都道府県名 北海道
地域名 札幌地域,旭川地域,他全域
2つのモデル地区においては、次の事項について、実践的な研究を行う。
各指定校では、各学校や地域の実情に応じて、次の事項の中から重点研究事項を選定して、実践的な研究を行う。
北海道労働局等と連携し、次の事項について取組を行う。
道教委は、平成19年8月に東京で開催された連絡協議会での説明及び協議内容を踏まえ、本研究事業における取組内容を示した実施計画を各指定校に通知するとともに、所定の様式による実施計画の提出を求めた。各指定校では、生徒の実態や地域の状況等を踏まえ、通知の内容に基づいた実施計画書を作成して道教委に提出し、計画的に実践研究に取り組むこととした。
指定校、企業、労働関係機関、福祉関係機関及び関係部局による連携協議会については、労働・福祉部局等の障害者就労に関する取組も同時にスタートした状況にあり、役割等の検討と整理が必要と考え、設置には至らなかった。
平成18年度から、障害者の就労支援に関し、雇用、福祉、教育等の関係行政機関の連携強化を図るため、道庁内に「北海道障害者雇用支援合同会議」が設置されており、平成19年7月の会議において、高等部卒業生の進路状況及び本事業の内容等について説明し、連携協力を要請した。
また、北海道労働局において、障害者の雇用・就労促進のための関係行政機関会議が適宜開催され、本事業におけるハローワーク等との連携内容や特別支援学校における就労支援セミナーの実施(今年度は指定校3校)等に関する事務的な打合せを行うなど、連携した取組を積極的に進めてきた。
道教委では、平成17年4月に「個別の教育支援計画モデル」を公表し、特別支援学校等における個別の教育支援計画の策定と活用を進めている。平成20年2月に、北海道労働局主催による「障害者の職域拡大を進める情報交換会議」が開催され、ハローワーク職員等に対し、就労支援における個別の教育支援計画の活用や本事業の周知を図り、理解を促進した。
就労サポーターについては、各指定校からの推薦により登録することとした。指定校の所在地によっては、協力いただける企業関係者が見つからず、労働関係機関等の職員に依頼したところもあるなど、人材の確保が課題となった
【19年度の就労サポーターの内訳】
企業関係者 | 労働機関関係者 | 福祉関係者 | その他 | |
就労サポーター | 6人 | 5人 | 2人 | 0人 |
札幌地区、旭川地区ともに、できる内容から研究の取組を進めてきた。
指定校、企業、就労移行支援事業所、福祉施設、北海道障害者職業センター、北海道労働局、札幌公共職業安定所による連携協議会の設置を予定していたが、地区内における労働、福祉等の関係機関による取組もあり、役割等の検討と整理が必要だったため、実施には至らなかった。
連携協議会の実施に向け、3校の教頭及び進路指導担当者が参加し、協議内容について検討を行った。
【予定された協議内容】
指定校、企業、福祉施設、ハローワーク旭川、北海道障害者職業センター旭川支所、旭川高等技術専門学院、発達障害者支援道北地域センターによる職業自立連携協議会を設置した。
今年度の連携協議会においては、次のような協議を行った。
協議事項 | 協議内容 | |
第1回 平成19年11月 |
・協議会概要説明 ・高等養護学校の就労支援の取組 |
・ 高等養護学校では、個別の教育支援計画(個別移行支援計画)を作成し、関係機関と連携した支援を行っている。 ・ 働く生活を続けていくためには、生活の場の確保や生活面の支援が必要である。 |
第2回 平成19年12 月 |
・就労支援の事例 ・ハローワークの取組 |
・ 高等養護学校では、在学中から地域の関係機関と連携し、卒業後まで支援を行っている。 ・ ハローワークにおけるチーム支援、チャレンジ雇用の取組について |
第3回 平成20年1月 |
・高等養護学校へ期待するもの ・就労の状況 |
・ 関係者の方から、生徒の支援のために、個別の教育支援計画をうまく活用していく必要があるとの意見があった。 ・ 高等養護学校の就労の状況について |
指定校においては、就労サポーターによる作業学習等の授業の見学を行い、その後、進路担当者や作業学習担当者等と協議を行った。協議の中で就労サポーターから助言を受け、その内容を踏まえて授業改善の取組を進めた。
A校では、就労サポーターの助言内容を踏まえ、掃除などの基本的な作業に関する指導を徹底するとともに、現場実習先の担当者と話し合い、より生徒が働きやすい環境となるよう改善を図った。
【A校の取組】 | |
(就労サポーター) | ・障害者職業センター ジョブコーチ |
・就労移行支援事業所 就労担当 | |
○平成20年2月12日 | 10時〜15時 |
各学年の作業学習、現場実習の授業見学とその後の協議 | |
●助言内容 | |
(1年作業学習) | ・ 現場実習の事前指導として生徒の就労意欲の向上につながっている。 |
・ 生徒の障害が多様化しているため、生徒理解をより一層深めた指導に努めること。 | |
(2年現場実習) | ・ 実習先において、生徒が真剣な表情で作業に取り組んでいた。 |
・ 実習先の担当者と連携して、より生徒が働きやすい環境作りに努めること。 | |
(3年作業学習) | ・ 教育課程の中で作業学習が重視され、生徒一人一人が目標をもって作業に取り組むことは、就労に向けて大切である。 |
・ 一連の作業の中で、掃除などの基本的なことをしっかりと身に付けておくことが必要である。 | |
☆授業改善 | |
・ 就労サポーターの助言内容を各学年で周知し、掃除などの基本的な作業に関する指導を徹底することを確認した。 | |
・ 現場実習に関しては、実習先と話し合いをもち、作業環境の改善を図った。 |
指定校では、教師用の「進路指導の手引」を作成して進路指導を行っており、現場実習に関しては、生徒や実習先の担当者が実習の状況を記録する「実習日誌」や引率する教員が実習先での作業等の状況を評価する「現場実習評価表」などを作成して指導に当たってきている。
B校では、引率する教員が生徒と共に実習を経験した上で作業工程表等を作成し、それに基づいて実習先の担当者と打合せを行うことにより、可能な範囲で生徒がより働きやすい環境の改善を図る取組を行った。
【B校の取組】 | |
・ 現場実習の前に、引率する教員に対し、「ジョブコーチによる支援」に関する研修を実施した。 | |
・ 引率教員が、実習生とともに1日の仕事を体験し、作業工程表や職場平面図などを作成して、実習先の担当者と話し合うことにより、作業環境の改善を図ることができた。 | |
現場実習評価票と学校内の作業学習における評価票との関連について、整理・見直しを行い、実習先での評価を、授業改善に活用する取組を進めた。 |
指定校においては、就職を希望する生徒について、ハローワークに求職登録をするため、これまでも緊密な連携が図られている。ハローワークの担当官が学校を訪問して行う職業相談会は、ほとんどの学校で実施され、就職につながっている。
今年度は、いくつかのハローワークで1、2年生の現場実習の受け入れがあり、これまで事務作業を経験できる実習先がなかったことから、生徒の障害の状態や進路希望に応じた現場実習先の拡大となった。
また、現場実習先の企業等の訪問に際して、必要に応じてハローワーク職員が同行し、定着状況の確認や各種援護制度の説明を行い就労につながった事例もみられた。C校では、3年生の現場実習後に企業から採用の意向が伝えられた後、ハローワーク職員が当該企業を訪問して各種援助制度の説明を行うことにより、円滑な就職につながるなど、より一層連携した取組が行われた。
【C校の取組】 | |
・ 求職登録や職場適応訓練制度の判定の際に、ハローワーク及び北海道障害者職業センターの職員が来校し、就労に関わる相談や生徒の仕事に対する心構え等について面接を実施した。 | |
・ 就職を前提とした実習後に企業から採用の意向を伝えられた際、管轄のハローワークに連絡すると、同職員が企業へ訪問し、各種援助制度等の詳しい説明を行い、指定求人票の依頼と作成等を行った。 | |
・ 平成20年から就職を前提とした実習後(通常10〜11月)に、ハローワーク職員と共に企業へ訪問し、採用の確認をすることになった。(平成20年3月に再実習になった生徒から実習後にハローワーク職員と企業へ訪問し、採用の確認をすることになっている。) |
各指定校においては、これまでも企業等の障害者雇用に関する意向の把握等を行い、進路指導の充実を図ってきており、D校では、今年度、現場実習先の事業所への調査を実施し、その結果を基に指導の改善を図る取組を行った。
【事業所への調査を実施したD校の取組】 |
障害者雇用の現状と課題を踏まえた上で、事業所が障害者雇用において求める力について調査した。調査の対象は、現場実習先である市内36事業所と障害者の就労支援を行っている2福祉施設とした。 この調査から事業所が障害者雇用で求める主な力は、次の項目であることが分かった。 |
〔事業所が障害者雇用で求める主な力〕 1.就労意欲 2.基本的生活習慣の確立 3.正確さと手早さ + 間違いを修正する力 4.決まりを遵守する力 5.安全に対する注意力 |
この結果から、本校が進路指導において重視して指導している観点と、事業所が障害者雇用で求める主な力とは大きな差がないことが分かった。しかし、事業所が求める「3 間違いを修正する力」については、これまで、間違いを素直に報告するという指導は行ってきたが、それ以上の力を事業所が求めていることが分かり、新たな指導の観点として押さえるともに、指導の改善を図ることとした。 |
連携協議会の設置等に課題が残されたが、教育、労働、福祉等の関係機関・部局による諸会議や関連事業等の実施により、障害者の就労に関する連携促進が図られた。
就労サポーターによる作業学習等の授業見学及び研究協議における助言により、就労先で求められる基本的な作業能力や態度を身に付けることの重要性が確認され、作業学習等の指導内容・方法の改善が図られた。
今後は、すべての指定校において取り組まれることが必要であることから人材の確保が課題となるが、取組の充実を図る上で、就労サポーターから助言を受ける際のポイントを明確にしておくことが必要である。
場実習先の企業等からの意見や助言を受けることにより、新たな指導の観点として押さえるべき力を明らかにすることや、生徒一人一人の実態に応じた作業学習の改善・充実が図られた。
引率する教員が実習を体験し作業工程表等を作成する取組は、生徒が働きやすい環境作りにつながることから、すべての指定校においてこの取組を参考にした実践を行い、より個別的・具体的なマニュアルを作成することが必要である。
ハローワークの職員が、受け入れ先の企業等の訪問に同行し、各種援護制度の説明を行うことにより、円滑な就労につながることが明らかにされた。
また、いくつかのハローワークが指定校の生徒の現場実習を受け入れ、新たな仕事を経験できるようになったことは、生徒の能力や適性に応じた実習先等の拡大となった。平成20年度は、受け入れ先のハローワークが拡大されることから、公的機関での現場実習の拡大につながるよう、現場実習の取組の充実を図ることが必要である。
個別の教育支援計画については、事業所や福祉施設等の関係機関から、学校が在学中から卒業後の生活を見据えたコーディネートを行う上で効果的であると評価された。
実際の活用に当たっては、より使いやすいものにする必要があることから、今後、実践を通して検討する必要がある。また、就労先における活用についても理解啓発を図る必要がある。
指定校が行った調査により事業所が障害者雇用で求める力が明らかにされ、関係行政機関による諸会議の中でも、基本的な生活習慣やマナーの確立が重要ということが指摘された。平成20年度は、こうした観点を踏まえ、より広い範囲で企業等の意向を把握することが必要である。
初等中等教育局特別支援教育課
-- 登録:平成21年以前 --