職業自立を推進するための実践研究事業中間報告書

都道府県名 山口県
地域名 山口・防府地域

1 研究のねらい

 就労及びその後の職場定着に必要となる能力の分析や、企業等の参画を得た公開授業・授業評価等の実施による授業改善など、就労・定着へ向けた生徒への効果的な指導内容・方法等、職業教育・進路指導の在り方についての実践研究を行う。

2 研究内容

 県内全域を視野に入れ、各地域、各校との連携を図り、実践的な研究の充実を図る。

(1) 地区の関係機関連携協議会の開催

1 山口地区関係機関連携協議会の開催

 福祉・労働・医療等の関係機関の参加のもと、個別の教育支援計画の作成に関する連携協力を依頼するとともに、各機関の担っている支援の内容や課題について協議を行う。また、個別の教育支援計画の活用の有効性について、各機関からの助言等を含め記載内容の充実を図る。
 職業自立の推進に関しては、就業及び就業体験の場の確保の重要性を共通認識するとともに、安定した職業生活のために必要となる地域生活支援について情報を交換し、個々の障害の状況や進路希望に応じた個別の教育支援計画作成の重要な一視点とする。なお、隣接関係にある防府地区で行われる関係機関連携協議会へも同様の意味で参加を依頼する。

2 進路支援のための地域の関係機関との連携

対象者 会の名称(実施時期) 会の趣旨 関係機関
高1年
保護者
進路説明会(3月) まもなく2学年を迎える保護者に対し、次年度の進路関係の活動について理解を深める。 本校進路指導部
高2年本人
保護者
進路相談会(2月) 2年間の学習や現場実習の実績を踏まえ、3年次の進路決定に向けての活動を確認する。 職安・福祉事務所・相談支援事業所等
高3年本人
保護者
ケース会議(12月) 進路決定の状況を確認し、本人の意志に基づいた個別の教育支援計画(移行支援計画)の策定に向けての相談を行う。 職安・福祉事務所・相談支援事業所等
高3年本人
保護者
進路連絡会(3月) 卒業直前の時期に卒業後の具体的な活動や支援体制等、個別の教育支援計画(移行支援計画)の策定に関し最終的な確認を行う。 進路先
職安・福祉事務所・相談支援事業所等
全校
保護者
進路指導懇談会
(11月)
小・中・高の全保護者を対象に進路支援に関する情報や課題について講話や協議を行う。 職安・福祉事務所・相談支援事業所・福祉サービス等
地域 山防地域進路指導懇談会 別項で詳述  

3 公的機関が進める社会参加のための施策への協力

名称 主管 趣旨 学校の関与
ピアホームヘルパー養成講座 県障害者支援課 介護職を目指す知的障害者にホームヘルパー3級の資格を取得する機会を設定し社会参加の推進を図る。 検討委員として職員の参加 生徒の受講
県障害者技能競技大会 県商工労働部 様々な職種に必要となる技能を競うことにより、技能や就労意欲の向上を図る。 競技委員として職員の参加 生徒の出場
市障害者自立支援専門部会 市高齢障害課 市内の自立支援機関が参加し事例検討や情報交換を行う。 準備委員 事例検討会出席

(2) 就労先、現場実習先等の企業のニーズや意向等の調査

 アンケート調査、聞き取り等により障害者職業センター、就業・生活支援センター等と連携して実施

1 年間を通じて現場実習先へのアンケート調査等による意向の把握

a 現場実習の事前準備について
  1. 教員との事前の打合せについて
  2. 通勤指導について
  3. 生徒の事前指導について
b 現場実習について
  1. 実習生について
  2. 教員の巡回支援について
  3. 保護者の見学について
c 実習終了後の感想について
d 障害者を雇用する際の企業の意向等について
 

2 企業等を中心としたネットワークによる意向の把握

 企業、経営者協会、中小企業経営者協会、商工会議所、障害者職業センター、雇用開発協会、学識経験者、山防地域特別支援学校の各担当者による、職業自立を推進するための「就労支援ネットワーク」設置に向けて設立準備委員会の開催

(3) 就労サポーター等による授業改善

 就労サポーターをはじめ、障害者職業センターや就業・生活支援センター等から公開授業への参画を得て、授業改善等を行う。

  1. 就労サポーターによる公開授業への参画を得て授業改善等を行う。
  2. 公開授業及び企業向けセミナー

(4) 職業自立を推進するための特別支援学校間連携による支援体制の構築

1 地域進路指導懇談会の開催

 山防地区内の特別支援学校三校共催による地域進路懇談会を開催し、保護者も参加し、各関係機関等との情報交換を行い、障害者雇用や特別支援教育についての理解・啓発を進める。

2 現場実習マニュアルの作成

 各校それぞれが作成していた現場実習等のマニュアルを山防地域の特別支援学校共通のマニュアルとして作成する。

  1. 教員向けの現場実習マニュアル
  2. 現場実習で作成する書類の統一
  3. 職場開拓のマニュアル

3 現場実習先リストのデータベース化

 現場実習先や進路先については、今までにも各校で調整してきたが、山防地域の特別支援学校で情報を共有化できるようにソフトを活用しデータベース化を目指す。管理については、センター校で管理する。

4 就労支援ネットワークの構築

  1. 企業担当者を中心とした「就労支援ネットワーク(企業部会)」
  2. 行政、福祉等を中心とした「就労支援ネットワーク(地域生活支援部会)」

(5) チェックリストの作成及び活用

1 生活支援チェックリスト

 卒業生の実態把握から、職場定着、生活に必要となる能力等について分析し、社会自立に向けた生活支援のためのチェックリストの作成と活用

 2 障害者職業総合センターが開発した「障害のある訓練生用チェックリスト(仮称)」の試行

 障害者の就労移行支援を円滑に行うため、教育、福祉、雇用等の機関や企業が連携して、連続した効果的な支援のためのチェックリストを試行する。

(6) 企業訪問による理解・啓発

 ハローワークや障害者職業センター等と連携を図り、現場実習受入要請や雇用拡大を図る。

  1. ハローワークとの連携
  2. 雇用開発協会との連携
  3. 障害者職業センターとの連携
  4. 特別支援学校との連携

(7) 学校における就労支援

1 就業体験(インターンシップ)の実施

  1. 各学期二週間の現場実習の実施
  2. 希望職種による就業体験二職種実施

2 新たな作業・職種の試行

  1. 就労実務(トータルパッケージ)の試行
  2. 普通科作業学習の工夫(校務技師の補助、教員からの仕事の受注)

3 外部人材を活用した資格取得等による就労支援

  1. 独立行政法人雇用・能力開発機構山口センター講師による「就労支援のためのパソコン講習会」
  2. サービス業担当者(ホテル総支配人等)からの「ビジネスマナー講習会」
  3. その他(ホームヘルパー三級取得講習会、知的障害者運転免許取得特別講座)

4 保護者向け研修会や情報提供

  1. 現場実習先見学会(企業・福祉施設)
  2. 事業所見学会(企業)
  3.  
  4. 研修視察(福祉施設等)
  5. 山防地域特別支援教育進路指導懇談会
  6. 進路指導ミニ懇談会
  7. 進路連絡会(卒業生激励会)

(8) 先進校等視察

視察先と視察内容

視察日 視察先 視察内容
12/18(火曜) 東京都立足立養護学校 ・就労サポーターを活用した事例について
・100%就労を目指したビジネスコースについて等
株式会社伊勢丹ソレイユ ・就労サポーターとしての実践等
12/19(水曜) 目白大学 ・全国及び東京都における先進的な進路支援や職業教育 についての情報収集
12/20(金曜) 東京都立永福学園養護学校 ・就労サポーターを活用した事例について
・1学年100名全員の企業就職を目指した就業技術科の実践について等
世田谷区立知的障害者就労支援センターすきっぷ ・東京大学や職業安定所への就労支援の事例について
・関係機関が連携した就労支援について等
1/15(火曜) 京都府立舞鶴養護学校 ・就労サポーターを活用した授業改善について等
1/16(水曜) 京都市立白河養護学校 ・就労サポーターを活用した授業改善について等
財団法人滋賀県障害者雇用支援センター ・関係機関と連携した就労支援ネットワークについて等
2/14(木曜) 福岡県立養護学校福岡高等学園 ・企業ニーズに応じた職業教育について等
2/15(金曜) 福岡市障がい者就労支援センター ・関係機関と連携した就労支援ネットワークについて等

3 評価の方法

(1) 広域連携協議会委員の事業全般に対する評価

 事業の成果や研究のねらいの達成度等について意見聴取を行い、事業全般の評価を行う。

(2) 現場実習等の受入に対する企業の意識の変化

 新規受入の事業所等にアンケートを実施し、企業の意識の変化等について評価する。

(3) チェックリストの作成

 実際的なリストとして活用可能かどうか等、企業や保護者等から意見の聴取 等を行い評価する。

(4) 就労サポーター等による授業参画

 外部人材の参画による授業の改善について、アンケート形式による授業評価等を行い評価をする。

(5) 本人・保護者の就労に対する意識の変化

 短期就業体験後に生徒(本人)、保護者へアンケートを実施し、意識の変化等について評価する。

4 研究経過

(1) 地区連携協議会の開催

実施時期 実施内容
7月
2月
○第1回地区連携協議会
○第2回地区連携協議会

(2) 就労先、現場実習先等の企業のニーズや意向等の調査

実施時期 実施内容
6月
10月

11月
2月
○1学期現場実習:現場実習先へのアンケート調査
○2学期現場実習:現場実習先へのアンケート調査
○第1回就労支援ネットワーク設立準備委員会
○第2回就労支援ネットワーク設立準備委員会
○3学期現場実習:現場実習先へのアンケート調査
○公開授業及び障害者雇用支援セミナー(企業向けセミナー)
○第3回就労支援ネットワーク設立準備委員会

(3) 就労サポーター等の授業参画

実施時期 実施内容
10月
11月
2月
○第1回就労支援ネットワーク設立準備委員会
○第2回就労支援ネットワーク設立準備委員会
○公開授業及び障害者雇用支援セミナー(企業向けセミナー)
○第3回就労支援ネットワーク設立準備委員会

(4) 職業自立を推進するための特別支援学校間連携による支援体制の構築

実施時期 実施内容
4月〜8月 ○山防地域特別支援教育進路指導懇談会実行委員会(月1回)
8月 ○山防地域特別支援教育進路指導懇談会
10月〜3月 ○山防地域特別支援教育進路指導懇談会実行委員会
○山防地域進路担当者会議(マニュアル等改善ワーキンググループ)

(5) チェックリストの作成及び活用

実施時期 実施内容
4月〜3月 ○「社会自立に向けた生活支援のためのチェックリスト」の作成
○「就労移行支援のためのチェックリスト」の試行とアンケート調査
○「社会自立に向けた生活支援のためのチェックリスト」の試行
12月〜3月 ○「障害のある訓練生用チェックリスト(仮称)」の試行とアンケート調査
3月 ○「社会自立に向けた生活支援のためのチェックリスト」の修正
○「就労移行支援のためのチェックリスト」のアンケート集計
○「障害のある訓練生用チェックリスト(仮称)」のアンケート集計

(6) 企業訪問による理解・啓発

実施時期 実施内容
4月〜3月 ○各公共職業安定所との情報交換
○各公共職業安定所との合同職場開拓
○進路担当者による実習先・就職先の開拓
7月〜8月 ○本校高等部職員全員による職場開拓
9月 ○障害者合同就職面接会

(7) 校内における就労支援

実施時期 実施内容
4月〜3月 ○作業学習の整理
○就労実務(トータルパッケージ)の試行
○普通科作業学習における校務技師の補助、教員からの仕事の受注等多角的な作業の試行
4月〜8月 ○「パソコン講習会」について独立行政法人雇用・能力開発機構山口センターと検討・協議
5月〜1月 ○「ビジネスマナー講習会」についてサービス業(ホテル総支配人)と検討・協議
6月 ○現場実習先見学会
7月 ○「就労支援のためのパソコン講習会」
○事業所見学会
8月 ○「就労支援のためのパソコン講習会」
○山防地域特別支援教育進路指導懇談会
10月 ○進路指導ミニ懇談会
11月 ○研修視察
2月 ○「ビジネスマナー講習会」
3月 ○就労実務(トータルパッケージ)の年次まとめ
○普通科作業学習(校務技師の補助、教員からの仕事の受注)の年次まとめ
○進路連絡会

(8) 先進校等視察

12月 ○東京都立足立養護学校
○株式会社伊勢丹ソレイユ
○目白大学
○東京都立永福学園養護学校
○知的障害者就労支援センターすきっぷ
1月 ○京都府立舞鶴養護学校
○京都市立白河総合支援学校
○財団法人滋賀県障害者雇用センター
2月 ○福岡県立養護学校福岡高等学園
○福岡市障がい者就労支援センター

5 成果と課題

(1) 地区の関係機関連携協議会の開催

 就労を目指す生徒一人一人の障害の状態や進路希望、雇用状況等の情報交換を行うことができた。

(2) 就労先、現場実習先等の企業のニーズや意向等の調査

1年間を通じて現場実習先へのアンケート調査による意向の把握

 年間3回の現場実習終了後に、多くの実習先からアンケートを回収・集計(回収率78%)することができた。「実習前に生徒へ指導しておくとよいこと」や「家庭生活に求めること」、「学校教育への期待」、また、「障害者を雇用する際の視点」等について、指摘や助言等を得ることができた。これらの課題等について、今後の支援に生かしていきたいと考える。

2 企業等を中心としたネットワークによる意向の把握

 今年度、企業、経営者協会、中小企業経営者協会、商工会議所、障害者職業センター、雇用開発協会、学識経験者、山防地域特別支援学校の各担当者による、職業自立を推進するための「就労支援ネットワーク設立準備委員会」を3回開催した。来年度からの本格運営に向けて協議することができた。このネットワークについては、企業側へ学校からの要望ばかりでなく、よりよい就労支援ネットワークの設立と活用に繋げていきたいと考える。活動内容については、下記に記述する。

  1. 障害者雇用を推進するためのセミナーの開催
    • 障害者理解や啓発等のための公開授業
    • 企業担当者が気軽に参加できる勉強会「就労支援ネットワーク(企業部会)」
  2. 就労サポーターとしての活動
    • 授業見学等による、授業内容やカリキュラムへの助言等
    • 学校や家庭に求める生活スキルの指導内容等に関する助言等

(3) 就労サポーター等による授業改善

 社会保険労務士をはじめ様々な職種の企業担当者7名を就労サポーターとして3回の授業見学会を行った。
 また、公開授業及び企業向けセミナーを開催し、企業(実習先や障害者雇用率未達成企業等)、就労移行支援事業所、経営者協会、中小企業経営者協会、商工会議所、障害者職業センター、雇用開発協会、学識経験者、本校保護者、山防地域特別支援学校進路担当者等(50名)の方の参加を得た。目白大学教授・松矢勝宏 氏による講演「企業が障害者雇用を考えるとき〜東京都就業促進協議会の実践〜」の後、協議等を通じて「作業環境について」、「教員の指示の出し方」、「生徒の言葉遣い」等様々な指摘や助言を受けた。松矢教授からは、高等部段階での作業学習等の在り方について「物づくりではなく、速さと正確さ」の必要性について指導を受けた。

(4) 職業自立を推進するための特別支援学校間連携による支援体制の構築

1 地域進路指導懇談会の開催

 地域のセンター的機能の一環として、第3回山防地域内の特別支援学校三校共催による地域進路懇談会を開催した。多くの保護者が参加し、各関係機関との情報交換を行った。障害者雇用や特別支援教育についての理解・啓発に繋げることができ、学校間の連携をより一層深めることができた。

2 現場実習マニュアルの作成

 各校それぞれが作成していた現場実習等のマニュアルを山防地域の特別支援学校共通のマニュアルとして作成・改編している。今後は、活用しながら修正加筆を加え、よりよいものを作成し、全県域への普及を図りたい。

3 現場実習先リストのデータベース化

 現場実習先や進路先については、今までにも各校で調整してきたが、山防地域の特別支援学校で情報を共有化できるようにソフトを活用しデータベース化を目指している。今後は、データ管理の問題等について検討を重ねていきたいと考える。

4 就労支援ネットワークの構築

 今年度、各特別支援学校進路担当者や特別支援教育コーディネーターを中心として、別記のネットワークについて検討・協議を進めてきたところである。
 今後は、継続的なネットワークとして地域の中で定着できる体制の在り方について、さらに検討していきたいと考える。

(5) チェックリストの作成及び活用

1 生活支援チェックリスト

 「個別の指導計画」、「個別の教育支援計画」に活用できるように、「生活支援チェックリスト」を作成した。今後は、データの蓄積を行い、社会自立に向けた生活支援を行うために、活用についての検討を深めていく必要がある。

2 障害者職業総合センターが開発した「障害のある訓練生用チェックリスト(仮称)」の試行

 全国的な情報・データが蓄積されている障害者職業総合センターの「障害のある訓練生用チェックリスト(仮称)」を活用し、就労を目指すクラスの担任を中心に試行している所である。また、企業等においても試行し、データを蓄積する必要がある。

(6) 企業訪問による理解・啓発

 ハローワークや障害者職業センター等と連携を図り、現場実習受入要請や雇用拡大を図ることができた。また、職場訪問に同行することで、開拓のノウハウ等について教員の専門性の向上にも繋がっている。

1 ハローワークとの連携

 山口・防府・宇部公共職業安定所担当者と合同で職場開拓を行い、現場実習受け入れ企業の拡大や、進路先・職域の拡大に繋がっている。

2 雇用開発協会との連携

 障害者雇用に関心のある企業等の情報提供を受け、現場実習受け入れ企業の拡大に繋がっている。

3 障害者職業センターとの連携

 カウンセラーに企業へ同行訪問を依頼し、職務分析等を行うことで、現場実習受け入れ企業の拡大や職域の拡大を図ることができた。

4 特別支援学校間の連携

 山防地域等の学校間で、現場実習受け入れ企業や進路先の紹介や情報等を共有することにより、スムーズな現場実習の運営を行うことができた。

(7) 学校における就労支援

1 就業体験(インターンシップ)の実施

 生徒が主体的な進路選択をするためには、具体的な職種や作業内容、職場環境について、職場での多くの体験が必要であると考える。生徒は、実際に体験することで新たな発見があり、職業生活を送る上で必要なことを少しずつ学びとっていくことができたと考える。
 また、保護者からは、「多業種の職場が体験できることによって適性や適職を探ることができ、進路選択に大いに役立つ」といった感想や、「二週間という実習では難しいが短期間であれば参加ができ、ライフステージを見据えて参考になる」という大きな期待が寄せられている。インターンシップを通じて、生徒と保護者が一緒に考えていくことで、生徒の興味や関心のある職種を具体的なイメージとして思い描くことができるようになってきたと思われる。

2 新たな作業・職種の試行

a 就労実務(トータルパッケージ)の試行

 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構障害者職業総合センターの協力校としてトータルパッケージを活用した授業を実践した。生徒の特性の多様さに加え、雇用環境の変化に伴い、場面に即応したコミュニケーション能力(対人関係)、自発性、自己評価など業務に対する基本的な態度面の育成が必要であり、作業遂行能力の向上、職場適応に必要な補完手段の取得等を含め、教育課程や学習内容の見直しのための有効なツールとなり得ると考える。

b 普通科作業学習の工夫(校務技師の補助、教員からの仕事の受注)

 従来は、1つの作業に習熟することで自信をつけさせるとともに、どの作業においても挨拶や報告など社会人として欠かすことができない資質を磨いてきた。しかしながら、最近の卒業生の進路状況を見ると、製造業中心から流通・サービス業へと状況が大きく変化し、職域が大きく拡大している。
 このような現状から、作業学習を見直し、あらゆる職場で必要とされる資質や事務系作業に必要なビジネスマナーの習得についても授業場面で実践的に取り組むこととした。今後は、授業実践によるデータを蓄積していき、本校の作業学習の在り方について検討を進めたいと考える。

3 外部人材を活用した資格取得等による職業教育の充実

a 独立行政法人雇用・能力開発機構山口センター講師による「就労支援のためのパソコン講習会」

 講座では、専門のビジネスワーク科講師による指導をいただき、より専門的な知識や技能を身に付けるとともに、実践的な内容を習得することができたと考える。   
 また、生徒のサポートとして参加した教員の指導の専門性の向上につなげることができた。受講した生徒のうち、ワープロ実務検定を受けた生徒は、全員がそれぞれの資格を取得できたのは、大きな成果である。今後の「パソコン講習会」について、定期的・継続的な実践について関係各所と連携を強化し、内容等について検討をしていきたいと考える。

b サービス業担当者(ホテル総支配人等)からの「ビジネスマナー講習会」

 サービス業等の企業担当者による講話やロールプレイ等を通じて、社会人としてのビジネスマナーについて学習することができた。講師により、「ビジネスマンの基本心得」、「身だしなみのマナー」、「ビジネス挨拶言葉」、「ビジネス電話応対マナー」、「来客応対マナー」の内容を生徒に分かりやすく教えていただくことにより、ビジネスマナーの基礎基本を学ぶことができた。
 今後も学習内容として継続・計画的に行うことで、生徒のスキルも向上してくると思われる。

c その他

 「ホームヘルパー三級取得講座」や「知的障害者運転免許取得特別講座」についても、専門家からの指導を受けることができた。

4 保護者向け研修会や情報提供

 福祉制度・雇用環境の変化等や保護者の多様なニーズ、保護者へ情報提供及び啓発するために、年間を通じて様々な研修会や視察等を計画的に行った。保護者から、様々な情報を得ることができ勉強になると期待を寄せられている。
 今後は、保護者の参加率を上げることや、多様なニーズに応えらることが課題であり、さらに検討していきたいと考える。

(8) 先進校等視察

 上表の5つの養護学校、高等養護学校を訪問し、職業教育における先進的な取組について視察した。先進地域では、すでに数年前から企業担当者等を就労アドバイザーとして授業に参画し、授業改善や作業種の見直しを行い、ビルクリーニングやロジスティクス(物流事務)、食品加工、福祉等の時代のニーズに応じた作業学習に取り組んでいた。
 特に、「本物に触れる」ことを重要視されており、作業種に応じた企業担当者が週一回の出前授業を行ったり、企業と同じ作業環境や道具を揃えたりするなど、職業教育における先進的な情報収集を行うことができた。
 また、2つの支援センターを訪問し、労働・福祉・教育・行政等の関係機関が連携した就労支援ネットワーク等の先進的な情報を得ることができた。
 今後は、先進地域の視察を通じて学んだことを参考に、山口県における職業教育や就労支援ネットワークの在り方について、検討していきたいと考える。

6 今後の展望

 平成20年度からの総合支援学校へ向けて、本校では多様な生徒の特性や雇用環境の変化に対応すべく職業教育や進路支援について、研究を進めてきたところである。
 この研究を通じて、企業・行政・福祉等各関係機関の一層の強化はもちろんであるが、地域における特別支援学校間の連携をさらに強化し、地域で障害者を支援していく体制(ネットワーク)を少しずつ広げていきたいと考える。
 また、今後は、多様な障害や特性を持った生徒一人一人が、地域の中で豊かに生きていける「職業的な自立」に向けた支援の在り方について下記の通り引き続き研究していきたいと考える。

(1) 就労支援ネットワーク(企業部会)
(2) 山防地区特別支援学校への就労サポーターの参画
(3) 外部人材を活用した職業教育
(4) 特別支援学校間で共通したマニュアルの作成と活用
(5) チェックリストの活用と情報の蓄積

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)

-- 登録:平成21年以前 --