都道府県名 宮崎県
指定校名 宮崎大学教育文化学部附属中学校
すべての生徒が、心身ともに充実し、希望をもって生活できる共生社会の実現を目指して以下の目的を設定する。
(1) 通常の学級、特別支援学級の生徒が互いに理解を深め、よりよいかかわりを持つことができるように計画的な交流及び共同学習を実施し、育てたい力の変容を追及する。
(2) これまでの研究成果をもとに通常の学級に在籍する困難さを持つ生徒に対する特性を生かした支援の在り方を整理する。
(1) アンケート調査及び聞き取り調査を実施する。
(2) 教科指導・行動面における支援の在り方を「チーム会」で検討し評価しながら問題解決を図る。
研究に際しては、計画的な交流及び共同学習の実践の観点から「交流及び共同学習研究班」と、通常の学級における特別支援教育の在り方の整理という観点から「支援方法研究(センター的役割)班」という二班に分かれて研究を進めていくこととした。特別な教育支援を必要とする生徒の指導方法と開発においては、本校の特別支援システムにのっとった取組である。
通常の学級、特別支援学級の児童生徒についての理解を深め、よりよいかかわりをもつことができる生徒を育成するために、計画的な交流及び共同学習を実践し、生徒に育てたい力の変容を追求することを目的として研究を進めた。
小中学校9か年の学びの中で、交流及び共同学習を実践する中で目指す子どもの姿と育てたい力を段階的に設定した。育てたい力を高めることで、目指す子どもの姿に近づけると考えている。
小学校を低・中・高の3段階に、中学校を前期・後期の2段階に分け、小中学校9か年の学びを5段階に区切り、交流及び共同学習における目指す子どもの姿と育てたい力を示した(図1)。
育てたい力を測る尺度として、評価規準を作成した。この評価規準は、通常の学級の児童生徒の力を測る尺度(コミュニケーション(受容)、コミュニケーション(表出)、気付き、仲間意識、かかわり、理解の6観点78項目で構成)、特別支援学級の児童生徒の力を測る尺度(コミュニケーション(受容)、コミュニケーション(表出)、反応、仲間意識、自立、理解の6観点120項目で構成)に分けて作成した。この評価規準は、児童生徒の育てたい力を測り、その高まりを示す際に用いていく。評価規準については紙面の都合上省略する。
交流及び共同学習を開始するに当たり、児童生徒の意識を調査するため、アンケートを作成、実施した。アンケートは、児童生徒、通常の学級の教諭、保護者を対象とした。内容は交流及び共同学習に関すること、特別支援学級や特別支援学級の児童生徒に対する意識に関することとした。
支援方法研究班の研究目的は以下の2つである。1つは、小中学校の通常の学級に在籍し、発達障がいのある児童生徒が抱える様々な困難さを軽減するために、障がい特性に応じた支援を実施し、効果を検証する。効果が認められた支援方法を障がい特性や抱えている困難さごとに整理すること。
2つ目は、発達障がいのある児童生徒が在籍する学級の学級担任及び教科担任に対して、支援方法に関する支援を行う。それによって、対象の児童生徒に観られる変化を明らかにするとともに、学級担任及び教科担任の意識の変化並びに学級に観られる変化を明らかにすることである。
教師が、児童生徒一人一人のニーズに応じた特別支援教育を行っていく上で、どのような点で苦慮しているのか実態を把握するために、宮崎市内の小中学校の特別支援学級の教師を対象にアンケートを実施した。表1は、「困っていること」として挙げられたもの中でも、特に多く回答のあった項目である。
小 学 校 | 中 学 校 |
○ 学習面 | ○ 学習面 |
学習態度、教科(国・算・音・図・家) | 学習態度、教科(国語・数学) |
○ 生活面 | ○ 生活面 |
持ち物の整理整頓、こだわり | 持ち物の整理整頓、孤立、こだわり |
○ 他機関との連携 | ○ 教師間の連携 |
機能が分からない、解決しない | 実践が進まない、組織で対応していない |
○ 保護者との連携 | |
障がい受容 | |
○ 学級経営 | ○ 学級経営 |
理解啓発 | 理解啓発 |
このアンケートの結果から、小中学校ともよく似た項目が挙がってきた。今後、期待することとして、教材教具の提供や巡回相談を含めた具体的且つ直接的な支援、さらに研修会や事例検討会などの間接的な支援等を必要としていることが示された。
障がい特性に配慮した授業研究及び研究会を実施した。特別支援学級(中学1年)に在籍する自閉的スペクトラムの生徒を対象にコミュニケーションスキルを高めることを目的とした生活単元学習の授業を行った。次に示すのは、その授業の中で行った具体的な手立てである。
障がい特性に配慮して行った授業をベースにして、支援方法研究会を実施した。参加者は、附属学校の教師と公立の小中学校の教師である。授業での具体的手立てについてビデオで解説した後、意見交換を行った。さらに、各学校における課題や問題点も出された。2回目の研究会では、出された事例に対してインシデントプロセス法を活用して協議を行った。
個に視点を当てた個別の支援方法については普及が進み、効果も実証されつつあるが、集団の中で活かしにくいものもあり、教育現場のニーズに応じているとは言えない。そこで、支援を行う前にアセスメントの一環として行うことの多いWISC−�Vを使い、その検査結果から見られる特性を生かし、尚且つ集団の中で実施可能な手立てを、教科並びに単元ごとに整理することとなった。現在、算数・数学において作成中である。また、今後、学習訓練においても認知特性を生かした支援方法を整理していく。
各学年の通常の学級の生徒の実態把握を目的として、平成18年度より、校務分掌の中に特別支援教育部を設置した。構成は、各学年の特別支援学級から1名、通常の学級から1名。さらに今年度より、生徒指導主事も加わった。コーディネーターの運営で、毎月定例部会を開き、各学年の実態について情報収集を行った。それを職員会議で報告し、共通理解を図ることができた。
学年所属の教員及び教科の担任で構成され、各学年の特別な教育的支援を必要とする生徒への具体的な支援の方法や手立てについて協議した。個別の指導計画や個別の教科指導計画を手持ち資料として準備し、学期や年度の節目に評価や次年度の引継ぎを確認した。
学年会のたびに支援を必要とする生徒の様子や気になる生徒の情報交換を行い、その内容は、職員会で報告された。
特別な支援を必要とする生徒の学級担任は、対象生徒の特性に応じた個別の指導計画を作成し、どのような支援が必要かを整理した上で指導にあたった。作成に当たっては、WISC−�VやK−ABCにおいて、本人の特性を十分吟味し、保護者の聞きとりも行いながら、家庭と連携して作成した指導計画をもとに指導にあたることができた。
特に学力に困難のある生徒への指導には個別の教科の指導計画を作成し、それぞれの教科の専門性に応じた支援の方法を考え、指導・支援にあたることができた。
夏季休業中の特別支援教育研修において、今年度は「通常の学級に在籍する特別な支援を必要とする生徒の特性とその支援方法」について、全職員で研修を行った。今後、さらに研修を継続し、深めていく必要がある。
交流及び共同学習研究班におけるアンケートでは、交流に対する考え方では学年間に有意な差は認められなかった。特別支援学級に対する関心の有無については、学年間に有意差が認められた。低学年と高学年、中学年と高学年間に5%水準で有意差があった。いずれも男女間に1%水準で有意差が認められ、男子に比べ女子の方が関心が高いことが分かった。
保護者については、授業以外での交流、授業における交流共に、学年間に有意な差は認められなかった。家庭における話題については、中学年と高学年間に1%水準での有意差が認められ、中学年に比べ高学年の方が話題に上がっていることが明らかになった。これは、特別支援学級の子どもと一緒に活動したむかばき宿泊学習のことが高学年の家庭で話題になっていた一方、中学年では、一緒になって行う行事や授業が少なかったことが要因と考えられる。
教諭については、ほとんどの教諭が交流及び共同学習に肯定的であった。また、特別支援学級の児童生徒が授業に入る場合には、ほとんどの場合、特別支援学級担任も一緒に授業に入ることを望んでいることが分かった。
今後、以上のような実態が、交流及び共同学習の推進を通してどのように変容していくのかを明らかにしていきたい。
支援方法研究班においては、小中学校の先生方を対象とした支援方法研究会を継続し、地域のセンター的役割を担いながら、より多くの事例を収集していくことが今後の課題といえる。そして、できるだけ多くの事例に対応できる支援方法を整理していきたい。
(1) 質問紙による調査行動観察による調査(育てたい力の評価規準を用いた観察)の双方からの総合的な判断を行う。
(2) 学習における支援マニュアルと学習訓練の支援マニュアルの整理を行い、授業実践においてデータを取り、支援方法の有効性について追究する。
初等中等教育局特別支援教育課
-- 登録:平成21年以前 --