導入するべきであると考えている。
　また、平成22年度から導入した大学生による学校支援ボランティア活動は、生徒にとっても、将来教職に就く学生にとってもとても有効であった。理解するのに時間がかかる生徒に一人一人丁寧に指導することができ、生徒も分かることを実感することができた。今後、大学生に限らず、広く地域の人材等を活用していくことが必要であると考える。
　本校の取組を通し、教科の授業をはじめ、学校行事や部活動など、学校生活における全ての場面で、教職員及び周りの生徒が発達障害について理解し、お互いを認め合う集団作りを進めるための指導の充実が大切であることを実感した。生徒が社会に出て自立できるように指導するため、特に定時制高校では生徒の実態に合ったカリキュラム作りが求められる。一方で、発達障害者の就労支援の充実のために、文部科学省と厚生労働省のより一層連携した取組をお願いしたい。

4　その他特記事項（エピソードを含む）

　平成21年度の見学旅行では、ケアホームの職員に引率の支援をお願いした。発達障害のある生徒に対して、交通機関を利用しての移動時、起床・就寝時、自主研修等での支援を行った。
　日常当該生徒に接しているケアホームの職員によるタイミングの良い声の掛け方など、支援の実際を間近に観ることができたことは、教員にとって今後の指導に活かせる良い機会になった。

5　総括

　定時制の高校には、在籍している様々な生徒の一人一人のニーズに合った教育をすることと、一人一人の特性に合った支援をすることが求められている。発達障害について研究することは、全ての生徒の支援にも役立つことと考え、2年間の研究事業を進めてきた。
　研修会や学習会を通して、教職員の意識は確実に変わってきた。教室には様々な生徒がおり、その一人一人が様々な困り感を抱えながらも生活している。そのことを十分に配慮しながら生徒に寄り添った教育が大事であると再確認することができた。
　生徒に分かる喜びを体験してもらいたいと、教材研究や授業の進め方などについて研究を進めてきた。特に、習熟度別少人数学習はとても効果があり、一人一人の目が行き届き、対応することができた。内容も一人一人の生徒に合った内容で授業を進めることができた。しかし、限られた教職員定数では、実施できる教科・実施時数には限度がある。教職員定数を含めた教育条件の整備が急務である。
　平成22年度に北海道教育大学札幌校と連携し、大学生による学校支援ボランティア活動を導入できたことは、理解度に差のある生徒一人一人に丁寧に指導することができ、とても意義あるものであった。今後は大学生だけではなく、本校で実施しているインターンシップのように広く地域に協力をお願いすることも考えたい。
　生徒は日々変化している。その変化に私たち教職員も柔軟に対応し、謙虚に勉強し、生徒一人一人に寄り添っていくことが教育の原点であるとこの2年間で改めてそう感じた。

6　モデル校の概要

1　学級数と生徒数（平成22年5月現在）

課程	学科	第1学年		第2学年		第3学年		第4学年		合計
		学級数	生徒数	学級数	生徒数	学級数	生徒数	学級数	生徒数	学級数	生徒数
定時制	普通科	3	128	3	85	3	71	2	34	11	318

2　教職員数（平成22年5月現在）

校長	教頭	教諭	養護教諭	非常勤講師	実習助手	ALT	事務職員	司書	その他	計
1	1	22	1	4			2		2	33