都道府県名 京都府
地域名 京都市
企業とのパートナーシップや関係機関とのネットワークを生かした職業教育の在り方を求めて−総合支援学校デュアルシステム※の推進−
※総合支援学校デュアルシステム
生徒一人一人の就職希望実現を目指し、総合支援学校での授業と企業での長期的・計画的な実習を組み合わせ、学校で学んだことを企業で実際に体験することを通し、企業が求める人材を育成するという新たな職業教育の推進に向けた取組
総合支援学校デュアルシステムを核とした障害のある生徒のための職業教育と就業支援の在り方を明らかにする
学識経験者等による教職員への指導・助言、デュアルシステム関連校及び関連事業の視察による具体事例収集、就労支援担当教員のジョブコーチとしての研究参加を通し、実習支援プログラムや現場環境の整備、教員の資質向上につなげるなど、実習支援に関する現場実習事例研究
デュアルシステム協力企業の教育担当者・学識経験者等の監修に基づく啓発リーフレットや現場実習・職場開拓マニュアルの作成過程を通した研究(実習協力企業実習担当者、関係現場職員に配布)
データベース(学習内容の要素表)作成過程を通した研究
企業や関係機関からの視点や助言に基づく目標設定や評価を組み込んだ授業研究
(1)総合支援学校デュアルシステムを推進することで
(2)関係機関や企業とのネットワークを推進することで
以下に示す啓発事業の実施、授業研究他研修会の実施及び参加、研修研究会参加・視察、企業向けのアンケート調査、マニュアル・啓発リーフレット等の作成を行った。
7月・10月に保護者と教員がともに行う職場開拓を行い、延べ160社を訪問し、啓発チラシを配布するとともに、学校見学会などの案内を行った。この職場開拓に際して、企業への働きかけの在り方について研究した。なお、この開拓事業を通して15件の新規実習先を開拓。うち2件は雇用につながった。
11月には企業向け学校見学会を実施した。10社の学校訪問があった。
2月15日には、企業を対象とした「障害のある生徒の雇用促進に関する企業向けセミナーを実施し、企業28社、関係団体10団体、学校関係32件の参加を得た。また、企業向け就労支援マニュアルを作成し、現在までに500社に送付した。
現場実習で見い出された事柄を、学校の授業の中でどうフィードバックしていくのかといったことをテーマに、京都教育大学・佐藤克敏准教授の指導助言を得るなどにより、計6件の授業研究を行った。
小学校入学段階から高校卒業時点までの勤労観や職業観の育ちにかかわる学習プログラムの枠組みに関する研究を国立特別支援教育総合研究所と行うとともに、同研究所より木村統括研究員を招いて研修会を行った。なお、本校の取組については同研究所のセミナーで報告した。
ジョブコーチの在り方についての研修を、立命館大学文学部・望月教授を招いて行った。また、就労支援担当教員及び進路指導主事については、職業リハビリテーション学会及び職業リハビリテーション研究発表会・実践セミナーに参加した。
また、東京都の企業向け雇用セミナーへのオブザーバー参加、千葉県立流山高等学園特別支援学校、東京都立永福特別支援学校の視察等を行った。
職業自立を推進する教育の在り方を検討するため、企業の求めるニーズを把握することを目的としてアンケート調査を行った。
平成19年11月
平成17年度・18年度・19年度に総合支援学校生徒を雇用あるいは実習受入した企業の中から93社を抽出。
51社(回答率54.8%)
以下のコンテンツで企業向けの就労支援マニュアルを作成した。
平成20年2月15日
デュアルシステムの考え方及び京都市立白河総合支援学校の就労支援に関する取組についての報告
京都経営者協会、大企業の人事部長、障害者就業・生活支援センター所長、京都市立総合支援学校長、大学教授からなる障害者雇用と就労支援に関するシンポジウム。
事業経過報告、アンケート調査の中間報告及び就労支援マニュアルの内容検討、並びに障害者雇用促進に関する討議。
セミナーについての総括。アンケート調査の報告。次年度の課題整理。その他、各企業より現場実習の取組や雇用推進の取組についての報告と意見交換の実施。
本市においては、従前より市内企業への啓発を図り、京都経営者協会や、障害者職業相談室等の関係団体・関係機関と学校との連携により、職場開拓が行われてきた。しかしながら、自立支援法の施行もあり、従来通りの学校や職業相談室の担当者が企業まわりをしてそれを行っていくだけではなく、新たな開拓、そして企業啓発の在り方が求められるようになってきた。
また、雇用に関する定量的な成果のみならず、定性的成果についてもその成果を求めなければならない。即ち、企業と学校がパートナーシップを結ぶことによる人材育成のよりよい在り方を求め、雇用の定着や職域の開拓、新たな仕事の創出を図ることにある。
現場実習の取組をはさんで、以下のような意見がデュアルシステム協力企業から出されるなど、職業教育の在り方について討議を深め知見を得ることができた。
指導目標をより具体化させる必要がある。「何が何件までできるようになるのか、ミスが何パーセントになるのか」など、より具体的で検証可能な目標を設定する必要がある。
指導方法を会社の中に残せるようにするべき。どういう生徒についてどのような支援をすればよいのかということをきちんと伝えられるようにする必要がある。
ある仕事ができるようになるためにどれくらいの時間がかかるのか、どのようなプロセスでスキルを習得していくのか、どんなところで例えば失敗を隠すなどの行動をすると考えられるのか、スキルを習得していくために、あるいはトラブルを未然に防ぐためにはどんな支援が必要なのかということについて示す必要がある。
企業で仕事をする上で大切なのはトラブルが起こった時に手を挙げ周囲に支援を求めることである。そうした意味では、どうやって質問をするのかといったような、どの場面でも使えるような力を獲得していくことが必要である。
京都市では高等部生徒の資格取得等教育長表彰を行っている。平成18年度、ワープロ検定、電卓検定等の各種検定合格者や、障害者機能競技大会アビリンピック入賞者等表彰者が全校で計43名であったところが、本年度は70名に増加し、検定合格の内容も4級程度から3級程度が中心になり、1級2級取得者も出るようになった。
昨年度より、情報処理関係の技能を積んだ生徒の事務系職域への進出を図っているが、本年度についてもホテルの経理補助や、印刷会社のコンピュータデザイン補助業務への進出を果たした。
反面、(1)でも指摘があったように、目標設定や支援の在り方のミスマッチングと思われる事例があった。
白河総合支援学校及び鳴滝総合支援学校において新規31社での採用があった。
就労支援マニュアルの作成・編集プロセスに各社の出席者が協力した。疑問点や改善点を多岐にわたって提供した。また、出来上がった就労支援マニュアルを活用した企業内研修の実施や、実習受入準備を行うなどの反響があった。
77社を訪問した中で、13社が実習受入について検討するという回答があり、さらに4社が雇用についての検討も回答した。うち1社については2名の雇用が実現した。
障害のある生徒の雇用促進に関する企業向けセミナーの参加募集プロセスにおいては、機関誌に折り込み広告を入れる等、経済団体の協力を得ることができた。
また、京都市の産業観光局の広報誌にも掲載できた。
しかし、時期・曜日設定のまずさもあり、企業28社33名の参加にとどまっている。参加者の評価は高く、雇用や実習受入を検討している企業のニーズに合ったものであったと考えられるため、周知の仕方やそのためのネットワークの活用について、更なるチャンネルの開拓も含め検討する必要がある。
第2回目のPTA進路開拓においては、学校見学会への参加要請を目的として行ったが、見学が実現した企業は15社にとどまった。職業安定所の雇用指導官とタイアップするなど事業の進め方について見直す必要がある。
今後の展望として以下の5点を挙げる。
(1) キャリアプラン(個別の包括支援プラン)を基に、現場実習と学校の授業との課題や目標の共通化を図る。
(2) 教育ジョブコーチ(就労支援担当教員)の企業への派遣による就労支援のノウハウを企業に移行していくことで卒業後のキャリアアップを図る。
(3) 企業内の社員に対する障害のある人の理解・啓発を促進するための研修における教員派遣事業を実施する。
(4) 大企業における職域開発の拡大と特例子会社設置に向けた協力と働きかけを推進する。
(5) ワークシェアリングの発想に基づく、企業間連携による障害者雇用と人材育成のためのシステム構築に向けた検討を始める。
初等中等教育局特別支援教育課
-- 登録:平成21年以前 --