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第3章 サービスと科学技術

 21世紀の科学技術は、地球環境問題に象徴されるような人類の持続的発展に対する脅威の克服や、経済のグローバル化が進む中での産業競争力の強化など、その役割を果たすべき新たな課題に直面している。こうした課題に対処する上で、サービスを対象とした取り組みへの期待も高まっている。
 本章では、サービスと科学技術の関係から、科学技術が果たすべき役割について述べる。

1.サービス科学・工学

 世界が情報と知識の時代に急速に転換する中、科学技術の活用についても、時代の変化に相応しいあり方が求められる。
 産業競争力の強化、QOLの向上、少子化・高齢化社会への適応等、様々な課題が存在する中で、これらに関するサービスをプロイノベーション(注1)の対象として位置付け、科学的・工学的な手法を取り入れた研究の対象としていくことが肝要である。
 本報告書では、我が国が今後取り組むべき「サービス科学・工学」を単なる学問分野として捉えるのではなく、以下のように定義した上で、具体的な施策について提言することとする。

  • (注1) イノベーションを是として、その促進のための取り組みを積極的に推進することを意味する概念。「イノベーション」(innovation)に「なになに寄りの」や「なになにに賛成の」を意味する接頭語(pro)が付いた造語である。

【サービス科学・工学】

  サービスに科学的・工学的手法を導入して、新たなサービスの創出(プロダクトイノベーション)や既存サービスの高度化・効率化・広範囲化(プロセスイノベーション)を図るための方法論を構築し、活用すること。

 ここで、サービス科学・工学推進の意義を整理すると、

  • 社会における課題を達成するため、サービスに科学的・工学的手法を導入することによりイノベーションを創出し、QOLの向上、需要の喚起、効率的な資源配分などを実現し、経済・社会へ寄与していく経済的・社会的意義
  • 社会における課題達成に関して高い目標を掲げて研究を行う過程において、21世紀の情報と知識の時代に対応あるいは先行する新しい方法論を確立するという、学問上のブレークスルーに繋がる科学的意義

であると言える。
 このように、サービスに科学的・工学的な手法を導入し、新たな知を創出することは経済的・社会的、また科学的にも大きな意義を有することから、サービス科学・工学を国を挙げて推進していく必要がある。

2.サービスに関する科学技術の視点

 サービス科学・工学を推進するに当たっては、サービスの同時性・消滅性・無形性・状況依存性・変動性といった特色や、我が国固有の価値観も踏まえると、いくつか留意すべき点があると考えられる。
 例えば、従来の科学的・工学的な研究では、仮説を立てそれを検証していくことを通じた実証的な方法が一般的であるが、サービスにおいてはこうした方法だけではなく、捉え難い研究対象に対し、立てた仮説が妥当であるかを検証しながら行う探索的な方法なども組み合わせていく必要がある。
 また、サービスの特性を踏まえれば、サービスにおける重要な要素である「経験と勘」を「科学的・工学的手法」と多様な関係付けを行い、また組み合わせることによって、サービスイノベーションを導き出す必要がある。

 具体的には、

  • サービス提供者あるいは利用者の行動をデータとして大量に取得し、適切なモデリングに基づき、「経験と勘」によって対応していたサービスを、アルゴリズムや自動化によるサービスで置き換えるといった、「経験と勘」の科学技術による「代替関係」
  • サービス利用者の満足度を高めるため、行動観測技術、大量情報検索技術、統計的モデリング等による情報を「経験と勘」の強化に役立てる「補完関係」
  • 個人のニーズや嗜好を的確に把握する個別技能による最善のおもてなしサービスと、最新の技術を用いた設備等の活用によるサービスとが相互に効果をもたらす「相乗関係」

といった関係があることを踏まえておく必要がある。
 これによって、「代替関係」に基づく既存サービスの効率化のみならず、「補完関係」、「相乗関係」による既存サービスの高度化・広範囲化、あるいは新たなサービスの創出に大きく貢献することができる。

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