都道府県名 福井県
地域名 県内全域
(1) 現場実習及び校内における職業教育を充実させ、生徒の職業能力を高める。
(2) 卒業後指導の充実により生活の安定化を図る。
(3) 多くの企業に特別支援教育及び障害のある生徒について理解啓発を行う。
(1) 特別支援学校教員がジョブコーチの技能を研修し、その成果を現場実習において検証して「スクールジョブコーチの手引き」としてまとめ、県内の特別支援学校に普及を図る。
(2) 県内5地域の地域支援コーディネーター等と連携し、特別支援学校卒業後5年間の就労後支援のシステムを確立する。(システムは市町の「地域生活支援事業」の中に位置付ける。)就労後支援の確立により卒業生の職業生活や雇用主を支え、雇用の安定を図る。
(3) ライオンズクラブ等と連携して特別支援学校における職業教育や生徒理解のリーフレットを作成し、団体会員の企業に配付及び説明を行う。
(1) 一般企業への就職を希望する生徒(高等部3年当初時点)の約9割の就労が実現できることを目指す。その結果、低下傾向に歯止めをかけ全国平均の割合を上回る。
(2) 一般企業への就労を目指す現場実習で、就労を希望する生徒(各校1人以上)に対してジョブコーチの技能が用いられるようになる。
(3) 説明会やリーフレット配付後に事業主にアンケート調査を実施して、理解啓発の事業の評価を行い、100事業所以上が障害者雇用や現場実習等の利用に理解を示す。
(4) 特別支援学校の卒業後指導において、課題を抱える卒業生の1名以上のケース会議が自立支援協議会との連携をとった共通のシステムの下で展開される。
職業自立連携協議会として「障害児就業等支援連絡会議」を開催した(表1)。
委員は表2の通り。
表1 障害児就業等支援連絡会
第1回 | 平成19年9月14日(金曜) | 県庁 | ・H18年度高等部卒業生の就労状況 ・職業自立を推進するための実践研究事業計画ほか |
第2回 | 平成19年12月18日(火曜) | 県庁 | ・職業自立を推進するための実践研究事業進捗ほか |
第3回 | 平成20年2月22日(金曜) | 県庁 | ・H19年度高等部卒業生の内定状況 ・職業自立を推進するための実践研究事業成果ほか |
表2 障害児就業等支援連絡会議委員一覧
区分 | 所属 | 職名 | 氏名 |
企業 | 通販物流サービス | 総務部管理チーム | 荒谷 照夫 |
社団法人武生青年会議所 | 理事長 | 石本 康輝 | |
労働 関係 |
福井労働局職業安定部職業対策課 | 地方障害者雇用担当官 | 坂下 正機 |
福井公共職業安定所 専門援助部門 | 統括職業指導官 | 荒川 忠弘 | |
福井障害者職業センター | 所 長 | 大西 重雄 | |
福井県産業労働部労働政策課 | 企画幹 | 梅田 岩男 | |
福祉 関係 |
福井障害者就業・生活支援C ふっとわーく |
所 長 | 田中 一宏 |
福井県健康福祉部障害福祉課 | 課 長 | 藤井 知 | |
学校 | 福井東養護学校 | 校 長 | 竹澤 良全 |
南越養護学校 | 校 長 | 龍溪 信行 | |
嶺南西養護学校 | 校 長 | 村山 周治 | |
保護者 | 福井県手をつなぐ育成会 | 会 長 | 吉岡 幸一 |
厚生労働省認可のジョブコーチ研修への参加は表3の通り。
表3 ジョブコーチ研修会への参加
研修名 | 実施団体 | 会場 | 参加校 |
第1号職場適応援助者(ジョブ・メイト)養成研修 | 大阪障害者雇用支援ネットワーク | エルおおさか (大阪) |
嶺南西養護学校 嶺北養護学校 附属特別支援学校 |
平成19年度 第1回JC-NETジョブコーチ養成研修 | ジョブコーチネットワーク | 大妻女子大学(東京) | 嶺南東養護学校 |
a ジョブコーチ実地研修概要(表4)
表4 ジョブコーチ実地研修概要
(社福)E町社会福祉協議会 MデイサービスC :附属特別支援学校(一教諭) 高等部3年生1名 10月16、18、22、25日(4日間)生徒は10/15〜11/2 入浴介助、利用者への飲み物配り |
特別養護老人ホーム HR荘 :嶺北養護学校(猪股教諭) 高等部3年生1名 10月1、3、11、16日(4日間) 簡単な調理、盛りつけ、皿洗い、清掃 新鮮館T :嶺北養護学校(猪股教諭) 高等部3年生1名 10月4日 商品陳列、手直し、清掃 |
株式会社W 就労継続支援A型事業所 :嶺南東養護学校(桑村教諭) 高等部3年生1名 11月8日〜21日(10日間) 造作家具部品(ねじ等)の組み合わせや袋詰め、食品やおみやげ物の袋詰め |
Hビジネスサービス株式会社 :嶺南西養護学校(河原教諭) 高等部3年生1名 10月11日〜16日(4日間) O信用金庫各支店への配送業務、各種印刷、書類やチラシの仕分け |
b 実地研修の成果(表5)
表5 実地研修の成果
(社福)E町社会福祉協議会 MデイサービスC :附属特別支援学校(一教諭) ・事前に教師が体験実習を行ったことで、生徒が実習に入る前に一般浴槽における入浴介助マニュアルとチェック表を作成することができた。特に入浴介助の工程分析を行う際に、研修で学んだことを生かすことができた。 ・仕事内容(一般入浴介助)を広げることができたことで、就労後の可能性を見いだせた。 ・支援者がつくことでより難しい仕事に挑戦できたため、実習生の意欲と自覚が高まった。 【職場の方の声】 ・介助マニュアル作成やチェック表などを作成していただいたことで、普段の業務で職員自身が見えていない部分まで明らかになり、助かった。見るだけでなく実際に経験してもらわないと分からない内容が多いので、先生自身が経験されたのはよかった。入浴介助の立ち会いなど大変だったと思いました。 |
特別養護老人ホーム HR荘 :嶺北養護学校(猪股教諭) ・職場の方の指示や要望を本人に分かりやすく伝えることができた。伝えることでやり方を改善することができ、結果的に本人の自信につながった。 ・職場の方の疑問や不安を聞き、それに答えることができた。 ・学校での指導(ほめてじっくり育てる)と職場のニーズ(即戦力を求める)が合わないことがあり、迷うことがあった。 |
新鮮館T :嶺北養護学校(猪股教諭) ・最初から体験のみの実習であったが、実習を通して採用の方向に導くことができなかった。 ・そばで支援することにより生徒の課題が明確になり、今後の指導につながった。 |
株式会社W 就労継続支援A型事業所:嶺南東養護学校(桑村教諭) ・実習前に生徒とともに職場の見学を行った。また、打合せ、教員自身の作業体験を行った。 ・作業の一部を持ち帰らせていただくことで、あらかじめ練習してから実習に臨むことができた。 ・最初は細かい部品の扱いに少し手間取っていたが、補助具(厚紙で漏斗を作った)を活用することでスムーズに袋詰めができるようになった。 ・そばで仕事の様子を見ながら良くなったことを積極的にほめた。 |
Hビジネスサービス株式会社 :嶺南西養護学校(河原教諭) ・研修で新しい職域開拓の話を聞いた。それを参考に、本校にとっては初めて金融機関での実習を行うことにした。 ・事前に教員が体験実習を行ったことで職場の情報がたくさん得られ、生徒に対して細かい説明ができた。また、教師自身に精神的余裕が生まれ、それが生徒の安心感にもつながった。 ・金種と金額の一覧表(500円硬貨が50個で25,000円、1万円札が1束で100万円)やセロテープが一定の長さに切れる補助具をつくるなどの支援ができた。 ・本人のいいところを職場の方に伝えたり、職場の方と話しやすくするために話題(生徒会、部活、作業の話題)をふったりすることができた。 ・職場の慣習(会った人には「お疲れ様です。」と声かけする、食べ終わったらテーブルを拭き、次の人のために早めに席を空けるなど)を生徒に伝えることができた。 【職場の方の声】 ・初めての実習受け入れであったことと、私自身の先入観もありましたが、実習生の仕事ぶり(特にひたむきさ)を見て、想像以上によくできる生徒であることを強く感じました。また、実習生自身やスナップ写真などにより学校全体のよい雰囲気が伺え、学校全体の明るさとレベルの高さを感じました。教員が引率指導されたことで、当社の指導との相乗効果があったと思いま す。また、実習生が安心して作業に取り組めていたと思います。4日間の実習のうち、1日くらいは引率者なしで作業できると、本人の自立・自主性が出てくると思います。 【生徒の声】 ・初めてのところだったけど先生が一緒に来てくれたので安心できた。でも職場の人と話さないで、つい先生と話をしてしまった。 |
第4回部会連絡会では専門委員よりジョブコーチの実地研修の状況を報告し、講評をしていただいた(表6)。
表6 スクールジョブコーチ研修会
日時: 平成20年3月17日(月曜) 会場:特別支援教育センター |
<講師> 伊集院貴子氏 (大阪障害者雇用支援 ネットワーク) 後藤金丸氏 (ダイキンサンライズ摂津) |
<講義> 「ジョブコーチの役割と支援の実際」 ・ジョブコーチとは何か ・企業からみたジョブコーチの重要性 <講評> 「学校現場での実践報告を振り返って」 ・効果的なジョブコーチ支援のポイント |
<報告者> 一 慶昭氏 (福井大学附属特別支援学校) 河原 康徹氏 (嶺南西養護学校) |
<実践報告> 「初めてのジョブコーチを福祉の現場で実践して」 「高等部全体で取り組むジョブコーチ的支援」 |
表7 自立支援協議会等への参加状況
7月4日 | 奥越地区 障害者就労支援連絡会議 |
就労支援連絡会議設立準備 相談事例の検討ほか |
大野勝山障害者相談支援専門員、各施設支援員ほか |
7月4日 | 坂井市 自立推進協議会連絡会 |
ネットワーク部会事業説明と、同部会の今後の位置付けについて | 坂井市支援員、生活支援委員、保健センター職員ほか |
8月9日 | 奥越地区 障害者就労支援連絡会議 |
自立支援協議会設立準備 | 大野勝山障害者相談支援専門員、各施設支援員ほか |
9月25日 | 福井市 障害者地域自立支援協議会 (全体会) |
自立支援協議会開催立ち上げに当たっての基本説明 | 学識経験者、民生委員児童委員、総合福祉相談所、市教育委員会、特別支援コーディネーター、サービス事業者関係職員、医療社会事業協会 |
10月29日 | 若狭地区 障害児者自立支援協議会 実務者会議(第1回) |
協議会立ち上げの経緯と今後の活動予定、作業部会の持ち方について | 小浜市、おおい町、高浜町の各関係機関 |
11月27日 | 若狭地区 障害児者自立支援協議会 実務者会議(就労支援部会) |
事例についての検討、就労支援部会の今後の進め方について | 就労支援部会所属機関(小浜市、おおい町、高浜町) |
1月18日 | 奥越地区 障害者自立支援協議会 (日中活動支援部会) |
日中活動支援部会概要説明 事例検討(4件) |
県総合福祉相談所、特別支援教育C、特別支援学校、スクラム福井、ふっとわーく、福祉施設、親の会、大野市・勝山市社会福祉課 |
2月15日 | 障害者雇用支援合同会議 | 障害者雇用支援合同会議設置について、障害者の自立支援に向けて、事例報告 | 大野勝山障害者相談支援専門員、各施設支援員ほか |
3月10日 | 第2回 福井市 障害者地域自立支援協議会 |
特別アドバイザーによる講演と意見交換、専門部会の活動報告について | 学識経験者、民生委員児童委員、総合福祉相談所、市教育委員会、特別支援コーディネーター、サービス事業者関係職員、医療社会事業協会 |
武生青年会議所に対して事業協力を依頼
日時: | 平成19年10月30日(火曜) 19時〜20時 |
会場 | 鯖江市民活動交流センター 大会議室 |
内容: | 武生青年会議所・鯖江青年会議所の会員企業への特別支援学校における職業教育や生徒理解に関する理解啓発(プレゼンテーション、質疑応答) |
日時: | 平成19年11月15日(木曜) 13時30分〜16時 |
会場 | 国際交流会館 多目的ホール |
内容: | 「特別支援学校における職業教育と進路状況について」 |
対象: | 県内企業の経営者・人事担当者、各市町人事担当部局・福祉担当部局ほか |
3部会の合同連絡会で職業教育の在り方について学習会を開催した。(表8)
表8 職業教育の在り方についての学習会
平成19年8月20日(月曜) 特別支援教育C |
安部雅昭氏(星槎教育研究所) 茶谷朋己氏(福井学習C) 小日向毅氏(福井障害者職業C) |
進路指導についての先進的取組み 福井県内での取組み 障害者の雇用施策について |
平成20年3月26日(水曜) 南越養護学校 |
徳永亜希雄氏 (国立特別支援教育総合研究所) |
職業自立に向けたICFの活用 |
これまでの現場実習での指導では、教師が事業主に伝える実習生の作業能力、特性、コミュニケーション能力等は、文書や口頭による報告が主なものであった。また、教師が職場を巡回する場合でも、巡回が仕事の妨げにならないよう短時間で終わることがほとんどであった。ジョブコーチ技能は、これら従来の現場実習での指導の在り方を見直すものではないかと考える。
本研究では、現場実習において、本格的なジョブコーチ技能を学んだ教師自身が職場環境や作業内容について身をもって理解し、生徒に寄り添いながら指導を試みた。県内4校での実践ではあったが、良好な結果であった。これまで実習がなされなかった分野で実習を行えたこと、職域の可能性が広がったことや実習先の職員や実習生自身に安心感を与えたことなどがその成果としてあげられる。
現場実習での実践に先立ち、4校の教員が本格的なジョブコーチ研修に参加したのだが、この研修も参加した教員にとっては、とても新鮮で得るものが多かった。
今年度は、知的障害者を対象とした特別支援学校が実践したが、ほかの障害種についてはどうか検討をしていく必要がある。また、一つの学校で何人の実習生にスクールジョブコーチをつけられるかといった運営面での問題もある。次年度はこれらのことを検討しながらさらに研究を進めたい。
この部会は、本事業の実施時期が福祉分野での「自立支援協議会」の設立時期と重なったこともあり、特別支援学校の卒業後指導と自立支援協議会の「個別ケース会議」とを各地域の実情にあわせて結び付けようと考えて立ち上げた。しかし、各地域の自立支援協議会は、進み具合に差はあるものの、総じて枠組み作りの段階であり、本部会の目標としている卒業後支援の体制作りの具体的な展開はまだない。
ただ、自立支援協議会関係者とは、準備会議等で面識をもつことができたことで人的なネットワークはできつつある。次年度は自立支援協議会が本格的に運営されると思われ、今年度のつながりを生かして卒業後支援体制作りを進めたい。
特別支援学校について一般企業の事業主に説明する機会は限られており、これまで障害のある生徒を受け入れたことのない事業主に特別支援学校をアピールする機会をもちたいという思いからこの部会ができた。その中で武生青年会議所と連携できたことは本事業にとって大きな力になった。さらに次年度は、武生青年会議所だけでなく福井ブロックとしても協力していただけることになっており、このチャンスを理解啓発に生かしたい。青年会議所だけでなくライオンズクラブにも働きかけるなどして、福井県全体に特別支援学校の理解の輪を広めたいと考えている。
初等中等教育局特別支援教育課
-- 登録:平成21年以前 --