共生社会を目指した障害者理解の推進 (特別支援教育研究協力校)中間報告書

都道府県名 東京都
指定校名 羽村市立松林小学校

1 研究のねらい

互いのよさやちがいを認め合いながら、個性を尊重し合う児童を育成する
〜人権尊重の精神を基盤とした共生社会の実現を目指して〜

2 研究内容

(1)障害者理解のための学習に関する研究

 東京都特別支援教育推進計画に示された副籍やエリアネットワークのセンター校である東京都立羽村養護学校との連携を活用しながら、人権教育を基盤とし、各教科、道徳、特別活動、総合的な学習の時間において、障害のある人への理解を深める指導の在り方について研究する。

(2)障害のある児童・生徒と障害のない児童・生徒の支援の在り方に関する研究

 東京都特別支援教育推進計画に示された副籍や校内に設置された特別支援学級、広域エリアネットワークのセンター校である東京都立羽村養護学校との連携などを活用しながら、主に直接的な交流を通して、学校生活全体を通した障害のある児童と障害のない児童の支援の在り方について研究する。

(3)交流及び共同学習に関する研究

 平成18年度東京の教育21研究開発委員会特別支援教育部会の成果を踏まえ、都立特別支援学校に在籍する児童との交流及び共同学習を通して、特別支援学校と小学校の交流及び共同学習の在り方について研究する。

(4)教員や保護者の研修等に関する研究

 羽村市特別支援教育連絡会や広域エリアネットワークのセンター校である東京都立羽村養護学校と連携しながら、保護者や教職員に対する、特別支援教育や障害のある児童・生徒についての理解啓発活動の在り方について研究する。

3 研究の方法

(1)研究推進部をはじめ、関連する部会、校内委員会、通級指導学級等、本校の既存組織を有機的に活用し、全教職員で本研究を進める。
(2)市内の特別支援教育総合ネットワークである「羽村市特別支援教育連絡会」、その他必要な関係機関と連携を図る。
(3)隣接する東京都立羽村養護学校(広域エリアネットワークのセンター校)と連携する。

4 研究経過

本校では以下の4点を中心に研究を進めた。

  • 一人一人の教育ニーズに応じた指導
  • 一貫した支援の継続
  • 交流及び共同学習の促進
  • 副籍制度による地域とのつながり
     

(1)「一人一人の教育ニーズに応じた指導」と「一貫した支援の継続」

1 校内委員会の設置

 月1回定例の校内委員会を実施する。定例の校内委員会だけでなく必要に応じて臨時に開催することもあった。
校内委員会の構成メンバー
校長、副校長、教務主任、生活指導主任、研究主任、保健主任、特別支援教育コーディネーター、通級指導学級主任、巡回教育相談員

2 個別の指導計画の作成

 4月に配慮を要する児童の実態把握のために児童理解資料を作成し、5月に個別指導計画の作成を行う。

3 松林小コミュニケーションの教室(通級指導学級)との連携

 羽村市内の公立小学校通常の学級に在籍している児童で、知的障害を除く発達障害あるいは情緒面で課題があり、個別指導や小集団指導を必要としている児童を対象としている松林小コミュニケーションの教室の学級担任と連携を図り、配慮を要する児童について必要な手立ての助言や指導方法について情報を共有し、児童への支援を進めた。

4 巡回教育相談員との連携

 毎週木曜日に定期的に来校し、児童や保護者との面談、児童の様子の観察に当たっている巡回教育相談員と連携することにより、情報の共有化を図り、配慮を要する児童への助言等により支援を進めた。

5 就学支援シートの活用

 就学支援シートを作成し、活用を進めた。

(2) 交流及び共同学習の促進

東京都立羽村養護学校との交流及び共同学習

1 ねらい

  • 隣接している学校として、子ども同士の行き来を図る。
  • 隣接している学校として、教職員の交流を図る。

2 今年度の学年ごとの交流及び共同学習の活動状況

学 年 活動日 内 容 場 所
第1学年 10月
10月
10月
10月
11月
1月
リトミック
リトミック
体育科、生活単元共同学習
体育科、生活単元共同学習
体育科、生活単元共同学習
体育科、生活単元共同学習
都立羽村養護学校
都立羽村養護学校
松林小学校
松林小学校
松林小学校
松林小学校
第2学年 7月
12月
12月
2月
じゃんけん列車、動物体操
リトミック
リトミック
おもちゃづくり
松林小学校
都立羽村養護学校
都立羽村養護学校
松林小学校
第3学年 6月
10月
1月
2月
3月
昼休み交流(自由に一緒に遊ぶ活動)
遊具を使って遊ぶ
風船遊び
図工(ものづくり)
お楽しみ会
都立羽村養護学校
松林小学校
都立羽村養護学校
松林小学校
松林小学校
第4学年 6月
9月
12月
2月
3月
昼休み交流(自由に一緒に遊ぶ活動)
昼休み交流(自由に一緒に遊ぶ活動)
昼休み交流(自由に一緒に遊ぶ活動)
図工(ものづくり)
羽村市動物公園へのミニ遠足
・隣接する羽村市動物公園へ合同で遠足に行く。
松林小学校
都立羽村養護学校
松林小学校
松林小学校
羽村市動物公園
第5学年 6月

10月
11月
12月

2月
バケツ稲作り(田植え)
・その後、毎週、稲の観察
持久走
バケツ稲作り(稲刈り)
収穫祭
・バケツ稲作りで収穫したお米を使っておにぎりを作って食べる。
図工(ものづくり)
松林小学校

松林小学校
松林小学校
松林小学校

松林小学校
第6学年 10月
1月
レクリエーション
リレー、ドッジボール
松林小学校
松林小学校

3 その他の交流及び共同学習

  • 運動会
    (特に参加種目はない。)
  • 羽村養護学校文化祭
    (リハーサル風景を松林小の児童が学年毎に見学に行く。)
  • 松林小ロング集会
    (羽村養護学校の児童を招待する。)
  • 松林小作品展
    (羽村養護学校の児童の作品を展示する。)

(3) 副籍制度による地域とのつながり

1 サポートフレンド活動(お便り交換事業)

 平成18年度から東京都立羽村養護学校の副籍の児童に「お便り」(学校通信、学年通信等)を届けるサポートフレンドお便り交換事業を行っている。サポートフレンドには、自主的な児童人権活動(以下、「ふわふわ人権クラブ」と呼ぶ。)に所属している児童や積極的にサポートフレンド活動の取組を希望する児童が担当している。副籍の児童の学年、性別に配慮して担当する児童を決めている。

2 自主的な児童人権活動(以下、「ふわふわ人権クラブ」と呼ぶ。)

 ふわふわ人権クラブは、みんなで思いやりのある美しい松林小学校を作ろうというテーマのもと、相手にとって優しい言葉「ふわふわ言葉」、相手を傷つける言葉「とげとげ言葉」の理解と啓発、相手の立場に立つ「話す・聞く」活動に取り組み、児童の人権教育推進を図っている。

(4) 教員や保護者の研修

特別支援教育理解のための校内研修会を下記のように実施する。

5月21日(月) 教育相談全体会「児童理解について」
6月20日(水) 講演「特別な支援をあたりまえの支援に〜チームで進める共生・共同の教育〜」
講師 東京都立あきる野学園養護学校
校長 池田 敬史先生
8月27日(月) 講演「障害理解とPDD」
講師 本校通級指導学級 上山 雅久教諭
10月14日(水) 講演「特別支援学校の教育課程」
講師 東京都立羽村養護学校 深沢 光洋教諭
講演「羽村養護学校小学部の生活」
講師 東京都立羽村養護学校 松本 恵美子教諭
講演「副籍について」
講師 東京都立羽村養護学校 荻原 稔教諭
11月 5日(月) 研究授業「体育科と生活単元」
本校第1学年2組と東京都立羽村養護学校小学部第1学年
羽村市立松林小学校  藤井 歩教諭
東京都立羽村養護学校 阪本 真樹子教諭 石川 奈美教諭
松本 恵美子教諭 赤尾 知美教諭
鈴木 かおり教諭 小林 史子教諭
小笠原 靖子教諭
講師 東京都教育庁指導部義務教育特別支援教育指導課
統括指導主事  山中 ともえ先生
11月14日(水) 意見交流会
「松林小学校の児童理解のための現状報告と課題解決に向けた取組について」
1月23日(水) 「今年度の交流と次年度に向けて」
講師 東京都教育庁指導部義務教育特別支援教育指導課
統括指導主事  山中 ともえ先生
2月15日(金) 教育相談全体会「児童理解について」

5 成果と課題

 校内委員会が発足し、特別支援教育に対する教員の意識の向上が見られた一年であった。通級指導学級の設置に伴い、通級指導学級の担任との連携を図る中で児童に対する理解も進んでいき、校内においてよりよい支援体制を構築することができるようになってきた。
 交流及び共同学習に関しては、これまでの経緯を受けて各学年とも東京都立羽村養護学校との交流を進めることができた。交流の内容は「昼休み交流」(休み時間に養護学校の児童と一緒に遊ぶ活動)から体育科の持久走、図工科での工作まで幅広く活動を行うことができた。交流を進める中で、児童同士が親近感をもつようになり、活動の終わりには別れを惜しんで涙ぐむ児童も見られた。このように「場の設定」という側面からは今年度も一定の成果を収めることができた。
 第1学年において単元名「追いかけ玉入れ(体育科・生活単元学習)」で研究授業を行えたことは大きな成果として挙げられる。研究授業を行う中で両校の教育課程の違いをどのように授業に生かしていくかが当初の課題であった。事前の打合せを重ねる中で教科やねらいを全く同じにすることはないということで、それぞれの学校の教科、ねらいを設定して授業を行うことができた。
 教育課程の中にどのように位置付けていくのか、評価をどのように行っていくのかが大きな課題である。

6 今後の展望

 「遊び」による交流活動から一歩進めて教育課程に位置付けられた活動を行っていく。その中で両校の教育課程の違いをどのように交流及び共同学習の取組の中に生かしていくかが重要になってくる。両校の教育課程をもとに、何ができるかを検討し、実践していくようにしたい。さらに、交流及び共同学習を実施するに当たり、事前の準備を入念に行うことが必要である。次年度は両校の研究について事前の打合せを年間計画に設定し、互いに連絡を密にしながら研究を進めていく。
評価規準についても事前の協議で整理することにより、ねらいがより明確になっていく。具体的には児童一人一人の活動を見取る中で行っていく。遊びでは児童の選んだ活動ではどうだったかということも重要な要素である。児童の活動の中で、会話をした言葉も丁寧に分析し、拾い上げていくことも評価につながるので、そのような取組を進めていきたい。

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)

-- 登録:平成21年以前 --