都道府県名 福島県
指定校名 いわき市立平第四小学校
特別支援学校・特別支援学級との交流及び共同学習を通して、障害者についての関心・理解を深め、相互の人格と個性を尊重し合う「共生社会」の実現に向けた「認め合い」、「助け合い」、「支え合い」の心と態度を育成する。
『 互いの理解が深まる交流及び共同学習の研究 』
平成17・18年度、本校は、文部科学省より「児童生徒の心に響く道徳教育推進事業〔本校テーマ:生命(いのち)を大切にする心をはぐくむ道徳教育〕」の指定を受け、児童に、自分や周りの人々の命(身体・心)を大切にする心や互いを尊重し合う心(人権)を、道徳の時間を中心に教育活動全体を通して育んできた。児童のそうした実態を基盤に、平成19年度、本研究指定を受け、長年に渡って交流及び共同学習を進めてきた平養護学校と本校児童との、また、本校の特別支援学級と通常の学級との交流及び共同学習を見直し、改善していくことにより、障害のある人と障害のない人との互いの関心・理解を深め、相互の人格と個性を尊重し合う「認め合い」・「助け合い」・「支え合い」の態度の育成を目指し、本テーマを設定した。障害のある人との共生を窓口に、周りの人々(ごく身近な人々〜世界の人々)との共生、自分自身との共生(自己への気づき)へと広げていきたい。
【本校の共生社会を目指した障害者理解推進構想図】
(1) 各行事実施後、平養護学校・本校の児童の活動の様子、変容を記録していく。(アンケート・感想・観察)
(2) 本校及び両校教職員間の話し合いの機会を定期的に設け、記録の累積をもとに評価・改善を加えていく。
(3) 特別支援学級との交流及び共同学習についても、同様とする。
【 本年度実施した主な交流及び共同学習等の概要 】
月/日 | 平養護学校等との主な交流及び共同学習 | 月 | 本校の特別支援学級との主な交流及び共同学習 |
4/19 4/26 |
○「交流及び共同学習計画」立案、検討 (校内) ○年間計画・内容及び児童の様子〔配慮すべき点〕についての打合せ (両校担当者) |
4 | ○「交流計画」立案 ○交流学級との交流開始 ○遠足(1・4年)○交流清掃開始(4年) |
5/ 7 5/10 |
○交流田植え事前打合せ(5年) ○交流田植え実施(5年) |
5 | ○運動会練習・運動会(1・4年) ○交流給食・クラブ活動開始(4年) ○朝の英語タイム・帰りの会交流開始(1年) |
6/12 6/21 6/27 |
○両校打合せ「年間計画・内容検討・児童の 実態(配慮すべき点)把握」(全学年) ○市陸上競技大会(相互の応援) ○アルバム作成・交換、交流七夕会招待状 作成・届け(全学年) |
6 | ○体育科〔プール〕(1・4年生) |
7/ 3 | ○交流七夕会(全学年) 全体会後、1〜3年学級交流、4〜6年学年交流 | 7 | ○体育科〔プール〕(1・4年生) |
8 | 8 | ○体育科〔プール〕(1・4年生) | |
9/20 | ○交流稲刈り事前打合せ(5年) | 9 | ○音楽祭練習(4年) ○集会活動(1・4年) |
10/2 10/31 |
○交流稲刈り(5年) ○交流平窪祭事前打合せ(各校担当者) |
10 | ○学習発表会練習・発表会(1・4年) ○交流給食開始(1年) ○図工科(4年) |
11/16 11/29 |
○交流平窪祭(全学年) 全体会、餅つき後、1〜3年学級交流、4〜6年学年交流 ○交流及び共同学習 算数科・国語科(5の1) |
11 | ○体育科〔持久走〕(1・4年) |
12/19 | ○交流及び共同学習 算数科(2の1)国語科(3の1) ○学年交流(年賀状作り)全学年 |
12 | |
1/23〜 2/6 1/31 |
※折り紙教室(鈴木氏との出会い) 生活科・総合的な学習の時間1〜4・6年(5年児童は昨年度実施) ※盲導犬について(関根氏との出会い) 総合的な学習の時間 4年 |
1 | ○図工科(4年) ○体育科〔なわとび運動〕(1年) |
2/14 2/20 |
○交流及び共同学習 総合的な学習の時間(5年) ○交流及び共同学習 国語科(6の1) ○卒業交流〔平養護学校にて〕(6年) ○年間の活動反省・評価 ※次年度計画立案 |
2 | ○図工科(4年) ○年間の活動反省・評価 ○次年度計画立案 |
3 | 3 | ○集会活動(1・4年) ○図工科(4年) |
交流及び共同学習がより児童同士の関心や理解を深め、有意義なものとなるよう、次の点(a・b・c・d)を意識(配慮)した実践を行った。
a 年間に複数回行う直接交流・間接交流を単発的に行うものとしてではなく、児童の意識の中でつながりあるものとして捉えられるよう計画・方法・内容を学年の実態(発達段階・これまでの交流の経験)を考慮して、工夫、改善する。 |
1年生にとっては、平養護学校児童との初めての「出会い」であり、これから進めていく交流及び共同学習の導入期でもある。そこで、楽しい出会い、交流を続けていきたいと児童自身が感じるよう、1年間の直接交流・間接交流を以下のように実施した。
(ア)招待状・七夕飾り作成
(イ)七夕交流会実施(7月3日)生活科 2時間
(ア)交流平窪祭り実施(11月16日)生活科2時間
○ 直接・間接の交流及び共同学習を重ねるにつれ、うちとけて積極的に友達とかかわろうとする姿が見られた。また、平養護学校の友達についての新たな気づきなど、児童の変容が見られた。
○ 両校が交流内容について事前に確認し、スムーズに交流することができた。
b 6年間を通した両校児童のかかわり合いを大きな特色と捉え、「互いの関心や理解」・「人格・個性の尊重」において、低学年(1・2年生)では「出会う(活動を共にする)」段階、中学年(3・4年)では、「気づく・感じる(友達のよさ等についての新たな気づき・発見)」段階、高学年では、「広がる・深まる・高まる(友達のよさ等についてのさらなる気づき・発見と自分の行動の選択、ふり返り)」とつながるよう、工夫、改善する。 |
4年生にとって体育館での学年交流活動は初めてだったが、回を重ねるにつれ、自分たちが楽しいだけではいけないことに気づき、平養護学校の友達の障害を考えて行動したり、話しかけたりする姿が見られるようになった。また、今まで「手を貸さなければ動けない」「かわいそう」と思って見ていた平養護学校の友達が自分の力で動けることや、自分たちと同じように得意なこと、好きなことがあることにも気づいた。
5年生は、田植え、七夕交流、稲刈り、平窪祭りと、年間を通した交流及び共同学習を行う。第1〜4学年までの活動で得た「気づき」を広げ、深めることをねらいとしている。
6年生は、小学校最後の年であり、今までとは違う「陸上競技大会」や平養護学校を訪問しての「卒業交流」を行うことになり、交流への意識も高い。
○ 5年生は、活動の多い一年間だったので、互いのかかわる回数が増え、昨年度よりも親しみを感じ、友達のよさ等についてのさらなる気づき・発見が多くなった。
○ 6年生は、陸上大会で、平四小のユニフォームを着た平養護学校の選手を熱心に応援し、共に頑張ろうとする意識が育ってきた。卒業交流では、平養護学校を訪問し、施設・設備等の工夫を体感し、共生社会の在り方を見つめ直すことができた。
c 小学生同士の交流及び共同学習の他に、「障害のある成人の方」との交流を通して、新たな気づきを得たり障害について正しく理解したりできるようにする。 |
盲導犬と暮らしている関根さんから、盲導犬の話や体験談を聞き、数名の子が盲導犬と歩き、感想を発表した。子どもたちが国語科で学習した「点字」を用いて関根さんに手紙を書いたり、手紙を手にした関根さんから書く時の注意について話を伺った。
日本折り紙協会認定講師として活動している鈴木さんから、障害を持って生まれたご自身のこれまでの様子や体験談を聞いた後、実際に折り紙の折り方を教えていただいた。鈴木さんは、平養護学校の卒業生であり、自身の本校との交流体験にも触れ、「一見反応が少ないように見える平養護学校の友達の心にも届いている、交流をとても楽しみにしている」ことなどを話してくださった。その話は、子どもたちにとって、これまでの交流について自信になるとともに、これからの交流への意欲の高まりにも役立つものとなった。関根さんや鈴木さんとの出会いで、夢や希望を持って生きることのすばらしさや困難と向き合い乗り越えるために努力することのすばらしさについて感動し、「自らも実践していこう」と意欲を持つ児童が多かった。
d 教科等の交流及び共同学習を進めることにより、学習内容の定着を図ると共に、互いの理解を深める。 |
実施学年は2年・3年・5年・6年。
平養護学校の児童は、集団の中での学習を通して、同学年の児童が学習に取り組む姿勢を感じながら、学習に取り組むことができた。また、様々な人の考えを知り自分の考えを深めることができた。本校児童にとっては、「養護学校の友達も同じ内容を勉強している。いい考えを持っている。はっきり発表している。」など行事等での交流及び共同学習では気づかなかった新たな気づきが見られた。
○ 年度始めに全学年が打合せを行ったことで互いの学校の児童の実態を知ることができ、支援等配慮すべき点をつかむことができた。
○ 交流及び共同学習の内容を事前に児童に知らせ、計画作りに児童の考えを積極的に生かすことにより、児童の参加意欲、活動意欲を高めることができることが分かった。
○ 招待状や手紙による感想交流などの間接交流を通して、互いの気持ちを知り、理解を深め、次の交流及び共同学習への意欲や期待を高めることができた。
○ 児童の学習の様子、感想から、交流及び共同学習の意義は大きいと考える。繰り返し、積極的に実施することで、児童同士も慣れ、違和感なく行われるようになる。年間を通して実施するよう、計画を年度初めに協議し、実践していくことが必要である。
○ 両学校の教師が、それぞれの学校の児童によりかかわり合えるような役割分担、協力体制(TTによる授業の進め方など)等について十分検討する必要がある。
各学年で、学年だよりや学級懇談の際に、平養護学校や講師(障害のある)との交流の様子、児童の感想等を保護者に伝えた。また、交流田植えや稲刈り、平窪祭りで保護者の方(PTA)に協力を得た際、交流の様子を参観いただくなどした。
〔行事、実技教科、給食の時間等〕
特別支援学級の2名(1年・女、4年・男)が、それぞれ同学年の交流学級を中心として交流及び共同学習を進めることにより、友達と共に学習する楽しさや集団の中での行動、社会性を培う。また、子どもたちには、相手への理解を深めたり、協力し合ったり、思いやったりする心情を養う。
<給食の交流の様子>
<行事「音楽祭」・「学習発表会」の様子>
<給食・体育・行事・英語タイム・ALTとの活動の様子>
○ 困っているD男に子どもたちが優しく接するようになり、D男に感謝の気持ちが育ってきた。
○ D男が関心を持つ子どもができ、休憩時に共に過ごし、心の交流ができるようになってきた。
○ 学級の子どもたちが、E子が困っていると手助けしてあげることができるようになってきた。
● D男、E子ともに会話が苦手なため、友達や、担任との意思疎通がうまくいかないことがあるので配慮や支援が必要である。
(次の点を特に意識して取り組んだ。)
◎道徳の時間との関連〔道徳の時間の導入や終末で生かした実践(第3学年)〕
道徳的実践力の育成を目指す視点から、平養護学校との交流及び共同学習による実体験を道徳の時間の導入や終末で想起させながら、価値把握ができるように授業の展開を工夫した。
【 実 践 例 〜「交流七夕会」と「道徳の時間」との関連から〜 】
行事・道徳の時間 | 児童の活動と反応 | 指導上の配慮事項 |
7月3日 交流七夕会 (2時間) *学級交流 <参加者> 3年1組 39名 平養護学校 1名 |
● 歌唱、おりひめ彦星ゲ−ム、七夕飾り付け学級発表 ○ 事前に2時間かけて準備し、楽しみにしていたが、平養護学校児童の突然の欠席によりゲ−ムに学級の約65%の児童が参加できなかった。十分な活動ができないことを残念がる児童もいたが、参加した友達に進んで話しかけたり、ゲ−ムを見ながら拍手をしたりして積極的に参加しようとしていた。また、不参加の友達を心配する気持ちも表れていた。 |
○ 体調不良により平養護学校児童3名のうち1名だけの参加となった。事前の準備を生かして1名の児童と心温まる交流ができるよう配慮した。ゲ−ムでは十分な活動ができなくても参加児童や不参加児童に対しての思いやりの心を育むことができた。 |
10月2日 道徳の時間 主題名 [励まし合う友達] (ねらい) 友達と互いに理解し、助け合っていこうとする態度を養うことができるようにする。 |
[授業の終末段階] ○ 平養護学校の友達が喜んでくれるようにと願って、みんなで工夫し、がんばって衣装や小物を作ったことを思い出した。 ○ 友達がとてもうれしそうにしていた様子を振り返りながら、助け合いや友達を大切にする心の尊さを実感できた。 ○ 前回不参加だった友達が平窪祭りでは参加できるよう、全児童が、期待していた。 |
○ 交流七夕会の「おりひめ彦星ゲ−ム」でバギ−に乗った友達に喜んでもらうため、手作りの衣装を着させてあげた様子を想起させた。 ○ 相手の気持ちや立場に立って考えられるよう配慮した。 |
11月13日 道徳の時間 主題名 [命のために] (ねらい) 生命の尊さを感じ取り、かけがえのない生命を大切にしようとする心情を育てることができるようにする。 |
[授業の導入段階] ○ 平養護学校の友達の体調を気づかい、みんなが元気に参加できることを願ったり、一緒に活動することを楽しみにしたりする気持ちが高まった。 |
○ 交流七夕会に不参加の友達が、平窪祭りには参加できると話題提示し健康だからこそ様々な活動ができることや健康に生活できることのありがたさに気付くよう配慮した。 |
○ 1年間に各学年で行う交流及び共同学習の計画・方法・内容を学年の実態を考慮して工夫、改善することにより、活動につながりが生まれ、児童の積極的な活動や児童同士の理解に深まりが見られた。
○ 6年間を通した両校児童の交流及び共同学習を工夫、改善することにより「互いの関心や理解」・「人格・個性の尊重」において、低学年「出会う」→中学年「気づく・感じる」→高学年「高まる・深まる・広がる」と向上が見られた。
○ 小学生同士の交流及び共同学習のほかに、「障害のある成人の方」との交流を通して、子どもたちの新たな気づきや障害への正しい理解に役立つことが分かった。
○ 教科等の交流及び共同学習を行うことで、児童自身や教師が両校の学習の様子を実際に知ったり、互いの考えなどのよさに気づいたりすることができた。
○ 両校の教職員の理解が深まり、活動時に互いに協力し合って児童を援助しようとすることがより多くなった。また、交流及び共同学習を実施したことで、活動についての不安が、児童・教師ともに少なくなった。
○ 交流学級の子どもたちとの交流を中心に、互いに相手への理解を深めたり、協力し合ったり、思いやったりする姿が多く見られるようになってきた。教師が、互いのよさを紹介したり、つらい気持ちを代弁したりすることにより、相手の気持ちを考えたり、積極的にかかわろうとしたりする姿が増えてきた。
○ 「単年度」及び「6年間」を見通した実施計画・方法・内容の更なる工夫、改善が必要である。
○ 学年・学級交流において、平養護学校児童の人数と本校児童の人数に差があったり、障害の状況によって交流及び共同学習ができる活動も制限されてくるので、よりよい活動ができるよう、担任教師同士の話し合い、連携等を更に十分に行うことが必要である。特に、交流及び共同学習での学習効果の高まりと児童同士、児童と教師の理解の深まりを目指していかなければならない。まだ、交流及び共同学習の本質を捉えた実践にはなっていない。
○ 保護者、地域の理解、協力を得るための説明、啓発をより積極的に進めていかなければならない。
○ 特別支援学級児童の個別の指導計画について、全職員が周知し、支援についての共通理解を図る。その上で、交流学級との交流及び共同学習はもちろん、学校生活の中での交流が日常的に、効果的に行われるよう連携を図り支援する。
a 児童の活動の様子、感想、手紙等変容を見る資料の蓄積と同時に、児童の心情の変容を客観的に捉える評価方法及びその後の計画・実践・指導に効果的に生かす方法について研究を深めていかなければならない。
(1) 本年度明らかになった課題を両校教師が共有する機会を、次年度の早い時期にもち、計画、実践に生かせるようにしていく。
(2) 交流及び共同学習の取組を深めていく。互いの児童がより深く理解し合うためにも絶好の機会であるので養護学校の教員との連携により、その内容と指導の充実を図っていく必要がある。
初等中等教育局特別支援教育課
-- 登録:平成21年以前 --