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著作権分科会 過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会(第6回)議事録・配付資料

1. 日時
平成19年7月27日(金曜日)10時〜11時50分

2. 場所
三田共用会議所 3階 大会議室

3. 出席者
(委員)
上野、梶原、金、久保田、里中、椎名、瀬尾、津田、常世田、中山、野原、野村、生野、松尾、三田の各委員
(文化庁)
吉田長官官房審議官,山下著作権課長,亀岡国際課長、ほか関係者

4. 議事次第
(1) 開会
(2) アーカイブ事業の円滑化方策について
(3) 意思表示システムの利用に伴う法的課題について
(4) 閉会

5. 配付資料
資料1   日本におけるアーカイブの例について
資料2 諸外国の国立図書館等におけるデジタルアーカイブ事業の取組について
別紙1 諸外国の国立図書館等におけるデジタルアーカイブへの対応(PDF:204KB)
別紙2 諸外国の国立図書館等におけるネットワーク系出版物収集への対応状況(PDF:226KB)
資料3 諸外国における放送番組のアーカイブの状況について
資料4 アーカイブについての議論のポイント
資料5 意思表示システムについての議論のポイント

参考資料1   ヒアリング等で出された主な意見の整理(第5回後更新版)
参考資料2 第5回過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会議事録
(※(第5回)議事録・配付資料へリンク)

6. 議事内容
【野村主査代理】 それでは定刻になりましたので、若干お見えになっていない方もいらっしゃいますが、ただいまから過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の第6回を開催いたします。本日は御多忙の中、ご出席頂きましてまことにありがとうございます。
 本日の会議の公開につきましては、予定されております議事内容を見ますと、特段非公開とする必要はないと思われますので、既に傍聴者の方には入場頂いておりますが、特に御異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【野村主査代理】 それでは、本日の議事は公開ということで、傍聴者の方にはそのまま傍聴頂くことにいたします。
 まず、事務局に人事異動があったということですので、その紹介とあわせて配付資料の確認をお願いいたします。

【黒沼著作権調査官】 それでは、人事異動の御報告でございますけれども、7月11日付けで文部科学省の初等中等教育局の教科書課長より山下和茂が著作権課長に就任しております。

【山下著作権課長】 山下でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【黒沼著作権調査官】 なお、前任の甲野正道でございますが、現在、文部科学省大臣官房に異動しております。
 引き続きまして配付資料の確認をさせていただきます。議事次第の1枚紙の下半分に配付資料一覧を記載してございますが、本日、資料5点と参考資料2つをお配りしてございます。資料の2は別紙の1と別紙の2のA3の資料が付いてございます。欠落等ございましたらお知らせ下さい。
 以上でございます。

【野村主査代理】 それでは、議事に入りたいと思います。本日も前回に引き続いて、小委員会の各検討課題の整理に基づいて個別の議論を進めていきたいと思います。
 まず、前半でアーカイブ事業の円滑化の方策について議論をして頂いて、後半に意思表示システムの利用に伴う法的問題について議論をしたいと思います。
 まず、アーカイブ事業の円滑化方策について、配付資料の御説明をお願いいたします。なお、本日は諸外国のアーカイブ事業等について、国立国会図書館の田中久徳さんにお越し頂いております。後ほど御報告を頂きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【黒沼著作権調査官】 それではまず、資料1と資料3につきまして、私のほうから御説明をさせて頂きます。
 本日も参考資料1の各検討項目ごとに議論を深めて頂くということを前提に全体を構成しまして、資料を用意してございます。まず、全体に先立ちまして、資料の1として、アーカイブというもののイメージを共有しやすくするために、実際に行われているアーカイブ活動の例について資料を御用意させて頂きました。
 アーカイブと称するものは、調べてみますと世の中に様々なものがありまして、網羅的には調べられなかったのですが、代表的なものについて、何を集めているのか、どういう利用をさせているのかという観点で簡単にまとめております。
 まず(1)図書等の刊行物につきましては国立国会図書館がございまして、こちらは国会図書館法の納本制度によって図書、小冊子、逐次刊行物、楽譜、地図、パッケージ系の出版物など刊行物を網羅的に収集を行っているということでございます。
 利用の形態ですが、蔵書類についてホームページから検索が可能になっておりますし、来館してというのはもちろんでございますが、その他に著作権処理がなされているもの、当然著作権が切れているものもございますが、そういったものはデジタル化して、インターネットで画像として閲覧可能にしております。
 その他図書につきましては、公立図書館や大学図書館、その他民間等でもネットワークを組んで様々な取組みがありますが、とりあえずはここでは代表的なものとして国会図書館を御紹介させて頂きました。
 なお、諸外国での国会図書館のような取組みについても、情報をお持ちということで後ほど国立国会図書館のほうから御紹介頂けるということでございます。
 (2)の放送番組ですが、こちらは第1回以降逐次御紹介しておりますが、NHKアーカイブスの取組みがございます。過去にも御紹介しましたので、利用のところだけ簡単に触れさせて頂きますと、全国54カ所で番組公開ライブラリーを常設しておりまして、そこで、著作権処理がなされているものを来館者に対して公開しているということでございます。また、ホームページから検索が可能という仕組みになっております。
 次のページですが、放送番組センターの放送ライブラリーというものもございます。こちらは放送法第53条の規定に基づきまして、放送番組の収集、保管、公衆への視聴を業務とするものですが、一定の放送番組収集基準を作りまして、その基準に合うものを放送事業者に提供を求めて、任意に提供を受けて収集しているということでございます。
 御覧のような基準で御覧のような資料を揃えているということです。利用の方法としては来館者に対して公開をするという形だそうです。こちらもホームページから検索が可能となっているとのことです。
 なお、放送番組の保存については、諸外国についても多少文献で資料がございましたので簡単に御紹介します。資料の3のほうを御覧頂ければと思います。A4の横長の1枚紙でございますけれども、今、我が国の放送のアーカイブの仕組みを2つ御紹介しましたが、諸外国でも幾つか仕組みがあるようで、それぞれ御覧のような取組みがあるのですが、一番端の右の特記事項のところだけ簡単に御紹介します。イギリスの例では、放送番組を後から寄託してもらうという仕組みではなくて、放送などの番組をそのまま直接録画をすることができるという規定があり、それによって収集をしているという取組みだそうです。
 それから、1つ飛ばしますが、アメリカでは中心的な機関があるわけではなく、分散型の収集体制をとっているようでして、それぞれたくさんの機関がそれぞれの方法で集めているというタイプのものでございます。
 一番下の韓国の例では、特に法律的な仕組みということではなくて、各放送局とそれぞれ個別の協定を結んで資料を収集している、そういったものなどがございます。それぞれパターンが違いますので、簡単な御紹介ですけれどもこのような仕組みがあるということでございます。
 もとの資料に戻って頂きまして3ページですが、今度は映画の関係でございます。こちらは国立近代美術館フィルムセンターにおいて、芸術的に優れた作品ですとか、歴史的に重要な作品ですとか、そういったものを収集しているということでございまして、製作会社からの原版の寄託という方法が多いということでございます。利用の方法は館内に限って有料で上映するということだそうです。
 その次のページで、レコードの分野でございますが、こちらはこれからというお話でございますけれども、国内で製造された優良な原盤について収集をしていく予定ということです。
 美術品等につきましては、様々な博物館、美術館でそれぞれの資料をデジタル化するという取組みが進んでおりますが、例として国立博物館では、所蔵する資料について画像データを作成して、それをウェブサイトを通じて公開するというような取組みを行っているとのことです。また、画像の有償ライセンスというような取組みも行っているようでございます。
 同様の取組みは、各博物館、美術館でそれぞれありますが、その次の文化遺産オンラインは、こういったそれぞれの博物館の取組みのポータルサイトのようなものでございまして、そのオンラインに参加している博物館、美術館が所蔵品の見本画像を登録しまして、インターネット上で検索が可能となっており、全国の博物館、美術館にリンクが張られているというタイプのものがございます。
 このように、幾つか御紹介しましたが、一口にアーカイブと言っても提供の仕方には様々なパターンがございますし、中心的な機関があるようなタイプのアーカイブ、それから、分散型で保存してポータルサイトを用意して全体をネットワーク化するもの、様々なパターンがあるということでございます。そういったものについて御議論頂ければと思っておりますけれども、とりあえず国立国会図書館からの御紹介の後に、また議論のポイントについて御紹介をしたいと思います。

【国立国会図書館(田中)】 国立国会図書館の田中と申します。よろしくお願いいたします。資料として、2枚もののレジュメと表を2種類お配りさせて頂いております。
 最初に表について御説明しますと、別紙1が諸外国の国立図書館等におけるデジタルアーカイブの対応でございまして、これは公文書館等の類縁機関も若干含めておりますが、本や出版物、その他の記録資料も含めた形で、基本的に古い資料をデジタル化して公開するアーカイブ事業を行っている例でございます。
 それから、別紙2は、ネットワーク系出版物収集への対応状況でございます。国会図書館ではネットワーク系出版物という言葉を使っていますが、インターネット上の情報を、国立図書館等が収集している事業についての諸外国での状況ということで、表にまとめさせて頂いているものでございます。
 時間も限られておりますので、本日はこのうちアメリカとヨーロッパのデジタル化プロジェクトの状況につきまして簡単に御報告をさせて頂きたいと思います。
 資料2に戻って頂いて、初めにアメリカについて御報告させて頂きます。米国議会図書館は、アメリカの国立図書館でございますが、1990年からAmerican Memoryという資料のデジタル化プロジェクトを始めております。
 スタートした時点では、インターネットでの提供ということではなくて、CD−ROMでアメリカの貴重な歴史資料をデジタル化したものを教育機関等に配付するという形のパイロットプロジェクトとして始まっているものでございます。
 基本的な目的は教育現場などでアメリカの歴史資料を広く使ってもらうという事業でございまして、現在では、1,100万点以上の資料が蓄積されているということで、世界でも有数のアーカイブプロジェクトとなっております。その中には、文書類とか写真とか動画という出版物でないものも相当数含まれております。
 この事業を行うにあたって、権利上どういう形で行われているかと申しますと、基本的に米国の場合は1923年より古い刊行物は全て自由に使えるということでございますので、1923年以前の刊行物につきましてはそのままデジタル化して自由に使われているということになります。それより新しいところでは、当然権利が残っているものもあるわけですが、その場合にアメリカ著作権法の公正利用の規定というものにのっとった形でこの事業が行われているということでございます。
 ですから、公正利用の目的を逸脱するような利用をする場合には、全て権利者の方から書面で、利用についての許諾を得る必要があるということになります。
 次に、インターネット上の検索サービスを提供しているグーグルによるGoogle Book Searchというものが、出版物のデジタルプロジェクトとして行われております。
 このGoogle Book Searchは、ハーバード大学、スタンフォード大学、ニューヨーク公共図書館、イギリスのオックスフォード大学のボードリアン図書館等5つの大きな図書館の蔵書を全て悉皆的にデジタル化して、それをグーグルの検索エンジンから利用できるような形にするというプロジェクトでございまして、図書館にある本を全てデジタル化していって、その後、OCRで読み取って全文検索ができるようにするという形で蓄積されているものです。これにつきましてはアメリカの場合、1923年より古いもの、あるいは政府刊行物の場合は、基本的にパブリックドメインに属するということで自由に使えるわけですけれども、それ以外のものについても同じようにデジタル化作業が行われております。
 利用の側面では、権利が消滅しているものについては全文がインターネット上で利用することができる形になっておりまして、権利が残っているものについては、検索でヒットした言葉の前後の数行のところは表示されるという形で、中身は見ることができません。その代わり、この本はこの図書館が所蔵している、あるいはここでまだ購入することができる、そういう書籍の購入とか他の図書館の蔵書検索のサイトに案内されるという形のサービスが行われているということでございます。
 これにつきましては、グーグルは出版社が事前にこの本はデジタル化をしないで欲しいということをグーグル側に申し出ると、その本は外す対応を行っております。それによって、グーグルは公正使用の要件を満たしていると主張しています。
 これに対して、全米出版社協会と全米作家協会が明らかに権利者の許諾なく複製を行っている、これは違法であるということで訴訟を提起しております。2005年8月から11月ぐらいまでの3カ月間、この事業がストップしていたわけですけれども、係争は今も続いておりますが、グーグルのほうは公正使用であるということで、また事業を再開して続行しているというのが現状でございます。
 この件につきましては、議会図書館が議会の要請を受けて報告書を作成していますが、その中ではまだ裁判は継続中であるけれども、目的等を鑑みて判断すると、公正使用の要件を満たすのではないだろうかと、ちょっと微妙ですけれども、そういう報告書は一応出ているという状況でございます。
 また、議会図書館の館長が一昨年の6月にユネスコのアメリカ委員会の中で、「ワールド・デジタル・ライブラリー」というものを行うということで、新しいプロジェクトの構想を提唱しております。これはアメリカの国内というよりも、世界レベルでいろいろな形の出版物をデジタル化していく。その主導権をアメリカが中心になってやっていくという構想でございまして、この事業にもグーグルはお金を寄附して、公民の共同プロジェクトという形でやっていくということで、既に進められているというところでございます。
 それから、これは古いところのデジタルアーカイブのプロジェクトではないですけれども、アメリカではいわゆるボーンデジタル、インターネット上の情報を中心にしたものが保存されない、電子情報が消滅していってしまうということの危機感から、議会が2000年に「全米デジタル情報基盤・保存プログラム」というものを立法化しまして、1年間に1億ドル以上のお金を支出して、全米のいろいろな機関の中で電子情報を保存していくということも行われております。
 議会図書館は、インターネット上のウェブ情報のうち、アメリカにとって貴重な記録となるものを選択的に収集して残していくというプロジェクトを分担しております。その中には大統領選挙ですとか、9.11の同時多発テロですとか、そういった記録上重要な価値を持つウェブサイトを保存していくということで、現在3万7,000以上のサイトが保存されているということです。
 これを行うにあたりましては、議会図書館は基本的に全てのサイトの権利者の方と契約を結んで、複製するにあたっても全て権利許諾を得た形で実施されているということでございます。
 以上がアメリカでございます。
 次にヨーロッパの例について簡単に御報告させて頂きます。ヨーロッパの国立図書館でも同じようなデジタルアーカイブというのが、イギリス、フランス、ドイツそれぞれ行われていますが、イギリスの場合、英国図書館では、American Memoryに相当するようなCollect Britainというような事業が行われておりまして、これも出版物というよりは歴史的な記録物のデジタルプロジェクトという形で行われているものです。また、これとは別に、昨年の3月からアメリカのマイクロソフト社と英国図書館が提携する形で、19世紀の古い本、基本的には全てパブリックドメインに属するものですけれども、その書籍10万冊のデジタル化プロジェクトというのを開始しております。これも公民の共同プロジェクトという形で進めてられているところでございます。
 欧州の場合、もう一つ重要なプロジェクトが、欧州委員会が2005年に計画を公表しました「EUデジタル図書館プロジェクト」というものがございます。これは欧州のそれぞれの国の国立図書館が協力しまして、ヨーロッパの共同記録といいますか、共同的な文化資産として、それぞれの言語の刊行物を全てデジタル化して自由に使える部分を増やすということで、欧州共同体全体の文化的な中核になるようなものを作ろうということで始まったプロジェクトでございます。目標として2008年までに200万、2010年までに600万点の出版物を中心にデジタル化していき、インターネットでそれを公開していこうということで始まったものでございます。
 ところが、始まってみますと、なかなか進捗しないということがございまして、基本的に欧州各国では米国のような公正使用というような法律上の規定はございませんので、パブリックドメインに属しないものについては、権利者の方の許諾なく事前に複製することが難しいという状況がございます。
 それから、権利の保護期間がヨーロッパ各国では著作者の没後70年ということで、保護期間が長いという事情がありますので、なかなか対象資料のデジタル化というものが進まないという問題に直面したということでございます。
 ですから、1920年代よりも新しいところの刊行物のデジタル化というものがほとんど進まなかったという状況が起こりました。それに対して、欧州委員会が高次専門家グループというものを結成し、その中に著作権問題のサブグループを作りまして、英国図書館長ですとか、世界複製権機構の事務局長、欧州出版連盟の理事長、欧州作家会議の事務局長という権利者側、それから事業を行う図書館側、出版界、その最高レベルの関係者を一堂に会する形の委員会を作りまして、そこでこの問題に対する対応を協議するということで進めております。
 その委員会の報告書が今年の4月に出されているのですが、その中で重要な柱が2つございまして、1つ目がOrphan Worksの問題、権利者が分からなくなってしまった作品の問題ですけれども、これについては合理的な事前調査を実施することを条件に、非営利目的のデジタル複製は行えるようにする。そういう報告がなされています。
 合理的な事前調査という部分を補足いたしますと、この合理的調査というのは、reasonably diligent searchということで、入念に調査するということを要件としましょうということでございます。
 それから、権利者が分からなくなっている作品がどれであるかということを検索できるようなシステムを、非営利団体が運用する。そこを探して調査することで、不明作品についての対応を図るということが想定されております。権利の保有者が現れたときは、そのことがはっきり分かるようなシステムを作るべきである。そういった幾つかの提案がなされております。
 こういった制度が提案されるのは、ヨーロッパ各国は日本でいう長官裁定制度のような仕組みを持っていないということも大きな理由としてあるかと思います。
 それから、絶版資料の問題がございます。ここで言う絶版資料というのは、具体的には権利者の方が既に商業的にその本を使うということを断念された、あるいはそういう使い方はもう望まれていないというものを言っていますが、こういった絶版資料につきましては、資料のデジタル化と、国立図書館の館内とか公共図書館の館内とか、そういう一定の閉鎖的な環境の中では、閲覧や一部の複写は行ってよいというような権利ライセンスのひな型を作りまして、そういったものを普及させるようにしようという勧告が出されております。
 その場合、権利者の方はいつでも撤回の申し出ができるということも提案されております。ヨーロッパではこういった委員会報告を受けて、新しい部分のデジタル化についても円滑に進めようということで、今、調整が進められているという状況でございます。
 その他ですけれども、ヨーロッパ各国の国立図書館では、インターネット上のサイトを、国立図書館が法定納本制度の枠組みの中で包括的に収集できるというような規定が、特にここ数年整備されてきているという状況があります。これはアメリカとも違う状況でございまして、2003年にイギリス、それから昨年はフランス、ドイツでそういった法律ができておりまして、これが新しい動きとして起こっているところでございます。
 簡単でございますが、報告は以上でございます。

【野村主査代理】 どうもありがとうございました。それでは続いて事務局のほうから説明をお願いします。

【黒沼著作権調査官】 引き続きまして資料の4を御覧頂ければと思います。
 まず、この議論につきましては、基本的に参考資料1の検討課題ごとに御議論をということを前提としておりますが、参考資料1は細かい資料ですし、前回の小委員会でも参考資料1が使いづらかったという反省もございまして、その中から議論のポイントを抽出させて頂きました。それが資料の4でございます。
 設定しているポイントは枠で囲っている1から3まででございますけれども、1番目は資料の1から3で御紹介したように、アーカイブと一言で申しましても様々な形態がございますし、参考資料の1で出てきている御発言を見ましても、それぞれ念頭に置かれているものが異なっているのかなということでございまして、アーカイブについて議論する初回ということもありますので、まず共通イメージを作って頂いたほうが今後の御議論が進めやすいかと思いまして、アーカイブとはどのようなものなのかということを最初に課題設定させて頂きました。
 簡単に分類をしておりますけれども、まず機能に着目した分類としましては、12は辞書的な意味でのアーカイブでございますが、公表された資料を収集して、その劣化を防いで保存しておくという機能を持ったアーカイブです。更にそれを3のように目録等の所在情報を整備して、資料を閲覧できるようにすること。これを更にネットで検索できるようにするようなものというものもございます。
 アーカイブという意味を、特に最近はデジタルアーカイブの意味で用いる方も多くいらっしゃると思いますし、更にはデジタル化というものを指してアーカイブと言う方もいらっしゃるようですけれども、4のように、そういった形でデジタル化してインターネット等で閲覧できるような状態になっているものを念頭にアーカイブと呼んでいる方もいらっしゃるようでございます。これについては、デジタル情報が一体何年持つのかといったような議論もございますし、デジタル化というものは必ずしも保存という2の範囲をカバーするものではないようで、そういうようなアーカイブもあるようでございます。
  5は更にそういったものを進めて、デジタル化された資料を使いましてバーチャルミュージアムなど、更に一歩進めた利用ができるようなものを想定されているようなものもあるということでございます。
 次は、提供の形態からの分類でございますけれども、こちらも先ほど少しと申しましたが、中心的な施設でアーカイブを行っているようなパターン、それから分散的に行ってポータルサイトを整備するようなパターンとそれぞれございます。料金の面で無料で提供されるもの、有料で提供されるもの。こういったものが分類としてあると思いますので、どういったものを念頭に置いて御議論を進めて頂いたらいいのかということが、ここでの課題でございます。
 2番目でございますけれども、その上で現行の著作権法の規定では、どういったことが許諾を得ないでできるのか。もちろん許諾を得ればいろいろな取組みができるわけでございますけれども、許諾を得ないでできるようなものとしては現行の規定は何が使えるのかということで、ここで幾つかピックアップをさせて頂きました。
 収集、保存に関係するような規定としましては、図書館で保存のために複製をするような場合、行政、立法の場合には内部資料として複製が可能となっております。放送事業者の場合には、放送の前に一時的に固定をすることがございますけれども、そういったものを記録保存所において保存できるというような規定も設けております。
 利用させる場合の規定でございますけれども、図書館等において、利用者の求めに応じて調査研究の用に供するために一部分の複製を提供することができるという場合、それから、絶版等の入手困難な資料を他の図書館からの求めに応じて複製物を提供するということであります。
 図書館の館内などでの利用でございますけれども、非営利無料の場合の上映ですとか貸与というような規定も用意されております。
 次のページですが、そういったものを踏まえまして、現行の著作権法で対応できないような範囲がある場合に、アーカイブを円滑化するために更に必要となる措置としてどのようなものが考えられるのかということで、それが次の課題になろうかと思います。
 大きく分けまして2とおりございまして、制度的な対応が必要になる場合、それから、2つ目で先ほども韓国の放送番組の例のようなことがございましたけれども、関係者間の合意によって提供のルールを作っていくとか、そういった合意によるルール形成に委ねる場合というのがございます。こちらについては、更に権利者不明などの場合でしたら前回の裁定とかの御議論も関係してくると思いますけれども、そういったものを含めて合意による場合。大きくこういった2つに分かれると思います。
 その場合、制度的な内容でも合意によるルールづくりの場合でも、どちらもおそらくこういうところが検討のポイントになるだろうと思われることを下に列挙してございます。対象となる資料の範囲をどう捉えていくのか、入手困難な資料、再生手段の入手困難な資料など、今まで意見も出ておりますけれども、そういったものに限っていくのか、アーカイブの主体をどのように捉えるのか、公共的な施設、中心的な機関を捉えるのかどうか、それから、営利目的、非営利目的はどう考えるのかといったような問題があろうかと思います。
 それから最後の利用のところですが、どういった利用を認めるものを念頭に置くのかということで、施設内での閲覧、上映というものを認めているのが資料の1でも多かったわけでございますが、そういったものや、一部分の複製物を提供するとか、分散型のアーカイブの場合では施設間での資料の融通とか、最後には一番オープンな形として公衆送信まで認めるというようなものがあろうかと思います。
 こういったものを組み合わせまして様々にパターンが出てくるかと思いますが、これらの条件をうまく設定しないと、例えば極端な例では、入手困難なものをアーカイブする場合には公衆送信はオーケーというような仕組みを作った場合には、公衆送信でネットに載ってしまったら、その時点で入手困難というような状況はなくなるわけなので、権利制限規定を作ったとしたら、次の人はそれが利用できなくなるとか、更に主体限定しないでやった場合には、誰でもできてしまうので、誰かが最初にやってしまったら中心的な役割を担う人もその規定が利用できなくなるとか、条件設定の仕方によっては矛盾が出てくる場合もあろうかと思いますので、それぞれの組み合わせでどういうものがよいのかということを御議論頂ければと思っております。
 以上でございます。

【野村主査代理】 どうもありがとうございました。それでは、ただいまの御説明の質疑応答を含めまして、アーカイブ事業の円滑化方策について議論をしたいと思います。基本的には今御説明頂いた資料4に基づいて議論を進めたいと思いますが、これまでの意見については参考資料1の9ページ以下にも整理されておりますので、そこも適宜あわせて御議論をお願いしたいと思います。
 それではどなたからでも御自由にご発言ください。三田委員、どうぞ。

【三田委員】 今、御説明があったわけですが、ちょっとまだ説明が不十分なところがありますので、私のほうから補足的に説明しながら見解を述べたいと思います。
 今、デジタルアーカイブという言葉が使われているんですけれども、特に文字情報、書籍の場合はこれは明らかに全く違う2つのものがあります。1つは、ページの版面をデジタル写真に撮るというものです。それからもう一つは、解析をして文字情報として保存をするというものであります。これは全く違うものであります。
 アーカイブとは少し離れますが、実情を説明するためにお話をしますと、アマゾンというネット上の本屋さんが「なか見!検索」というものを今スタートさせております。何ができるかといいますと、ある言葉をグーグルと同じようにアマゾンのサイトで検索をしますと、アマゾンが扱っている書籍の中からその言葉が使われているものがリストアップされるというものであります。
 検索でヒットしますと、その言葉のあるページ及びその前後2ページ、つまり全体の5ページほどがネット上で見られるというものですが、そこに出てくるものはデジタル写真であります。ということは、それをワードプロセッサーに読み込んですぐ使うということはできません。単なる映像にすぎないのです。読めるというだけであります。しかもページ全体がコピーできないような、要するにストリーミングの形で、ページの情報、電子写真のファイルがエンドユーザーのパソコンには届いていない、コピーペーストができないという形になっております。
 ですから、文字情報が流出するということはないんですけれども、検索できるということは、テキスト文書がアマゾンのサーバーの中にはコピーされてあるんですね。ここからが日本語にとって非常に重要なところなんですが、ヨーロッパの言語、英語のようなものですと、このアーカイブというのはある意味で今、私が申し上げた区別がほとんどないと言っていいと思うのです。
 なぜかというと、ページを開いて、自動ページ送り機のついた読み取り機で本を読み取りますと、とりあえずは電子写真に撮ってパソコンの中に入れるわけです。それから解析ソフトで文字情報に変換をするわけです。すると、アルファベットだと100パーセント正確に変換できます。ですから、イメージ写真であるか、文字情報になっているかはほとんど区別なく扱えるわけです。
 ところが日本の場合ですと、読み取って文字情報に変えるということがまず不可能であります。読み取りソフトの性能は非常に上がっておりますが、100パーセント正確な文字情報化というのは現在では不可能であります。
 そこでアマゾンのような解析をしなければいけないという場合に、アメリカのアマゾンでは扱っている本を読み取り機にかけて、文字データを取るということをやっているようでありますが、日本の書籍をそれでやられますと、いわば間違ったデータが入ってしまうわけですね。これは人格権の同一性保持に抵触すると思われます。
 そこで現在は、まずもちろんイメージだけでも複製権の侵害になりますから、著作者の許諾が必要なんですけれども、著作者の許諾がとれたものについては、出版社が文字情報のデータをアマゾンに渡すというようなことをやっております。その文字情報はエンドユーザーには届かないわけですね。検索のために使うということであります。表面に現れるのはイメージだけであるということになります。
 これと同じことがデジタル図書館というものを作る場合にも必要になってきます。おそらく国会図書館が今アーカイブしているのは版面を写真に撮っているということだろうと思います。ところが検索をしようとすると文字データが必要になってきます。すると、多分読み取り機にかけて、それをサーバーの中に入れておくということになります。
 すると、そのサーバーの中に入っている読み取られたものというのは、人格権を侵害しているような誤植の多い文字列になるんですけれども、しかし、検索に引っかかるような固有名詞であるとか名詞ですね、こういうもののある程度はカバーできるということで、機能としては検索の役に立つということはあるだろうと思います。
 ただ、それがサーバーなりに入っているということは、それを書いた著作者にとっては甚だ気持ちの悪い誤植いっぱいのデータがそこにあるわけですね。何らかの形でそれが流出したりしてしまうと人格権の侵害になってしまいます。そういう日本語特有の問題がここにあるんだということを御認識頂きたいと思います。
 以上です。

【野村主査代理】 どうもありがとうございました。他に御発言いかがでしょうか。中山委員どうぞ。

【中山委員】 今の事実の確認をしたいんですけれども、確かに日本語の場合読み取りは難しいと思うんですけれども、一体識字率といいますか、あるいは間違いの率というのはどのくらいなんでしょうか。これは三田さんではなくて、どなたでも分かる方にお伺いしたいのですけれども、現在の精度というのはどのくらいあるのでしょうか。

【野村主査代理】 むしろ、国会図書館のこれまでの経験でしょうか。

【国立国会図書館(田中)】 正確なところは分からないですけれども、例えば私どもでは国会の会議録を古いところは全部版面だったものを検索できるようにしましたが、校正終了の段階では、0.何パーセントというところまで精度は上げるのが普通でございます。

【野村主査代理】 津田委員どうぞ。

【津田委員】 識字率のところでいくと、白地に黒で印刷してあるこういう公文書みたいなものは90パーセント以上とかいくんですけど、雑誌みたいに文字が小さかったりとか、本の体裁で裏地バックが付いていたり色が付いていたりするととたんに落ちるんですよね。大体それぐらいの平均だと60パーセント、70パーセントぐらいまで落ちてしまったりするというのが現状としてあって、OCRとかというのもデータで言うと、結構今、中国とかに投げているというケースが多くて、中国とかだと人件費が10分の1ぐらいで済むので、日本で普通に全部1冊単行本をスキャンすると、例えば修正の手間まで含めて1万とか2万円ぐらいかかるのが、中国ですともうちょっとそれが安くなるということで、結構そういったブックアーカイブとかのOCRアンド修正というところの現場だと、今わりと中国に投げて処理しているというのが現状としてはあるそうです。

【野村主査代理】 他に御発言いかがでしょうか。椎名委員どうぞ。

【椎名委員】 ちょっと本来の趣旨とは違うと思うんですが、技術的な疑問として今と似たような話で、音声及び映像をアーカイブしていく場合に、僕自身の知識によりますと、絶えずフォーマットというのが移り変わっていっていてイノベーションも進んでいるという中で、例えば歴史的音盤とかNHKのアーカイブとかというように、デジタイズされる形はどういう形なのか、しかも、そのフォーマットというのは今後も再生することが可能であることを担保されているのかという、そのあたりをどなたか御存じの方、いらっしゃったら教えて頂きたいと思うんですが。

【野村主査代理】 どなたか御発言ありますか。保存していて見られなくなってしまうのではないかという話ですか。

【椎名委員】 例えば音ですと、WAVファイルというCDと同等のサイズのファイルにするというのもあるし、今だと圧縮してMPEGで保存する。それと同じようなことが映像でもあって、しかも例えばウィンドウズの段階が変わっていったり、マックの段階が変わっていったりする中でフォーマットが変わっていくという状況があって、その私的にアーカイブをしている人が一体どの方式でストアしていったらいいのか悩むというような話を一度聞いたことがあるのですが、それをこういう公的なアーカイブというときに、どのあたりに落ち着けているのかというのを知りたいと思ったんですけど。津田さんあたり、そのあたり御存じないですか。

【津田委員】 僕もアーカイブでテキストとかをどう保存しているのかというのは分からないんですけれども、PDFとかが多いのでしょうか。

【椎名委員】 映像と音楽ですね。

【津田委員】 映像と音楽はどうなんでしょうね。ちょっと分かりません、すみません。

【瀬尾委員】 今、アーカイブの話になると技術的な問題というのは非常に重要になってくると思うんですが、ただ、今ここで出ている議論の中で重要なことは、著作物そのものをアーカイブ化するということと、著作物のデータをアーカイブ化することということで、まず基本的に大きく2つに分けられると思うんです。要するに著作物メタデータのデータベースなのか、アーカイブとデータベースという言葉、私は同義語で使っていると思って下さい。
 その2つのことがありまして、実際に今までのアナログの著作物、例えば写真でもございます。銀塩のモノクロのプリントとか、全てのジャンルにおいて今までのアナログ資産というものがたくさんあって、非常に重要な著作物であり日本の財産であり文化だと思います。ただ、これをいかに蓄積をして、そしてデジタライズをしてアーカイブ化するかというのは非常に重要な問題だとまず1つ思っています。
 写真についても、原版が非常に散逸しております。歴史的な写真のネガというのはばらばらにして家族によって捨てられてしまうとか、大変なことが起きていて、それに関してはやはり写真の原版を保存する写真保存センターというのを設立しなければいけないのではないかということで、文化庁さんと御相談して今、調査にかかっているという状況にございます。
 ただ、そういうことをして、それを更に保存し、デジタライズし、更にアーカイブ化していくということ、非常にこれは重要なことなんですが、今回の過去の著作物の流通の中でまず考えなければいけないと私が考えるのは、ここのテーマとしてはメタデータ、いわゆる著作者は誰なのか、どこにいるのか、そういう情報をどのようにアーカイブ化するかという、その後者のほうに絞って話をしないと、大分技術的にも規模的にも難しくなってくるのではないかなという感じがしております。
 これは私の個人的な考えなんですけれども、例えば写真でも個人の著作者の情報をアーカイブ化してWho's whoのようなものを作ると。利用者の方がこれを見て、誰がどこにいるか分かって著作物を利用できるということが1つあります。もう一つ、私の持っていますアイデアとして、ウィキペディアというホームページが今ネット上で非常に使われております。同じようなちょっとクローズドのウィキのような状態で、例えば写真に関しましてデータベースをクローズですが会員的に公開する。
 その中で例えば今まで出版社さんとかたくさんの人が調べているんですね。例えば1人の写真家が分からなくて、追っかけている出版社はたくさんあるんです。でもその情報というのは、また次にその写真を使いたい人は同じ手間をするんですね。それを今まで我々は写真著作権協会、写真家協会、そういう中で担当者が何となく頭に入れて、この前誰かが調べていたとかとしているんですが、これをクローズのウィキのような形で私はこれを調べてこうしましたけれども、この方は亡くなっていましたと書き込んでおく。
 そうすると、そういうことを今までのデータベースに肉づけをしていって、メタを整備したらきっといいいのではないか、またコストもかからないのではないかという構想を考えてはおります。ただ、そうしていかにして現在使う所在情報を整備していくか。それによってどういう権利制限なり何なり、そういうことが関わってくるのか。その部分についていわゆる過去の流通の一番重要な部分について、皆さんからの御意見を伺っていって議論をすると、ちょっといい方向にいくのかなと私としては思います。
 以上です。

【野村主査代理】 どうもありがとうございました。他に御発言いかがでしょうか。特にアーカイブについてはこの段階で以上の議論でよろしいですか。三田委員、どうぞ。

【三田委員】 この委員会は、過去の著作物についてということで始まっているわけでありますが、アーカイブに関して特に書籍の場合で、ここ20年ぐらいは本を作るときに中性紙というものを使うようになったんですが、それ以前のもの酸性の紙であったために劣化が非常に激しいんですね。ですから、私の初期の本でも、うちにある本を開けてみると、もう紙が黄ばんでいるわけです。
 ですから、黄ばんでからそれをアーカイブしても読みにくかったり、あるいはそれを文字情報に変換しようと思っても読み取れなかったりする可能性が多いので、国会図書館のようなところで、もし可能ならば、新刊書をとりあえずデジタル写真に撮って保存しておくというようなことがこれからは必要になってくるのかなと思います。
 国会図書館には資料用の本と3冊ずつ納本しろと言われておりますので、貸し出しのものとは別になっていると思いますけれども、一般の公共図書館のような場合は、1冊しかない本を貸し出しますと、また汚れるわけですね。ぼろぼろになってからアーカイブしようと思っても難しいので、貸す前に最初に写真を撮ってしまうというようなことが必要になるのかなということもあります。
 その点も含めて、アーカイブというものに対して何らかの権利制限をするとか、これはエンドユーザーに届くということではなくて、完全にクローズな資料として保存をするという意味で、写真を撮るだけでも複製権の侵害になりますので、何らかの方法を考えなければならないかなとも思います。
 それから、この委員会の趣旨であります過去のもの、大昔のものといいますか、これは保護期間とも関わっているわけですけれども、日本の場合は保護期間が現行50年でありますので、50年でフリーになるということですから、アーカイブできるということになります。これを欧米並みに70年にするということになりますと、今御指摘がありましたように、かなり昔のものでも著作権が関わってくるということで、アーカイブが難しくなるということであります。
 それに対して私は前回も申し上げましたが、日本には裁定制度というすばらしい制度があるので、これをより簡略化することで十分に対応できるだろうと申し上げてきたわけですけれども、実際にこれを適用するとなると、幾つかの点で難しいところがあります。それは音楽の場合、JASRAC(ジャスラック)さんのようなところはほぼ100パーセントに近い形で著作者の権利を扱っていますが、書籍の場合、文芸家協会に登録している人は3,000人ぐらいしかおりません。
 例えば視覚障害者のために音訳図書を作るという場合、これは点字図書館は著作権フリーでありますけれども、公共図書館の場合は許諾が必要であります。現在、文芸家協会では3,000人ほどの人のリストを図書館協会にお渡しをして、このリストに載っている人は許諾なしに音訳していい。後で、したということだけ報告してもらえばいいということをやっておりました。ところがこの3,000人だけではとても対応できないんですね。図書館にある本というのは文芸作品だけではありません。いろいろなハウツーものみたいなものもあるわけです。
 同じことが点字図書館についても言えまして、点字図書館は音訳図書を作るのは著作権フリーでありますが、これをネット配信するという事業を始めました。ネット配信については規定がなかったので許諾が必要だったので、従来は公共図書館の音訳と同じように3,000人の人のリストを点字図書館に渡しまして、これに関してはフリーで使っていいということを申し上げてきたんですけれども、それだけでは対応できないということを点字図書館の理事長に言われましたので、何年か前に私と点字図書館の理事長が文化庁に赴きまして、権利制限を拡大してくれと申し上げまして、委員会で議論されまして、今月の1日から法律が施行されてフリーになったわけですね。
 こういう形で、フリー化をある程度やっていかないといけない。それに対して我々は公共性のあるものについては十分に対応したいとは思っているんですけれども、しかし、国会図書館等が著作者の死後50年以上経ったものについて、今までと同じようにフリーにできるような体制を我々としても何とか実現しなければならないと思っております。
 ただし、保護期間が70年に延びますと許諾が必要になるということと、それからいつお亡くなりになったか分からない方というのがいらっしゃいますので、何年経っているか全然分からないという方もおります。ですから、裁定制度のようなものはやはり必要であろうと思われます。裁定制度が今困難なのは、今、国会図書館の方も御指摘になったディリジェントサーチというんですかね、一生懸命探しなさいということなんですけれども、一生懸命探すというのが大変な手間でお金もかかるということなので、一生懸命探すということの意味合いを、例えば著作者側が十分なデータベースを持っていて、それを見るということで相当一生懸命探したとの同じだけの機能を持っていれば、探すほうもたやすくなると言えると思うんです。
 ここで問題なのは、文芸に関しましては文芸家協会が例えばデータベースを作るということだけでは十分に対応できない部分があります。それは文芸家協会以外にも民間の業者さんが扱っているということがありますし、それから、児童文学に関しましては、出版社が非常に強い力を持っておりまして、児童文学者の方に文芸家協会に登録して下さいと申し上げましても、入らない人がいます。音楽出版社と同じぐらいの力を持っている児童出版社があります。そういう形で、全ての著作者を全部揃えるということが難しいというところがあります。
 これは、著作権等管理事業法という法律が数年前にできまして、著作権の一括許諾が出しやすくなるようなシステムが作られたわけですけれども、文芸部門に関してはそれが十分に機能していないということを、管理事業法の見直しの小委員会でも再三申し上げたんですが、文化庁さんのほうでは調査をするということにとどまって、管理というものに対して実際にはパーフェクトでない状況ができております。
 ですから、保護期間の延長問題とも関わってくるわけでありますけれども、公共性のあるものに対してどのように対応していくかというときに、やはり著作権者を管理するようなシステムをより充実したものにしていくということが不可欠ではないか。こういう点も念頭に入れて考えて頂ければと思います。
 以上です。

【野村主査代理】 野原委員、どうぞ。

【野原委員】 この場で何を議論するのかというのが私はよく分からなくて、もう少し整理をして頂きたいと思うんですが、初回の資料3の中にはアーカイブへの著作物等の収集、保存と利用の円滑化方策についてというようなことが書いてあるだけで、具体的に一体何をここで議論し、何を決めようとしているのかというのがよく分からないんですね。その辺りがもう少し何とかならないんだろうかと思います。
 というのも、先ほどからお話にもいろいろ出ていますし、事例もたくさん出して頂いていますけれども、著作権フリーになった書籍だとか、あるいはもっと古い古文書みたいなものをどうするかというような、そしてそれを国会図書館が何とかするのか、誰かがネットでいじるのかというような話、それから日々アップされているインターネット上のウェブサイトのコンテンツだとか、あるいは携帯のウェブサイトというのもあるかもしれないんですけれども、そういった日々無尽蔵にできてくるようなコンテンツ、それも著作物の1つで、この中にはアメリカの例でインターネットアーカイブのような事例も書いてあって、この資料だけを拝見すると、両方を含んでいるように感じられますし、そして今まで話に出てきたようなテレビ番組ですとか、各自が制作する映像とか、そういったものをどうするかといった話ですとか、もちろん音楽あるいは音のあるものを音質やファイルの形式などをどうするかというような話、非常に幅広い話があって、これらを1つアーカイブというように言って議論するというのは無理だと思うんですね。
 なので、できれば事務局の方からやって頂けるといいのかと思うんですけれども、今のアーカイブというのがもっと具体的にどんなものがどのようにあって、それをどういう目的で誰がどのように作っていく、あるいは使っていくということを想定してこの議論をするのかということ、そして今、各種のアーカイブがどんな問題を抱えているのかといったことを、もっとしっかり突っ込んで資料を整理して頂けないんでしょうか。議論のテーマは何ということと、もっと努力すべきではないかという意見です。お願いします。
 すみません、先ほどの識字率の話も、確かに誤字が出るという問題はあるかもしれませんが、技術の進歩のことを考えるとそんなに大きな問題なんだろうかというのも、個人的にはちょっと不思議な気がしますし、先ほど中山委員もおっしゃられたように、特許の場合は必要であればそれを運用上補ったりしているわけですよね。なので、ここでそういう議論をすることというのは本当に何なんだろうというのがよけい分からなくなっているというか、ぜひもう少し何に向かって何を議論するのかということを具体的かつはっきりとさせて頂きたいと思います。

【野村主査代理】 事務局のほうからお願いします。

【黒沼著作権調査官】 論点が絞れていないという点はまことに申しわけございません。我々のほうでも資料4の最後の3のところで、具体策を御議論いただけるようにしたいとは思っているのですけれども、ただ、具体策は何が必要かということを整理しようと思っていろいろ考えたところ、先ほど野原委員からもございましたとおり、それぞれアーカイブに何を求めているのか、人それぞれ御発言によって求めているものが違うというところがまずございましたので、そこを我々のほうでこれに限ってということで用意してしまうと、また更に、その後議論が拡散するのかなと思いまして、まず、どういうアーカイブがあれば文化の継承、発展に繋がるのかといったところを御議論頂いたほうがいいのかと思いまして、本日のような課題設定をさせて頂いたという経緯でございます。

【野村主査代理】 三田委員、どうぞ。

【三田委員】 この委員会は、過去の著作物に関して議論をするというものでありますから、相当の過去と考えればいいかと思います。とすると、インターネットが始まってからのものというのは過去ではないわけで、結局はアナログでできた昔からある文化遺産のようなものをデジタル化して保存をするということに絞って考えればいいのではないでしょうか。ただ、そのシステムができますと、それが現在のものについても適用されていく。今、私が言いましたように、できたてのほうも保存しておくということが将来のアーカイブに役に立つのではないかなという観点もあるわけですけれども、ここで議論しなければならないのは相当年数の経った過去の著作物について、その著作権の処理をどうするかということに絞ればいいのではないでしょうか。

【野村主査代理】 金委員、どうぞ。

【金委員】 この場でアーカイブに関する議論をするということは、アーカイブを活性化させる上での政策的役割の在り方について考えることだと思います。財源を使って明示的にアーカイブを推進することも、又は民間に全面的に任せることも政策的なオプションとして考えられます。資料のところで、アーカイブの円滑化における制度的な対応の例として、権利制限などの手段が挙げられていますが、具体的にはアーカイブ円滑化のための政策的な関わり方にはどのようなオプションが考えられるのでしょうか。

【黒沼著作権調査官】 政策的なオプションというと、我々のところは著作権分科会ということで著作権法の手当てによってアーカイブをやりやすくしていくということを考えるわけでございますけれども、その際にも、例えば求めるアーカイブによって、瀬尾委員からありました権利者情報の蓄積といいますか、そういったもので資料にアクセスをできるようにするということでございましたら、これは権利者情報というのは著作物ではございませんので、著作権法の問題というよりは運用上の問題になってくるでしょうし、そういったものを円滑化するような関係者間協議の推進ですとか、そういったことが施策的な答えになってくるでしょう。そうではなくて、入手困難な資料を、例えば複製によって入手して保存しておくというようなこともできるようにしなければいけないということでありましたら、それは関係者間でガイドラインを作って、こういう場合にやっていいですよというような合意を推進するような施策ですとか、もしくは権利制限規定を新たに設けて、そういったものを支援していく。そういったようなパターンはあるとは思いますけれども。いずれにしても何を求めるかによって具体策も変わってくるのかなとは思っております。

【金委員】 アーカイブ問題について、民間サイドから政策側に対し、こういう政策オプションを検討して欲しいといった声は実際あるのでしょうか。

【吉田文化庁長官官房審議官】 今日御出席頂いています国会図書館では、従来からアーカイブについていろいろな取組みをされていることが言われています。少なくとも国会図書館をはじめとする図書館サイドには従前からこういったアーカイブについて利活用をもっと促進するための方策について検討するというようなことがございました。
 それから、今日も資料1で御紹介しましたように、それ以外にもさまざまなところでさまざまなアーカイブの構想というのがございます。どのようなアーカイブをどのように構成すべきかというところについては、これはそれぞれのアーカイブを構築されるところが検討され、適切な形でお示しになるものだと思いますけれども、幾つかそういったアーカイブの共通的なパターンを捉えながら、その中で著作権が、場合によっては障害になっていることによって、国民の文化資産とも言うべきアーカイブ事業というのが進まないとすれば、それについてはやはり権利制限という手法も考えなくてはいけないかもしれないし、ただ、そこはもう民間の合意形成でいける余地があるならば、民間の自主的なルール形成に委ねるということもありますし、またそれを支援をするというそういう意味で、ガイドラインなどそういった協議の場を私どものほうで設定をするというオプションもあろうかと思います。
 今日の資料4では、まだ非常に抽象的なレベルにすぎないわけですけれども、3のところに書かれてありますポイント、そういったところをぜひ御議論頂きたいと思っています。

【野村主査代理】 瀬尾委員、どうぞ。

【瀬尾委員】 先ほども申し上げましたけど、アーカイブ、データベースということは非常に広くて、先ほど野原委員もおっしゃられたとおり、何を話してどうするのというぐらい広いけど重要だというテーマではないかなと思います。
 私が先ほど申し上げましたように、今、過去の著作物の流通についての議論をしているときに、必要なアーカイブは何か。これは多分、私はこの資料を拝見させて頂いたときに、これを文化庁さんからそんなに絞ってこのデータベースをと持ち上げることはなかなか書きづらかったのかなということを、私をこの資料を見たときに感じました。
 私が申し上げたいのは、やはり権利者情報の所在を明らかにするデータベースの必要性があるのではないかということだと思います。それを政策的に、例えば文化庁さんがバックアップしたオフィシャルなものが必要なのか。民間の中で作ったらいいのか。またそのデータベースの必要性は何なのか。ここではそういう部分についての御意見ではないかなと思っております。
 私が申し上げますように、実は私の中でも1つ、例えば金融の中で信用保証協会というのがございます。そこへ問い合わせるといろいろなデータが共通化されているし、各銀行さんのいろいろな過去のデータも最近共通化されていくということを伺いました。例えばそういう非常にコンフィデンシャルなデータベースがあって、例えば利用者が何かを使いたいと思ったときに、まずそこに問い合わせをする。該当4件ぐらいのデータがありますよ、ではそのデータを下さいと言って、権利者情報に使える。
 もしくはその委員になると、先ほど申し上げましたように相互に情報を足していったりもして、よりコンフィデンシャルにしていく。変な書き込みなり変な追加があったら、これは信用に値しないと言ってみんなできちんと検討していくとか、そういう非常にコンフィデンシャルなものを比較的公的な機関、これが文化庁さんなのかどうなのかは別にしても、後援した中で作っていくべきではないかなと。
 それが過去の著作物の権利者を調べることにもなるし、もう一つ重要なことは、裁定制度をこれから弾力的に運用しようとした場合に、自分で調べなさい、全部電話して回しなさいというのは非常に垣根が高いです。そのときにも、信用保証協会さんと、私もあまり知らないので繰り返してしまうといけないんだけれども、そういう非常にコンフィデンシャルなデータベースがあって、それが運営されていれば、そこに聞く、公示をする、そういうことによって、その裁定制度の十分な調査と合理的な調査ということが言えるとなってくると、裁定制度の運用もまた変わってくるのではないでしょうか。
 やはり裁定制度の今一番の問題の中では、非常に例外的な措置だということは分かっていますが、自分で電話帳を調べたりネットを調べたり何かしていくといったときに、垣根が高いと思われているためになかなか運用が進まない。金額の問題もありますけれども、そういう気がいたします。ですので、今回、私が提案させて頂きますのは、過去の著作物を流通するのにあたって必要だと思われる権利者情報に関わるアーカイブが必要であるのかどうかをまず御検討頂けたらどうかなと御提案させて頂きたいと思います。
 ちょっと長くなりました。以上です。

【野村主査代理】 中山委員、どうぞ。

【中山委員】 今、瀬尾委員がおっしゃった権利者情報を集めるということは極めて重要だとは思うのですけれども、ただ、それは著作権法とあまり関係なくどんどんやって頂ければいいわけで、文化庁は政策として支援するということはもちろんあるのかもしれませんけれども、著作権法上は問題ない。
 ここで問題なのは、アーカイブを作る上で著作権法がどういう障害になるか。その障害を取り除くにはどうしたらいいかということを議論すべきだと思うんですね。今、審議官がおっしゃったとおりだと思います。
 したがって、その権利者情報はここで議論することではない。重要ではあるけれどもここで議論ではないような気がいたしますけれども。

【野村主査代理】 はい、金委員どうぞ。

【金委員】 瀬尾委員の今の発言は、権利者情報をデータベース化することで過去の著作物の利用を円滑化するということで、著作権制度との結びつきでいえばいわゆる登録制と関連する話だと思います。登録制を議論する際には、政府で一元的に強制的にやるのか、それとも民間機関で分散的に自律的にやるのか、といった話にもつながると思いますが、その辺はいかがでしょうか。

【瀬尾委員】 今の中山委員と金委員からのお話で、私が申し上げましたのは実はこの過去の著作物流通に関する小委員会、一番最初にも申し上げましたけれども、中山先生の著作権法にはあまり関係ないだろうというのはそのとおりだと思いますが、私は前から、審議会もそうなんですが、法律改正、要するに著作権を軸にして、それに関わるものを検討する場であって、法律に関わることのみをここで議論するのではない。例えば制度的な提案があってもいいのではないかとか、そういう話を私は前から申し上げているところで、法律だけに関わっている部分しかやらないのではなくて、法律と制度、全てを含めてこんな形があったら著作物が流通するのではないかというものを審議会の中で検討して提案する。そういう形でもいいのではないかという考えに基づいて言わせて頂きました。
 それと今、金委員の言った登録ということなんですけど、実は自分で登録する。登録というのは自分で登録ですよね。今の話というのは自分で登録しない、できない、そういう場合が非常に多いので漏れているということがあるんです。それをたくさんの目とたくさんの人の情報を集めていく中で、アーカイブを形成していくという可能性もあるのではないかというお話で、登録制というと私としては、本人がやるばかりではないのでちょっと違和感があったなと思います。

【野原委員】 絞るべきことというのは少し分かった気がするんですが、あえてもう少し広いことを言いたいんですけれども、やはりアーカイブのことを検討する上でとても重要なのは、著作権者の方とか隣接権者の方々にとっても不利益のない納得できる形で、かつユーザーが自由に利用する、特に視聴ですね、例えば古い番組だとかで見たいものがあれば、とにかくある形をとって自由に見られるというような、コンテンツの自由な視聴、利用というのをもっと促進するような環境をどうやって作るかというところに、私はとても重要な要素があると思っているんですね。
 そういった方向をある程度共有しないと、何のためにどういうアーカイブを作るような方向をもとに持って、その上に法ですとか環境を作る。どういう制度を作ればいいと思うのかというのは、必要だと思うんですね。著作権法側からずっと想像して、関係あるかなないかなとチェックしてしまうと、非常に狭い範囲で考えてしまって、実際にそういったある程度将来的にもいろいろな利活用できるようなアーカイブを検討し始めると、また新たにそこで障害にぶつかるといったことにもなりかねないのではないかと思います。
 例えばその映像をアーカイブするときに、どんなタグをどの程度つけるかというのはとても重要な問題で、まさにそれは著作権法の問題ではないでしょうとすぐ言われるとは思うんですね。けれども、ここでも少しは議論をして、できれば単に著作者の情報だけではなくて、もっとその中身に関わるるタグをつける方向も検討すべきではないかとか、もっとそういうその後の新しい利用の範囲を狭めないような形で環境を作るべきではないかといったようなことも話し合うというような、そういうスタンスはお願いできないのかなと思います。

【野村主査代理】 三田委員どうぞ。

【三田委員】 今、話を聞いているうちに、何を言いたかったのか忘れてしまったんですが、まず登録制度ということですね。私もこの半年くらいでいろいろなシンポジウムや講演に呼ばれまして、呼ばれるところは大抵著作権が利用促進を妨害しているというようなお考えの方々の集まりであります。そういうところに行きますと、いろいろな方が登録制度の実現という提案をされます。これは特許と同じように、ここから金銭的利益を得たいと思う人は、何がしかのお金を払って登録をしたら、金銭なんか要らないという人は登録しないわけですから、登録されていないものは著作権フリーで使ったらどうかというような提案をする人がおります。
 これは明らかにベルヌ条約に違反しますので、登録というような言葉、特にお金をとって登録するというようなことは絶対できないだろうと思いますけれども、しかし、利用を促進するということを考えますと、特に50年以上経ったようなものというのは、そこから金銭的、経済的利益を得ているものというのは全体の中ではごく限られているわけです。金銭的利益を得ていないものの著作権者、御遺族でありますけれども、そういう方は、むしろ自分の先祖の作品をアーカイブして欲しいとか、あるいはネット上で流して、より多くの人に読んで頂きたいというように、むしろ利用促進のほうを積極的に支持しているような方もいらっしゃるわけであります。
 ところが、そういう方、つまり金銭的利益を得なくなった御遺族の方というのは、文芸家協会等にも加わらずに居場所が分からなくなってしまうということであります。ですから、金銭的利益を得ていない著作物をアーカイブしようとしても、権利者が分からないということになっております。
 ですから、今、私が提案しているようなデータベース、これはとりあえず金銭的利益を得ているような人が、登録と言ってはいけないんですけれども、そのデータベースに自分の名前を刻むことによって、アーカイブするなら許諾を求めて下さい、その内容によって、これは一定のガイドラインを作っておけばいいと思うんです。要するにイメージをただ見るだけが可能なのか、それとももう持ちデータが全部ファイルになってエンドユーザーのところに届くのかというところでも、区別が必要だろうと思いますが、見る程度ならばオーケーだよという人をデータベース上に書き込んで、意思表示しておくわけです。
 そうすると、使う側もそれを見てオーケーなんだということで利用できるというようなシステムを確立することが利用促進に繋がるのではないかなということで、このデータベースと意思表示のシステムがちゃんとできておりましたら、機能としては登録制度と同じことが実現できるだろうと。そうすると、ベルヌ条約にも抵触しないだろうということで、利用促進を図るという点で、こういう方向性というのが1つ考えられるのではないかなと思っております。

【野村主査代理】 それではちょうど三田委員から御発言がございましたので、アーカイブ事業の円滑化方策はこの程度にしまして、続いて意思表示システムの利用に伴う法的問題について議論したいと思いますので、最初に事務局から御説明をお願いいたします。

【黒沼著作権調査官】 それでは資料5に基づきまして、御説明させて頂きます。
 意思表示システムについての議論も参考資料1の24ページを御覧頂きますと、そちらのほうで、今まで意思表示システムについてこんな措置が必要ではないかとか、いろいろな御要望とか御意見が出てきております。資料5はそれを読みやすくするために簡単に要約したというような資料でございます。
 復習がてら、どういった御意見、御提案が出ていたかということでございますが、1の意思表示システムの普及のための方策についてというところについては、1で意思表示システムを普及促進するためには何らかの強制措置ですとか、誘因の措置を設けることが必要ではないかというよう御意見もございましたので、そういったことの是非がひとつの検討課題になってくるのかなと思っております。
 それから2番目でございますけれども、意思表示システムとして、いろいろなマークなどがあるわけでございますけれども、それらが有効活用されるためには、御提案があるような権利者情報データベースにこのシステムをくっつけていくとか、そういった措置が必要ではないかといったような御意見もございました。
 それから3番目といたしましては、意見がまだ出ていないような措置で、更にその他に意思表示システムが利用されるためにはこういった条件があれはいいのではないかというようなその他の御意見も御議論頂ければと思っております。
 2番目としまして、その他に大きなくくりとして出てきた意見としまして、権利者の意思と異なる表示がされているような場合の取扱いについてというような御意見がいくつかございました。
 大きく分けますと1で、表示したマークを付けた後に、権利者自身の考え方が変わった場合、マークの撤回とかは難しい場合もございますけれども、そういった場合にどういう取扱いにしたらいいのかということです。
  2で権限のない人がマークを付けてしまった場合ですとか、真正な権利者がつけたマークを改変、除去するような行為、こういったものを防止するような方策がないといけないのではないかといった御提案もございました。
 また、そういった真正な表示がされていない場合に、表示を信頼した者が免責されるような取扱い、こういった措置も考える必要があるのではないかといった御意見がございましたので、そういった方策を設ける是非などについて御議論頂ければと思っております。
 2ページ以降は、今までの繰り返しの資料になりますので、紹介は御省略をさせて頂こうとは思っておりますけれども、今の、権利者の意思と異なる表示がされている場合の取扱いについての参考になるかなと思いまして、一番最後のページの参考の3で、著作権法で今、似たように仕組みはどのようなものがあるのかという御紹介をしております。
 権利管理情報の保護という観点から規定が設けられているものがございまして、権利管理情報といいますのは、著作者は誰かですとか、利用条件、1回複製するごとに幾らですといった情報を、ネットワークで著作物が流通するときに、その中に組み込んでおいて、それをコンピューターで読み取っていくというような、その情報のことを指すわけですが、そういったものを除去する行為、虚偽の情報を故意に付加する行為というものは著作権法第113条で権利侵害とみなされております。
 そういった故意の情報が付加されているということを知って、更にそういったものを頒布するといった行為についても、情を知っている場合については権利侵害とみなす、そういった規定の例がございます。御参考までにということで御紹介でした。
 以上でございます。

【野村主査代理】 どうもありがとうございました。
 それでは資料5に基づいて、残りの時間を使って議論したいと思います。

【中山委員】 資料の細かい点で恐縮ですけれども、1ページのクリエイティブコモンズにつき、現在はGLOCOMの手を離れて独立していまして、多分9月か10月にNPOになります。これだとGLOCOMがやっているように見えますので、資料があとに残りますのでその点の訂正をよろしくお願いします。

【黒沼著作権調査官】 ご指摘の点を修正したものを、ホームページに上げさせていただきます。

【野村主査代理】 瀬尾委員どうぞ。

【瀬尾委員】 クリエイティブコモンズについては、実際の今の現状といいますか、自由利用マークも検討して利用とかいろいろなことが並立している状態なんですけれども、一番やはり大きいのはクリエイティブコモンズで、一番普及しているのではないかなと思うんですが、それの現状の、今ちょうど中山委員からもその話がございましたので、現状について何かこんな状況だということで何かコメントがあれば伺いたいと思います。

【中山委員】 それは参考人のとき、野口弁護士から詳しく説明がありまして資料にも詳しく載っていますので、それ以上ないのですが、ただ、付け加えればこれは非営利を考えております。したがって、これが著作権の自由利用の決め手になるかどうかは分かりません。著作物の大半は金にならないのですね。しかし人に見てもらいたいという著作者がとても多くおりますが、著作権があるために権利処理ができないから利用されないというのを防ぎたいという趣旨です。したがって、これが決め手になるかどうか分からないという点と、またフリーソフトウェアというのがありますね。これはクリエイティブコモンズに入っていないので、そっちのほうはまた別途の組織でやっております。

【瀬尾委員】 これを例えば私が考えていましたのは、実はこれを使っていいですよという許諾に関するものなんですが、実際にこれで簡易契約として、例えばある一定の対価とかある一定の契約を簡易化していった契約方式の表示に発展するという方向性というのがあったのかどうかが実は一番伺いたいところでございます。

【中山委員】 これ自体がもう簡易の契約のモデルになっているわけですが。

【瀬尾委員】 対価が介在する方向性が今後あったのかどうかお伺いできれば。

【中山委員】 それはちょっと私では何とも言えないですね。つまりこれは日本だけの問題ではなくて国際的な組織でして、もともとは反著作権的な思想から始まっております。しかし、現行著作権というのをいじることはできないので、現行著作権法のもとで、こういうようなライセンス契約という形で処理するところから始まっていますので、有料化するとなるとビジネス上使えるということになりますと非常に反対も多くて、どうなるかは分かりません。私個人としては、いいかなという気もしますけれども、それは何とも言えません。

【瀬尾委員】 ありがとうございました。

【野村主査代理】 久保田委員どうぞ。

【久保田委員】 今のところで、これはクリエイティブコモンズのこれは契約なんですか。契約で流通させるということについては間違いないんですか。

【中山委員】 間違いないかと言われると非常に困るところがあります。これは典型的な意味で普通我々が契約と言っている契約とはちょっと違いますから、果たしてこれが契約かどうかというぎりぎり詰めると分からないところがあります。一応著作権という制度を利用して、そのもとでの契約という形でやっていますけれども、裁判所に行って、これが契約かと争われるとちょっと何とも言えない。つまり、成立がきちんとした契約書を交わしてやっているわけではないものですから、分かりません。しかし、クリエイティブコモンズの自由利用を付しておきながら、あとからそのような利用に対して著作権侵害を主張することは、仮に契約違反ではないとしても、権利濫用とか信義則という一般的な法理で認められない可能性が高いので、結果は余り違わないと思います。

【野村主査代理】 上野委員どうぞ。

【上野委員】 たしかに、意思表示システムで著作物等の利用を促進するということは大変結構なことだと思います。
 ただ、今御紹介がありましたような、意思表示システムによって他者がある利用行為を行うことをライセンスするというタイプのものだけでなく、権利者がみずから自由に利用条件を定めた上でライセンスするということができるタイプのものがあれば、より望ましいのではないかと思います。例えば、ある権利者が、自分の著作物をネット配信する対価として月幾らという条件でライセンスする、というようなことができる意思表示システムも考えられていいのではないかと思います。そうすれば、一方では著作物等の利用を促進し、他方では権利を保護し、権利者に経済的利益を帰属させることができるからであります。
 またもう1点。意思表示システムというものは、単なるライセンスを行うタイプのものだけではなくて、権利を放棄できるようなタイプの意思表示システムもあっていいのではないかと思います。
 この小委員会で行われてまいりましたヒアリングを聞いておりますと、あるいは保護期間をめぐるさまざまなシンポジウム等に出ておりますと、保護期間の延長に反対される立場の方から、クリエイターであっても自分の作品はどんどん使ってもらいたいという人が少なからずいるのだ、というお話をお聞きすることがしばしばあります。
 たしかに、もし保護期間を延長することになりますと、すべての著作者の著作物について一律に保護期間を延長することになりますので、自分の作品はどんどん使ってもらいたいというクリエイターさんの著作物の保護期間も延長されることになります。そのため、保護期間を延長してしまうと、そのような著作物がかえって利用されないことになってしまって不都合だというような声をよく耳にするわけであります。
 ただ、著作権というのはあくまで私権でありますから、財産権として自由に処分していいはずであります。ですから、そういうクリエイターさんは自分の著作権を放棄すればいいのではないかと思うわけであります。
 著作権の放棄に関しましては、著作権法上明文の規定はありませんが、放棄はできるというのが起草者の考えでもあります。著作権放棄の具体的な方法につきましては、起草者によって書かれたものの中には新聞広告という方法も挙げられているわけでありますけれども、現在であれば、自分のウェブサイトに特定の著作物について著作権を放棄すると表示するという方法があろうかと思います。あるいはもっといいのは、今の裁定と同じように、例えば著作権情報センターのウェブサイトなどに、放棄された権利のデータベースを作って公開するという方法があろうかと思います。そこを検索すると、例えばこの著作物については著作権がすべて放棄されているとか、あるいは一定の著作権だけは放棄されているとか、そういうことが分かるようにすることができようかと思います。
 また、著作権の放棄は、いわゆる時間的一部譲渡をめぐって行われている議論とパラレルに考えますと、著作権の時間的な一部放棄ということも認められていいのではないかと思います。例えば、権利者がこの作品については2020年以降の著作権を放棄するとか、あるいは自分の死後の著作権は放棄するとか、そういうことも有効と認められるものと思います。そうすると、仮に保護期間が延長されたといたしましても、例えば著作者の死後50年以降の著作権は放棄するという意思表示をどこかのウェブサイトに表示するといったことは、現行法上もまったく問題なく可能なのではないかと思います。
 このように財産権である著作権を放棄したといたしましても、著作者人格権は著作者のもとに残るわけでありますから、著作者の人格的利益を確保するという意味での問題もあまり生じないだろうと思います。
 このように著作権放棄のシステムが、ライセンスの意思表示システムとは別に存在していいのではないかと思います。もちろん、著作権の放棄というのは権利をすべて失ってしまうことになりますので、権利者にとってそのようなことをするインセンティブはあるのかどうかということはもちろん問題となりますけれども、自分の作品はどんどん自由に使ってもらいたいというクリエイターがいるのだというのですから、それなら積極的に著作権を放棄すればいいのではないかと思うわけであります。
 ただし、著作権放棄につきましては、何らかのシステムあるいはウェブサイトを設けるという動きは従来あまりなかったように思います。そこで今後は、権利者にとって著作権放棄がしやすく、そして、そのことを利用者に広く知らしめるデータベースやウェブサイト等を用意することが検討されていいのではないかと思います。
 以上です。

【野村主査代理】 他に御発言いかがでしょうか。瀬尾委員どうぞ。

【瀬尾委員】 今、中山委員からのお話でまさに私もそう思うんですね。もっと多様性があって自分でできる。ただ、そういうシステムのために先ほど申し上げたコンフィデンシャルかつオフィシャルなデータベースというのは、そこにあることが担保されないといけないわけですよね。ここに自分で本当に書いたのかとか、自分でちゃんとこれを許したのかとか、ただ、これは政府がやるというよりはかなりボランタリーな感じで、そこに自分で書いていく。更に周りからいって亡くなった方とか分からない情報も書いていく。
 ともかく一番集積されたデータベースがあって、そこを見てもし本人が何年から私は放棄します、人格権については行使しますとか、人格権も行使しませんとか、いろいろなことが書かれているそういうものが一つどこかに一元化されていないと、難しいのではないかというのが先ほどのデータベース論の基本です。考え的には非常にここに似たようなところがあると思います。
 ただ、その中で1つ完全に結構ちゃんとした体制を作らないと、なりすましもあるでしょうし、後で気が変わったときにどうするのかもあるでしょうし、そういう部分に関して何らかの制限なり何なりが必要なのかなと。
 あとインターネット上で表示したときの法的なきちんとした有効性というか、そのあたりが確立されているのかなという不安もあったりします。ただ、今の上野先生の言ったことと、先ほど私が申し上げていることというのはかなり通底している部分があるかなと思っております。

【野村主査代理】 久保田委員お願いします。

【久保田委員】 ここで言っている意思表示システムというのは何かパターン、例えば著作権者団体ごとにあるとかではなくて、ソフトウェアの世界で言うと、DRM、デジタルライトマネジメントという技術を使うことで、自分の著作物をどのように流通させたいかということを担保することができるようになってきているわけです。
 そうすると、例えば瀬尾さんが、自分の作品をこの技術に乗せて、著作権法では権利管理情報というものに関わってきますけれども、こういった条件で提供しますという意思内容を許諾条件として設定すればよくて、この技術さえあれば、意思表示システムイコールDRM技術になるわけですよね。
 そういうものを例えば団体ごとに、では、このDRM技術を使いましょうということになれば、そこで条件を設定することもできるし、そこには嫌だと、同じ著作権団体に属していても、自分の著作物は別に流通させたいということになると、そこにはまた新たな許諾の条件みたいなものを電磁的に設定して、そういう技術と相まって自分のものをインターネットの中に投じておくと、あとは検索エンジンが全部探してくれて、使いたい人はクリックか何かすると権利者の許諾条件に従った使用が許され、バンキングシステムと連動して課金するというようなことを、もうイメージするというか、それをやろうとしているんですね。
 例えばCCD、デジタル時代の著作権協議会では権利保護に関する研究会を持っており、この技術を勉強しているのですが、情報を提供する著作権者のほうが一体どんな条件でで自分の著作物を使って欲しいのかというイメージができれば、あとは技術的にソフトウェアや装置、インフラの技術と連動させながら、ここで言っている意思表示システムを、それぞれのシステムと言うのでしょうか、そういうものを具体化させようという状況になってきています。
 そうすると、クリエイティブコモンズも、ビジネスにしようとしている情報としての著作物も、全く同じ環境の中で多分ネット上で流通するようになるんだろうと思うんですね。著作物のメタデータであるCCDIDや、権利者情報、許諾条件を定めた許諾コードの問題をふまえてこの意思表示システムというのを考えるとすると、今、ここで言うところの意思表示システムというのと著作権の関わりでは、意思表示システムの中に入ってくる電磁化された許諾条件みたいなものを、どこまで権利管理情報として著作権法が保護してあげるのとか、そういう議論のほうに繋がっていくのか。それとも本当にこの意思表示システムというのをわりと包括的に、文芸協会さんはこういう意思表示システムにいきますというようなイメージのシステムを考えようとしているのか、ちょっと見えないんですが、その辺はいかがでしょうか。

【三田委員】 まずその前に、ここに書かれてあるクリエイティブコモンズさんの意思表示システムというのは使っていいですよというシステムですね。私が今までデータベース上に意思表示すると言ってきたのは、使うなという意思表示ですね。ある部分、こういうのは使っていいと、でもこれは使うな、許諾が必要であるというような意思表示をデータベース上にしておいて、そうすると、そのデータベースにない人について裁定制度で対応するということなので、私はこのシステムは併用すれば非常にうまくいくのではないかなと思っております。
 というのはデータベースで使うなと言っていないものを全部裁定制度になりますと膨大なことになるので、むしろネット上に作品を公開するような人にはあらかじめこういうマークをつけて頂いて、それを見ただけで使っていいということが分かるような形にすれば、裁定制度のほうももっと楽になるわけです。
 ですから、うまく併用すれば役に立ちますし、このマークの意味合い等も各データベースを作る人たちも理解をして、それに対応するような意思表示の仕方をして、一定の統一がなされていれば、利用者にとっては非常に使いやすいシステムになるのではないかなと思います。

【金委員】 著作物の流通を活性化するという点で、意思表示システムが持つ意義については政策的にも認めているように思います。同時に、配付資料の中では現行の様々な意思表示システムに内在する問題、中での現行法との整合性問題に対する法政策的な対応の必要性についても指摘されています。意思表示システムと政策の役割をどう考えるか、が議論の中心ポイントかと思いますが、ハンズオフ(非介入)も一つのオプションではないかと思います。例えば、クリエイティブコモンズのような意思表示システムは世界的に広がりを見せていますが、そのシステムを各国で導入・実行する際には綿密な法的な議論を積み重ねたとは思いますが、法的問題を完全にクリアした形で導入したわけではないと思います。法的な完全性を追求しすぎたとしたら、おそらく今日のような広がりは見せなかったのではないでしょうか。厳密な法解釈ではまだ抜け穴があるシステムだとは思いますが、にもかかわらず、クリエイティブコモンズは世界に広がっている。それはなぜかということを考えると、このシステムを支えているのは法律というよりは、コミュニティ的な規範が中心であるからだと思います。政策主導で意思表示システムを構築・推進することも考えられますが、民間の試行錯誤による進化的な発展プロセスを政策側が見守るという政策的スタンスも考慮に値するのではないでしょうか。

【中山委員】 上野委員のあといろいろ意見が出てしまったのですが、放棄の点についてまず言いますと、理念的には上野委員のおっしゃるとおりだと私も思っております。しかし、実際問題として、何の利益もないのに放棄の意思表示をするインセンティブは全くないですね。しかも、放棄したけど後から金もうけできると分かったらもう1回やりたいとか、いろいろなことがありますので、なかなか促進できない。
 自由利用マーク、これは放棄かどうかは別として、これもほとんど利用されていないですね。もっともっと利用すればいいと思うのですけれども、やはりそのインセンティブがないとなかなか利用されない。したがって、放棄できますよというシステムを作っても、有効な程度の放棄量が集まるかどうかというのはかなり疑問ではないかと思います。そこをどう工夫したらいいかというのが問題だろうという気がいたします。
 それから、久保田委員等がおっしゃいましたこともそのとおりなのですが、しかし、1つ問題なのは、それはデジタルの話なんですね。デジタルの世界でないものはちょっと通用しにくいですね。現在はデジタル社会と言いつつもアナログのものもたくさんありますし、特に今ここで問題になっている過去のものについては圧倒的にアナログが多いと思います。将来的にはそういうものも検討しなければいけないし有意義だと思いますけれども、なかなか現状では難しいのかなという気はします。
 それから、クリエイティブコモンズ、確かにこれは今の法律でぎりぎり詰めるとどうかというのは金委員のおっしゃったとおりなのですが、しかしこれは現行の著作権法システムというのが大前提として構築されているわけです。現行の著作権制度の中で一応ライセンスという形をとってやっている。例えば非営利で利用してもいいですよと言ったのに、勝手に営利に利用されてしまった場合には、やはり著作権法を利用して抑えなければいけないので、著作権を前提としてやっていると思います。
 ただ、そうなりますと、一番問題なのは、権限のない人が、権限があるように装っている場合ですが、これは別にクリエイティブコモンズに限らずフリーソフトウェアも同じなんですけれども、それが世界的に問題でして、現に訴訟なんかも起きております。
 ですから、やはりこのクリエイティブコモンズであれ、フリーソフトウエアであれ、現行の著作権法をもとにして、その中でどうしたらうまく流通するかということに苦労しているということだろうと思います。

【野村主査代理】 瀬尾委員どうぞ。

【瀬尾委員】 今、中山委員のおっしゃったように過去のものというのはつかないんですよね。先ほど久保田さんのおっしゃったDRMでやっていく方向というのは、これは間違いなくあるし、流通の主な舞台がネットに移ってくる。例えば出版社と写真家の間にしても、ポジを持っていったり、送ったりしないで、今全部メールで添付して送ります。これはDRMできるんですね。
 だから、いくらそのでき上がったものがアナログであったとしても、その途中経過でDRMを導入していくことは十分に可能な時代ですが、先ほども申し上げたようにモノクロのプリントに関して自由利用マークはつかないんですね。過去の膨大な著作物に関して、もの自体にこの表示をするという発想も1つあります。それはこれからの話です。でも、そうではなくて、逆に人単位でやっていくためのデータベースということでそれで申し上げているんですね。
 写真というのは特に過去のものがものすごく多いんです。非常に点数も多いんですね。こういう著作物は他にもたくさんあるはずです。そのときに1点ずつに貼るとか、1点ずつ名前をつけて番号つけて登録するとかはできないんですね。これは実質上無理です。
 だけど、撮った人の名前さえ書いてあれば、データベースで見て、その人はこれにはいいよと、もしくは何年から何年のこのタイトルはこれだよとか、データベースは文字ですからかなり詳しく書けますので、やはりそういうことを写真だけではなくて、こういうマークの普及もやりつつ、でもやはりどこか1カ所、人名の、要するに人データベースとしての何か根幹になるようなものが1つないと、今言ったようなことの有効性が損なわれるのではないかなと思います。
 そのことで実は経団連のポータルサイトというのがあって、そこにデータベースができています。これは「もの」データベースなんですけれども、当然付随して人の情報も集まってきつつあります。また、文化庁さんでずっと昔やりましたJ−CISという構想、審議官はよく御存じのJ−CISが、あれが実は構想としては未だに残っているんですね。ですので、ああいうの実用版のようなものが本格的に必要な時代に来たのではないかということは考えられます。
 それとこれで補完をしていくことで、過去の著作物の流通は円滑になっていくのではないか。そのときに民間だけにデータベースを任せていると、今言ったような部分を補完することができないというのが私の先ほど申し上げた論理で、著作権には中山先生のおっしゃったとおり関係ないですけれども、制度としては非常に重要な部分を占めているのではないかなと思っている、そういう趣旨でございます。

【野村主査代理】 他に御発言いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、アーカイブ事業の円滑化と意思表示システムということで本日御議論頂きましたけれども、また事務局のほうでこの議論をもとに整理をして頂きたいと思います。本日は若干早いですがこのくらいにしまして、次回は保護期間のあり方と戦時加算の取扱いについて議論をお願いしたいと思っております。
 事務局のほうから連絡事項をお願いいたします。

【黒沼著作権調査官】 本日はありがとうございました。アーカイブのところは、なかなか共通イメージというのは集約が難しいかなとは思いましたけれども、次回以降、またアーカイブを議論するときには事務局のほうで何らかのイメージのようなものが示せるように努力したいと思います。
 次回の日程でございますけれども、9月3日の月曜日14時から16時フロラシオン青山で開催を予定しております。
 以上でございます。

【野村主査代理】 それでは、本日はこれで文化審議会の著作権分科会の第6回過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会を終わらせて頂きます。本日はどうもありがとうございました。

─了─

(文化庁著作権課)


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