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著作権分科会 法制問題小委員会(第5回)議事録・配付資料

1. 日時
平成19年6月29日(金曜日)10時〜11時42分

2. 場所
アルカディア市ヶ谷 5階 「大雪」

3. 出席者
(委員)
青山,市川,多賀谷,茶園,道垣内,中山,松田,村上,森田,の各委員
野村分科会長
(文化庁)
高塩文化庁次長,吉田長官官房審議官,甲野著作権課長,亀岡国際課長,
川瀬著作物流通推進室長ほか関係者

4. 議事次第
1  開会
2  議事
(1) 海賊版の拡大防止のための法的措置の在り方について
(2) 権利制限の見直しについて
(3) その他
3  閉会

5. 配付資料一覧
資料1   海賊版の広告行為に関する論点(補足)
資料2 海賊版の広告行為の権利侵害化に関する実行者の範囲および海賊版対策の実効性確保についての権利者・団体の考えについて
(社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会作成資料)
資料3 著作権法における親告罪の在り方に関する論点のまとめ(案)
資料4 権利制限を巡る課題に関する審議等の進捗状況
資料5 当面の審議日程(案)

(参考資料)
参考資料   映画の盗撮の防止に関する法律(平成19年法律第65号)

6. 議事内容
【中山主査】 時間でございますので、ただいまから文化審議会著作権分科会の法制問題小委員会の第5回を開催いたします。本日は御多忙中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 議事に入る前に、本日の会議の公開につきまして、予定されている議事内容を参照いたしますと、特段非公開にするには及ばないと思われますので、傍聴者の方々には既に御入場していただいているところでございますけれども、それでよろしゅうございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

【中山主査】 ありがとうございます。
 それでは、本日の議事は公開ということにいたしまして、傍聴者の方々は、そのまま傍聴をしていただきたいと思います。
 議事に入ります前に、事務局において人事異動があったということでございますので、紹介をお願いします。

【黒沼著作権調査官】 文化庁の長官官房国際課の国際著作権専門官に異動がございまして、千代光一が経済産業省に戻りまして、その後任といたしまして、同じく経済産業省の製造産業局から高やなぎ大輔が着任しております。

【高やなぎ国際著作権専門官】 どうも、よろしくお願いいたします。

【黒沼著作権調査官】 それでは、引き続きまして配付資料の確認をお願いしたいと思います。議事次第の下半分に配付資料一覧がございます。本日、資料5件と参考資料を1つを配付しております。
 資料1は、海賊版の広告行為に関する論点の補足でございます。資料2は、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会からの配付資料でございます。資料3は、親告罪に関する論点のまとめ。資料4は、権利制限を巡る課題に関する議論の進捗状況。資料5は、当面の審議日程となっております。参考資料としまして、映画の盗撮の防止に関する法律の概要をお配りしております。
 過不足等ございましたら、御連絡ください。

【中山主査】 よろしいでしょうか。
 それでは、本日の議事は多数に及びますので、段取りについてまず確認をしておきたいと思います。
 本日検討をしていただきたい事項は、海賊版の拡大防止のための法的措置についてと、権利制限の見直しについての2点でございます。前半は海賊版の拡大防止ですけれども、これにつきましては、1海賊版の広告行為に対する取締り、2著作権法における親告罪の在り方の2点でございます。
 海賊版の広告行為の取締りにつきましては、前回、事務局におきまして論点をまとめた案についての報告をいただきましたが、前回の議論から出た意見の論点を補足していただきました資料と、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会からの提出資料を踏まえて、自由討議の時間をとりたいと思います。
 それから、著作権法における親告罪の在り方につきましては、これまでの御意見を踏まえまして、事務局にて論点をまとめた案につきまして報告をしていただいた後、自由討議の時間をとりたいと思います。
 では、始めに、海賊版の拡大防止のための法的措置について、事務局で論点を補足した資料と、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会作成の資料をもとに、検討してまいりたいと思います。
 事務局から説明をお願いいたします。

【大和著作権課長補佐】 御説明いたします。まず、資料1を御覧ください。
 前回の委員会におきましては、広告行為の範囲について意見が出ていました。すなわち実効性を確保する観点から、規制対象として誰の行為まで捉えるのかという問題でございまして、資料1に書いていますように、まず1として、「広告を作成し、作成した広告を出す行為だけでなく、それにかかわる行為全体で一つの行為ととらえる」。すなわち、広告主とサイト管理者を対象と捉えるというようなイメージでございます。これに対して2としまして、「広告を作成し、作成した広告を出す行為を広告行為ととらえる」。すなわち、ここは広告主を規制の対象として捉えるというイメージでございます。
 また、著作権法において広告行為について仮に113条などで権利侵害とみなした場合には次のような法的効果が生じるわけでございまして、ローマ数字で1)故意・過失がある場合には損害賠償、2)著作権法上の差止請求、3)刑事上の著作権侵害罪、罰則が科される可能性がある。それから、4)プロバイダ責任制限法に基づく削除要請をすることができる。5)同じくプロバイダ責任制限法に基づいて発信者情報開示を求めることができる。これらの法的効果があり得るわけでございます。
 これを前提としまして広告行為のことを考えますと、次のページでその法的効果は以下のように整理できると考えられます。すなわち、先ほど御紹介した1広告主とサイト管理者というふうなイメージで広告行為を捉えた場合、サイト管理者など広告を掲載している者、場を提供している者も権利侵害と構成することができますので、被害者はサイト管理者など広告を掲載している者に対しても差止請求をすることができ、実効性が上がるのではないかという考え方でございます。
 これに対して、2広告主だけを広告行為の主体と考えた場合、サイト管理者などについては権利侵害の主体とは考えない。それから、差止請求についても、いわゆる間接侵害の問題として、差止請求が認められるか否かについては、争いがある。プロバイダ責任制限法においても、削除要請はできますけれども、要請に応じて削除することまでは義務ではないということから、果たして実効性があるのかという意見が出たかと思います。
 このように2を採用した場合には実効性があるのかという意見でございますが、これに対して、1の考え方を採用した場合、差止めが可能になるわけでございますけれども、サイト管理者以外にも、広告については、雑誌や放送、チラシというような行為もございますので、こういったものも含めて考えた場合、実態上問題は生じないかどうかというところが、課題となるかと思われます。更には、刑事罰が科されるおそれがありますので、そういうふうな規制がかかった場合には広告に携わる者に萎縮効果を及ぼすのではないかということも、課題となると考えられます。
 更に、2の考え方、広告主の行為というのを広告行為ととらえて規制する場合ですが、更に深める場合といいますのは、まずは広告主に対する規制を設けつつ、その上でそれにかかわる者の責任を検討するというふうにした場合には、現在、法制問題小委員会の司法救済ワーキングチームでいわゆる間接侵害の問題について検討しているところでございますので、そことの関連で御審議していただくという考え方もあるのではないかというふうに考えておるところでございます。
 次に資料2を御覧ください。この問題に関しまして、前回、事務局から関係団体の意向などを確認してみると申し上げましたが、ヒアリングを行いました社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会から、広告行為の実行者の範囲について等々、見解の説明がございましたので、紹介をさせていただきます。
 かいつまんで申し上げますと、まず1といたしまして、事業者の法的責任のバランスを欠く、すなわち、サイト管理者というのはさまざまなアップロードを行っていますけれども、アップロード一般については、基本的に刑事責任は問われず、民事責任についてはプロバイダ責任制限法に基づいて責任制限はされているけれども、今回、広告行為を侵害とみなすとされてしまうと、広告行為の場合にのみ民事・刑事の責任を負うことになってしまうのでバランスを欠くということから、権利者としては、サイト管理者などの事業者までを対象としなければならないとは考えていないというのが、1のポイントかと思います。
 それから2のポイントでございますが、既に権利者団体はインターネットオークション事業者との間で削除スキーム、削除の手続、ルールについて運用するための協力関係があるわけでございますが、刑事責任まで問われる法的規制をかけるということになった場合、これまでの協力関係にも悪影響を及ぼす可能性があるというふうな懸念もしておるようでございます。
 その一方で、仮に広告主だけに絞った場合、実効性があるのかということについては、権利者としては次のように考えておられるようでございます。まず、実行者の所在がわかれば差止請求ができるので、プロバイダ責任制限法に基づく手続が可能になり、差止請求権に基づいて削除請求が可能になるというのが1点目。それから、プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示によって、今まで実行者が不明でなかなか話し合いもできなかったところ、発信者情報の開示によって民事的な協議・交渉というものも可能になるというのが2点目。3点目として、更に悪質なものに対しては刑事責任ということも不可能ではないという点も、実効性はなくはないというわけでございます。
 その他の効果として、海賊版を広告する行為が権利侵害とみなされる、ということによって、犯罪であることを事前に告知するという啓発の効果もあり、著作権侵害の発生予防・防止にも資するのではないかというふうに考えておられるようでございまして、総じて言いますと、権利者としては、このたびの検討に当たっては、法的規制の範囲を広告主に限定しても、実務上は実効性がなくはないというふうに考えているようでございます。
 以上でございます。御審議をよろしくお願いいたします。

【中山主査】 ありがとうございました。
 ただいまの説明につきまして、御意見、御質問がございましたら、承りたいと思います。何かございますでしょうか。
 どうぞ、森田委員。

【森田委員】 まず質問ですが、資料2の2ページの1の「また」以下の部分でありますけれども、2行目に、広告行為自体が権利侵害とされれば、事業者に対して「プロバイダ責任制限法」に基づいた削除請求(差止請求)を行うことができるようになるのでよいんだと書いてあるのですが、できるようになるというのは、どういうロジックによると理解されているのでしょうか。

【大和著作権課長補佐】 広告する行為が著作権侵害とみなされるので、その主体に対してその行為を差止請求するという考え方かと思います。著作権法に基づいて権利侵害とみなされることによって、それについてプロバイダ責任制限法に基づく削除請求ができる。もちろんプロバイダがそれに応じる義務はありませんけれども、削除請求を行うことができるという考え方かと思います。

【森田委員】 そうすると、この削除請求とか差止請求というのは、法的な請求ではなくて、プロバイダが任意に応じるものであって、法的に応じる義務はないという意味での差止請求ということなのでしょうか。

【大和著作権課長補佐】 プロバイダ責任制限法に基づく手続であれば、そのようなことかと思います。

【森田委員】 そうしますと、その上の部分では、オークションサービスの規約違反に基づいて運用されていると書かれていますように、任意に削除するということであれば現在でも運用でやっているわけですけれども、今回法改正されると、法的根拠ができると書いてあるわけですね。ですから、削除請求というのが任意に応じるものであるということだとすると、これは前後が矛盾していることになりはしまいかという疑問が生じます。つまり、コンピュータソフトウェア著作権協会の意見というのは、何が要らないと言っているのかということですが、事業者に対する差止請求が今回できるようになるけれども、それを超えて、例えば刑事罰を科すとか、そういうことまでは要求してないということだとしますと、それでは、なぜ差止請求ができるのか。差止請求が今までできなかったのが、今回できるようになるとすればそれはどうしてなのか、という点がやはり問題になってくるように思います。ここでいう削除請求は任意に応じるということでよいのですか、というふうに真意を確かめたくなります。

【大和著作権課長補佐】 任意といいますのはプロバイダ責任制限法に基づく削除がプロバイダの任意で行われるということでございますが、著作権法に基づく差止請求という意味では、権利侵害とみなされた行為を行った者に対して請求できるということで、資料2の2ページの中では、一段落目と二段落目は相手が異なると考えているのではなかろうかと思います。すなわち、一段落目は広告主に対して、「また」の段落ではプロバイダに対してという説明かと思われます。

【森田委員】 その点をまず確認したかったのですけれども、資料1についてですが、前回、私の発言がわかりにくかったため必ずしも十分に伝わらなかったのかもしれません。資料1の12という2つがあって、2は直接の侵害行為者だけが対象となるのに対し、1はいわゆる間接侵害の考え方を含めていくものとされ、この2つのどちらをとるかという整理をされていますけれども、私が申し上げたのは、間接侵害ではなくて、直接侵害であっても、一定の場合には削除しないことが直接侵害として評価される場合があるというふうに従来も考えられてきているのではないか。例えば、プロバイダに対して削除請求をするときに、それが他人の権利を侵害する違法な情報であるということをプロバイダが十分認識しながら削除を拒絶するということを継続している場合には、その時点以降はそれ自体が直接侵害となるということになります。この点は、2ちゃんねる小学館の事件で、1審判決では間接侵害の問題であると捉えたのに対して、東京高裁判決では、直接侵害として評価できる場合があるとされたわけですが、いわゆる不作為であっても、作為行為と同じように評価できる場合があれば、それは直接侵害になるという解釈が採られていたのだと思います。それを超えて一般的に間接侵害を認めるべきかどうかというのはまた別の問題でありますから、12という図式でいきますと、1まで認めようということを前回私は申し上げたつもりはなくて、2の範囲内でもどこまでが広告行為なのかということが同じように問題になるという意見を申し上げたつもりでございます。この点は、広告行為だけではなくて、送信可能化という行為についても同じ問題になるわけです。掲示板の管理者やプロバイダが送信可能化をしているかどうかというと、自分が知らないうちにアップロードされているからといって、掲示板の管理者やプロバイダが送信可能化の行為者であって、直接侵害をしているとは評価されないでしょうけれども、しかし、違法な情報がアップされているので削除してほしいという請求がなされ、違法であることについて基礎付ける事実についてはすべて明らかになっているという状態でなお削除を拒み続けることがあれば、その場合にはその時点から、プロバイダ自身、あるいは掲示板管理者自身も直接侵害の行為者として評価されることになるので、その場合には削除請求の対象になってくるわけです。そういうふうに考えますと、先ほどの資料2の1の「また」以下というのも、決してこれは任意に応ずるということではなくて、今回広告行為自体が権利侵害とされれば、その限度ではプロバイダに対する削除請求の法的根拠が生まれるので、それで十分であるということになります。しかし、削除請求の法的根拠がないということになりますと、従来は任意で協力を得てやっていたわけでありますけれども、それだけでは十分ではないのではないか。また、「削除スキームを構築していない事業者に対しても」というのが次の文章に出できますが、従来非協力的であった者に対しても、削除請求の法的根拠ができるので、今後は法的根拠をもって削除してくださいということが言えるようになる。従来は、プロバイダが任意でこういうスキームを構築して、進んで海賊版の広告行為を削除してくるという、そういう積極的に取り組んでいるプロバイダは良かったわけですけれど、それ以外のものは落ちていたわけでありまして、今回広告行為を加えることによってそれについても法的な根拠ができるので大変結構なことであるということになるのではないか。それとも、今後も法的には削除請求はできませんよという回答をするということなのかどうかということなのです。
 また、今の点は、広告行為だけの問題ではなくて、送信可能化についても全く同じ論理が成り立ちますので、広告行為についてプロバイダに対する削除請求が認められないということになると、送信可能化のほうも間接侵害にならない限りはプロバイダに対する削除請求はすべて認められない。つまり、小学館事件の1審判決の考え方を法律でもって認めたということになると、今後は間接侵害についての立法的対応をしない限り削除請求は認められないという解釈にコミットすることになりますので、これはこれで大変な問題といいますか、広告行為を超えて一般的に間接侵害全体についての考え方に影響を及ぼす立法をすることになりますので、慎重であるべきではないかというのが、私の申し上げたい点であります。

【中山主査】 この点について、事務局はいかがですか。

【大和著作権課長補佐】 権利者としては、「また」以下のところの趣旨は、今までオークションサービスの提供者が交渉のテーブルにさえ乗ってくれなかったのが、法的根拠が生じることにより、そのテーブルができる、応じてもらえることになるという趣旨のようでございます。

【中山主査】 その点は、ほかにいかがですか。
 どうぞ、茶園委員。

【茶園委員】 今の点は、前にコンピュータソフトウェア著作権協会の方がおっしゃったことに関係しているもので、私の記憶では、プロバイダは、現在は広告行為は侵害行為ではないので、自主的に協力をしてもらっているのだけれども、削除するということになるとアップロードした人との関係でいろいろ問題があるので、なかなか積極的にやらないプロバイダもいる、そこで、広告行為侵害行為にすると、おそらくプロバイダは侵害行為だから削除できるということになるので、そうしてほしいというものであったと思います。プロバイダ自身を侵害者にするかどうかとは関係なしに、そういう効果が必要だという、そういう趣旨だったと思います。今回の資料1の最初の、森田委員がおっしゃった点なのですけれども、まず、広告を作り、公に出す者が侵害者、行為者になるということは明らかなのですけれども、それ以外の者、とりわけ今問題になっているサイト管理者についてどうするかについては、もしこれを法律で何か規定するとなりますと、広告行為とは何か、あるいは広告行為者とは誰かということを明文で定めることになるでしょうし、あるいは何もせず、解釈に委ねるかという問題もあるかと思います。森田委員がおっしゃった2ちゃんねる事件がそうですが、今一般的には、送信可能化行為とは何かとか、行為者が誰かについては解釈に委ねられていると思います。ですから、アップロードした人だけが行為者になるという考え方もあるでしょうし、サイト管理者は常に行為者になるという考え方もあるでしょうし、2ちゃんねる事件の東京高裁のように認識があった後に行為者になるという解釈もあると思います。広告行為に関しては、私の結論は、送信可能化と同じように、解釈に委ねるべきであると思います。広告行為に関してサイト管理者も行為者に含めるとしますと、資料2のコンピュータソフトウェア著作権協会の方が書いておられるように、普通の侵害著作物をアップロードすれば、それに関しては何も規定がされていないにもかかわらず、広告行為だけに関して明定されると、バランスを失するのではないかと思います。送信可能化について何も定められていないということであれば広告行為についても定める必要はないのではないか。この問題に関してどう考えるかは、ここでもありましたように、場合によっては間接侵害の問題として一括的に検討すべきではないか。その検討の結果、最終的には、今と同様に解釈に委ねる、裁判所の判断に委ねるということになるかもしれませんし、一緒に法律で規定するということになるかもしれません。
 以上です。

【中山主査】 どうぞ、森田委員。

【森田委員】 ただいま茶園委員が最初に挙げられたプロバイダが削除した場合については、普通は広告をアップロードした者とプロバイダとの間には契約関係があるわけでありますから、契約でこういう場合にはプロバイダは削除できるということを決めておけば、免責については従来もあまり問題はなかったところです。プロバイダ責任制限法で削除した場合の発信者に対する免責規定というのは、契約関係がはっきりしない場合があることに対応したものであって、例えば、掲示板などですと、掲示板に書き込んだ者と掲示板の管理者との間の契約関係がはっきりしない場合もありますから、そういう場合も含めてプロバイダの免責を認めるということであります。したがって、免責ということに関しては、契約関係がある場合には、従来からそれほど困難はなかったのだと思います。
 それから、茶園委員がご指摘になった2点目でありますけれども、私が申し上げたいのは、資料1で言えば、2のような形で私もよいわけです。ただ、そう書いたことがプロバイダは対象外ですよ、というふうにとられてしまうと、これはまずくて、プロバイダも直接侵害として削除請求の対象になることはあり得ますよ、と。これは、従来の送信可能化の場合でも、送信可能化という定義の中でプロバイダが一定の要件を満たす場合には送信可能化権を侵害していると評価するということは、裁判所でも認められてきたところであって、それと同じような直接侵害に当たるかという評価を今回も考えればよいだけのことであります。前回は、2をとるとプロバイダが対象外になると説明されたわけですが、今日のペーパーも同じであって、1の考え方をとって初めてプロバイダに対する削除請求が認められるのだということをここで議論してそのような報告書が出され法律になってしまうと、従来認められてきたような直接侵害の解釈が全部否定されてしまうということになって、あとは間接侵害の立法的検討を待つだけだということになってしまうわけですが、それは適当ではないだろう。したがって、茶園委員がおっしゃったことと私が申し上げたいことは全く一緒であって、従来と同じ線で考えていただきたい、従来の解釈を変えるようなことをここで新たに打ち出すべきではないという趣旨であります。

【中山主査】 ほかに何かございましたら。
 どうぞ、道垣内委員。

【道垣内委員】 私も同じ点についての確認ですけれども、資料1の2をとった場合に、プロバイダが情を知って広告を掲載し続けている場合には、幇助になるということはあるのではないかと思います。それはいつからなのかというのは、難しいことではありますけれども。ですから、2をとってもプロバイダが完全にいつもシロというわけではなく、収益を上げるためにはそういう運営をするプロバイダもいるかもしれませんので、それは処罰されても仕方ないと思います。そのような解釈は可能だということを確認したいと思います。

【大和著作権課長補佐】 御指摘いただいたような点を考慮しまして報告書に反映するという形でいかがでしょうか。

【中山主査】 幇助になり得ることはもちろんで、それを超えて直接侵害にもなり得るわけで、それは今の判例でもそうなっていると思います。
 御意見を伺っていますと、どうも1の方向で、プロバイダなり、あるいは媒体を提供している者が、ケースによっては幇助になるし、場合によっては、作為がひどければ主体にもなり得るという、後は従来の考え方に委ねるということが、どうも大方の御意見のように拝見いたしましたけれども。

【大和著作権課長補佐】  2をとりつつ、すべての場合にプロバイダが責任がないわけではなく、場合によっては作為による直接侵害の可能性もあるし、幇助という考え方もあるという御指摘かと思います。

【中山主査】 大変失礼しました。私の単純な勘違いで、2でした。 大方の御意見はそのように考えてよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【中山主査】 それでは、今のような考え方を基本といたしまして、事務局で今日の議論も踏まえて報告書案を作っていただければと思います。 次に、著作権法における親告罪の在り方についてでございますけれども、事務局でこれまでの御意見を踏まえて論点を整理しておりますので、まずその説明をお願いいたします。

【大和著作権課長補佐】 引き続きまして、資料3を御覧ください。親告罪の問題に関しましては、これまでの論点に基づいて、積極的な考え方、あるいは消極的な考え方を御議論いただき、前回は、法務省、警察庁から捜査実務の実態を紹介していただいたところでございます。これを踏まえ、資料3のとおり論点まとめの案を作成してみました。
 まず、検討の背景としましては、親告罪の在り方に関するこれまでの検討状況を紹介し、最近の状況として、近年では著作権法の罰則を強化してきていることなど、著作権法を取り巻く状況が制定当時とは大きく異なっているので、再検討する必要があるのではないかとまとめました。
 現状につきましては、現行法での親告罪を1から8まで列挙いたしまして、2ページでは、親告罪とされている理由というものを逐条行為から抜粋して整理をしております。一覧表にしたものが3ページでございます。
 4ページは、前回、法務省、警察庁から御報告いただいた内容を整理したものでございまして、親告罪の場合の捜査の実務についてというふうにまとめております。親告罪の捜査・訴追の手続としましては次のとおりでして、親告罪の場合は告訴が必要であり、告訴というのは、端緒の一つであるけれども、捜査開始の条件とはされておらず、告訴がない段階で捜査を開始することも可能です。したがって、告訴の有無が捜査の可否や範囲に影響を及ぼすものではないというものでございます。なお、親告罪の場合には、犯人を知った日から6カ月を経過したときは告訴することができないという、告訴期限があるというものでございます。
 また、捜査の手順を以下123のように報告されまして、端緒、内偵、それから、押収、逮捕、取り調べというふうに流れるようでございますが、告訴手続というのは3の段階で行われることが多いようでございます。もちろん1の端緒の段階で、告訴によって始まることもあるようでございますけれども、告訴状の受理ということ、あるいは意思確認というようなものについては、3の段階で行われることが多いようでございます。
 捜査の過程においては、告訴・被害申告があるかないかを問わず権利者からの事情聴取というのは当然行うというのが実務のようでございまして、訴追の意思というものは公訴提起の要否の判断において当然重視されるものであるという御発表、御報告がございました。
 このような状況を踏まえまして、5ページ以下で検討の方向性を整理させていただいております。まず、親告罪を維持するかどうかの視点でございますが、著作権侵害の性質との関係においてということで、一般的には親告罪とされる罰には次の2類型というものが多いとまとめております。Aといたしまして、訴追して事実を明るみに出すことにより、かえって被害者の不利益になるおそれがある場合、Bとして、被害が軽微で、被害者の意思を無視してまで訴追する必要性がない場合というように区分されることが多いようです。著作権法の親告罪のうち、1ページに書きました1から8の中で、一番下の秘密保持命令違反についてはAということが考えられますけれども、それ以外の1から7までの犯罪類型については、Bに近いと考えてよいのかどうか。そのほか、人格的利益との関係がどのように考慮されているのかということについて、検討を深める必要があるのではなかろうかというふうに考えております。
 これらの考え方に対しまして既に積極的な意見、消極的な意見というのが出ておりまして、5ページの下半分、「この点、知的財産立国を目指す我が国において」という段落ですが、一見して悪質な行為については、規範意識の観点から、非親告罪としてもよいのではないかという意見、あるいは、法定刑との関係、すなわち10年以下、1,000万円以下という罰則との関係で、このような重大な犯罪については「被害が軽微で被害者の意思を無視してまで訴追する必要がない場合」に該当するのか考える必要があるという意見もあったわけでございます。被害者の意思を考慮するまでもなく、重大犯罪であろうという趣旨かと思われます。
 一方で消極意見としては、著作権侵害は多様な形態で行われている、更に、権利者が処罰するまでもないと許容している場合もあるというような観点の御意見も出ておりました。
 つまり、この問題については、仮に非親告罪ということにするのであれば、1ページ目の1から7までの著作権侵害罪がもはやBとは言えない状態だと考えてよいのかどうかということが課題かと考えられます。また、人格権についての配慮も、次のページに記載しております。
 なお、実務との関連では、非親告罪とすることによって規制の実効が上がるのならば非親告罪のほうが適当であるという意見があったわけでございますが、これに対して、前回の法務省、警察庁からの意見なども伺いますと、実務の意見としては、基本的には、親告罪であることが著作権法違反事件の捜査の大きな障害になっているという認識はないとのことでした。被害者の公判の負担の観点から告訴が得られず捜査が中断する事例もあるけれども、こういった事例の多くは告訴以外の捜査協力も得られない場合であって、親告罪だけが原因ではないのではなかろうか。更には、被害者の協力や意向を抜きにして訴追をするということは非常に困難であって、告訴というものが捜査協力意思を表示する役割を果たしている面がある。非親告罪化すれば取締りが強化されるとは直ちには言いにくい、というふうないわば消極的な意見が出された反面、社会に警鐘を鳴らす意味で検挙する価値の高い事件に関しては、告訴の取り下げによって捜査が中断してしまうというような問題は解決されるので、非親告罪の意義がないわけではないという意見もあったわけでございます。
 ちなみに特許の関係で言いますと、特許では平成10年に非親告罪化されたわけでございますが、非親告罪化することによって取り締まり上の効果があったかどうかというふうな客観的なデータはないということでございます。
 仮に非親告罪化する場合の範囲に関する意見としまして、一定の条件下で非親告罪化するということも考えられるという意見があったわけでございまして、この範囲について、例えば、常習犯については、常習侵害罪のようなものを作って非親告罪にすることは考えられないか。あるいは、罰則強化の議論の中で、罰則を強化するもの、しないものを区別して議論をした経緯がありますので、そのような区別も参考になるのではないか。あるいは、侵害の実態、結果が重大と認められる場合のみを非親告罪になることは、軽重の判断には微妙なものを含む要素がございますし、また、1つの類型の犯罪の一部を親告罪とし、一部を非親告罪とすることは、想定されていない。すなわち、これは具体的に言いますと、現在の著作権侵害の類型というのは、組織的な海賊版作成であっても、あるいは論文や記事の盗用であっても、いずれも複製権侵害であることには変わりないわけでございますが、そういった同じ位置づけであるものを、ある部分は親告罪、他の部分は非親告罪というふうな形にすることは想定されていないという意味でございまして、法制的な困難さと実務上の困難さがあるのではないかという考え方がございます。なお、著作者人格権については、個別の事情を考慮する必要があるという意見が従来から出ております。
 このようにこれまでの積極意見、消極意見、更には捜査実務からの意見等々を踏まえまして考え方を整理しますと、最後に書いていますように、まず、著作権侵害行為の多様性や人格的利益との関係を踏まえ、引き続き親告罪を維持すべき部分があるのではないかという点。それからもう1つ、現行の犯罪類型のうち、一部を犯罪類型とした上、それのみを非親告罪とすることについては、組織的かつ常習的な海賊版の製造のように社会全体として対処すべき悪質な侵害行為をとらえる適切な要件といったものが立法技術上設定できるかといったことも含めて、関係機関とも調整の上、十分慎重に検討することが適当ではないかというふうに案としてまとめたものでございますので、こういったものを材料に御議論いただければと思います。
 なお、1点補足でございますが、前々回の議論でドイツの親告罪について御質問がありましたので、事務局として調べられた範囲で御報告をさせていただきますと、ドイツの刑事訴訟法では、可罰的で訴追可能な一切の行為について十分な証拠がある限り検事局は公訴を提起する義務があるということで起訴法定主義をとっているわけでございますけれども、その規定の前には「法律に別段の定めがある場合を除いて」というふうにあり、例外を認め得るものとなっているわけでございます。学説の大勢も起訴法定主義を維持する方向でありますが、例外を認める傾向もあるようでございます。更に、実務上の要請、すなわちあらゆる犯罪をすべて立件していくとすると真に重大な事件に十分な力を注げないというようなことからも例外が必要とされておりまして、刑事訴追に対する特別な公益といったものの判断を行政にゆだねる事項であるとすることが、ドイツの判例とか通説になっているようでございます。その結果、親告罪などの例外規定が用いられているとのことでございます。したがって、ドイツにおきましては、原則的には起訴法定主義をとりながら、起訴便宜主義的な運用というものも行われておるわけでございまして、前々回の資料で紹介しましたドイツの著作権法、親告罪の規定も、このような背景から非親告罪的な規定も併記されているのではないかというふうに考えられます。
 以上でございます。

【中山主査】 ありがとうございました。
 この問題は、知的財産推進計画の中に書かれていて、こちらに投げかけられた問題なのです。実は知的財産推進計画の原案は非親告罪化する、という記述だったのですが、私の提案でそれを断定的ではなくて、検討する、というふうにしてもらったわけです。それは、特許権侵害は既に非親告罪化しているわけですけれども、著作権に関する罪というのは特許権と比べると非常に複雑で専門的な検討を要すると考えたからでして、逆に言えば、この審議会で専門的ないろいろ細かい点を議論していただきたいという、そういう趣旨でございます。
 ただいまの事務局の説明について、何か御意見、御質問ありましたら。
 どうぞ、村上委員。

【村上委員】 私は前回休んだので、警察庁、法務省の方々と同じ見解をここでもう一回話すことになるかもしれませんが、基本的にこの整理でよろしいと思いますし、親告罪であることは、海賊版を摘発することの障害にはなっていないというのが現実だと思います。自分の専門分野ですが、例えば独占禁止法の場合には、違反については公正取引委員会が専属告発権を持っているわけです。ただ、専属告発権とか、ここでの告訴の権利といっても、法律上は非常にはっきりしていまして、いわゆる公訴提起のための訴訟要件であって、捜査を開始するための要件ではないというのは同じ解釈だと思います。そうすると、検察にしろ、警察にしろ、自分の職権で事件の捜査を開始することはできるわけです。強制捜査をやろうと思えば、できるわけです。たまたま独占禁止法の談合などの話で事件捜査をやった後、かなり大きな事件で独占禁止法違反にしたいから公正取引委員会に告発してくれという要請が来るわけで、そのときに役所としてノーと言うことはないので、喜んで告発すると言ったらおかしいのですが、告発する形になる。私はこれと同じだと思います。仮に警察が海賊版の摘発で捜査を進めて、かなりのところを立証できて、間違いなく海賊版をやっているので刑事事件として摘発したいときに、送検するか、もしくは裁判所に公訴提起したいといった場合、告訴状を出してくれと言われて、嫌だと言う著作権者は、ほとんどいないのであって、むしろ喜んで告訴状を提出してくれるという意味で、あまり親告罪になっているということは賊版摘発の障害にはならないというのが実態だと思います。そこは、むしろそういう意味で慎重に取り扱っていくほうがよろしいかと思います。

【中山主査】 ただ、1つだけ心配なのは、民事の損害賠償で手を打って告訴状は出しませんという、そういうケースはあり得るのだけれども、それは果たして悪いことかという議論ももちろんあるかと思うのです。特許法はもう改正したという、それとの平仄をどう考えるかというのが、やっぱり大きな問題だろうと思います。
 ほかに何か。どうぞ、市川委員。

【市川委員】 少し本筋から外れる議論になるかもしれないのですが、秘密保持命令違反というのがございますね。この問題に関しては、著作権法だという特殊性は主張しないと、場合によっては横並びでいいと、こういう共通の認識でよろしいですかね。

【中山主査】 これは別に、特許法と比べて著作権法の特色がある問題とも思えないのですけれども、その点は共通認識で問題ないでしょうね。
 その点につきましてはそういうことで、ほかに何かございましたら。
 どうぞ、道垣内委員。

【道垣内委員】 私はどちらかというと親告罪でなくしたほうがいいと思っていた人間なものですから、もう少し気になる点がございます。資料3の3ページに一覧表があって罰則が並んでいますけれども、一番上の著作権侵害罪ですが、これは10年以下ですね。10年以下というのは刑法の中でも相当重い部類で、器物損壊は3年以下の懲役です。著作権侵害行為の中には、軽微なものももちろんあると思いますが、重大な犯罪行為とみるべき場合もあるから10年にしているはずだと思います。親告罪を維持することにした場合、その説明ぶりいかんでは、アナウンスメント効果として悪い影響が生ずるおそれがあるように思います。特にインターネットで、ともすれば侵害行為をしかねない小さな子、学生なり児童、そういう人に、これは悪いことだということがどれぐらい認識されているかということが問題であり、まさか訴えないだろうという軽い気持ちで著作権侵害をやっているのではないかと思われます。その点が少し気になります。記録に留めるだけになるかもしれませんが、そのようなことを申し上げたいと思います。

【中山主査】 ありがとうございます。それは著作権侵害罪だけですね。

【道垣内委員】 いえ。

【中山主査】 全部ですか。

【道垣内委員】 特に著作権侵害罪ということです。

【中山主査】 10年という重い刑だからということですね。

【道垣内委員】 そうです。

【中山主査】 ほかに何か御意見ございましたら。
 森田委員、どうぞ。

【森田委員】 細かいことですが、7ページの最後の結論なのですけれども、結論の1ポツと2ポツの関係で、1ポツは、「維持すべき部分があるのではないか」という書きぶりよりは、「著作権侵害行為の多様性や人格的利益との関係を踏まえると、一律に非親告罪化してしまうというのは適当でない」という結論があって、ただ「例外的に特別な類型を切り出して非親告罪化することはあり得る」というふうに整理すべきではないでしょうか。「維持すべき部分がある」というと、大部分は維持する必要ないけれども、親告罪として維持すべき部分が少しはあるという書き方になってしまいますが、これだと、少し全体の意見の取りまとめとしては弱いような感じもします。また、道垣内委員がおっしゃったようなアナウンスメント効果をねらっているような場合というのも、2ポツにあるように、現行の犯罪類型の一部を新たな犯罪類型として切り出して、こういう場合についてはだめだということをはっきりさせることができればアナウンスメント効果を期待することができるかも知れませんが、そうでなければアナウンスメント効果もないような気もします。何かこの2つの整理の仕方が少し中途半端なような感じがしたものですから、これは表現ぶりだけの問題かもしれませんけれども、もう少し何か工夫の方法があるのではないかということを申し上げたいと思います。

【中山主査】 ありがとうございます。事務局、その点はお考えください。
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ、村上委員。

【村上委員】 中山主査が言われた、和解に応じてしまって、それで告訴しないというのは、確かに法律的にはあり得る話なわけです。ただ、実際問題、海賊版で問題になっているのは大手の映画会社とかハリウッドの系統の会社なので、自分で和解して、せっかく警察が摘発したのに告訴状を出さないということは実際にはないのではないかと思いますし、逆にそう簡単に和解に応じるようであれば海賊版をきちんと処理して刑事罰を科してくれという要求がそもそも起こらないので、一番大きな被害を受けるところはそう簡単には和解しないのではないかと思います。

【中山主査】 刑事ですので私もよくわかりませんけれども、むしろ専門家の方にお伺いしたいと思いますが、具体的な事件では、告訴状を出しますと、和解で取り下げないでくださいという念を押されることが多いようですね。
 どうぞ、市川委員。

【市川委員】 事件で経験していることの一端だけ申し述べさせていただきますと、やはり告訴を取り下げてほしいという被告側の気持ちがあって、頑張って損害金を支払うという形で和解が成立することの一つの推進力になっているという事件もございますし、やはり警察から告訴した以上は取り下げてくれるなということを言われてきて、だから和解はできないのだとおっしゃっる当事者、原告もいらっしゃいます。実情としてはそういうところで今は動いております。

【中山主査】 いろいろあり得ると思いますけれども、実際やっておられる松田委員の感触はどうですか。

【松田委員】 事案として起こるのは、捜査をしまして、たくさんの複製物が出てきて、その中に当初の捜査の対象以外のものが発見されまして、そして、それを警察のほうから権利者へ連絡します。テレビ局とか、映画会社ですね。こういう複製物がありましたので告訴状を出してください、ということがあります。多分、例外なく告訴状は出していると思います。ですから、実務的にはあまり変わらないのではないかなと思っています。

【中山主査】 ほかに御意見ございませんでしょうか。
 そうすると、結論はどっちかということになるわけですけれども……。

【大和著作権課長補佐】 主査、よろしいですか。

【中山主査】 どうぞ。

【大和著作権課長補佐】 事務局でこの案をまとめるに当たりまして悩みました点を少し紹介しまして、お知恵をいただきたいと思います。5ページでございます。5ページでA、Bの類型を紹介しつつ、著作権法の侵害罪を当てはめると、秘密保持命令はAだけれども、その他の侵害は果たしてBと考えてよかったのかどうか。先ほど道垣内委員からも、10年以下、1,000万円以下ということとなったのだから、もはやBではない部分があるということも御指摘としてあるわけでございますが、それはすべてではなく、あらゆる犯罪がすべてそう言えるわけではございませんので、Bの類型に近いと言えるのか言えないのか、この辺をどのようにまとめればいいのかというのが、事務局として悩んだ点でございます。この点について何かお考えがあれば、親告罪とする場合には別の観点もあるというふうなお考えがあれば、御教示いただければ幸いでございます。

【中山主査】 その点はいかがでしょうか。
 特にございませんか。道垣内委員の御意見だと、基本的にはこの報告書でよろしいでしょうか。

【道垣内委員】 もちろん全体の意見に従います。

【中山主査】 全体の意見なのですけれども、村上委員の場合は、これはあまり変わりないから改正は要らないという趣旨ではないわけですか。それとも、改正はしたほうがいいという御趣旨なのでしょうか。

【村上委員】 検討することは一向に構わないと思うのですけど、さきほども言いましたようにどの程度実効性のある話になるのかと。

【中山主査】 知的財産戦略本部でもそれは議論が出まして、私が実効性はどのくらいあるかと聞いたら、アナウンス効果、宣伝効果であろうということを言っている人が多かったようですけれども、これを実際やってみて、明日からすぐ捜査が変わるとか何とか、そういうことではないとは思います。

【村上委員】 むしろ海賊版以外の話で、逆に、これをアナウンス効果で親告罪から外した場合には、かなり大きな悪影響というか、反面的な効果というのが著作権の世界ではあまりないということでよろしいのかどうか。そちらは私の専門ではないのでよくわかりませんので、その辺りとのバランスがあるという気がします。

【中山主査】 前回少し私が申し上げたのは、一方では、暴力団などが絡んでいる、ある意味では凶悪といいますか、悪性の強いものもあるけれども、他方では、例えば学者が人の文章を盗作し、新聞に載る。新聞記者が、時間に間に合わなくて他の記事を盗作し、新聞に載るという事件もままある。そういうのも全部、暴力団絡みと同じ非親告罪化でいいですかという、そういう問いかけを前回したわけですけれども。

【道垣内委員】 それはやはり悪いことなので、それを許したほうがいいということはないと思います。窃盗罪の対象となる有体物ではありますけれども、人の物を盗んでいるというところが問題なので、著作権意識を向上させていくという考え方も必要であろうと思います。多分、文科省でつくられている資料でも、小さな子向けには物を盗むのと同じだということをおっしゃっているのではないかと思います。なのに刑事法上は違う扱いをするということになると、先ほど大和課長補佐からお話しなったもののうち、どの理由付けで説明するのかが気になります。

【中山主査】 理屈としてはそうかもしれませんが、子供向けの教育で親告罪と非親告罪とで違うから子供に対する影響が違うかというのは、本当はよくわからないと思いますが。
 どうぞ、市川委員。

【市川委員】 本当に感想だけといいますか、今の感覚だけの議論でございますが、道垣内委員がおっしゃるように10年にまでして有体物を盗んだのと同じ窃盗罪というところまで持ってきたのに親告罪のままでいいのかというのはかなりボディブローのように効いてくるのですが、やはり私自身の今の感覚だと、どうも親告罪を外すのには少し抵抗があるというような感覚がまだ残っておりまして、これは、うまく切り分ける立法ができたときには、暴力団的なものと新聞記者・学者的なものをうまく切り分けていただきたいという気持ちがどうしてもまだ残っているという感覚でございます。

【中山主査】 確かに10年で窃盗と同じにしたということはそのとおりで間違いないのですけれども、5年の時代から、ほとんど懲役というのは意味なかったというか、あまり機能してなかったので、果たして10年にしたからといって窃盗みたいな懲役刑がどんどん出るかどうかというのは、実務上はわからない。でも、法律上はやはり10年になっちゃっているという現実はあるわけですね。

【甲野著作権課長】 事務局としてこういうペーパーで取りまとめたわけですけれども、若干、いろいろ御議論もあったりするわけでございます。実はこの問題に関しましては、純粋に法制的な問題ということで、必ずしも権利者の方々ですとか、いろんな方面にまだ聞いているわけではありませんので、もう少しその辺を聞いた上で、今ここで問題になっている点が本当にそうなのかどうかも含めまして改めて事務局からペーパーを出したいと思いますけれども、本日は、大体こんな感じかなということでまとめていただけるのでしたら、大変ありがたいと思っております。

【中山主査】 今の課長のようなまとめ方で当面はよろしゅうございましょうか。
 ありがとうございます。そういう形でまとめのペーパーを作っていただければと思います。
 海賊版拡大防止のための法的措置の在り方につきましては、今のとおり、ある程度議論を整理したと言うことはできると思いますので、この後は、報告書案を作る段階でまたもう一度議論をしていただければと思います。そういうことでよろしいですね。

(「異議なし」の声あり)

【中山主査】 ありがとうございます。報告書案へのつなぎ方につきましては、本日の議論も踏まえた上で、私と事務局で調整をしたいと思いますけれども、よろしくお願いいたします。
 それでは、引き続きまして、前回アナウンスいたしましたとおり、2つ目の議題であります権利制限の見直しの議論に移りたいと思います。
 まず始めに、権利制限を巡る課題に関する審議等の進捗状況につきまして、事務局より資料に基づいて説明をお願いいたします。

【黒沼著作権調査官】 それでは、資料4を御覧いただきたいと思います。平成17年度の法制問題小委員会で権利制限の見直しについて御議論いただいたわけでございますけれども、平成18年1月の報告書で結論を出していただいたものと、引き続き検討が必要だとされた項目と、いろいろとあったわけでございます。この引き続き検討となっていたもののうち、議論に進展があったものにつきましてはもう一度議論の俎上にのせてはどうかいうことで、本日、それぞれの課題、項目の進捗状況を御紹介させていただこうと思っております。
 順次説明をさせていただきますが、1つ目の特許審査手続に関する権利制限は、18年1月の報告書でも、権利制限を加えるべきだということで、昨年末の法改正によってすべて措置済みになっております。
 薬事行政に関するものも、審査のための書類の提出などについては、同じように措置済みになっております。3番の、医薬品等の製造販売業者が関連する研究論文を複写・調査して医療関係者に頒布・提供することということでございますが、こちらは、18年の分科会報告書では、関係者の努力に注視して、複写等の実態を踏まえて引き続き検討を行うというような形にされていたわけでございます。
 こちらの進捗状況でございますけれども、一番右の欄でございますが、現在、製薬会社のほうで学術著作権協会と包括契約を結んでいるということでございますが、株式会社日本著作出版権管理システムとはまだ契約を結べていないという状況だそうでございます。ただ、話し合いは進んでいるようでございまして、著作出版権管理システムが事業形態を変えるということも視野に入れて、事業形態を変えた後には、こういう形でやりましょうというような見込みは概ね立っているという状況ですが、まだ、事業形態を変えられるかといったところで、実行に移せていない、そういった状況だそうでございます。
 その次の図書館関係のところでございますけれども、まず1番の31条の図書館資料に他の図書館から借り受けた図書館資料を含めて、一部複写して提供するということでございますけれども、18年の分科会報告書では、関係者間の合意のもとで図書館による複製が必ずしも円滑に行われておらず、なお権利制限の必要があるという場合には、実態を踏まえて検討するということとされていたわけでございます。その現状でございますけれども、平成18年1月に関係者間で「図書館間協力における現物貸借で借り受けた図書の複製に関するガイドライン」が策定されておりまして、一定の条件下において権利者の許諾なく他の図書館等から借り受けた図書館資料の一部を複製することはできるということになっているわけですが、18年1月に締結されたもので、それ以降それほど時間が経っておりませんで、その評価について、これで十分なのか、十分でないのか、まだ十分な議論の蓄積がないのではないかなとは感じております。
  2番でございますけれども、図書館の間でファクシミリ、電子メール等で著作物の複製物を送付することということでございますが、こちらについては、分科会報告書で、図書館関係者による具体的な提案が得られた段階で検討するということになっていたわけでございます。こちらについては、図書館関係者からお話を伺いましたところ、あまり議論が進捗していないということだそうです。
  3番ですが、図書館等において調査研究の目的でインターネット上の情報をプリントアウトすること。こういった御要望もあったわけですけれども、分科会報告書では、こういった問題は図書館だけに限られない問題ではないかということで、図書館等のみならず、一般的にどのように提供されているのかなどについて、今後必要に応じて検討するということにされていたわけでございます。こちらの関係者間の協議の状況はどうなっているのかということでございますが、もともとインターネット上の情報ということで、そういった情報を代表する団体というものもあまりございませんで、議論はなかなか進んではいないということでございますが、そもそも議論の進めようもないということでございまして、という事情もあって、ぜひ法解釈を明示してほしいというような、検討再開の要望があったところでございます。
 その次のページに参りまして、4番でございますが、再生手段の入手が困難である図書館資料を保存のために許諾を得ずに複製することということでございますが、こちらは、分科会報告書では、どのような場合に対処可能であるのかの判断基準について、今後必要に応じ検討ということとされていたわけでございます。こちらは、平成18年以前にも議論はあったわけでございますけれども、なかなか再生手段の入手が困難なことの要件の設定に難しいところがあって、実際に法制化するに当たって難しいところがあったわけでございますけれども、図書館関係者からは、権利者との間では異論がないということで、再検討の要請があるわけでございます。こちらについては過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会でも議論を行っておりまして、そちらで今検討中という状況でございます。
 次の5番でございますが、図書館等において官公庁作成の広報資料や報告書などの全部を複写するということでございますけれども、こちらは、報告書では、自由利用マーク等の積極的な活用も含めて、著作権処理の運用が適切に行われていない場合には、実態を踏まえて必要に応じて検討するということとされていたわけでございます。関係者間の協議の状況でございますけれども、こちらは、両当事者間、図書館関係者と権利者間で意見の相違は少ないということでございますけれども、中には官公庁の資料を中心に出版されている業者など慎重な姿勢のところもあるということで、完全に一致を見ているわけではないということでございます。また、自由利用マークの活用もあまり進んでいないという声もございます。
  6番の、著作権法第37条第3項の障害者関係の権利制限でございますけれども、視覚障害者情報提供施設等での点字の取り扱いですとか録音の関係に限定せずに、公共図書館についてもそういった対象に含めてほしいといった御要望でございます。こちらは、図書館関係者にお話を伺いましたところ、公共図書館の問題として議論すべきところというだけではなくて、障害者福祉関係の権利制限と重複する部分もございますので、その中であわせて検討していただければいいと伺いましたので、後ほど障害者福祉関係の権利制限に触れるところで適宜触れさせていただきたいと思います。
 4番の障害者福祉関係の権利制限ですが、まず1点目の録音図書を公衆送信できるようにすることというのは、昨年末の法改正により措置済みでございます。
  2番の聴覚障害者関係でございますけれども、聴覚障害者情報提供施設において、貸出しの用に供するために公表された著作物に手話や字幕を付して複製すること、更にそうした複製物を公衆送信することについて、権利制限の要望があったわけでございます。報告書では、権利制限の範囲の限定やその必要性の明確化など、提案者による趣旨の明確化を待って、改めて検討するということとされていたわけでございます。
 こちらにつきましては、事務局としても、障害者関係の団体の方からいろいろお話を伺っている最中でございますけれども、詳しい状況はまた次回以降御紹介する機会があるかとは思いますが、簡単にどういったものを想定されているかということで申しますと、例えば災害時・緊急時などの情報について、放送であれば見逃したら終わりなわけですけれども、そういった情報をネット上に置いておいてオンデマンドで提供する、そういったことを念頭に置いているそうでございます。
 その次の3番は、聴覚障害者向けの字幕に関する翻案権の制限について、知的障害者や発達障害者等にも対象を広げるということでございます。こちらについては、報告書では、提案者による趣旨の明確化を待って、改めて検討するということでございました。障害者関係の団体の方と情報をいろいろ交換しておりますと、具体的な要望といたしましては、もともとは字幕ということで要望があったわけでございますけれども、そういったものだけではなくて、学校教育関係の図書全般ですとか、緊急時・災害時の情報など全般について、知的障害者、発達障害者にも分かるようにと、もうちょっと幅広い内容で考えているというようなことでございました。
  4番の、私的使用のための著作物の複製について、視覚障害者等が自らではなく、一定の条件を満たす第三者が録音等による形式で複製するという御要望でございますけれども、こちらについては、報告書では、私的使用のための複製による解釈で対応するのか、もしくは一定の障害者向けのサービスについて特別な権利制限を考えるのか、具体的に整理を行った上で検討するということとされていたわけでございますが、もう一度御要望を確かめてみたところでは、私的使用のためのというよりは、むしろ点字図書館などで、貸出しのためを超えて、差し上げるために録音・複製をする、そういったような中身をお考えのようでございます。
 その次の5番は新規事項になりますけれども、学習障害者のための図書のマルチデイジー化ということで要望が来ております。5ページの後ろに具体の要望書が来ておりますので、そちらを御覧いただきたいと思います。1つは奈良デイジーの会から文部科学省の初等中等教育局に要望書が出されたものでございますが、中身といたしましては、LDとか、ディスレクシア、これは難読症とか不読症というものでございますけれども、そういった方のためにマルチデイジーの図書をつくるための権利制限をということでございます。具体的には、2段落目のところが一番わかりやすいかと思いますけれども、テキスト、音声、画像がそれぞれリンクしていて、それぞれの要望に合った読みやすい形で表示される本をつくるという、マルチデイジーというような技術が最近できているようでございまして、そういったものをつくるための権利制限をしてほしいということだそうでございます。
 あわせまして、こちらにつきましては、自由民主党の政務調査会の下に特別支援教育小委員会がございまして、そちらが平成19年5月に政策提言を行っております。そちらにおいても、学習障害者にとって有用なツールであるということで、著作権法について、改正も視野に入れて検討を行うとされております。
 もとの4ページに戻っていただきまして、6番でございますが、こちらは拡大教科書や録音図書の利用の範囲の拡大ということで、こちらは、過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会で障害者関係の団体からヒアリングを行った中で御提案があった事項でございまして、拡大図書や録音図書について、趣旨は先ほどの5番と重複するところもあるのですけれども、学習障害者ですとか、その他の障害の方も利用ができるようにということを考えてほしいという御要望でございました。
  7番は、もともと図書館関係の事項に入っていたもので、先ほど後ほど御紹介すると言ったところでございますが、他と重複がない部分を取り出したものでございます。視覚障害者情報提供施設に限定せずに、点字ですとか、録音図書、そういったものの作成ができるようにと、そういった御要望でございます。
 次のページに行きまして、学校教育関係の権利制限でございます。こちらは、3番の同一構内での無線LANについて公衆送信に当たらないようにすることについては法改正済みでございますが、残りの1番と2番、eラーニングのための公衆送信ですとか、教育のための関係資料をサーバに蓄積しておく、そういった御要望あったわけでございます。こちらは、報告書では教育関係者からの具体的な提案を待って改めて検討とされておりまして、現状はどうなっているかと申しますと、いずれも、どういう仕組みで全体の制度を設計するのかということについて、まだ関係者の間での協議とか、全体のシステム作りが進んでいないという状況にあると伺っております。
 その次の6番でございますが、こちらは、新規の事項でございますけれども、最近、新聞報道等がされておりますが、税金滞納者から差し押さえた絵画をインターネットオークションなどで公売する際に、画像をネットに載せまして、それによってオークションサイトを運営するというようなことがあるわけですけれども、こちらが著作者の許諾を得ておらず著作権侵害に当たるのではないかというような議論がございまして、こういったことについて、税金滞納の場合だけではなくて、ネットオークション一般ですとか、他のところでも同じような問題があるわけでございますけれども、そういったものについて新たな課題として取り上げてはどうかということで、こちらへ書かせていただきました。
 それぞれの項目の進捗状況はこんな感じでございますが、また次回以降、関係者に来ていただいてより詳しい状況を伺うことを考えております。全く進展のない項目については、おそらく取り上げてもまた同じ結論になってしまうこともあると思いますので、今後の議論の進め方などについて御指摘を賜ればと思っております。
 以上でございます。

【中山主査】 ありがとうございました。次回は関係者からの意見を聞くということでございますので、今日のところは、全般につきまして、何か御意見、あるいは御質問があれば頂戴したいと思いますけれども、いかがでしょうか。どの点からでも結構でございます。
 何かございませんでしょうか。

【黒沼著作権調査官】 次回以降、具体的に例えばどういう分野から御意見を伺ったら良いかということで、こちらで考えている分野でございますけれども、たたき台ということで御提案させていただければと思います。
 まず、2ページの3番の製薬関係でございますけれども、関係する研究論文を医療関係者へ頒布・提供することという部分について、話し合いがかなり進捗しているということも伺っておりますので、製薬関係の方、もしくは出版関係の方などにお話を伺ってはどうかというふうに思っております。
 それから、図書館関係の部分でございますけれども、こちらにつきましては、中身が不明確ということではなくて、関係者間の協議の進捗を待って検討するといった部分が多いものでございますから、こちらについては、ヒアリングという形ではなく、具体的の検討に入ればいいのではないかと思っております。
 それから、4番目の障害者関係の部分ですけれども、こちらにつきましてはそれぞれ、平成18年の段階ではそもそも提案が具体的になっていないというような部分が多かったものですから、こちらについては、もう一度障害者関係の団体にお話を伺ってみたらどうかと思っております。それに対する権利者側はどこをお呼びするかということでございますけれども、障害者関係の権利制限の要望はちょっと幅広いものでございますから、まずは障害者関係だけをお呼びしたらどうかと思っております。
 それから、その次の学校教育関係でございますけれども、こちらについては、あまり協議の進展がないということでございますので、今お話を伺ってもどうかという部分がございます。
 最後の6番目でございますけれども、こちらは、オークション関係の事業者の方、もしくは、もっぱら対象になるのは美術や写真の関係だと思いますので、そういった関係の方をそれぞれお呼びしてはいかがかと思っております。

【中山主査】 今の説明を踏まえて、何か御意見ございましたら。
 私が言うのもおかしいのですが、特に障害者は、従来は視覚と聴覚しか考えられていなかったのですが、最近はいろいろな障害が問題になりまして、それらを除くというわけにはいかないと思います。しかも、障害者というのは弱者ですから、なかなか声を出して言えないとか、交渉しろと言われてもそう容易には交渉できないし、彼らに法的な枠組みを作って持ってこいと言っても困るでしょうから、弱者に関しては特にいろいろな意見を聞いてみてはと、私は思います。
 ほかに何か。茶園委員、どうぞ。

【茶園委員】 今事務局でおっしゃったことでよろしいかと思うのですけれども、1点、図書館関係なのですが、これは、先ほどの御説明では、特にヒアリングするということはないということだったと思います。それに対して反対ということではないのですけれども、平成18年度のときもそういう意見がありましたし、先ほどの御説明の中でもあったのですけれども、資料4の2ページの3とか5と関しては、そもそもなぜ図書館なのかという疑問があります。図書館では許されて他の場所では許されないというのは説明がしにくいといいますか、この場合、図書館というところをどのように考えているのかというのは難しいところがあると思います。検討するのであれば、おそらくこの点を考えないといけないのかなと思います。
 もう1点は、他の問題、特に教科書等に関しましては、権利者団体はどのようなものかというのは分からないではありません。ある程度の限定があるといいますか、大抵特定できるのではないかと思うのです、これに対して、図書館関係で、調査研究のためのインターネットの情報とか、官公著作物などに関しては、そもそも権利者団体とは一体何なのかなという疑問があります。官公庁のものについて権利行使をどれぐらい許すかというのは少し別の問題があると思うのですけれども、関係者団体がどのようなものかについては分かりにくいと思います。
 ともかく、おそらく今まで図書館に関しては、図書館が所蔵している本等を起点にして考えていたと思うのですけれども、それ以外のもの、特にインターネットの情報に関しては、図書館というものをそもそもどう考えるかというところが重要ではないかと思いますので、その点についても検討の対象にしていただきたいと思います。
 以上です。

【中山主査】 どうぞ、多賀谷委員。

【多賀谷委員】 障害者福祉関係の場合なのですけれども、1つは、さきほど言われた災害報道の場合にオンデマンド送信の提供みたいな話があると。それから4のところに、著作物の複製について一定の条件を満たす第三者が録音等による形式で複製することというふうに書いてあるわけですけれども、この場合、そこにある種の事業性を持っている第三者がどうも入ってくるような気がいたします。私も試験問題等のときに点字に変えて提供するというサービスをしなければいけないのですが、そのときに、実際上、いろいろな複数の資格試験の試験問題について点字をやる、それを一定の料金で提供するというのが、ある種のビジネスとして成立しているところがある。これも多分、背後に一つのビジネス的なものがどうもありそうなので、団体だけではなくて、そういうある種のビジネス性がありそうであれ、そこのところもできれば調べていただければと思います。

【中山主査】 その点はいかがでしょうか。

【黒沼著作権調査官】 すみません、具体的にどういう企業があるかとかは把握しておりませんけど、関係団体の方に、あるのかどうか聞いてみたいと思います。

【中山主査】 そうですね。これは、主として念頭に置いているのは、そういうボランティア団体は結構多くあるわけですね。多分そういうことを念頭に置いていると思うのですけれども、本当にビジネスがあるかどうか、調べていただけますか。

【多賀谷委員】 資格試験等はビジネスになっていますね。1つの資格試験について数十万円で点字を請け負うという方がいらっしゃって、それは1つの資格試験ではなくて複数の資格試験を全部やっているので、多分そこはある種のビジネスの方がいらっしゃると思います。視覚障害でも、今後、高齢者が増えれば、多分そこは、ボランティアではなくて、ある段階でビジネスになると思います。

【中山主査】 ほかに何か。
 先ほど茶園委員おっしゃった関係団体というのは一体何かというのは、前から議論になっているところでして、もっと前は関係団体で調整がつかなければこの委員会の俎上にのせないという方針だったものですから特に問題はなかったわけですけれども、確かに、関係団体がないとか、あるいは関係団体と称していてもこれは不適当だというのがあるわけですから、その辺りは柔軟にやっていただければと思います。
 ほかに何かございましたら。どうぞ、森田委員。

【森田委員】 この検討の進め方ですが、それぞれの関係者のお話を聞いて、もっともだという点があったとして、その先、それをどのように法制化するかとか、どのように問題を切り取るかというところで詰めていくと、いろいろと難しい問題がたくさん予想されるところであって、それぞれに大変である。そこで、例えば、「趣旨の明確化を待って」というのは、具体的にそのあたりの問題点をもう少し提案者のほうで詰めていただいて、それを受けて検討したほうが効率的ではないかという、そういうような整理が以前にはあったと思うのですけれども、今回の進め方はどういうことを予定しているのかというのをお聞きしたいと思います。前回の議論では、総論としてはこういうことは結構なことだけれども、広く認めてしまうのはどうかとか、そういう議論であったのですね。今回も結局同じような議論になって、また「趣旨の明確化を待って」ということになるのでは堂々巡りですので、さらに議論を進めるのであれば、もう少し事務局で、もし法制化するとすればこういう問題の切り取り方があるとか、こういう行き方があるというようなたたき台的なものを示していただいて議論を進めつつ、関係者からの意見を聞くという形にしていかないと、また同じことの繰り返しになるのではないかという危惧を持ったものですから、その点について何か御配慮いただければというふうに希望いたします。

【中山主査】 その点はいかがでしょうか。

【黒沼著作権調査官】 事務局でも、関係者とお話しする際には、こういったところの範囲を明確化できませんかとか、いろいろ御提案させていただきながらお話を進めてきているところでございまして、ある程度明確化された御提案が出てくるのではないかなと思ってはおるのですけれども、論点整理などについては、事務局のほうでもいろいろ勉強させていただきたいて、並行してやらせていただきたいと思います。

【中山主査】 森田委員、それでよろしいですか。

【森田委員】 はい。

【中山主査】 ほかに何かございましたら。
 では、次回は意見を聞くということですので、今日のところはこのくらいでよろしいでしょうか。
 それでは、続きまして、残りの資料につきまして、事務局から説明をお願いいたします。

【黒沼著作権調査官】 それでは、参考資料を御覧いただければと思います。色刷りの資料でございますけれども、こちらは、5月9日に議員立法で国会に提出された法案でございまして、先月23日に成立しまして、5月30日に公布されております。「映画の盗撮の防止に関する法律」でございますけれども、どういう目的の法律になるかと申しますと、映画の盗撮により作成された海賊版ソフトが多数流通して映画産業に被害が発生しているということにかんがみまして、盗撮を防止するためのいろいろな措置を講じると、そういった内容でございまして、具体的には、下の黄色いところに記載してございます。映画の盗撮というのはどういうものを念頭に立法されているかと申しますと、映画館等、こちらは入場が管理されているものというようなことになっておりますけれども、そういう場所において有料上映中の映画、それに先立つ無料の試写会も含めますけれども、そういったものについて、著作者の許諾なく映画の映像の録画、または音声の録音をする、こういうものを対象にしております。
 この防止の措置のために、まず1つ目としまして、映画産業の関係事業者によって自主的な努力が求められるということを規定しております。おそらく想定されるものとしては、入館時の持ち物チェックでありますとか、対応マニュアルの整備ですとか、防犯システムの整備ですとか、そういった努力が関係事業者で行われることになると思います。
 その次の、こちらが著作権法の関係部分でございますけれども、映画の盗撮に関する著作権法の特例ということで特例規定が置かれておりまして、まず1つ目は、著作権法第30条第1項の私的使用目的の複製の権利制限については、適用しないという規定を置いております。その結果、私的使用目的の複製でありましても権利が働くわけでございますけれども、更に、今、私的使用目的の場合には罰則がかからないという規定を置いてございますけれども、こちらについても読み替えをしまして、私的使用目的であっても罰則がかかるというような規定を置いてございます。ただし、期間を限定しておりまして、有料上映後8カ月に限定しているということでございます。
 こういった規定が設けられた趣旨としましては、今でも頒布目的の複製は著作権侵害になるわけでございますけれども、実際に映画館などでそういった複製行為をしている者と現場でやり取りをしますと、私的使用目的だということを主張されて、そこから先はにっちもさっちも行かなくなってしまうというような状況があるということで、そこを何とかしてほしいという関係者の御要望もありまして、映画館での、私的使用目的だという言い逃れを阻止するために必要最低限の例外を設けるということで、こういった立法がされたと伺っております。施行につきましては、公布後3月ということでございまして、今年の8月30日から施行されるということでございます。
 こちらにつきましては、いずれ法制問題小委員会で私的複製全体の在り方を議論する場面があるかと思いますけれども、そういった中でまた改めて御議論いただくこともあるかと思います。
 以上でございます。

【中山主査】 ありがとうございました。これはもう立法化されたので、どうこうするという議論をしても始まらないのですけれども、私的使用目的であっても刑罰を科すという、ある意味では少し特殊というか、特異というか、そういう規定になっております。
 こういう法律が通ったという御報告で、何かこの点について質問ございましたら。
 どうぞ、村上委員。

【村上委員】 情報だけ教えていただきたいということで、かなり短いですが専門的な内容の法律なわけなので。先ほど議員立法でしたという紹介でしたけれども、議員立法を行う場合には当然、文化庁には、相談があって法案内容を詰めているのかどうかが、第1点目です。
 第2点目は、まさしく議員立法として、これは内閣法制局の法令審査は一切受けてないということでよろしいのか。実際にこれを作られるとき、どんな感じだったかなという質問内容であります。

【中山主査】 お願いします。

【吉田文化庁長官官房審議官】 この法案は、昨年の秋ごろに、日本で「ダ・ヴィンチ・コード」という映画が封切られましたけれども、封切り2日目に劇場内で盗撮されたものがインターネットで出ていくというような事例が出てまいりました。日本語の字幕が付いたものが出ているものですから、これは日本からそういうものが発信されたのだなということがわかるというようなことでございまして、そういう意味では、日本としては少し大変なことになったと。それから、「ダ・ヴィンチ・コード」は外国の映画でございますけれども、それ以外にも、「ゲド戦記」ですとか、「男たちの大和」ですとか、そういったいわゆる邦画の世界でも被害が出ているというような実態が出ております。
 この関係については、早急に取り組まなくてはいけないということで、自民党の中でこれに熱心に取り組まれた議員さんたちを中心に盛り上がってまいりました。議員立法でございますから基本的にはこれは衆議院法制局のほうで法案を作っていくわけでございますけれども、その過程では、当然、私ども文化庁ですとか、あるいは法務省や警察庁、それから経産省ですとか、そういった関係省庁とも意見交換をしているということでございます。
 したがいまして、内閣法制局の審査というのは通っていないということでございますけれども、衆議院法制局のほうで十分されたところでございます。

【中山主査】 これは、映画館で撮るので品質は悪くて観客の頭などが映ったりしているのもあるように聞いています。商品としてはあまり意味がないかもしれませんが、インターネットに流すということであれば、流出もありうるであろうとは思います。
 ただ、これはあくまでも映画の話ですから、例えばライブの実演などには適用されないわけです。この法律を見るとすぐ頭に浮かぶのは、レコードの貸与権であり、最初は商業用レコードの貸出しだけを議員立法で規制したのが、その翌年にそれを著作権法に取り込んで貸与権一般として規定したたという経緯があります。これは映画についての特別立法ですけれども、これからどうなるかということはわかりませんけれども、問題になってくる可能性はあります。例えばライブについてもやってほしいとか、そういう意見が盛り上がってくれば、あるいは著作権に入れるという意見も出てくる可能性がないとは言えないと思います。

【吉田文化庁長官官房審議官】 少し追加いたしますと、これは議員立法の中でも委員長提案ということで全会一致で出ていく法案なのですけれども、そういうものにつきましては基本的に質疑はないのです。しかし、5月に衆議院の経済産業委員会で審議された際の一般質疑の中で、実は、この法案が提出されることを見越して、著作権法との関係などについて少し議論がございました。私も政府参考人という形でその委員会に出ていたのでございますが、その際に、この法律については賛成なのだけれども、これは特別法という形で作られておりますが、今主査のほうからお話がありましたように、前に貸しレコードのときには暫定措置法ができまして、その後それを著作権法の中に吸収する形で対処したことがありますけれども、今回のこの法律についても、30条の特例を設けるという部分がございますので、そこの部分が私的複製という秩序の中でどういうふうに位置づけられるべきなのか。それから、もしもそこの趣旨が全く著作権法と齟齬がないのであれば、将来的には著作権法の中にこの法律をある意味では吸収していくことも考えられるのか。そういったことも含めて著作権分科会の中でも議論してほしいというのが、議員のほうの要望としてございました。背景として御紹介します。

【中山主査】 そういうことでございます。
 何かほかに、この点について御質問等ございましたら。
 よろしいでしょうか。
 それでは、今日は、議事の促進に御協力をいただきましたおかげでちょっと予定時間を余してしまいましたけれども、本日の議事はこれで終了したいと思います。
 権利制限規定の見直しにつきましては、本日の議論も踏まえまして、先ほど申し上げましたように次回の会議で議論の整理を行いたいと思います。
 最後に、事務局から何か連絡事項がございましたら、お願いいたします。

【黒沼著作権調査官】 本日はありがとうございました。
 次回以降の日程につきましては、資料5でございますけれども、日程が記載してございます。次回第6回は、7月19日(木曜日)の10時から12時、三田共用会議所で、権利制限について関係者からのヒアリングなどを予定しております。第7回は、8月7日14時から16時に予定しております。
 それ以降の全体の今後の見通しということで御紹介いたしますが、まだ取り扱ってない課題といたしましては、私的複製の範囲の見直しについてと、通信・放送の在り方の変化への対応等が残っております。上の方につきましては平成19年1月の報告書で私的録音録画小委員会の検討を待って、とされていた事項でございまして、そちらの小委員会の進捗を見ながら、どこかのタイミングで御議論いただくことになろうかと思います。通信・放送の在り方の変化への対応、こちらはいろいろ中身があるわけでございますけれども、最近の動きといたしましては、総務省で通信・放送の総合的な法体系の検討を進めておりまして、その動きを見ながら、それに関連する著作権法上の課題というものも、今後、検討課題になっていく可能性があると考えております。
 以上でございます。

【中山主査】 まだ多くの問題がありますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、本日はこれをもちまして文化審議会著作権分科会の第5回法制問題小委員会を終了させていただきます。ありがとうございました。

(文化庁著作権課)


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