各学校が自主性・自律性を発揮し,家庭や地域と連携した特色ある学校教育活動を展開するためには,校長を中心としてすべての教職員が一致協力して教育活動を展開することが重要であり,校長は学校運営の責任者として,また教頭は校長を補佐する者として,それぞれリーダーシップを発揮しながら組織的・機動的な学校運営を行うことが肝要である。 このため、文部科学省では,校長・教頭に優れた人材を確保するための各都道府県・指定都市教育委員会(以下「各県市」という。)の取組等を把握し,各県市における校長・教頭の選考や人事の在り方等についての検討の参考となるよう,平成10年度から「校長・教頭登用状況調査」を行っている。
平成15年度末定期人事異動における各県市が任命権を有する公立の小学校,中学校,高等学校,中等教育学校,盲学校,聾学校又は養護学校の校長,教頭(校長・教頭として新たに登用された者を含む。)の登用状況は、以下のとおりである。
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校長・教頭の登用状況
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校長・教頭数及び登用者数(表1)
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校長は37,168人(前年度比159人減)であり,そのうち,15.2パーセントに当たる5,660人(前年度比517人増)が新たに任用された者(以下「登用者」という。)である。一方,教頭は40,149人(前年度比80人減)であり,そのうち15.6パーセントにあたる6,259人(前年度比455人増)が登用者である。
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各県市別及び各学校種別の状況(表2・3・4・5・6・7)
各県市別に校長登用率(校長数に対する登用者数の割合をいう。以下同じ。)をみると,最高は大分県の23パーセントで,最低は徳島県と福岡県の8.1パーセントである。学校種別では,中学校の登用率が13.2パーセントと最も低い。
各県市別の教頭登用率は,最高は広島市24.9パーセント,最低は徳島県5.2パーセントである。学校種別では,小学校が14.3パーセントと最も低い。 |
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年齢別の状況(表8・9,図1・2)
校長登用者の最年少者は46歳(20人),最年長者は59歳が2人であり,登用者の平均年齢は53.0歳(前年度比同),最多年齢は53歳(前年度比同)となっている。学校種別の平均年齢は、小学校52.7歳(前年度比0.1歳増),中学校52.4歳(前年度比同)に対して,高等学校では54.9歳(前年度比0.1歳増)となっており,比較的高年齢での登用が中心となっている。
教頭登用者の最年少者は36歳(2人),最年長者は58歳(4人)であり,登用者の平均年齢は48.5歳(前年度比0.1歳減),最多年齢は48歳(前年度比1歳増)となっている。全体では,45歳~49歳が52.3パーセント,50歳~54歳が33.4パーセント(それぞれ前年度比1.0ポイント増,0.7ポイント減)と大部分を占めており、教頭登用者の平均年齢は前年度末とほぼ同様の状況となっている。
各県市においては,校長・教頭としてふさわしい資質と意欲をもった若手教職員を積極的に任用するため,年功序列にとらわれない新たな評価方法や任用方法の研究開発など,今後優秀な若手教職員の校長・教頭への登用に積極的に取り組まれることを期待したい。 |
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女性の校長・教頭数及び登用者数(表1・10,図3)
女性の校長・教頭数は,全体で校長が4,731人(前年度比102人増)で,教頭が6,240人(同17人増)となっている。校長・教頭全体に占める女性の割合は,校長12.7パーセント,教頭15.5パーセントであり,校長について毎年度着実に増加している。 また,校長・教頭登用者に占める女性の割合については,校長が15.4パーセント(前年度比0.2ポイント減)と前年比とほぼ同様であるが,教頭は17.6パーセント(前年度比0.5ポイント増)と増加傾向を示している。 |
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校長・教頭の同一校勤務年数(表11,図4)
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校長の同一校勤務年数
1校あたりの平均在職年数が3年以上となっているのは、小学校(平均3.2年)では27県市,中学校(平均3.0年)では26県市,高等学校(平均2.6年)では10県市である。特殊教育諸学校(平均2.9年)ではほぼ半数の県市が3年以上となっている。 |
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教頭の同一校勤務年数
1校あたりの平均在職年数が3年以上となっているのは、小学校(平均2.9年)では19県市,中学校(平均2.7年)では15県市、高等学校(平均2.3年)では8県市、特殊教育諸学校(平均2.4年)では14県市が3年以上となっている。 |
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校長・教頭登用者の職歴(表12)
校長・教頭登用者の登用前の職歴の状況については,以下のとおりである。
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登用直前の職
校長登用者の登用直前の職については,教頭が77.6パーセント(前年度末比0.5ポイント増)と圧倒的に多く,続いて教育委員会・首長部局職員の18.7パーセント(前年度比同)となっている。
教頭登用者の登用直前の職については,教諭が74.5パーセント(前年度比0.1ポイント減)と圧倒的に多い。また,教育委員会・首長部局職員は21.4パーセント(前年度比4ポイント増)となっている。 |
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教職員以外の職歴(登用直前の職を含む)
登用直前の職を含めた登用以前の教職員以外の職歴は,校長は教育委員会・首長部局職員(校長登用者の35.5パーセント,教頭登用者の25.7パーセント)が最も多く,続いて教育委員会所管施設職員(校長登用者の6.7パーセント,教頭登用者の5.6パーセント)となっている。 |
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教員出身でない者の校長への登用状況(表13)
平成16年4月1日現在の教員出身でない校長の任用状況を調査したところ,37都道府県市(昨年比9県市増)で,92名(昨年比25名増)となっており、うち33都道府県市(昨年比7県市増)で、79名(昨年比21名増)が民間人等(原則として,教員免許状を持たず,「教育に関する職」に就いた経験がない者)であり、さらに、今後1名の者が任用予定になっている。 |
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管理職選考試験の実施状況
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教育公務員特例法第13条において,校長・教頭の登用の方法は任命権者である教育委員会の教育長の選考によることと規定されている。このため,多くの県市において,管理職登用選考の一環として管理職選考試験を実施している。
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管理職選考試験の実施状況(図5)
小学校,中学校では校長については56県市が,教頭については57県市が,選考試験を実施しており,そのうち校長については6県市が,教頭については3県市が選考試験の合格者を全員校長・教頭に登用することとしている。
高等学校では校長については39県市が、教頭については48県市が選考試験を実施している。そのうち校長については8県市が,教頭については6県市が選考試験の合格者全員を登用することとしている。
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管理職選考試験の受験資格(表14・15)
各県市における人事異動方針において,ア 教育委員会事務局・教育事務所・社会教育施設等での勤務,イ へき地校・離島等の勤務,ウ 大規模校の勤務,エ 一定教職経験年数の中では,いずれの学校種ともエの教職経験年数を求める県市が最も多い。
小学校,中学校では,選考試験を実施している57県市(校長は56県市)のすべてが,校長・教頭選考試験の受験資格として,年齢制限又は教職経験年数による制限を設けており,また、教頭及び教頭相当職等(教頭選考試験の場合は指導主事等)の職歴経験による制限を設けている。校長や市町村教育委員会等からの推薦状を求める県市が,校長選考試験では56県市中32県市,教頭選考試験では57県市中35県市となっている。
高等学校では,校長・教頭選考試験の受験資格として,年齢制限又は経験年数による制限を設けているか,教頭及び教頭相当職等(教頭選考の場合は指導主事等)の職歴経験による制限を設けているのは,校長選考試験では39県市中2県市を除いた37県市,教頭選考試験では48県市全てがいずれかの要件を求めている。推薦状を求める県市は校長選考試験で39県市中21県市,教頭選考試験で48県市中33県市となっている。
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管理職選考試験の実施方法と合否の判定(表16)
すべての学校種において,筆記試験と面接試験の両方を実施している県市が大半であるが,筆記試験を実施していない県市もある。
また,試験の合否の判定に際して,大部分の県市が勤務実績(勤務評定を含む。)を合否の資料としている。 |
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管理職の資質能力の向上のため方策等(表17)
管理職の資質能力の向上のための各県市における, 社会体験, 管理職としての事務処理能力の向上のための方策, 学校運営における人事管理能力の向上のための方策の実施の有無については,ほぼ前年度と同様の結果となっている。
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社会体験については,小学校・中学校14県市,高等学校・特殊教育諸学校18県市が管理職又は管理職候補者を対象として実施している。 |
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管理職としての事務処理能力の向上のため,小学校・中学校については50県市が研修を実施し,18県市がマニュアル等の参考資料を作成している。高等学校・特殊教育諸学校についても54県市が研修を実施し,18県市がマニュアル等の参考資料を作成している。 |
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学校運営における人事管理能力の向上のため,小学校・中学校について55県市が研修を実施し,16県市がマニュアル等の参考資料を作成・配付している。高等学校・特殊教育諸学校については,59県市が研修を実施し,16県市がマニュアル等の参考資料を配付している。 |
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管理職に適格者を確保するための取組の一つとして,平成16年4月1日現在で、校長・教頭等を対象とした希望降任制度が39県市で実施されており,さらに,3県が今後実施することを予定している。 |
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